今回から文字数を少しずつ増やそうと思っています。毎日投稿にはならないかもしれませんが、ご容赦ください。
それと、沢山の感想ありがとうございます!返信が追いつかず、放置してしまっていますが、全てに目を通させてもらっています……!
「いくぜ豪炎寺!思いっきり打って構わねえ!」
「分かった……まかせろ!」
「「リトルドラゴン・トルネード!!!」」
「ゴッドハンド!!!」
染岡が放ったドラゴンクラッシュ・ザ・リトルを正確に豪炎寺のファイアトルネードが打ち抜き、速度を保ったまま螺旋のように回転して円堂へと飛んでいく。
だが、ザ・リトルとは異なり一度シュートチェインを挟む関係でゴッドハンドが間に合った。黄金の神の腕に、綺麗にそのシュートは収まって止まっていた。
「………ぐっ、ギリギリ間に合った……!ゴッドハンドじゃなきゃ抜かれてたなぁ。熱血パンチじゃこれは厳しいぜ」
「結局止めといてよく言う……ま、及第点ってところだな」
円堂の言葉に豪炎寺と染岡が苦笑する。
あのあと尾刈斗との試合はほとんど原作通りとなった。円堂が叫び声でゴーストロックを振り払い、時間ギリギリで豪炎寺と染岡の合わせ技ーードラゴントルネードならぬリトルドラゴン・トルネードで歪む空間を撃ちぬいて2-1で勝利。なんとか廃部は免れ、今は新技の調整ってわけだ。
相変わらず染岡は、未だに本家のドラゴンクラッシュを習得できていないが、本人は納得しているようだ。豪炎寺との確執も無いみたいだし、いつかドラゴンクラッシュを超えた技を見せてやると息巻いていたな……ちょっと楽しみだぜ。
さらに、この雷門サッカー部に新しく一人、仲間が増えた。
軽快な口調で今は目金と松野の指導を買って出てくれた、細身の背が高い軽薄な男子生徒ーーそう、土門飛鳥だ。
時は遡ること約一日。ついに対戦相手が顧問の冬海先生によって紹介され、また土門もそれについてきたってわけだ。なんでも、アメリカ帰りらしい……まあ知ってたからそんなに驚きはしないけどな。
勿論、帝国のスパイだってことも。
フットボールフロンティアの地区予選、その一回戦の相手は『野生中』だ。空中戦を……いや、サッカーで空中戦なんてものがある方がおかしいのだが、とにかく空中戦だけならば帝国を凌ぐ中学だ。豪炎寺や土門のお墨付きとあれば、ステラほどの高さなら兎も角、ファイアトルネードは通用しないと見ていいだろう。
おそらくだが、発生の速さからドラゴンクラッシュ・ザ・リトルは妨害されない……というか、あの技、思っていた以上に有能だった。
威力こそないものの、あれはスピードに特化させたドラゴンクラッシュ故に、キャッチ系の技では発動が間に合わないことが多々あることが練習で判明した。少なくとも、エネルギーを右手に集中、大きな手を形成するゴッドハンドでは発動時間として間に合わせるのがかなり厳しい上、曲がるだけ対処が難しいのだ。
熱血パンチでも弾くこと自体は全く難しくないが、この曲がる特性が厄介の一言だ。もし、本家のドラゴンクラッシュと使い分けられるようになれば……染岡は、高い威力のストレートシュートも、曲がる変則的なシュートも撃てるストライカーになり、どちらのシュートがくるか分からない以上、相手の選択肢を狭めさせられる。今のところ対応できるのはおそらく帝国のキーパー源田や、千羽山の無限の壁くらいだろう。特にパワーシールドは発生も早く、守る範囲も広い。……改めて考えると強えな源田……。
新技リトルドラゴン・トルネードはそのままザ・リトルをファイアトルネードでシュートチェインする技。ファイアトルネードのパワーにザ・リトルのスピードが加わった、本家とは異なる方向で有用性のあるシュートに変貌した。ただし、割とキャッチは間に合うけどな。ファイアトルネード、間違いなく強い技だが……少しばかり溜めが長すぎるのが欠点だ。
「そこは俺の課題だな。ヒートタックルもそうだが、俺の技は基本的に溜め時間が長い。短縮して打つことができればかなりやれることの範囲は広がるが……」
「うーん、俺のゴッドハンドも同じかな。そういや、荒射。新必殺技のほうはどうなったんだ?ステラ以外も覚えるっていってたけど」
「…………順調といえば順調、かね。思ってたのとは違ったけどよ」
「なんだそれ……?」
首を傾げている円堂だが、こればっかりは仕方ないよ。俺が望んでた方向の必殺技とは、斜め上に逸れた方向性で技が完成しつつあるからな。あ、ステラみたいな自爆技じゃねーよ?
