あとこの作品をまだ読んでくれてる人がいてびっくりです。リハビリに頭を空っぽにして久しぶりに書いてみました。
楽しんで読んで頂けたら嬉しいです。
様々な薬品や、手術で使うような明かりや施設のある部屋のベッドに僕は黒い服を着て顔を隠した人達に捕まえられている。
『目標の捕獲は完了した、B班。例の物は?』
『既に、天界で
逃げようと身体中の力を使って抵抗するが、完全に押さえ込まれているせいか、僕は全く身動きが取れなかった。
黒い服を来てガスマスクのような物で顔を覆っている人達の何人かが、向こうの台で注射器に何やら液体を入れているのが見えた。話す人達の中で1人が大きな3つのアタッシュケースを指差しているのがみえる。
『よし、C班!例の物に対応したアレは?』
『ターゲットへのギフトを与えた後にすぐ託せるよう既にガレージに』
『分かった、では最後に目標の魂にギフトを定着させる段階へ向かう!C班にB班、D班を集合させギフトの定着作業をおこなう!』
魂?ギフトの定着?何をいってるんだ?頭が可笑しいのか?
恐怖が体を支配し、体が動かなくなる。さっきまで抵抗していたからか、洗い息と早く鼓動する心臓の音が耳に響く。
普段から運動をしてなかったのが悪かったか、こんな事になるだなんて知ってたらもっと運動をしたりしてたのに!やっぱり兄さん……士郎のいう通り運動部に所属すれば良かったのか?
こんな事になるくらいなら、一人立ちするのって格好いいよなと音楽で稼いだお金を使って家から出てアパートに引っ越すんじゃなかった。
自分の腕を掴み動かないよう捕まれた僕の元に先程指揮をしていたと思われる人物が近付いてくる。
「離してっ!僕は……孤児だ!捕まえたって身代金は少ないんだ!それにさっきから魂とか定着化とか、何を……」
『それは、全て貴様が望んだ事だ■■■■■。いや、今は衛宮 渡だったか?』
「な、何を言って………それに何で僕の名前……」
『?あぁ、君の場合はそう言う風になるよう設定されたんだったな』
そう言う風に設定された?困惑と驚愕に思考が追い付かず固まる。束の間、隣に立っていた男が持つ注射器の針が僕の捕まれた腕へと刺さる感覚と共に身体中の力が抜けていく。
『対象の無力化を完了、意識の喪失まで30秒です』
心の中にあるのは、恐怖。そして薄れていく意識の中で思い浮かんだのは僕を引き取ってくれた父さんや母さん、僕と一緒に引き取られた同い年の兄さんと小学生の妹。そして、家政婦らしき二人の銀髪の女性が笑顔で笑いあっている浮かぶ。
これは、走馬灯って奴なのかな。
最後に目蓋が落ちる瞬間、僕の頭に何かが被せられる感覚と共に一つの言葉が聞こえた。
『おやすみ。そして喜べ少年、君の望みは……今叶うのだから』
20XZ年、冬木市の1人の少年が行方不明となり新聞の端に小さく記載された。
少年は元は孤児であり、冬木市の衛宮夫妻の元へと引き取られた。衛宮夫妻や同じ孤児院から引き取られた少年との関係も良好であり施設側も安心して送り出した。
そんな彼が行方不明となったのは穂群原学園一年の夏であった。
冬木の学園生活は担任の教師からは、いじめ等といった事はなく、自殺ではなく誘拐の可能性を考慮し調査を開始した。
捜索、調査は長期に渡って続いたが少年が見付かることはなかった。
だが、調査と捜索は僅か半年で打ち切られることとなった。
衛宮夫妻や家族は捜査の続行を願い出たが、新都にて多発している連続殺人事件の調査、警備強化のため人員がかなり必要となったからである。
そんな事件から一年、衛宮夫妻は未だに彼……衛宮 渡の行方を探し続けている。
夜明けの日差しが降り注ぐ新都の道路を一台のバイクが駆け抜ける。白いバイクには黒いコートを羽織り黒いヘルメットと着けた、いかにも不審者のような容姿の人物が乗っている。
バイクが進む先にあるのは、この新都の端にある一件の家が近くにある廃工場後。
暗いが、見えにくい事はないため奥まで走り周りに人がいないか確認した僕はバイクから降りて、着けていたヘルメットを外してバイクのハンドルにかける。
ある程度の汚れと小物のない地面へと座りバイクに背中を預けて目を瞑る。
「はぁ……」
目が覚めて、最初に見たのは鏡を通じて見たのは変わり果てた自分の姿と近くに置かれた赤いマフラーだった。
思い出した前世とこの世界に関する記憶に驚き困惑し僕は、もう衛宮 渡として生きられなくなった事を悟った。
僕の望んだ転生特典、前世の最後に僕が願ったのは力だった。
誰も傷付けず、周りを守る事が出来る力。
そんな力の一つとして、憧れであった彼らの原点であり新たな姿と重なってさた。彼の力をこの体へと宿して欲しいと神に願った。
