運命の戦士   作:発光体(プラズマ)

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第3話 都市防衛指令

火星での戦いから2ヶ月が経った。

ガッツウィング等の一般配備されているライドメカの一通りの操縦法と、研修隊員になるための裏工作、もとい手続きを終えたシンは火星の仲間と別れを告げ、地球の日本列島にあるTPC極東本部基地・グランドームを訪れていた。

 

グランドームとは2010年のガタノゾーアとの決戦の折に手痛い損害を受けたダイブハンガーに代わって建設された、地球防衛の要とも言うべき施設である。シンが研修隊員として向かう事になっているS-GUTSの作戦司令室もこの要塞にあるのだ。

 

日本某所の山腹にあるこの基地の入口で、今シンは迎えが来るのを待っていた。案内する人が来るから、とサワイに言われていたのだ。

 

(SUPERGUTSの隊員の誰かが来るって言われたけど)

 

言われた通りの時間に来れたので、問題はないはずだ。かつてのようにトップエースというある意味特別待遇ではなく、研修隊員という下っ端なのだから、そこら辺はきっちりせねばと、慎重に来たのだ。そんなことを考えていると、自分の名前を呼ぶ声がした。

 

「君がシン・アスカ君かい?」

 

声の主は黒い髪をオールバックに固めた真面目そうな男性だった。赤と黒を基調としたSUPERGUTSの隊服に身を包んでいる。

 

「はい。あなたは?」

「俺はSUPERGUTSのカリヤ・コウヘイだ。よろしく」

 

カリヤに案内され、シンは一先ずこれから自分が寝泊まりすることになる部屋に向かうことになった。

 

「君用の装備一式がそこに置いてあるから、まずそれに着替えてから司令室に行くことになっている」

 

シンは頷き、先を行くカリヤに従って、グランドームのなかを進んでいった。

道中カリヤはS−GUTS内での自分の役割について話してくれた。

 

「俺は主に考古学を専門にしている。大昔の遺跡なんかにまつわる怪奇事件、まあ大概曰く付きの場所で起こるんだが、それに対して資料をもとに対処するのが仕事なんだ」

 

S−GUTSは防衛チームであると同時に、ネオフロンティアの最先端を担うチームでもある。

各隊員はそれぞれ専門分野を持っていて、各々の知識を事件解決に役立てていくわけだ。

 

「今までどんな事件がありましたか?」

「一番ヤバかったのは月の遺跡でミイラに体を乗っ取られた時だな。いや、あの時は死ぬかと思ったよ」

「……何でも有りなんですね、ここ」

「まあな。許可をとれば君もデータベースのレポートが見れることになってるから、読んでみると良い……おっとここだ。部屋に着いたぜ」

 

特別大きな部屋というわけではなかったが清潔で、整った部屋だった。

部屋の隅には先に送ったわずかばかりの荷物が置いてある。

 

「デスクの上に装備が置いてあるからすぐ着替えてくれ」

 

言われた通り服を替えて、装備を確認する。S−GUTSの隊服にヘルメット、多機能ベルトに小型端末WIT、ビームガンが渡されていた。

 

「お前に渡されているのはS−GUTS隊員の基本装備一式だ。ナンバーは08。これがお前の隊員番号だから、一応覚えておいてくれ」

 

ふんふんと頷きながら感触を確かめる。青い銃は重く、その引き金の持つ意味の大きさを伝えていた。

 

「問題はないか?じゃ、行こう」

 

 

与えられていた部屋からそう遠くない場所に司令室はあった。扉には、装備にもあるS−GUTSの青いエンブレムが描かれていた。

先にカリヤが立って扉を開けた。

 

「隊長、研修隊員を連れてきました」

「おう、入れ」

 

聞き覚えのある声が聞こえてくる。続いて司令室に入ると、2ヶ月前に会ったSUPERGUTSの隊員達がいた。

 

「ようこそSUPERGUTSへ、と言いたい所だが、今日からお前は俺の部下だ。遠慮なくビシバシいくから、覚悟しておけよ?」

 

ニッと笑いながら隊長のヒビキが話し掛けてくる。シンは負けじと言い返した。

 

