ほな呪術師と違うかぁ   作:破月

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某ネタを存分に活用させてもらっています。


しんで、うまれて

「漫研の先輩がね、好きな漫画があるらしいんやけど」

 

「へえ、そうなんや」

 

「それで、その漫画のタイトルを忘れたらしい」

 

「かんにんなぁ、今なんて?漫画のタイトルを忘れた?漫研なんに?どないなんそれ?まぁ、漫研の先輩が好きな漫画なんか、エ/ヴ/ァかる/ろ/剣、幽/白くらいやろ」

 

「いつの時代の話してんねん?まあ、そないな先輩もおるけど、その先輩はちゃうみたいなんや」

 

「ちゃうの!?えぇ!?」

 

「色々聞いたんやけど、いっこも分からへんねん」

 

「分からへんの?ほな俺がね、先輩の好きな漫画、一緒に考えたるさかい、ちょいどないな特徴言うとったか、教えてみてや」

 

「人間の負の感情から生まれる化け物を、術を使うて祓う術者の闘いを描いた、ダークファンタジー・バトル漫画って言うとった」

 

「ほー……呪/術廻/戦とちゃうか?その特徴は完全に呪/術廻/戦や、すぐ分かったやんこんなんもう」

 

「これがちょい分からへんねん」

 

「何が分からへんのよ?」

 

「ボクもな、呪/術廻/戦や思たんやけどな」

 

「いや、そうやん?」

 

「先輩が言うには、グロテスクなシーンはあらへんって言うとったんや」

 

「あー……、ほな呪/術廻/戦とちゃうか。あの漫画は一話に一つ挟まな死ぬんちゃうかっちゅうくらいにグロいシーンあるさかい。なんならそれが売り言うても過言ちゃうで。ほなもう少し詳しゅう教えてくれる?」

 

「白髪で黒い目隠しした自称最強の不審者っぽい人出とったらしい」

 

「呪/術廻/戦やん。NA/RU/TOのカカシせんせを彷彿とさせるその特徴は、呪/術廻/戦に出てくる五条悟っちゅうキャラや。実際漫画のキャラにも信頼されてるはずなのにクズやら尊敬はしてへんやら言われとってな。しかもあの目隠し取ったらえげつないイケメン出てくるんやで。ずっこい(ずるい)やつや思わへん?」

 

「その評価、私怨混ざってへんか?」

 

「そんなんあらへんで、ただ、人を見かけで判断したらあかんってことがよう分かる事例やと思てるだけ。…うん、その話、絶対呪/術廻/戦や」

 

「でも先輩が言うには、死人は一人以外出えへんって」

 

「ほな呪/術廻/戦とちゃうやんか。あの漫画で死人が一人だけやったら、あないな展開にはなってへんからね?」

 

「せやな」

 

「呪/術廻/戦はね、メインキャラでも容赦なくコロコロされるんよ。それによって生きてる人の描写深なって、どんどんキャラに惹かれていくんやで。そないな絡繰りなんよ、あれ。うん、呪/術廻/戦ちゃうな。ほなもうちょいなんか言うてへんかった?」

 

「主人公がね、一巻で死刑宣告されるらしいんよ」

 

「呪/術廻/戦やん!主人公の死刑宣告やら、そないなショッキングなこと起きるんは呪/術廻/戦とデッド/マン・ワンダー/ランドと悪役令嬢ものくらいよ?しかもさっきの五条悟っぽい人出てくること考えると呪/術廻/戦としか考えられへん…呪/術廻/戦やで、それ!」

 

「そやけど分からへんねんって」

 

「何分からへんの、これで」

 

「ボクも呪/術廻/戦や思たんやけどな」

 

「そうやろ?」

 

「先輩が言うには、主人公の仲間の紅一点がすぐ死ぬって」

 

「ほな呪/術廻/戦ちゃうやん!!」

 

「うん」

 

「紅一点といえば釘崎ちゃん!彼女はね、女の子らしい感性と感覚持ってるのに、自爆すらも厭わへんヒロインらしからぬ戦闘方法やら、戦闘時のゲス顔やら、何よりも悪役じみたセリフも多いさかい、ネット上では姉貴や姉御、果ては真の悪役とまで言われるキャラなんや!そないなキャラがすぐに死ぬわけあらへんやろ!?」

 

「もしかして推しなん?」

 

「いや、ちゃうけど?…話し戻すけど、呪/術廻/戦ちゃうよ、それ。他にはなんか言うてへんかった?」

 

「"呪いの王"って呼ばれる、四本の腕と二対の目ぇ持つ異形の姿をした千年以上前に実在した最凶最悪の人間の指を、二十本集めなあかんらしい」

 

「呪/術廻/戦やん!!その指の持ち主は、千年以上前の呪術全盛期に当代の呪術師たちが総力を挙げて挑んだけど、結局勝てんで、死んだ後にはあまりにも力強おして、遺骸の指の死蝋を千年間に渡って誰も消し去れなかったヤベーやつこと両面宿儺ァ!!」

 

「解説者みたいになってるやん」

 

「こらもう呪/術廻/戦以外の何物でもあらへんって!!」

 

「そやけど先輩言うにはな、呪/術廻/戦とはちゃうって言うんや」

 