片手を腰へと向け、指先でベルトに着いている大きな装置『プラーナ強制排出補助機構付初期型』通称『タイフーン』を指先で撫でる。
衛宮 切嗣さんにアイリスフィールさん、士郎やイリヤ、リズやセラ達には申し訳ないと感じるが、これでいいんだ。
既にこの体はもう人間ではなく、両手は既に血に染まっている。僕の体はバッタの能力を持った改造人間である人外合成型オーグメント・バッタオーグ、怪物だ。
可能なら、せめてもう一度だけ彼らに会いたい。
せめて、別れの言葉だけでも送りたいけど踏み出す勇気がなかった。
それに怖かった、僕が彼らと過ごすなかで原作改編に繋がるような行動をとってしまうような事がなかったのか、そしてこの行動が……僕の存在そのものが正に原作崩壊の引き金になってしまうのではないかと考え込んでしまう。
「まだこんなところに住んでたのか、1号」
廃工場後の入り口の方から聞こえてきた聞き覚えのある声が聞こえて、聞こえてきた方向へと顔を向けると黒いコートを羽織った1人の少年が立っていた。その表情は呆れと心配を意味していることがなんとなく感じられた。
「いや、
「第2号……」
「おいおい……そこは
彼の名は、
仮面ライダー第2号であり、僕と同じくこの世界についての知識がある転生者であり、僕らの特典の元であるシン・仮面ライダーを知らない男だ。
僕らを転生させ特典を与えた神によって定められた僕らを含めた7人の転生者同士の殺し合い生き残った物が望みを叶えることが出来るというゲームで出会った。
彼はこの世界の改編を行うのは嫌で、僕が衛宮であることを知った彼と対峙しぶつかりながらも話し合い、互いに原作改編を願っていないことが共通し、共に戦うこととなった。
その殺しあいは一年間続き、僕と彼を残して他の転生者を殺し終わりを迎えた。
「こっちは何とか日常に戻ったぜ、あのうっかり娘に家を出ることを引き留められて大変だったぜ。お前の方は……まだ、みたいだな」
「僕は…」
「まぁ、改めて互いに原作キャラの兄に生まれ変わるなんてついてないよな。可能なら原作通りに進んで欲しいのが望みなんだが」
そう話しながらやれやれと言った様子のジェスチャーを行う白十に頷いて返す。
「お前の気持ちは分からない訳じゃあねぇ、原作キャラ……それも主人公の家だからな。慎重になるのも分かる、でも、家族になったからには……世話になったからには別れの一言くらいは言っても原作は変わらねぇんじゃねぇか?」
「そうだと、いいな」
「はぁ、このままならそろそろ原作が始まるぞ。せめてその前に終わらせろ、俺も着いていってやるから」
そう言いながら座り込む僕に向かって彼はてを差し出してきた。
家族なら、か。確かに白乃の言う通りかもしれない。せめてあの人たちに一言だけ言って、あの家を出よう。あの人たちのこれからの世界を、変えないためにも。
「……ごめん、白十。」
「そこは謝罪より感謝だぜ、渡」
「ありがとう、白十」
彼の手を僕は取って立ち上がり、バイクにかけていたヘルメットを被ってサイクロン号へと股がる。
バイクのハンドルを絞り、廃工場後の出口へと向かうと僕と同じようにサイクロンへと股がって待っている白十がいた。
「いくぞ、渡」
「うん、行こう白十」
お互いにバイクのハンドルを絞り冬木市へとバイクを走らせた。
ワタルお兄ちゃんが行方不明になってから、1年が過ぎた。パパやママは相変わらず海外を飛び回って働きつつ、ワタルお兄ちゃんが見付かることを祈っている。警察の人達がワタルお兄ちゃんを探し続けてくれているけど、全く手懸かりがないみたい。
今となっては、私やお兄ちゃんとリズとセラで過ごす日常が当たり前になっちゃった。
すごく寂しいくて、心配になる日もあるけど今日も私は学校へ行ったり、アニメを見たりと普通の女の子としての日常を過ごしている。
「今日はイリヤ、何処か楽しそうだな?」
「えへへ、そう見える?実は今日、パパとママがお仕事から帰ってくるの!」
「そっか、イリヤちゃんのお父さんとお母さんって海外で働いてるんだっけ」
そんな私、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは学校からの帰り道を友達と一緒に歩いていた。
今日は久しぶりにパパやママがお仕事から帰って来る日だ、リズとセラの話を聞くにお昼には冬木に着いているらしいから早く帰らないと。
そう思いながら肩から少しだけずれたリュックサックを背負い直す。
そう言えば、お兄ちゃん張り切ってたな。パパやママに美味しいご飯を沢山作るって、でも確か今日はセラの当番だった気がするけど大丈夫なのかな?