「望むところですよ。故郷の平和のためなんですからそれぐらいじゃなくっちゃあ意味が無い」

「良い心掛けだ。よしみんな聞いてくれ、こいつが今日からS−GUTS研修隊員になるシン・アスカだ」

 

ヒビキ隊長が司令室にいた隊員達に声をかける。シンは皆の視線が一斉に集まるのを感じた。

 

「シン・アスカです。分からないことも多いですが、とにかく精一杯やって、何か一つでも学んでいきたいと思います。よろしくお願いします」

 

通り一辺の挨拶だったが、実はシンが一晩悩んで考えた台詞である。何を言ったら良いのかさっぱり分からず結局これしか言えなかったということなのだが。

だがそれなりに印象は良かったようで、先輩達の表情はなかなか良い。内心ほっとしながら今度は先輩達の自己紹介を聞いた。

副隊長で天文学が専門のコウダ隊員、科学分析担当のナカジマ隊員、オカルトに精通したエースパイロットのリョウ隊員、先に会ったカリヤ隊員にオペレーターのマイ隊員。皆明るく、真っ直ぐで、シンは此処に来たいと思った自分が間違っていなかったと確信した。

ただ、自分が名乗った時に皆どこか遠くを見るような目付きに一瞬変わったのが引っ掛かったが、自分の身の上は知っているらしいのでそのことなのだろう、と気にしないことにした。

 

「よしカリヤ、基地の案内はどこまでやった?」

「まだ、自室の場所を教えただけですけど」

「うむ、ならこの後シンにはグランドームの案内を―――」

 

説明をしようとした隊長の言葉を、司令室に鳴り響いた警報が遮った。和気あいあいとした空気は消え、隊員達の顔に真剣な光が宿る。

 

「何が起こった!」

「G-5地区に怪獣出現、この反応はダイゲルンです!」

「何っ!」

 

地底肉食怪獣ダイゲルン。かつて行われていた地底都市計画で使用されたPWウェーブの影響で地上に現れた強大な怪獣である。二つ名の示す通り肉食で、その時の個体は長期の空腹の所為で凶暴化していた。

 

「人間に食欲を向けられでもしたら大変なことになる。直ぐに食い止めるぞ。S−GUTS出動!」

「ラジャー!」

 

各隊員が動き出す中シンだけはどうすればいいか分からずにいた。

 

「隊長、俺はどうしたら」

「シン、お前は現地の武装隊員と合流して非難を誘導しろ」

ヒビキは迷いなく言った。シンは反論する。

 

「だけど、ガッツウィングだったら俺も出れます!」

「今日来たばかりのお前とじゃあまともな連携はとれんだろう。隊長命令だ、お前はゼレットで現場へ向かえ!」

「っ、ラジャー」

 

分かっていた事だった。来たばかりの人間と作戦を行う事は難しい、それはシンも経験していたことだ。

彼は葛藤を押し込め、WITに従って格納庫に向かった。

 

 

G-5地区の住民達は突如現れた巨大怪獣に逃げ惑っていた。怪獣、ダイゲルンは街の建物を破壊し、雄叫びをあげながら突き進んでいる。時折受けるTPC武装職員の攻撃を蚊ほどにも気にせずにその力を奮っていた。

 

「なんてタフさだよ、あいつは」

 

陸戦メカ・ゼレットを降りたシンは猛進するダイゲルンを見ながら呟いた。

火星で見たガイガレードとは異なる体格ながら、その危険性を遺憾なく示すその姿。すぐにでも攻撃して倒してしまいたい。戦線で戦えない事はやはり彼を苛立たせた。

 

(こいつの力を使えば直ぐに終わるのでは?)

 

胸のポケットに入れた変身アイテム・アギトライブの感触を確かめながら、ふと考えた。あの圧倒的な力を使えば直ぐにでも事態を収拾出来るのではないか?

