両儀式のコスプレイヤーは、汚れたクロックスなんて絶対履かない 作:夜中 雨
暗く静かな寝室の中、オレは、足をブーツに突っ込んだ。
編み上げブーツの
革ジャンを
右手に、衛宮がナイフを乗せてくれる。
それを帯にセットして、衛宮の背中に声をぶつけた。
「ざっとでいい、衛宮。先に知っておきたいんだけど……。
オレは
首だけを回してオレを見た衛宮は、ドアノブに手をかけた状態で、困ったように小さく笑った。
「分からない。でも、確かめないといけないんだ」
「確かめる? 何を———」
「例えば、ライダー」
衛宮の足が、
ドアノブを握ったままの衛宮は、
「ライダーは、どうやってこのイベントに参加したんだろうな」
「“連れ”だろ? オレだって、おまえの“連れ”として参加したんだ。『直接誘われたのはマスターコスの
そう考えるのが普通だろ?」
「だからこそだ。俺は確かめないといけない。
———だって、今の今まで気づかなかったんだ。色んな事がありすぎたから、完全にド忘れしちまった」
衛宮が先に出て、オレも後から続いて。オレたちは廊下に立って、右を向く。
赤い
その廊下の左の壁には窓が一列に
「一番最初だ。覚えてるか、両儀。
俺たちは桜に、参加者かどうかのチェック、されたよな。その
———ギルガメッシュがいた
「覚えてない」
と、オレは答える。
衛宮が歩き出したので、いつでもコイツを
「それで? ギルガメッシュが“いる”と“いない”で、一体何が変わってくるんだ?」
「組合せがさ、ちょっとおかしな事になるんだ」
オレのちょっと前にいる衛宮の腕は、歩くたびに
「今回の、参加者たちの組合せだ。両儀が教えてくれたアレ。
もう一度、口に出してくれないか」
オレは、右手を帯の後ろに回す。ナイフの
そうやって位置を調節しながら、口を
「なぁ両儀、おかしいとは思わないか?
———桜が、点呼を取ったこと」
「そんな事もあるんじゃないの? 参加者の確認なんて仕事、他人に任せたりする事があってもさ……おかしくとも何とも無いだろ?」
革ジャンの
準備が整って顔を上げたオレは、衛宮の息がゆっくりになっている事に気がついた。そのゆっくりしたリズムで、衛宮から声が
「
特に、両儀から時臣の
1秒、2秒……。
それだけの
「なぁ両儀。ライダー陣営のマスターは、本当に桜だったと思うか?
参加者が、二人一組でコスプレしているその中で、遠坂時臣だけが、ソロだったのはどうしてだろうな。
オレたちを自由にすることに否定的だった時臣が、どうして、あんなにアッサリ引いたんだろうか。
———なぁ両儀。この家で最初に殺されたのは、本当に、バゼットさんで合っているかな」
オレは衛宮に
左手に壁、右手には下り階段。左前には衛宮がいて、
———声が聞こえる。
前方から、アーチャーの声だ。
「どこに行くつもりだ?」
階段付近に立つオレたちの前に続く廊下もまた、後ろと同じように
右側の壁に並んだ
アーチャーはその眠そうな目を、自身の左手にある
ライダーの姿を確認したアーチャーは、軽く目を
「……不安ならば付き添おう。そうでないなら、早く帰ってくることだ。昨日も今日も、この屋敷は物騒だからな、君も襲われたくはあるまい」
ライダーは無言だ。アーチャーはもう一度
そんなやり取りを見ていた衛宮が、歩きながら声をかけた。
「二人とも、少しいいかな?」
ライダーがこっちを向いた。
長い
———歩いてくるライダーは、両手に短剣を持っていた。
それだけではない。
チューブトップの黒いドレス、黒い長手袋とサイハイブーツ。両手にある
「衛宮止まれ。コイツは……やる気だ」
衛宮の
一瞬、視線を衛宮に飛ばすと、衛宮は真っ直ぐ前を見ている。前を見たまま、口を