そう思っていた時だった、気が付けば私の足は地面から離れていた。まるで、時が止まったような感覚と共に腹部と背中に何かが振れている毎に気付いた。
見れば、車道側に停められていた車から伸びた手が私のお腹と背中を持って私を車の中へと引き寄せていた。
「っ!?助け────」
周りにいたクラスメイト達の顔が驚愕した物に変わっていくのを見て私は車の中へと引きずり込まれた。扉が閉まる音と共に私の口に布を当てられる、テレビで見たような日とを眠らせる薬が染み込まされていると考えて、息を止めようとするけど長い間止めることは叶わず、私は目蓋を閉じた。
白十と共にバイクを走らせていると、一台の黒い車とすれ違った。中には黒い服にマスクを着けた人がいて何気ない瞬間であったけど、何故か後部座席に銀髪の少女が横になっている姿が見えた気がして、バイクを止めた。
大きな道路ではないため、頻繁に車が通ることはなあため後ろからの車が来ないのを確認して先程すれ違った車を見つめる。
「イリヤ?……いや、そんな筈は」
「急に止まってどうした、渡。まさかここまで来て怖くなったとかじゃないだろうな?」
「さっきすれ違った車に、イリヤが乗っていたような気がして」
「なんだそりゃ、そんなの原作に無いし見間違いじゃ───」
僕が止まった事を不信に思ったのか、此方へと引き返してきた白十にさっき見た事を伝えていた時だった。僕の……いや僕らの強化された聴覚にある会話が聞こえてきた。
『イリヤちゃんが、誘拐されちゃったーー!?』
『ヤバイ!早く、えっと警察!警察に行かないと!』
『で、でもここから警察署より学校!学校の方が近いから早く戻って先生達に!』
イリヤが誘拐?だとしたらさっき僕がみた車で横になっていた銀髪の少女はきっと……。
状況を理解したのか、白十もさっきまでのふざけた表情から真剣な表情へと変わった。
「白十!」
「あぁ!」
白十に呼び掛けながらサイクロンを反転させ、ハンドルを絞る。サイクロンが加速して急発進するのに、白十は合わせてサイクロンを加速させて僕の横を走る。
「恐らく、さっきお前が見たのは誘拐犯の車で無そうだな」
「うん、急いで追いかけて取り返さないと。この世界の事から考えるなら」
「あいつらはアインツベルンを狙った魔術使い又は魔術師の可能性がある、だなワタル。イリヤは体に聖杯があるみたいなもんだしな、急がないと不味いことになりそうだ」
「だから──」
「あぁ、行くぞ渡ッ!」
「うん、白十!」
僕らはバイクを走らせながら、暫くは前から車が来ない事を確認してコートを閉めていた一つのボタンを外しサイクロンのハンドル部分に存在するレバーを親指で奥へと操作しハンドルを上から下へと押し付ける。サイクロンからマフラーやカウルが展開されていき、サイクロン号が真の姿へと変形した。
マフラーから火が吹き、先程までより比較にもならないほど加速するサイクロン号は前からの向かい風を受ける。そしてバイクの手前が稼働して、僕の腰に着いているベルトの中央にある赤い風車へとに風を浴びせる。
体が、人から変わっていく感覚を感じる。
風を受けたタイフーンの中央の風車が回転し、被っていたヘルメットは即座に変形して僕の顔を覆い隠す。
バイクのハンドルから手を離し、タイフーンと連動した防護服の胸のコンバーターラングにも風を受けさせる。コンバーターラングとベルトのタイフーン、そして顔を覆い隠す仮面が連動し、大気中の圧縮プラーナを吸収し増幅する。
僕は、シン・仮面ライダーである仮面ライダー第1号へと変身した。同じように隣では白十もヘルメットが変形していき仮面ライダー第2号へと変身する。
「あいつらの車をいきなり止めたら、イリヤが危ない。奴らの拠点まで向かって救いだした方がいい」
「それがいい、じゃあ追うぞ!」
「あぁ!」