そんな思考を止めたのはシンの心に渦巻く恐怖感だった。かつて力の使い方を誤っていたという事実が彼を踏み止まらせている。

 

(今はとにかく言われた事をやろう)

 

避難誘導に参加するために茶色の制服の武装職員の一団へと向かった。駆ける彼の頭上を、赤・青・黄の三機の戦闘機が通り越して行った。

 

「各機、フォーメーション・ツーワンで怪獣を攻撃。大食い野郎にこれ以上進ませるな!」

「ラジャー!」

 

S−GUTSの回線にヒビキの声が通る。威勢のよいその声は隊の士気を上げることにも一役買っている。

赤いα号と青いβ号が怪獣の正面で牽制し、黄色のγ号が怪獣の背後に回り込む。フォーメーションツーワンは火力に優れたγ号を中心とした作戦だ。

 

 

旋回、攻撃を繰り返しダイゲルンを撹乱するα、βの両機。一見順調に作戦を進めているように見える中、β号の後部席に座ったナカジマ隊員は敵の様子に違和感を覚えていた。

 

「妙だ……」

「どうした、ナカジマ」

「ダイゲルンの様子がおかしいんです。データにある耐久力ではα号やβ号の攻撃が効かないにしても、無視できるはずはありません。しかしあいつは……」

「気にも止めていない、か」

 

確かにそうだ。これだけ正面で攻めたてているのに、ダイゲルンは進行方向すら変えずに進み続けている。

同じくβ号に乗ったコウダはナカジマに尋ねた。

 

「何か目的があるということか?」

「分かりません。ですが、前回現れたダイゲルンには明確な理由がありました。今回も何かあるはずなんです」

 

ナカジマは難しそうな顔をしてモニターと睨みあっている。

 

「よしナカジマ、お前は解析を続けろ。俺達は奴を引き付けることに集中するんだ。カリヤ、γ号の準備は?」

 

カリヤ隊員は射撃の名手でもある。高火力ビーム砲・ガイナーを備えたγ号には、この2年はカリヤが搭乗する事になっていた。

 

「行けます。マキシマビーム・スタンバイ!」

 

グランスフィアとの決戦の後、γ号にはある改良が施されていた。それが秘密部隊・ブラックバスターの搭乗機、ガッツシャドーに搭載されていた兵器マキシマビームである。構造上の問題で屈折させる機能はオミットされたが、その威力自体はガイナーのエネルギーをマキシマエンジンから供給することで再現されている。

 

「3、2、1、発射!」

 

γ号の巨大な砲塔から黄色の閃光が走る。暴力的な光をまとったそれは狙いを違わずダイゲルンの首筋に命中した。

 

「ギャァァアス!」

悲鳴を上げてダイゲルンは倒れこんだ。威力が足りなかったのか、まだ生きてはいるがもう殆ど虫の息だ。

 

「よし、止めだ!」

“隊長、大変です!”

「どうした、マイ」

 

本部の司令室にいるマイ隊員からの通信だ。とても焦った声をしている。

 

「付近に高速で接近する巨大生物の反応を検知、このパターンはゴルザです!」

「なんだと!」

 

ヒビキが驚きの声を出した正にその時、γ号の真下の地面がひび割れ、中から巨大な怪獣が現われた。

 

「オオォォォオオ!」

 

雄叫びを上げるソイツの名は超古代怪獣ゴルザ。地球上で最も初めにその存在が確認された怪獣であり、過去数回に渡ってTPCを苦しめた存在だ。

地上に姿を現したゴルザは目の前のにいた鬱陶しい黄色のハエに向かってその太く強靱な前脚をふるった。旋回が間に合わずγ号は翼部を損傷してしまう。

 

“うわあああ!”

「カリヤーーーッ!」

“す、すみません隊長、脱出します!”