「気を付けてくれ両儀。狙いはおそらく———両儀だと思う」
「そりゃ良い、お
ともかく、コレを倒せば終わりだな?」
「———違う。ライダーは犯人じゃない」
オレは呼吸を、意識してゆっくりにする。
「やっぱり教えろ、全部だ。
分からないまま戦ってたら、
そう、衛宮に約束を取り付けて、オレはライダーの重心を見る。目の前のコイツが歩くたび、どれくらいブレているのかを。
ライダーは
両手を垂らして歩くライダーの後ろで、アーチャーが立ち上がった。アーチャーは目を
それを合図に、ライダーが急加速した。
オレは左手を衛宮の前方に差し出して、ライダーが突き出した
腕力ではなく、自分の重心を操作することによって、武器を
ライダーは自分の脚力で、衛宮の後ろまで吹っ飛んでいった。
後ろにいる衛宮にため息をぶつけて、振り返り、その向こうのライダーを見る。
「———おい、この嘘つき」
オレは衛宮に毒づきながら、衛宮と立場を入れ替える。
オレは衛宮を、背中に
「何が『両儀が狙われる』だ。アイツ、思いっきりおまえを殺しに来てるぞ」
「ああ……そう、みたいだな」
衛宮の返答に
オレは衛宮の正面に陣取ったまま、二歩三歩と前に進んだ。
廊下の奥でライダーが立ち上がる。それと同時に、後ろから足音がやって来た。アーチャーだ。
オレよりもさらに前に出たアーチャーは、「やめたまえ」と言って両腕を
オレは警戒する。———状況がわからない。
恐らく、この男は止めに来ただけなんだろうが…………仮にアーチャーが敵だった場合、衛宮を護り切るのが
だからオレは後退して、衛宮の胸の前に張り付いた。
「それは、そこの
おまえがソレを取り押さえてくれるなら、オレたちだって暴れないぜ」
「それは良い。だが君たちも、こんな
“ドンッ”とライダーが地面を蹴った。
風を
当然、剣からは鎖が伸びている
結果、二本の鎖が、
舌打ちを一つ。
オレは一瞬、後ろを見てから衛宮の頭に手を伸ばした。その頭を押さえつけ、自分もしゃがみ、一本目の鎖を
左手を、衛宮の頭に置いたまま、両膝を曲げてジャンプする。衛宮の上に乗り上げるように後ろに跳んで、オレを狙った二本目も
オレの頭を狙った鎖が、目の前を右に
顔を上げ、オレの頭上の鎖を
鎖を一本、殺して切った。
———前方から殺気、ライダーだ。
オレは左手を曲げて頭を下げる。
衛宮にしなだれるように
オレたちが一瞬前まで居た場所を、ライダーが
衛宮に後ろから抱きついたまま立ち上がり、「おい嘘つき」と呼びかける。衛宮の足がしっかりする前に放り出し、衛宮の前に
右手に
———オレの手が、ライダーの胸に強く当たる瞬間に腕を回して重心を崩す。そのまま膝を抜いて腰を入れ、反動でライダーを突き飛ばす。
フラつく衛宮に手を貸しながら、オレはライダーを観察していた。
———弱い。
サーヴァントとしては、弱すぎる。
人間のオレが戦えている時点でお
何よりコイツは、石化の魔眼を持ってない。
ライダーは、コスプレイベント
この女は、ただのコスプレイヤーだ。
「その
「どうしてそうなる……」
後ろから衛宮のため息が聞こえるが、
この女、今はふらつきながら咳き込んでいるが、その内それも
アーチャーが味方だと確信できない以上オレは、二人ともに、
「
後遺症が残っても、後で
ライダーの、
アーチャーは、こちらにゆっくりと歩いてくる。
オレがナイフを握り直すのと、衛宮の声とが同時だった。
「———薬だ。たぶん、催眠術との
衛宮の息が、オレの左耳にくる。後ろから
「直死の魔眼が、病気だけを殺せるのなら。薬や催眠術なんかの“精神に影響を与えるモノ”も、“死”を
「さあな。でも……」
今は見えない。
でも衛宮の
「——————
