両儀式のコスプレイヤーは、汚れたクロックスなんて絶対履かない 作:夜中 雨
お待たせしてすみません。
ちょっとマズい設定を見つけてしまって、思考の無限ループに入っていました。
色々と考えているうちに、内容が二次創作とは別物になってしまったので戻ってきました。
———場面は前回の続き、衛宮がゾォルケンに「お前が犯人だ」と突きつけたところからです。
《前編》衛宮の捜査
夜の遠坂邸、食堂。
その真ん中に設置された、長テーブルを
シャンデリアで照らされたこの空間の中で、オレは、右を
オレの右隣の椅子に座って推理を語り聞かせていた衛宮は、さっきからずっと口を
「———桜がコスプレイヤーでもなく、両儀のように肉体が変化したのでもない。純粋に“冬木生まれの桜”で、“間桐家に養子に出された桜”なら、
衛宮の声を聞きながら立ち上がったオレは、ゆっくりと右に向き直る。
視線の先には衛宮の後頭部、その向こうに間桐の横顔。
間桐は白いワンピースを着て、オレから見て左を、テーブルを向きながら椅子に座って、膝の一点を見つめている。
間桐の手前、つまりオレの目の前には衛宮の背中がある。衛宮は間桐に
「
左側から椅子の
長テーブルの向こう側でアーチャーが立ち上がり、その左手にいる凛の後ろに
その行動を
当の
「そうかそうか、
いやはや……やはり難しいのう、ここぞという時に邪魔が入るわ」
頭を上げた
「だがな?」と右の
「“衛宮”と言ったか? ———詰めが甘いなぁ
だが感謝せねばなるまいて。お
食堂の
それは立体的な
衛宮は
オレは机を
「どういう
———つまり今回の
「いや、これで終わりだよ。ゾォルケン」
椅子に座ったままの衛宮の声は、
右腕を自分の背もたれに置いた、そんな衛宮の息の吐く音を、オレは聞いた。
「アイツの甘ったれた行動は、全部俺に
———お前は、俺が推理している
大量の蟲を集めて必勝を
お前が桜の意識を奪うために使った時間で、俺は『誰が犯人なのか』を説明できた。前提条件を、皆で共有することができた。
なんの説明も無くただ『逃げろ』と言ったって、動ける
衛宮は左を向いて、叫んだ。
「アーチャ———ッ!!」
それを合図に、衛宮に跳びかかって来る蟲を、その前に移動したオレが切り裂く。
———攻防一体。
次の瞬間には
「おい、衛宮」
と言いながらオレは、そこに
間桐の上半身が
そのまま、後ろの衛宮に言葉を投げた。
「間桐でも
足元の蟲が魔力を求めて、
間桐を
暗がりから
衛宮を先に走らせながら、跳んで来る蟲を切り捨てながら、長テーブルを
◇ ◇ ◇
窓から飛び出したオレと衛宮。
中庭の
「良かったのか? これで」
中庭の手前に立つオレは、そっと後ろを、割れた窓を
……蟲の声は聞こえない。
暗闇の向こう、窓の中。明るい食堂は、ただただ静かだった。
視線を右に振る。
さっきまで食堂を見ていた衛宮は、お姫様抱っこした間桐の頭を右肩に乗せて、顔を
オレたちは共に食堂の方を向いているから、衛宮の顔は見えなかった。
「間桐の、心臓の蟲はちゃんと殺した。この世界の情報は、さっきの“蟲”から聞き出さなくても良かったのか?」
間桐の顔を眺めたまま、衛宮の返答が聞こえくる。
「ああ、“今の”だけでもかなり
やっと、オレの顔を見た衛宮の瞳は、少しばかり
「
「だと思う。ただ、こいつの聖杯は———」
左手を、革ジャンのポケットから抜いて、衛宮に一歩近づいて。
でも、間桐に伸ばした左手を———途中で止めた。
「……何でもない」
その言葉を聞いた衛宮が、