 

黒煙をあげるγ号が不時着するのを見届けたヒビキはゴルザを睨み付けた。こちらの側をゴルザがみると、ダイゲルンは怯えたような声をだした。

 

「そうかわかったぞ、なんでダイゲルンが現れたのか」

「どういう事だナカジマ」

「ダイゲルンはゴルザから逃げてきたんです。恐らく縄張り争いに負けたか何かで追い立てられていたんでしょう」

「つまり俺達は奴らの喧嘩に巻き込まれた、と?」

「見も蓋もない言い方になりますが、そういうことかと」

 

見るとゴルザの視線は正確にはガッツイーグルではなく弱ったダイゲルンに向けられている。ヒビキは歯をくいしばった。

 

「どうする……どうやったら二体もの怪獣を相手に出来る……」

 

怪獣同士を争わせれば倒しやすくはなるだろうが、それでは発生する被害が莫大な物となる。S−GUTSの使命は何が起ころうと人々の平和を守ることだ。どれほど困難な状況でも諦める訳にはいかない。しかしこの状況には「TPCの荒鷲」とよばれたヒビキも頭を抱えた。

 

だがその時、ゴルザの下腹部が突然火花を上げた。

 

「なんだ?」

 

いぶかしむヒビキ。その答えを出したのはα号に乗っていたリョウだった。

 

“隊長、下を見てください!”

 

焦燥の交じった声に言われるがままに下を見ると、青いスーパーガン、ガッツブラスターを握り締めて瓦礫の街を駆ける少年が一人。

 

「シン!」

 

ヒビキだけでなく、β号に乗っていた全員が驚きの声を上げた。

 

 

ゴルザが現れγ号が撃墜されるところを地上で見ていたシンは、ゴルザがダイゲルンの方に向かい始めるのを見ると、武装職員の制止も聞かずに駆け出した。

 

(あいつらを引き離さなくては)

 

こんな街中で怪獣二体を相手取ることがどれ程の被害を出すのか、分からないシンではない。ガッツブラスターをゴルザに射ち、自分の方に引き付けようと、敢えて目立つ道を選んで彼は走った。

その心構えは悪くないし、防衛隊員としてその判断は正しい。それ自体を責める人間は恐らく居ないだろう。

しかし、この時シンは冷静ではなかった。人間より遥かに巨大な怪獣にとって、彼が走ったところでろくに距離など稼げないということを失念していたのだ。

 

ゴルザは不届きにも自分に歯向かう小さな物体を睨むと、その物体が進む道にある一つのビルに向けて光線を放った。建物を崩し、生き埋めにしてしまおうというのだ。

 

「ああっ!」

 

ガッツイーグルに搭乗していた隊員達は思わず声を漏らした。瓦礫が崩れ、シンの方に迫っていくのが見えた。コンクリートの雪崩がシンに覆い被さっていく。恐らくあれでは助かるまい。歯を食い縛る隊員達を尻目に、ゴルザは歓喜の吠え声を上げていた。

 

 

「くっそォ……」

 

運良く瓦礫の間の僅かな隙間に入り込んだシンは、悔しげに声を漏らした。

冷静さを欠いた自分も恨めしいが、さらに悔しいこともある。

 

(人間の力じゃダメだっていうのか?)

 

手に握り締めたアギトライブを見ながらひとりごちる。自分はこの力を使わなければならないのか?自分すら信じられないというのに?

 

―――だが、強過ぎる力はまた争いを呼ぶ!

 

なんてザマだ、こんな時よりによってあんな奴のことを思い出すなんて。

今でも大嫌いな口ばかりの金髪女。ああ認めてやるさ、カガリ・ユラ・アスハ。アンタの言ったこと、今の俺なら少しは分かる。でも、それを信じた結果はなんだ?鳴り響く兵器の機動音逃げ惑う家族残ったのは妹の小さな手―――

 

 

『戦うべき時には戦わないと、何一つ、自分達すら、守れません』

 

『普通に、平和に暮らしている人たちは、守られるべきです!』

 

ハッとなった。かつての自分、その正直な言葉が全てではなかっただろうか。自分一人で怖がって、守られるべき人を蔑ろにしてはいなかったか?

戦いなんてしたくない。だけど、戦わなければ守れない。

S-GUTSのマークが背負っているのはこの星で平和に暮らす人々なのだ。ならば自分がどうなろうとかまうものか!

戦おう、力の誘惑に負けない強い心を持って。命を懸けて、この星に住む命を守りぬいたという、ウルトラマン達のように。

そうだ、俺は。いや、今は俺が!