ライダーの後頭部。頭と首との付け根あたりに、雰囲気の違う線がある。その場所を中心に
その中心の、
ライダーは、右手の殺された剣をじっと見てから、それを捨てた。左の剣を持ち替えて、オレを見て歩きだす。
応じるように、オレも一歩目を踏み出した。
するとアーチャーの声がする。
「止まれ、両儀式」
……止まらない。
オレの
足が止まった瞬間に、ライダーが踏み込んでくる。
オレから見て、右から左に
アーチャーに
振り上げた左足を床に置いたライダーは、勢いのままに体を
さらに
いつの間にかアーチャーは、オレの前に立っている。
「彼女は私が
傷つけず、怪我もさせずに制圧をする。
アーチャーが前を向き、ライダーに近づく
「次、ソレをこっちに通したら……オレは殺———」
「何してるんですか?」
背後の声に、場の空気が固まった。
「アーチャーさん? 先輩と両儀さんも……」
間桐の声だ、少しマズいな。
これでライダーが強行に出たら———と思ったが、ライダーは棒立ちのままだった。
振り返る。間桐と……凛も顔を出している。「ドア開けたまま騒がないでよ」と言いながら、眠そうに目を
そして、女二人がライダーを
オレたち全員に見つめられて、ライダーは静かに気絶した。
◇ ◇ ◇
状況をすり合わせるために、オレたちは食堂に移動した。
オレは全員に監視されながら紅茶を入れて、
「最初に言い訳しておくと、オレ、紅茶は入れたことないんだ。
だから
ちょうど
オレは、
ライダーの表情が少し
「ザックリとした話の流れは分かったわ。どうして騒いでいたのかも、ね。
となると気になるのは———。ねぇ衛宮君、今からそれを、話してくれるのよね?」
凛に正面から見つめられて、目を細めた衛宮が
「確たる証拠も、あるのよね?」
「“確たる”って言えるほど凄い物ではないと思う。
でも確かに、今回の
衛宮は言った。
「今から全部話すから、間違っていたら教えてくれ」と。
———まず始めに、ランサーの槍の話だ。
あれはたぶん普通の槍だと思う。
“投げボルク”を外から投げたら、何もかもぶっ壊しながら突き進んでいくからな。
そしてそうなると、ランサーの傷口はおかしかった。
両儀が言うには、『まるで突き刺した刃先が分裂したのかように傷口の内側がズタズタだった』。これはみんな見たと思う。
普通の槍で突き刺すだけなら、あんな風にはならないらしい。
「———だとするならアレは、槍で刺された傷じゃない」
オレの右隣から、衛宮の声が聞こえている。
その声に
「つまり、現場に転がっていた槍はフェイクだという事になるんだけど……そうなるともう一つ、疑問が出てくる。
『ランサーはいつ死んだのか』っていう疑問だ」
あの時、全員が相互監視状態にあった。
でも両儀が犯人だと考えると、不可思議な点がいくつも出てきてしまうんだ。
まず、鍵を壊すのに直死の魔眼を使ってる点だ。
その時点で両儀にとって、『直死の魔眼を持っている事』は最重要機密事項になる。
それがバレた瞬間に、両儀が犯人だと確定するからだ。
『犯行後に、ライダーに見つかったから
「だってそうなら、ランサーの殺害方法を
膝の上に置いて両手を握りしめ、少しだけ声を震わせて。
「“直死の魔眼がバレたら終わり”なら、いっその事ランサーだって
偽装工作する暇があるなら、さっさと殺して逃げればよかった。両儀の魔眼がバレさえしなけりゃ、どうやって殺したのか
衛宮の正面、オレの右前にいる凛が、少しだけ口を開きかけて戸惑うように
それを衛宮はチラリと見てから、ゆっくりと声を吐き出した。
「“凶器を特定させない殺し方”ができる両儀にとって、凶器を偽装することに意味はないんだ。
「じゃあね、衛宮君。他に誰ができるって言うの?
