流暢に日本語を話せる、ということで(^^;
──西部機動兵団・稲佐の浜分駐所、10:45
「提督、そろそろ休憩なされては?」
本日秘書艦の一人、レキシントン級空母2番艦・
サラトガ(以降サラ)が心配そうに覗きこむ。
「もう少し、もう少しなんだ…この装備さえ完成
すれば、君らの仕事がもっと楽になる…」
提督はPC画面を睨み、うんうん唸りながらキーを
叩いている。
稲佐の浜分駐所は佐世保、舞鶴を直線で結ぶと
ほぼ中間にあたる。両基地の補佐が主たる任務…
と言えば聞こえはいいが要は尻拭い。もちろん
分駐所単体での沿岸警備もある。歯に衣着せぬ
タイプの艦娘は不満たらたら。
「確かにそうですが…根を詰めてばかりでは体に
障ります」
深海棲艦の出現から十数年経た20XX年現在、唯一
上回る科学力を傾注することでギリギリ最低限の
シーレーンを維持している。なにせ敵は地球
表面積の7割を占める海から襲来する曲者だ。
もし多方面から物量任せに攻めこまれる事態に
なれば一気に均衡が崩れる危険性を孕む。幸い
そのような局面は訪れていないが、逆に敵にも
高い知能を有する個体の存在を人類に予測させる
という副次的効果があった。
「大丈夫だよサラトガ…今終わったから。後は
(海上幕僚)本部に送るだけだ。ぼちぼち出撃した
第三艦隊が帰投する頃じゃないか?」
「あ、はいっ。ええと…敵残存兵力撃破、味方に
損害なし。間もなく精密検査が終わる、とのこと
です♪」ニッコリ
「そっか、みんな無事で何よりだ」ウンウン
──コンコン
「どうぞ、開いてるよ」
「提督さん、ただいまっぽーい!」ガチャ
勢いよくドアを開けて入ってきたのは、本日
第三艦隊旗艦を務めた白露型駆逐艦4番艦・
夕立。彼女が本日のもう一人の秘書艦だ。
「提督さん、今日も夕立がんばったっぽい〜!
褒めて褒めてー♪」ニパッ
「おう、今ナデナデしてや……」フラッ
──ドサッ!
サラ「て、提督!?」
夕立「提督さん!?」
提督は倒れたまま動かない。抱き起こそうと
夕立が駆け寄るが、サラが押し留める。
「ダメよ夕立! 頭を打っているかもしれない
から無闇に動かさないで!」
「で、でも!」
サラは冷静に提督の手首を優しく掴む。
「……大丈夫、脈はあるわ。夕立、落ち着いて
聞いて。貴女は明石と龍鳳に連絡を。それから
他の子に担架を持ってこさせて。できるわね?」
「う、うん…」
「じゃ、すぐ動きましょう。貴女と私はここで
状況を整理するわ。そうすれば明石も龍鳳も
初動がしやすくなるから、ね?」
「ぽいっ!」
サラの的確な判断のおかげで直ちに明石(医療
担当兼務)と龍鳳(看護師&保健師兼務)が
駆けつけ、提督は医務室に運ばれていった。
──間宮食堂、12:35
サラ&夕立「…………」
二人は眼前に並んだ食事に手もつけず身じろぎ
ひとつしない。
「あの、二人とも…早く食べないと冷めちゃい
ますよ?」
焦燥ぶりを見かねた鳳翔型空母1番艦・鳳翔が
声をかけた。
「鳳翔(さん)……」
のたのたと頭を上げた二人だが、顔は土気色だ。
鳳翔も一瞬たじろぐが、何とか気をとり直して
続けた。
「お二人の気持ちはわかりますが、何も食べずに
いては仕事にならないでしょう?」
サラ「それは…」
夕立「そうなんだけど…」
気のない返答で、鳳翔の顔に青筋が浮かんだのを
二人は見逃した。
──バァンッ!