 

「俺が、ウルトラマンだ!」

 

瓦礫の天井に向けてアギトライブを掲げる。銀の雫に埋め込まれた輝石が輝き、シンの体を光へと変えていく。

 

 

「ジェア!」

 

光がゴルザの前に集まり、銀の巨人の体を為す。シンは光の超人、イーヴィルティガへと変身したのだ。

 

「あれは!」

 

現れた巨人を見て、ヒビキが、隊員達が声を上げる。イーヴィルティガは火星で見せた雄姿をそのままに、ゴルザに殴りかかった。

先手必勝とばかりに鋭い突きを繰り出すイーヴィルティガ。ゴルザは体に鈍い音を響かせて後退した。吠え声を上げて敵意に満ちた目をイーヴィルティガに向ける。

 

「フンッ、ハァ!」

 

その巨体を真っ正面から突っ込ませてくるゴルザを受け流すとそのまま流れるように手刀を放つ。然し今度は上手く当てられなかったのか、ゴルザはびくともせず、逆にその太い尾で鞭のように攻撃してきた。

脇腹に手刀を打ち込む為に腰を落としていたのが仇になったのか、イーヴィルティガはバランスを崩され、尻餅をついてしまった。

野生の本能のままに一打二打と尾による攻撃を繰り返すゴルザ。

 

「ヴアァ!」

 

イーヴィルティガは堪らずに声を漏らす。野性の獣は理性が少ないがその分隙もない。じっと堪え忍ぶしか手が無かった。

 

「隊長、イーヴィルティガを援護しなければ!」

「分かっている!だが、俺達は先にこっちをなんとかせにゃならん」

 

β号に乗るコウダが主張するが、ヒビキは苦々しそうにダイゲルンを見ながら切り捨てた。怪獣の生命力は人間の想像力を遥かに上回る。先程は虫の息だったダイゲルンも、今は殆ど落ち着きを取り戻していた。

 

「こいつをここで仕留めなければ負担が増すばかりだ!ナカジマ、何か奴の弱点はないのか」

「そうはいっても、マリキュラのような毒はあいつは持ってないし……あっ!」

「あるんだな、奴の弱点が!」

 

大きな声を上げるナカジマ隊員。その声に込められた喜びをヒビキは正確に聞き取る。

 

「ハイ。ヤツは火炎弾を吐くための油を喉の奥の方に溜め込んでいるんです。そこを狙えば……」

「油に引火して爆発する」

 

コウダの言葉に頷くと、ヒビキはこれを聞いているだろうカリヤに通信を入れた。

 

“作戦はさっきの通りだ。どうだ、行けるか?”

「任せてください。俺が倒しきれなかったんだ、決着を付けてやる」

 

不時着したγ号から抜け出したカリヤは、高性能狙撃銃・ギャラクシーライフルを握り、ダイゲルンの様子がよく見える、開けた道路に位置取っていた。

 

「ヤツを少し後退させてください。キツいのをお見舞いしてやる」

“分かった。お前に任せたぞ”

「ラジャー」

 

二機のイーグルがダイゲルンの正面に回り、牽制弾を足元に打ち込む。うめき声を上げてダイゲルンはゆっくりと後退りを始めた。

 

(まだだ、焦るな。あと少し待て。まだだ……まだ……まだ……そこだっ!)

 

ギャラクシーライフルが火を吹き、ダイゲルンの喉を正確に貫いた。己の武器であるはずの臓器を利用され、断末魔を上げてダイゲルンは倒された。

 

「やったぜ!」

 

回線中から歓喜の声が上がる。ヒビキは顔を綻ばせて叫んだ。

 

「よぉし、SUPERGUTSッ、イーヴィルティガを援護するぞ!」

「ラジャー!」

 

ガッツイーグルは旋回して、巨人の戦う方へと向かった。

 

一方、イーヴィルティガは未だに機会を得られず、打たれるが儘となっていた。

 

(どうにか、ヤツの注意を反らすことさえ出来れば)

 

エネルギー残量を示す胸のランプ、イーヴィルタイマーも既に点滅を始めている。このままやられてしまうのだろうか?