食堂から届く光と闇との境界線。明かりと暗がりの真ん中で、凛はまだ震えている。ライダーの方は、
「おまえに任せる。オレ……これ以上考えるの、やめる」
そっぽを向いたまま、少しだけ声を張った。
「で? これからどうするんだ?」
「調べないとな」
後ろから聞こえる衛宮の声は、どこまでも穏やかだった。
「今、俺たちがどんな状況にあるにしろ、何に巻き込まれているにしろ、まずは情報を集めてからだ。帰る方法はそれから探そう」
オレが魔眼で見渡して、蟲はいないと断言してから、
間桐を椅子に座らせて、オレが間桐と向かい合う。
魔眼を使って探知して、子宮の
そして今、オレたちはテラスから、屋敷に続くドアを見ている。
衛宮が、オレの左に並んだ。
オレは衛宮をチラッと見てから、後ろの女たちへ振り返る。間桐を
その
「いいのか? オヤジ二人を見捨てれば、オレたちは安全に逃げられるんだ。オレは
今の内に結界を殺して、どこぞに駆け込んだ方が安全だと思うんだけど」
「———私たちなら大丈夫よ。だって、アーチャーが付いてるんだもの。
それに、衛宮君が言うように、遠坂邸が安全だと分かるなら、それに
「拠点にできる建物は、安全な方がいいじゃない?」と、凛はオレの目を真っ直ぐに見て、唇の
「衛宮君が助けたがってるんだもの、応援しないなら女じゃないわよ。だから行ってきなさい、両儀式。
大丈夫。害虫が庭に
そう言った凛は、右手の親指だけを立てて、オレに見えるように
「行くぞ両儀」
右から聞こえる衛宮の声に振り向くのと、衛宮が歩き出すのが同時だ。衛宮は
「大丈夫だって、俺を信じろ」
遅れないようについて行く。
目の前にいる衛宮は、逆光によって照らされてシルエットしか分からないけど。その声は、不思議と強くオレに届いた。
「———世界ってのは、お前が思うよりずっと優しい。それをちゃんと、俺が証明してやるからな」
◇ ◇ ◇
遠坂邸の中は静かだった。
食堂で衛宮の推理を聞こうとした時に廊下の電気は付けておいたから、ここは明るい。でも、何の音も聞こえなかった。
向かって左右に伸びる一本の廊下。
衛宮はすぐに、右に向いて歩き出して、腰のベルトから白い短剣を抜き出した。
その左隣にオレが並んで、一瞬だけ、衛宮の顔を
オレの視線に感づいたのか、衛宮は
「両儀……、さっきのは嘘なんだろ? あの、『蟲が襲ってくる』ってヤツ」
「嘘じゃない。おまえの言う通り、仮にあの蟲が
でも、そのラグがどれくらいなのか分からないから、おまえにはちゃんと警告したんだ」
そうして、目的地にたどり着いた。
目の前には、地下に続く階段があって、その先に明かりはなく、ただ黒い闇が顔を
おっさん二人でこんなとこに泊まり込んで何が
「よくもまぁ……」
目を細めるオレに対して、衛宮は笑って手を上げた。
「そう言うなよ両儀。聞いた話ではあの二人、地下室の資料を
怒ることじゃないぞ」
「怒ってない」
「
オレはナイフを抜いて、
……どうやらオレは、衛宮には
◇ ◇ ◇
念のため
翌日、完全に日が
先頭に立つ時臣が、ひとつ振り返って言葉を放つ。
「皆、ご苦労だったね。蟲の死骸は私も見た。衛宮少年の推理も聞いた。
全てが終わったことは認識した。
時臣は右足を一歩引き、右手でノブを
その右手に力がこもり、静かにドアが開いていく。その隙間から光がさして、オレたちは一瞬、目を閉じた。
「さあ、両儀式。目の前の結界を壊しなさい。
———
オレが門の前に立ち、ナイフを
ブーツ
「何か、自首するのを遅らせてまで確認したいことがあったんだろ?