二人「!?」
いきなり響いた大音量にサラも夕立も反射的に
背筋を伸ばす。周りにいる他の艦娘達も驚いて
振り返る。テーブルを叩いた鳳翔も相当痛かった
ようで、手をぷらぷらさせている。
「こんなところで油を売ってる暇があるんなら、
さっさとごはんを食べて仕事を片付けたらどう
なんですか!?」イタタタ
二人「は、はいっ!」
般若の鳳翔に圧倒されたサラと夕立、冷めきった
昼食を慌ててかっこむと一目散に執務室へ走る。
「まったくもぅ…提督も罪作りな人ですねぇ♪
私もあの子たちのことをとやかく言えた義理じゃ
ないけど^^;」
──提督執務室、12:57
「サラちゃん、仕事はどれだけあるっぽい?」
「昨日までの分は終わってるわ。後は貴女達の
出撃記録と消費資材報告書のみってとこね」
「了解っぽい♪ ちゃちゃっと終わらせるっぽい」
「お願いね。私は本部に送付する書類をまとめて
おくわ」
夕立がキーボードを叩き、サラは種類別に文書を
分け封書を作りながら本部に提督の急病を報告、
指示を仰ぐ。本部からは『提督が復調するまでは
通常任務を訓練・演習・迎撃のみとする』旨が
伝えられたため当面の危機は免れた。
本音を言えば二人とも提督の傍にいたい。看病
してあげたい。鳳翔の檄がなかったら業務が停滞
するだけでなく、提督が復帰しても持ち回りの
秘書艦を外される可能性もある。他の艦娘同様、
提督が大好きな二人には耐え難い拷問。そんな
悪夢は絶対に避けねばならなかった。
──執務室、14:05
「ふぅ〜、終わったっぽい〜」グデー
「私も終わったわ…なんだかすっごく疲れた気が
する」グデー
今日の仕事を全て終了したサラと夕立は、揃って
デスクに突っ伏した。
「でもさ、鳳翔さんがいなかったら、ここまで
できなかったっぽい?」
「あー、それって言えてるかも。秘書艦解任とか
されたら大変よねぇ」
「提督さんの負担、少しは減るかなぁ?」
「そうなるといいわね…私、ここで唯一の海外艦
だから馴染むまでは提督にかなり苦労をかけたと
思うわ。それに甘えて気づかなかったなんて、
まだまだね…」
「サラちゃん、提督さんだけじゃなくて夕立にも
たっくさん頼っていいっぽい。他の娘もいっぱい
助けるから…ね?」ギュッ
「……Thanks、夕立。サラ、Very happy」ギューッ
国は違えど同じ艦娘同士、やはり通じるところが
あるのだろう。二人はしばらく抱き合っていた。
──ピロリン♪
二人のスマホがLINEの着信を鳴らした。
──医務室、14:55
明石「いらっしゃい、お二人さん♪」ニッコリ
サラ「あの、提督の容態は?」
夕立「提督さん、大丈夫っぽい?」
連れだって現れた二人は明石に診断結果を問う。
先刻の青ざめた表情から幾分回復した彼女らを
確認すると、明石は柔らかい笑みを浮かべた。
「ご心配なく、ただの過労です。まだ点滴中で
安静必須だけど、目は覚めてらっしゃいます」
「面会はできる(っぽい)?」
龍鳳が言葉を引き継ぐ。
「15分だけなら許可しますね。いずれにしても
2〜3日は入室(自衛隊用語。入院の意)の必要が
ありますから、お静かに願いますね?」ニコ
二人「はいっ♪」
──提督の病室、15:15
「お邪魔します(っぽい)」ガチャ
「サラトガ、夕立…見舞いに来てくれたのか。
わざわざすまんな」
サラ「いえ、私こそ提督の不調に気づかなくて
申し訳ありません」フカブカ
夕立「提督さん、ごめんなさい…夕立が一番
提督さんと付き合いが長いのに、わからなくて
ごめんなさい」フカブカ
「二人とも、顔を上げて。そもそも俺が無茶
したのが悪かったんだ」ポリポリ
二人「でも…」
「まあまあ、この話はおしまい。三方一両損って
ことでOK?」
サラ「お、All right♪」ニコ
夕立「わかったっぽい♪」ニコ
空気がようやく軽くなったのを確かめると、
サラと夕立は顔を見合わせコクリと頷き合う。
「?」
二人の挙動を不思議に思う提督をよそにサラが
提督の右側に、夕立が左側に陣取る。よく見ると
どちらも頬を赤く染めている。
「???」
どうにも意図が読めない提督。すると───
「提督さん、大好き♥️」ポッ
「We love you,Admiral♥️」ポッ
───Chu♥️
「はへっ!?」ドギマギ
何と二人が提督の頬に口づけしたのだ。不意を
突かれた提督は固まってしまった。
「し、失礼します(っぽい)///」ペコリ
凄いことやっちゃったー! みたいな顔をして
サラと夕立はそそくさと病室を後にした。
「……どゆこと?」ポカーン
──医務室と本館の渡り廊下、15:35
「夕立…顔、真っ赤よ?///」
「サラちゃんも…っぽい///」
気持ちの高ぶりのまま衝動的にしてしまった
──初めてのチュウ♪ 君とチュウ♪
「こっ、このことは私達だけのSecret、ね?///」
「う、うん…了解っぽい///」
ドタバタはした分、いいこともできた一日…と
安堵するサラと夕立…となるはずなのだが、
そうは問屋が卸さない。
「ちょっと、サラに夕立?」ゴゴゴ
「どうしてあなた方だけなのかしらぁ?」ゴゴゴ
「納得のいく説明を要求するのです♪」ゴゴゴ
「教えてくれるよね? ね?」ゴゴゴ
──びくぅっ!
耳にまとわりつく怨嗟の声に、恐る恐る振り向く
二人。その視線の先にあるのは……
高雄型重巡洋艦1番艦・高雄。
天龍型軽巡洋艦2番艦・龍田。
特三型駆逐艦4番艦・電。
長良型軽巡洋艦4番艦・由良。
4人はニコニコ微笑んではいるが、その背後には
ドス黒いオーラが立ち昇る。因みに全員本日の
出撃組である。
「ぴぃっ!? た、助け……」ガクブル
サラと夕立は抱き合ったままへたりこんだ。
「さあ、みんなで曳航するのです♪」
三人「ラジャー!」
──がしっ!ズルズルズル……
「No〜! Please wait a minutes!!」
「は、話せばわかるっぽいぃぃ!!」
四人「聞く耳持たん(なのです)♪」
その後のサラと夕立の行方は誰も知らない……
今回は全年齢向きを意識して書いてみました。
どうやら自分はヤンデレ未満のライト系
ドロドロ恋愛モノが好きっぽい?( ̄▽ ̄;)