昼食の時、ランサーは生きてたし。その
衛宮は少し乗り出し気味に、凛の目を見た。
「そうなるともう、可能性は二つだけだよな。
———監視し合っていた、そのグループ全員が犯人か。それとも、本人は何もしないまま、間接的に殺したのか」
「衛宮君は、どっちだと思うの?」
「俺は———
衛宮はティーカップを持ち上げて、紅茶を
ソーサーに戻す時にカチャカチャと二度
「もしもグループで共犯したなら、槍の偽装は必要なかった
唇を
「この二つの仮定では、それぞれの犯行時刻が違うんだ。
もしも共犯なら、犯行に
———そうなると、槍の偽装はそのタイミングで行われたことになるんだが……。
今度は、バゼットさんの腕を
結界に触れて左腕が吹っ飛んだバゼット。
その傷口に
「『槍で殺された』と思わせたいなら、槍の
あの傷は、そんなものじゃなかった。
そんな方法では、とてもじゃないけど作れないだろう。
「なら……ランサーの傷に突き刺すことで血がついた
オレの正面にいる、アーチャーが
「そうか……バゼットの左肩、フォークで
「
———つまりそれは、逆説的に、『その場にその時誰もいなかった』ことの証明になってしまうから。
衛宮は言う。
「グループでの犯行でないのなら、殺害の瞬間、誰もランサーの部屋に近づいてはいないなら。
———これは、
「ちょっと待って」
と、凛が言葉を
「
ロボットでも
「そうじゃないんだ。えっと……ここにいる“両儀式”を思い出してほしい。コイツみたいに
———使い魔。
遠隔操作、または自律行動が可能で、かつ人を殺し得る殺傷能力を持つ物ならば、その場に
「でも即席の使い魔じゃあ意味がないだろう。
———結界に
凛はカップの
「『その使い魔をここに来る前に用意して来た』って言いたいワケね」
「そう……だと思う。でもそうだとしても、“あんな風に傷つける事ができるモノ”は相当に
真っ先に思いついたのは
だからこれで、残った可能性は———たった二つだけになった」
衛宮はテーブルの真ん中で、右人差し指を一本立てる。
「一つ目の可能性は、Heven’s Feelで桜が使った“影の小人”。でも傷口を考えると、この可能性には無理がある。
影の小人は薄っぺらいから、ランサーの心臓を突き刺すことが出来るかもしれない。でもそれなら、胸の傷はズタズタにならない。
心臓を食べたと考えても、微妙に違和感が残らないか?」
無数の、それも小さな
「衛宮君まさかッ!」
凛は、両手で自分の心臓を押さえる。胸をかき抱きながら目を見開いて、衛宮の顔を凝視する。
「“間桐の蟲”に、
衛宮は、目を
「それが一番
———あらかじめ槍を転がしておいたんだと思う。
ランサーが昼食時に言った『気分が悪いし、眠気もする』という言葉が本当なら、睡眠薬を盛られてたかもしれないな。麻薬だったかもしれないけど、今のところ、それらを見分ける
午前中だろう。部屋に蟲を忍ばせると……後は一言かけるだけだな。『バゼットさんのこともありますから、戸締りはキッチリして下さいね』と。
そうするとランサーは鍵をかけてベッドに倒れる。そのまま
「有り得ないわよっ。痛みで起きるでしょう!?」
「麻酔だったらどうだ、遠坂。モルヒネのように強力な
「でも、確固たる証拠は何もないから」と衛宮は
「もしも間違っていそうなら、誰か、声を上げてくれないか」
そうして息を吐き出した音、衛宮の呼吸音を最後にして、
震える者、下を向いて黙る者、縮こまる者と考える者。
衛宮は黙り、オレは間桐を横目で
ここまで説明されたなら、衛宮の考えも
オレはやっと理解したんだ。衛宮が何故、オレに武装させたのか。それは———
「……桜、
と言った凛が、そっと間桐を