その
キャリーケースを引いて来た衛宮は、オレの目の前、道路の真ん中で立ち止まると、右手を腰に当て空を見上げる。
「『これで
だから俺は自首するよ、両儀」
「“アルトリア様”を欲しがってたあのオッさん、かなり
「
衛宮は微笑む。
「一年も
たったそれだけの
裁判で俺が異議申し立てを行わなければ、
「そう……」
とだけ返してオレは少しだけ目を
正面には遠坂邸の鉄の
背後もそう。左右に伸びる道路の、突き当たりもそう。そして当然、それらの
———そう。ここは大豪邸の立ち並ぶ、高級住宅街だった。
オレは、そんな光景は知らない。神戸駅から出てからこっち、こんな豪邸は見なかった。
だから多分、これはそういう事なのだろう。
「行くぞ」と衛宮を
「間桐は待ってるみたいだけど、
———衛宮行くぞ。間桐が待ってる」
◇ ◇ ◇
キャリーケースを転がしながら町を
オレたちを先導する時臣の顔は、時間と共にどんどんと
そんな時臣を衛宮が追い抜き、間桐を
衛宮の声は、オレたち全員の耳に届いた。
「———“私立、
ここに
後ろから見つめるオレの前、衛宮は自分の左にいる間桐に向かって首を
「……そうか」と
「ひとまず戻ろう。情報の整理が必要だと思う。
桜に色々と聴きたい事もあるし……時間とか大丈夫か? 案内してほしい場所があるんだけど……」
間桐の返事を聞いて、衛宮は坂を
……確かに、ここは学校だ。今日が何曜日なのかは知らないが、校舎前にいるところを教師に見つかるような事態は、なるべく回避するべきだろう。
それからオレたちは、途中で見つけた喫茶店で軽食を取った。
その
時臣は、オレが条件を一つ
だから、玄関にキャリーを置いた衛宮とオレは、間桐に案内されて、彼女の家までやって来たのだった。
「———ここがわたしのお
門を開けながら、間桐はオレたちを振り返る。
「わたしにできる事はこれくらいですから」と言って、
「お爺さまがいないなら、ここにはもう誰もいないんです。先輩が知りたいことも、この家にはあるかもしれないです。汚れたお
それだけを言って、間桐邸に入っていった。
オレたちも後ろから続いた。衛宮は真っ先に、資料室に行きたがった。
資料室らしき部屋の
「
ドアの向こうには、廊下のような細長い通路。その左右には本棚が、天井までをびっしりと覆っている。
———けれど、分かる。
良くないモノが充満している。
「オレが先導する。片っ端から殺していくから、前に出るなよ」
衛宮も間桐も右手で後ろに追いやって、そのままナイフを抜き放つ。
……確かに、形の無いモノは見えにくいみたいだ。
30分ほど
左手に薄い
「両儀、桜。ひとまず座れるところに行こう。
◇ ◇ ◇
間桐家の食卓。八人
オレは、空気の悪さを
ナイフを納刀し、テーブルに戻って、でも腰掛けずに、衛宮の後ろの壁にもたれた。
窓からの風が、左から右に吹き抜けていく。
目の前には座った衛宮。その左隣には間桐がいる。二人は身を寄せ合って資料を見ていた。
「こっちは、
衛宮は持ってきた資料を分類し、テーブルに並べているようだった。
間桐はふむふむと
対してオレは、そんな二人を後ろからボーッと眺めていたのだけど、ただ一つ、意識を貫通して脳みそまで届いた情報があった。
それは、
「それじゃあお爺さまは、『アインツベルンが第三次聖杯戦争に勝つために呼ぼうとした英霊を二つにまで
「『だから桜を引き取った』と、この羊皮紙には
『小聖杯の
オレは目の前で、身を寄せ合う二人の肩を睨みながら、衛宮の言葉を頭に送った。
オレたちが今、Fate時空にいる可能性は、最初から考慮してはいた。……というか、頭の
当然のように“誰もが一度は
そも、
そういった違和感も“一つだけ”ならまだ『偶然だ』という
そして同時に、ここがFate時空の冬木なら、元の世界に帰る方法なんてほとんど無いことにも気づく。
「桜の認識でいいんだけどさ……今日は何月何日だっけ?」
衛宮の顔を見上げた間桐の横顔が、後ろからでも見える。間桐はスッと、
「10月6日です。たぶん、ですけど……」
「ああ……いや。桜がどうこうという