バイクのハンドルをさらに絞りマフラーが更に火を放ち加速するサイクロン号をかり、僕らは奴らの車が向かった方向を追いかける。少しするとさっき見かけた車が見えた。
車はだんだんと冬木市でも人気が少ない方へと向かう、道路の標準スピードを大きく違反する形で走行する車。
追いかけてきたのがバレた?それとも警察の車が追いかけてきているのか?取り敢えずサイクロンで車の後を追い、大きな廃墟らしき場所へと入っていったのを確認して、手前でサイクロンを停める。
「ここか……」
「早めに取り返さねぇと、警察が来るぜ?それに救いだしたとしてもどうやって親元に返すつもりだ、1号」
「確かに、でももし相手が魔術師だとするなら警察は意味がないし早く助けよう。イリヤの事は、後から考えれば良い」
「おいおい……ノープランかよ。でも、これで原作に影響が出たら面倒だ、早く済ませるぞ」
白十に頷いて返し、僕らは廃墟の中へと足を進めた。
一方、衛宮家を目指した車を走らせていたアイリスフィールと切嗣は学校からの連絡を聞いたセラとリズからの緊急の電話に出ていた。
『奥様!大変です、イリヤさんが何者かに誘拐されました!』
「ッ……切嗣、イリヤが」
「魔術使いの可能性がある、か………普通の誘拐犯なら警察でも良いんだが。アイリ、イリヤの後を追おう」
「分かったわ、セラ。貴方はリズや士郎と家で待機していなさい。イリヤは私と切嗣が何とかするわ」
『申し訳ありません、奥様。』
二人は探知の魔術をよういて、イリヤの元へと車を向かわせた。
「なんとか、上手く行ったな」
「そうですね……」
「だが、身代金を要求する前に眠らせちまったのは俺のミスだ。すまない」
地面に眠ったままの銀髪の少女を寝かせ、男達は今後について話し合う。少女は両手と両足を結束バンドによって固定されていた。彼らは魔術と全く関係の無い誘拐犯であった。彼らは身代金目当てに、こうして誘拐事件を起こしたわけだが、彼らは運がなかったのだろう。
コツ、コツと言う足音が近付いてくるのを感じた男達は一斉にポケットから拳銃を取り出す。やがて、彼らの元に現れたのはなんとも不思議で、不気味な存在だった。
現れたのは、黒いコートを羽織り顔を覆い隠し複眼のついた深い緑の仮面を着けており腹にはプロテクターのような物が着いていている、パッと見はコスプレをした変人だった。
「な、なんだお前は……変なコスプレしやがって!見たからには…」
そう言って男の1人が拳銃を構えた時だった、瞬時に間を摘めた仮面ライダー第1号は誘拐犯の腹部を殴り付け、気絶させる。地面に倒れた男を横目に、近くにいたもう1人へと一歩踏み込みながら拳銃を蹴りあげ、そのままもう片方の足でジャップし横に蹴られた男は軽く吹き飛び地面へと仰向けだ倒れる。
瞬時に仲間であった二人を気絶させられ、明らかに人とは思えない動きに固まる最後に残った男。彼は、ゆっくりと自分へと向かってくる謎の存在への恐怖から、震える手で引き金を引いた。
一発の銃声が廃墟へと響き渡ると同時に甲高い音が響き渡る。
近距離であるから当たる、外すわけがないとそう考えていた男の顔が驚愕と絶望に染まる。何故なら、その存在の胸部についたプロテクターが銃弾を弾いたからだ。
「あ、あぁ……」
やがて、最後に残った男も仲間と同様に近付いてきた謎の存在に腹を強く殴られ意識を落とした。全員を気絶させたことを確認した僕は、ゆっくりと深呼吸をする。
この仮面を着けると暴力の加減が出来なくなるのは知っていた。だからこそ、手加減を急いで覚えたのがここで行かされることになるのは思わなかったな。
イリヤを見た限りだと、両手と両足を結束バンドで動けないよう固定されている。縄なら簡単にほどく事も引きちぎる事も出来た 、でも結束バンドはハサミ等を使って切る方が安全だ。取り敢えず、ここから移動しないと。
そう思っていた時だった、イリヤが身動ぎしゆっくりと瞳を開いた。そして僕を見て恐ろしいと感じたのか、やがて目から涙を流し始める。