「ほな呪/術廻/戦ちゃうやん!!その先輩がちゃうっちゅうならちゃうんやで、解決したやん。今までのやり取りはなんやったん?」

 

「それで先輩の彼女が言うにはね」

 

「先輩の彼女!?なんや急に出てきてどないしたん!?」

 

「結界師ちゃうかって」

 

「確かにあれも化け物みたいなの出てくるけど、そら絶対にちゃう!」

 

「ところで話は変わるんやけど」

 

「唐突過ぎん?」

 

「■■はさ、"転生"って信じる?」

 

「そら、お前、信じ――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――それが、最後の記憶。

 

 極上の笑顔を浮かべ、頬杖をついてコテリと首を傾げた幼馴染の顔が、微睡から覚醒した今も脳裏に焼き付いて離れない。幼馴染のあの顔はクラスの女子達に"天使の笑み"と持て囃されていたけれど、彼にとっては"悪魔の笑み"でしかなかった。

 だって、あの顔を目にして良いことがあったためしは、一度もない。そういうあの時も、幼馴染に付き合ってファミレスで何時間も駄弁り、帰路につこうとした矢先に呆気なく死んだのだ。駐車場側の席に座っていたのが運の尽き、と言えばいいのか。よくあるブレーキとアクセルの踏み間違いでファミレスに突っ込んできた車に巻き込まれ、彼は死んだ。

 一級フラグ建築士と幼馴染になったのが、人生で一番の失敗だったかもしれない。巻き込まれるだけならまだしも、なぜか幼馴染によって建築されたフラグは、尽く彼が回収する羽目になっていた。つまり、どうあがいても当事者になるのだ。建てるだけ建てて回収は他人任せとか最低ではなかろうか。言って治るものでもないので、諦めているが。

 それはそうと、突っ込んできた車から、咄嗟に庇った幼馴染は無事だったんだろうか、と思考を飛ばしかけてやめる。そもそもフラグを立てたのが幼馴染だったことを思い出したからだ。

 

 

(妙なフラグ建築しおって……)

 

 

 この度、幼馴染によって建築されたフラグは、過不足なく回収された。つまり、彼は転生したのだ。それも、ただ転生しただけではなく、死ぬ直前に話していた"呪/術廻/戦"の世界に。もっとも、そのことに今の段階で彼が気づくことはない。

 

 

(まあ、転生したことはこの際どうでもええ…、いやどうでもええ訳あらへんけど、いったん横に置いとくとして)

 

 

 流石にこれは酷いのでは、と彼は思う。

 

 

(俺、胎児やん???)

 

 

 膜を一枚隔てた向こう側から、"早く生まれておいで"というくぐもった声が聞こえる。これだけで、自分はまだ母親の胎の中にいるのだと理解した。

 

 

(いや、なんで???普通は赤ん坊の時やら幼児の時に意識戻るもんやん???なんで胎児なん???)

 

 

 羊水の中でくるん、と宙返りを決めながら愚痴をこぼす。あとどれくらいの期間この状態でいなければいけないのか。妊娠が発覚したばかり、ということではなさそうなのは確か。かといって、出産予定日が間近に迫っている、というような気もしない。となると、出産まで何をして時間を潰そうか。

 

 

(こうなったら仕方があらへん、生まれるまで暇やし人生設計でもするかぁ)

 

 

 胎児として転生した彼は、くるくると宙返りを続けながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。

 

 ――そして、生まれてすぐに、彼は知ることになる。

 

 

「奥様、旦那様、お喜びください!ご子息は――六眼(・・)をお持ちですよ!!」

(なんて???)

「本当か!?よくやったぞ!」

「はい……ああ、嬉しい…ウチの子が…六眼持ちやなんて、」

「ああ、そうだ本家に――五条(・・)家に連絡を入れなければ…」

(ちょい待ってくれ)

 

 

 自然の摂理というわけで、おぎゃーおぎゃーと泣き喚きながらも彼の頭は冷静だった。なんだか聞き捨てならない単語がちらほらと聞こえたような気がする、と。母体から外に出されたばかりで鈍い聴覚に神経を集中させる。

 

 

「――ぇえ、はい、男児が生まれまして…本当ですか!?先日御当主にも男児が!?はい、はい――()様とお名づけに――」

(うっっっっっっっっそやろ!?ここ、まさか、えっ、ほんまに?夢ちゃうくて?現実なん?)

「――無下限呪術(・・・・・)と六眼の抱き合わせ(・・・・・)!?ああ…うちの息子は、素晴らしい方にお仕えできるのですね!!」

(六眼と無下限抱き合わせで名前が五条悟???役満やん!!俺の人生お先真っ暗ならぬ真っ黒確定!!)

 

 

 自分が転生した世界が、死亡フラグが乱立するとんでもない世界であることに。そんな彼に向って、脳内の(イマジナリー)幼馴染が天使(悪魔)のような笑みで言う。

 

 

『ふぁいと♡』

(じゃねーんだわ!!ほんまにお前が建てるフラグはクソばっかやな!!!!)

 

 

 もし幼馴染もこの世界に転生していて、もし出会うことがあったとしたら。一発殴ってやろう、と彼は決意した。

 

 

(――そういえば、あいつの質問になんて答えたんやっけ)

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