俺たち、コスプレイベントのメンバーは、おそらくこの世界の住人じゃない。だから、こっちの世界に来た時に『時間がどうズレたのか』を知りたかっただけなんだよ。
それで、桜の認識を教えてほしかったんだ。桜の方が正しいからな」
のけぞった衛宮は、
そんな衛宮に影響されて力を抜いた間桐の背中を眺めながら、思う。
———コイツは、よく人を見ている。
人だけじゃない。きっと、普通は見落としてしまうようなモノも見ているのだろう。
———例えばオレは『どんな可能性ならあり得るか』を考える。
“遠坂邸の殺人事件”も“衛宮の首切り”も、だ。オレは可能性を
コレは、オレの
衛宮のヤツは全然違う。アイツはずっと『どの可能性があり得ないか』を考えていた。
あり得ない可能性を一つずつ除外することで、衛宮は推理を組み立てる。
それが、アイツの
……まぁお
肺の空気を口の中で
オレの心は、見違えるほどに穏やかだ。
そういえば
———あの日、衛宮に
窓からの風が吹きつけて、間桐の髪がさざめき立った。
窓から流れてくる風と音。間桐の髪と同じに聞こえる木々のさざめき。
カサカサと鳴る髪の毛が、衛宮の服にくっついたのを気にも
聖杯戦争の説明をしている。
マスターとサーヴァントの事、令呪の事、大聖杯と小聖杯———そして、聖杯大戦。
冬木から大聖杯を奪取したダーニック・ユグドミレニアのその後の
……だって、衛宮を帰らせないようにするには、“帰る方法”に対してメタを張るのが一番だから———
だから。
衛宮の話がひと段落したタイミングを
「———行くのか?」
左側、間桐の
衛宮の動きは、止まった。
「俺は行くよ両儀。多分それが、
俺たちが
———
「帰らなければいいだろ」
「そういう
オレは背中に感じる壁に、より強く体重を預ける。それから、目を閉じた。
……やっぱり、“アルトリア”ってのが障害だ。
コイツの事件に関わっているだろう二人。“
衛宮の目的は『二人に一年間を与えること』で間違いない。
だったらほぼ確実に、この二人の
衛宮はそれを
そして、前回のコスプレイベントに出席していた、衛宮と似た“誰か”。オレが証拠を隠滅した、衛宮とそっくりな顔の持ち主。
———そして、
衛宮の
証拠は何も無いけれど———断言できる。オレは一度も、衛宮の本当の家には上がってない。あのアパートは別人のもので、オレと衛宮は、二人してそこで暮らしてたワケだ。
誰のアパートか、なんて考えるまでもない。
別人が住んでいるのに気づかれてない時点で、候補なんて、初めから一人だけしかいないのだ。
———被害者。
首切り殺人の被害者だけが、
つまり、新聞に載っていた“大学生”とは、衛宮自身に他ならない。
早朝始発の電車の中で、衛宮は被害者の服を着ていた。そのまま、隠れる気もなく行動していた。
行動……し続けていた。
つまり衛宮はアレから一度も、変装を
だってオレは、衛宮の風呂上がりだって知っている。
なんならこの前、頭も洗った。
———衛宮はずっとすっぴんだった。髪の毛だって染めてなかった。
つまり、素で、被害者と顔がそっくりだったことになる。
そしてさらに、同居生活でもコスプレイベントでも、周囲の人間に違和感なく行動できている時点で、『衛宮は被害者のことをかなり詳しく知っていた』という情報だって、疑う余地はなくなってしまう。
———なら、『アイツの肉体が
ほぼ間違いなく、衛宮と被害者は親戚だろう。
『双子だ』と言われるくらいの方が、むしろ納得できる程ですらある。
———と、なると……。
目を開ける。
目の前で座ってる男の、赤毛の頭を
コイツは
オレが衛宮と出会うより前に、
だからコイツは、オレの言葉では止まらない。
“敵になる女”の言葉で止まるほど、コイツの覚悟は甘くない。
……だったら、オレには何ができるだろう。どんな可能性ならあり得るだろう。
そして思いついた。
「おい、衛宮」
「聖杯大戦に参加するなら、
まあ、“赤”は協会が
どうやって勝つつもりなんだ?」
「そうだな……」と言いつつ、衛宮がこっちを振り返る。
衛宮は、椅子の正面を間桐に向けるまで
「もし、“赤の陣営”で参加するなら———だけど。どうにかして先に大聖杯を使わせてもらうしかないと思う」
「