安心させるような言葉をかけたいけど、話してしまったら恐らく僕だとバレてしまうだろう。それにこの姿が僕だとバレるのは不味いことになる。
「わ、私……え?」
だが、周りに彼女達を誘拐した本人達が地面に倒れ伏しているのを見て涙を止め不思議そうな首を傾げた。
「ちょ、ちょっと!?」
僕は取り敢えず彼女の膝と背中に手を回して抱き抱える、所謂お姫様抱っこ担ってしまうけど、イリヤが好きなのは士郎だから、別に大丈夫だろう。
少し動いたイリヤを落とさないように抱えて、廃墟の出口へと向かっているとイリヤがゆっくりと、口を開いた。
「助けて、くれたんですか?」
それに黙って頷くと、イリヤは何処か安堵した様だった。廃墟の入り口へと向かっていると、入り口に他の仲間が来ないか見張っていた白十が立っていた。あらかじめ、イリヤを助け出した際に話したらバレるかもしれないと言う事で、僕が極力話さないように白十が配慮してくれた。
「終わったみたいだな、1号。それにしても、お前が王子様だなんて似合わねぇな。お嬢さんもそう思うだろ?」
「え、えっと……」
「コイツは無口でな、悪いな!安心させるような事すら言わなかったんだろ?コイツの変わりに謝る」
「あの、貴方達は一体?」
白十、恐らくは今の僕と色違いにも見える彼に困惑した様子で僕と白十を交互に見るイリヤと会話を続ける。白十のお陰か、入谷も少しだけ緊張や恐怖が消えたように思えた。
「あぁ……まぁ正義の味方?って奴さ。俺らはとある秘密結社に改造手術を施された改造人間なんだ」
「ひ、秘密結社!?それに改造人間!?あ、アニメじゃなくて本当に!?」
「おう!」
イリヤが目を輝かせる、まぁこの世界に恐らくはショッカーは存在しないだろうし話しても構わないか。
「俺たちは秘密結社から離反して、秘密結社を止めるために戦ってるんだ。俺達は元々、バッタオーグって言う名前だったんだが、気に入らなくてな。コイツが離反した時に名乗った仮面ライダーを俺も名乗らせて貰うことにしたのさ。俺が仮面ライダー第2号、そしてお嬢さんを助け出したのが仮面ライダー第1号だ。」
「カメンライダー……かっこいい!」
「この事は秘密だぜ?お嬢さんも、俺らのような裏から狙われたくはないだろう?」
まさか、イリヤの安堵と笑顔を引き出した方法が白十に説明したシン・仮面ライダーの設定や物語になるとは思わなかったな。うきうきした様子のイリヤと楽しそうに話す白十を見守る。
「それにしても悪いなお嬢さん、俺らはその結束バンドを安全に取るハサミは持ってないんだ。俺らの事情ですまないが、警察には頼れなくてな。家まで送っていこう、良ければ案内してくれ」
そうか、確かにそれなら安全に彼女を届けられる。ナイスアイディアだ、白十。
そう思っていた時だった、外に車が向かってくる音が聞こえた。白十も聞こえたのか黙って耳を澄ませる。イリヤそんな僕らを不思議そうに見つめる。
聞く限り一台か、だとしたら警察ではなさそうだ。もし警察なら一台だけじゃなく沢山のパトカーを連れて来るだろう。
考えられるなら、さっきの誘拐犯達の仲間。
「車が一台か……」
「えっと?」
「お嬢さん、お喋りはここまでだ。どうやら、出口に車が近付いてきているようだ」
「え!?も、もしかしてさっきの人達の……」
「そうかもな、取り敢えず俺が確認してくる、合図するまで出てくるなよ1号」
白十の言葉に頷いて返すと白十が廃墟の入り口から確認すると、此方へ向かっている車に乗っている人物を確認することが出来た。
乗っていたのは日本人と思われるコートを着た男性と銀髪の外国人と思われる女性。衛宮切嗣とアイリスフィールであった。
「1号、どうやら彼女のお迎えらしい」
その言葉を聞き、僕はイリヤを抱えたまま出ていき切嗣さんやアイリスフィールさんに返そうと出口に向かう途中。白十は、少し迷った後に口を開いた。