 

尾の連撃から抜け出そうとするも、50mに迫る巨体にとってビル街は狭く、中々上手くは行かなかった。

然し、悔しさに溺れかけたその時、赤と青のビームがゴルザに命中した。ガッツイーグルからの援護射撃だ。ゴルザは動きを止め、イーヴィルティガから目を逸らした。

 

(今がチャンスだ!)

 

両足でゴルザを蹴り上げて飛び起きると、散々自分を痛みつけた尾を引っ掴み、そのままグルグルと回し始めた。

 

『イーヴィルスイング!』

 

遠心力に乗せてゴルザを投げ飛ばし、大ダメージを与える。しかしこの程度でくたばるゴルザではない。起き上がると直ぐに得意の超音波光線を放った。尖った角から放たれたそれはイーヴィルティガへと真っ直ぐ突き進む。しかし、ここに来て戦い方を掴んだのか、イーヴィルティガは落ち着き払って両の手を前に突き出した。光線と同じ紫色の円形の盾がイーヴィルティガの前に現れる。

 

『イーヴィルバリアー!』

 

ゴルザから放たれた光線はバリアーに遮られ、ギャリギャリと言う耳障りな音を立てた。しかし結果として光線がイーヴィルティガに届くことはなく、次第に細くなってついには消え去った。最も得意とする技がいとも簡単に遮られ、ゴルザは動揺を隠せない。そしてイーヴィルティガはその隙にゴルザに一気に詰め寄った。

 

「フッ、ハッ、ジェァアッ!」

 

胴に拳を二発と回し蹴りを叩き込む。強烈な蹴りを食らったゴルザはうめき声を上げて遙か後方へと吹き飛ぶ。蹴りの勢いが殺され切れてもなお立ち上がれないゴルザに向けて、イーヴィルティガは両の腕をL字に組んで、紫色の必殺光線をお見舞いした。

 

『イーヴィルショット!』

 

先ほどのゴルザの超音波光線とは比較にならないほどの凄まじい光ほとばしり、ゴルザを爆散させる。煙がはれるとそこには怪獣の体の焼け跡だけが残っていた。

 

 

 

初の市街地戦を終えたイーヴィルティガはその青い瞳を空へ向け、飛び去っていった……

 

 

「バッカモン!」

 

SUPERGUTS作戦司令室に戻った後、シンを待っていたのは隊長からのお説教だった。内容は先程、一人ゴルザに向かっていった件についてだった。

曰く、相手との差を失念するとは何事か。

曰く、戦士たるもの自身の事は当然、相手のことも理解するべきだ。

曰く、突き進むだけで守ることが出来るのなら苦労はしない。等々……

時間にして一時間に及ぶ説教を終え、漸く解放されたシンは、ゴルザとの戦いを終えた時よりもへとへとに疲れ果てていた。ヒビキの説教は長い上に、有益だ。かつてのアカデミーでの教官のような口ばかりの説教ならば聞き流しもするが、一々深みのあるヒビキの言葉からどうにも逃げられない。与えられた自分のデスクにつっぷして、軟体動物の様に体を伸ばしている。

 

(あーしんどい。戦うってやっぱ大変だ)

 

けれどシンの心には不思議と充実感があった。報告では軽症の人間は幾人か居たものの、ダイゲルン自体に破壊衝動がなかった事や迅速な対応が功を相して死者は0人。普段此れ程うまくいく事は無いとは言われたけれど、『守れた』という事実がシンの心を暖かくしていた。

顔を上げれば苦笑いを浮かべてこちらを見ている先輩達。彼らに向けて力なく笑みを浮かべ、再びシンは突っ伏した。

まだまだやらねばならないことは多い。研修隊員として毎日レポートを書かねばならないし、先ずは先程の行動への反省文だ。

でも、とシンは自分に呼び掛ける。

 

(俺はもう選んだんだ。なら、進まなくちゃな)

 

自分の心に誓う。力に負けることなく、強い心で戦いぬくことを。二度と自分のような悲しい涙を流す人がいないように。故郷をそんな世界にするために。

 

どこか遠くのところで、金色の誰かが、『それでいいよ』と言ってくれた気がした。

 

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