間桐はただ下を向き、黙ってじっと膝を見ている。
やっぱりそうだ。と確信したオレは、呼吸をゆっくりに変え、椅子に体重をかけるのをやめた。
いつでも立ち上がれる姿勢をとるため、椅子に浅く
直死の魔眼を発動させて、この部屋の、大量の線を
「
「違うぞ? 遠坂」
首を振った衛宮は「桜は、犯人じゃないと思う」と言って、ゆっくりと目を細めた。
驚いて固まった凛を
「そもそも、“間桐の蟲”を
間桐桜が蟲を使役するために必要な条件は、二つ。
魔力を持った
———桜の肉体を得た何者かがいたとして。本当に、ソイツの肉体の中に最初から、蟲が存在していたのだろうか。
わざわざ蟲風呂を用意して、自分で
それだけの犠牲を払って準備したのに、
こんな、閉じ込められた空間の中で」
オレは、そっと周囲を警戒している。視界の全てが、線状の死で満ちた世界。オレ以外は、誰もソレに気付いてなかった。
衛宮の声は震えている。
そりゃそうだろう、とオレは笑った。
衛宮には見えていない……でも知っているんだ、ソイツが犯人だって事。だから声が震えてる。
衛宮はオレに『戦闘準備だ』と言った。つまりオレに護って欲しいと言ったんだ。犯人から衛宮を、そしてこの場の人たちを。
———ならオレの行動は、最初からずっと決まってる。
バレないように椅子を引いて、戦闘態勢を整える。
オレの隣では衛宮が、
「ここまで考えて、俺は一つ気がついたんだ。
桜が、直死の魔眼の性能を知らなかったこと。そして両儀が『PCR』と口にした時の、あの桜の反応だ。
———あれは、“PCR”という単語に
「どう思う?」と衛宮が問う。
でも、周りの奴らは、誰も何も言わない。ただ黙って、座っているだけだった。
「このご
———なぁ遠坂。医療関係者が
衛宮の右隣の席に座っている間桐は、ずっと黙ったままだった。白いワンピースを着て、椅子に座って、両手を膝に乗せたままで。
「桜が知らないと仮定すると、ほんの
———どうも桜は、“直死の魔眼”も知らないらしい」
———両儀さん。両儀さんは、どうやって先輩が持ってきた“頭”を処分したんですか?
両儀さんの処分がキチンとしてなかったら、そこからバレちゃうかもしれないですよね———
———DNA検査とか、されたらマズいんじゃないですか?———
———そうですか……。
オレはゆっくり深呼吸して、右隣に意識を向ける。
衛宮はもう一度、全員の顔を見渡した。
「昨日の夕方、『桜が両儀に魔眼の性能を聴いた事』。それ自体は、知らなかったというだけでしかない。『“月姫”や“空の境界”には手を出してないんだな』と思ったくらいだった。
でも、“桜がPCRを知らない”となると話は全く変わってきちまう。
真っ先に考えられるのは……『箱入り娘で、何の情報も手に入らない状況にいた可能性』。でもそれなら、こんなイベントには参加しない。
となると、残りは———」
衛宮は、膝の上の両手をギュッと、強く握りしめていた。首を回して間桐を見る。オレからは見えないけれど……今コイツは、ぜったい優しく笑ってる。
「桜がコスプレイヤーではなく、“冬木市出身の間桐桜”である可能性だけ。その可能性だけが、今回の殺人事件の
「ちょっと待ったッ」
凛は右手を衛宮に伸ばした。
「どうしてそうなるのよ。私たちがそんな……ッ、そんな
「ランサーを殺したのは間桐の蟲だろ? なら、
——————
凛は一瞬、息を
「私たちの中に、
「いるだろ? 目の前に。桜がコスプレイヤーでもなく、両儀のように肉体が変化したのでもない。純粋に“冬木生まれの桜”で、“間桐家に養子に出された桜”なら、
桜の中に」
ずっと無言だった間桐が、膝に手を乗せたままの間桐桜が—————