「……でも、俺は帰らないといけない。
「ん……」とオレは
そうなると、結局のところ『状況を見て臨機応変に』なんていう目標しか立てられない。
つまりは、戦況と戦力を推測しつつ全体の流れを考慮して先を読む、か。
「
反応を
見る
動揺した様子がないのは分かる。でもそれ以上に、『不利だけどやらなくちゃいけない』というような覚悟や
———何か考えがあるのか。
この世界は恐らく、
“ガタッ”と、椅子が動く音。
見ると間桐が衛宮に向かって身を乗り出して、顔をぐっと近づけていた。
「わたしも行きます。聖杯戦争、わたしも行きます」
「いや……でもだな、桜———俺にはどうしても行かなきゃいけない
「わたしっ! 誰もいないんです。
———わたしにはお爺さまだけだった。でももういないんです。だから、わたしは先輩だけなんです」
その
「いや、やっぱり
「おい。エミ———」
「よく考えてみると、そんなに良い案でもなかったしな。———別のやり方で帰る方法を探そうか……な、両儀」
目が合った。でもコイツは、オレのことなんか見ていない。
コイツが見ているのはオレじゃない、それどころか“今”ですらない。もっと———
「そう言うことか……」
オレの声を聞いた衛宮が、やっとオレに焦点を合わせた。
間桐は、オレたちの事をじっと見ている。オレたちの仲を観察している。
二人の、そう言った
革ジャンごしに壁を感じる背中、ダラリと下げた両腕、全身から力を抜いて立ち、ボーッと、衛宮を見ていた。
「どうしたんだよ両儀」と声をかける衛宮からそっぽを向いて———オレは出口に向かって歩き出す。
「帰る。時臣にも言われてるんだ、『遅くなりそうなら君だけでも帰って来なさい』なんて。
……あの男は投資家だからな、早めに情報が欲しいんだと」
返事を待たずに
オレの背中を追っていた二人の目を、じっと見返した。
間桐邸を後にしたオレは一直線に坂道を
凛に出迎えられて中に入る。静まりかえった廊下を渡り、リビングの
大きな部屋の真ん中にあるローテーブル。それを囲むアンティークチェアと二人がけのソファ。
一歩中に入って、左手にあるポールハンガーに革ジャンを
「ねえ式。飲み物は何がいいの?」
「いらない」
「残念、もうお湯は沸いてるのよね」
お盆を持ってリビングに来た凛にウィンクをかまされた。それから凛は、ローテーブルにカップを並べた。
「紅茶はお嫌い?」
「別に……」
「それじゃあ、ここに置いておくから」
言うだけ言って、凛はソファに腰掛けた。
ハンガーにかけた革ジャンを
ドスンと音を立てて
ふと
「誰か……来てるのか?」
凛はカップから唇を離して、眉毛を上げた。
「ええ……。でもどうして?」
「ただの勘だよ。お湯が沸いていたからな」
眉根を寄せた凛を見て、さらに言葉を付け足した。
「革ジャンをハンガーにかけるあの一瞬で、水が沸くなんて事はない。だから、お湯は最初から沸いてたんだ」
目線を、部屋の奥に飛ばす。
壁の向こうが静かそうなのを見てから、凛の手元のカップから立つ
「紅茶は沸騰直前の温度で
もし、
それに何より、時臣のヤツがここには居ない」
あの男だって、未来を判断するには正確な情報が必要なんだ。だから『ある程度
そう言った時臣がここにはいないし、凛が呼びに行く気配もない。
つまり、オレはただ『時臣が応対をしている“誰か”がいる』という可能性を考えただけだ。衛宮のように、他の可能性を全て排除したという
「———だから勘だと言ったんだ」
もう一度目線を上げて、凛の顔を視界に入れた。
「でも“当たり”みたいだな。一体どんな
“本物の遠坂凛”が戻ってきて、時臣に
「違うわ。———でも、来たのは魔術師よ。さっきね『
「オレは応接間に行かなくていいのか?」
「
「……へぇ」
何度か
それをソーサーに戻しながら、凛の雰囲気を
「その魔術師、どんな
凛の
少なくとも、時臣が応接している魔術師の存在が、緊張や不安に結びついている
「どこかの作品に出ていたヤツか?」
「ええ。彼女ね———ナタリア・カミンスキーって名乗ったの」
後編はもうできてますので、明日、21時から投稿します。
その後はまた、書き上げ次第投稿する予定です。