「1号、一つだけ言わせろ。心残りの無いよう、全てを見せるのもアリだと、今の俺なら思うぜ。このままじゃあ、心がスッキリしねぇだろ?それに今は始まる前だ、それぐらいで簡単に世界は変わらないだろ」
それは僕にあの人達にこの姿で話せ、という事なのか?原作に影響を与えないために家を出る、その挨拶に向かうのは良いだろう。
でもあの人達なら、きっと僕を引き留めるだろう。なら確かにこの姿を見せて、諦めて貰ってから別れた方、が良いのかもしれない。
どうせ、会うのが最後になるのだったら。
これくらいで原作は変わらないだろう、そう希望的観測をしながら僕は白十に頷いて返した。
廃墟から出ると、車から出てきた切嗣さんとアイリスフィールさんが此方をじっと睨み付けてきていた。視線はずっと、僕が抱えているイリヤに注がれている。
「パパ!ママ!!」
イリヤが落ち着いており、安堵した様子でそう話しかけてきた様子に切嗣さんもアイリスフィールさんも、どちらも不思議に感じているのかもしれない。
僕は、黙って歩き二人の元へと向かう。警戒した様子を見るにイリヤが見ていて、僕が抱えているからこそ魔術での攻撃が出来ないのだろう。
取り敢えず切嗣さんに受け渡そう、そう考えて切嗣さんへと近付き恐らく殴ろうと思えば殴れる程に近い距離まで近付くことが出来た僕は、抱えていたイリヤを切嗣に向けて差し出した。
その様子にアイリスフィールさんは首をかしげると同時に安堵した様子で口を開いた。
「もしかして、貴方は誘拐犯じゃあない?」
「そう、なのか?」
「パパにママ、この人達が助けてくれたの!」
切嗣さんやアイリスフィールさんの疑問に答えたのは、イリヤだった。切嗣は警戒したまま、イリヤを受けとめ抱き抱えると困惑した様子で口を開いた。
「君は、一体………」
切嗣さんが口にしたその問いに、一歩後ろへと下がった僕は覚悟を決めてタイフーンの右側面についてるスイッチを押した。タイフーンの風車部分がせり上がり体内とエナジー・コンバーターに残留したプラーナを強制排出され、体が人間へと戻っていくのを感じる。
突如として僕の起こした行動にアイリスフィールさんは身構え、切嗣さんはイリヤを守るように抱き締める。口を保護するクラッシャーがガシャンという音と共に外れ口許が露になる。
僕は被っていたマスクを両手でゆっくり外した、切嗣さんとイリヤは驚いた様子で目を開き、アイリスフィールさんは目に涙を溜めていた。
「その、久しぶり」
「わた、る?」
マスクを取った僕は申し訳なさそうな表情を浮かべているのだろう。
「渡……ワタルなのね!」
そう言いながらアイリスフィールさん、いや母さんは僕に抱き付いてきた。でも、僕には抱き返す権利はない。何故なら僕は、この人達の元から離れなければならないから。
「母さん、ごめん」
そう言いながら、母さんから一歩引いて離れる。母さんは不思議そうな顔を浮かべる。僕は三人に向けて、頭を下げた。
「父さんに母さん、家族には沢山の恩を受けました。貴方達の元で過ごした時間は、僕にとって掛け替えのない時間でした。皆さんから受けた恩を仇で返してしまうことになってしまった僕を……恨んで構いません」
「……どういうことだい?」
「僕は、もう貴方達家族の元にはいられないんです」
原作を壊したくない、だから。でもそれ以外のこの人達を説得する方法が僕にはこれしかない。恐らく、さっき白十から話を聞いていたイリヤは分かってくれるだろう。
「僕は、もう人間じゃ無いんです。この体になって、もし僕が貴方達家族の元で過ごしたらきっと……みんなが巻き込まれ殺されてしまうかもしれない」
「どういう……」
アイリスフィールさんの感じた疑問に答えるため、僕は口を開いた。
「僕は、一年前にある組織に誘拐され体を改造されて……人間じゃ無くなったんです。その組織にもしみんなが目を付けられたら、殺されてしまうかもしれない。皆さんに危険な事があったら、僕は嫌なんです」
そう話して僕はみんなの元から一歩、更に下がってから持っていたマスクを頭にかぶせると、クラッシャーが自動で装着された。
「父さんに母さん、出来るならもっと家に帰ってあげて下さい。みんな、二人がいなくて寂しがっていますから」
僕は、泣いていた。
マスクをしないと、泣いているのがバレてしまいそうだから仮面を着けた。
「イリヤ、これからも友達と仲良くね。君のクラスメイト達のお陰で、僕はイリヤを助けにこれた」
この人達から離れるのは寂しくて、悲しいと分かってるだけではない。この人達と過ごした日々が、本当に幸せだったと感じていたから。
「どうか、セラさんやリズ、士郎にもお世話になりました、そしてごめんなさいと伝えてください。あと、みんなどうか元気でいてね」
そう言いながらみんなに背を向けて歩きだしながら左側のスイッチを押す。すると離れた位置に停めていたサイクロン号が僕の前へと走ってきて止まる。
バイクに股がり、走り出そうとした瞬間だった。
「渡!」
声が聞こえて振り替えれば、切嗣とアイリスフィールさんは頷きあって口を開いた。
「いつでも帰ってきていいんだからね、渡」
「せめて、一年に何回かは帰ってきてね。じゃないとママは渡のこと忘れちゃうわ!いつまでも、待ってるわ」
「絶対!絶対に帰ってきてね、渡お兄ちゃん!」
────父さん、母さん、イリヤ。
あぁ、温かいな。こんな自分勝手な僕を、こうして待っていてくれる人達がいる。
「ありがとう、ございます。さようなら!」
サイクロン号のハンドルを握り閉めて絞る、サイクロン号のマフラーが火を吹き僕はその場から即座に離れた。
日が落ちて暗い道路を暫く走っていると空気を読んでくれたのか、白十は遅れて僕の横に並んだ。
「渡、俺は前に原作を壊したくない、極力原作キャラとの接触はやめた方が良いと話していたよな」
「うん」
「ああいった原作改編は嫌いだ、避けた方が良いと考えていたが、好きになることにした。」
「え?」
「少しぐらいの変化は、大丈夫だろ?あぁ……これで心スッキリだ」
「そっか………ッ!」
「ッ!」
次の瞬間、僕と白十はサイクロン号のブレーキをかけて急いで止まる。
目の前には明らかに怪しそうな男が道路のど真ん中に立っていた。
「お前らが神が言っていた転生者だな?お前らを倒せば、神が俺の願いを何でも叶えてくれるンだってよ」
サイクロンから降りて、目の前の男からゆっくりと距離を取る。
「転生者だと?既に俺達以外が存在しない筈じゃ」
「決着を着けないお前らに嫌気が差したらしいぜ?じゃあ、てめぇら雑魚をさっさと殺して俺はこの世界のキャラ達でハーレムでも作らせて貰うぜ」
なるほど、コイツの狙いはそれか。
「悪いが、その考えは好きになれねぇな。渡、プラーナは十分吸収できたか?」
そう言いながら白十は僕のを方を見る、僕は彼に頷いて返した。
「やるぞ渡!」
「やろう、白十!」
白十は両腕を水平に左に伸ばして構え僕は左腕を右上に斜めに伸びばし、片手を胸の前において構え目の前の転生者と対峙した。
こうして僕らは原作を守るため、そして襲ってくるこの世界に現れた転生者との戦いに巻き込まれていくのであった。
と言うわけで主人公の特典がシン・仮面ライダーへになること、そして主人公の相棒とも言える友人がいたらというIf.でした。
ご愛読ありがとうございました
感想、お気にいり登録、高評価
お待ちしています
主人公がFANGであることを家族の誰かにバレた方が良いか?
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リズ
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バレないまま