あの技、考えれば考えるほど欠陥品に思えてくる。なんとか自爆しないよう改良しようにも、おちおち練習も出来んからな……一発打ったらそこでその日は練習終わりで病院行き、最悪、暴発して足が折れましたじゃ話にならんし。しばらく打つつもりもないし、いいかなあって。
「ま、今は悩んでも仕方ない!既存の技が通じないなら……勿論、やることは一つ!」
「新技だな。俺もファイアトルネードだけでは厳しいと思っていたところだ、丁度いいさ。しかし……野生中に対抗できるような、都合のいい技があるだろうか?ステラほどの高さは要らないが、それでもかなりのジャンプを求められるぞ」
「大丈夫大丈夫、なんとかなるって!」
能天気だな、ま、そこが我らがキャプテンのいいところでもあるけどよ。
今日一日は新技の開発ということで、各自が調べ物だったり練習に励むこととなった。
翌日、円堂からは学校の図書室で、円堂の祖父が残した秘伝書なるものが見つかったと聞いた。トラブルもあったが無事に秘伝書は手に入れられたらしい。
なんで学校の図書室なんかに置いたんだよ、円堂のお祖父さんは……。
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「行くぞ壁山……!イナズマ、落と……っ!?」
「ひいいいい無理っす!!!怖いっすよ……!!!」
放課後、皆で河川敷に集まって秘伝書のとおり練習してみてはいるものの、ダメだこりゃ。
新技ーー秘伝書にあったイナズマ落としという技は、体格のあるメンバーと、パワーシュートを打てるメンバーの合体技ーー選ばれたのは、豪炎寺と壁山だ。
豪炎寺のフォームはほぼ完成しているが、肝心の壁山が高く飛ぶこと、豪炎寺を受け止めることを怖がって一向に進まない。
まあ、壁山の気持ちは分からんでもない。アーラシュになる前は俺も高所恐怖症だったし、人間一人、約40から60kgの物体が走ってくるのを受け止めるのはかなり怖いだろう。下手したら大怪我に繋がるしな。
だが、このままでは埒が空かないのも事実。どうしたものか。
「困っておるようじゃの」
「……会田さん」
河川敷の奥からゆっくり歩いてくるのは、眼鏡をかけたふくよかな男性。
この人ーー会田さんは、河川敷で稲妻KFCの監督をしている方で、俺たちにこうしてたまに河川敷のグラウンドを貸してくれていて、元イナズマイレブンの一人だ。全く頭が上がらない。
まあ、イナズマイレブンの一人だったことを知ってるのは今のところ俺だけだが。……この人なら壁山に適切なアドバイスをくれるんじゃあないだろうか。
「壁山君、だったかな。仲間を受け止めることはそんなに怖いかね」
「ご、豪炎寺さんを受け止めることが怖いわけじゃないんっす。ただ……天才の豪炎寺さんなら兎も角、俺なんかにできるのかって……」
うーむ、この前の染岡ほどではないがかなり思い詰めてるな。ふと、壁山と目が合えば何故か壁山の顔がぱっと明るくなった。
「そ、そうだ!強靭な肉体っていうなら、荒射さんもそうっすよね!めちゃくちゃがっしりしてるし、ステラの時もめちゃくちゃ跳んでて……俺なんかより……!」
「いや、残念だがそれは無理だ、壁山」
「へ?」
…………俺の体格は、壁山を除けば染岡よりも筋肉はついてがっしりとしている。頑健EX、というスキルの恩恵か一度も風邪だって引いたこともない。
ま、実は最初、豪炎寺と俺でイナズマ落としを組む案はあったんだが、意外な欠点が見つかった。どういうことかと目を丸くしている壁山に見せるため、豪炎寺と共にイナズマ落としの姿勢を取る。
しかし……。
「ふっ……!」
「……くっ、やはりダメか!すまない荒射……!」
ーーイナズマ落としで、豪炎寺を受け止めなくてはいけない俺の方が、跳躍が高い。
おそらく豪炎寺では、俺のことを受け止められないだろう。出来る限り高さを調節する特訓もしたが、上手く安定しない。やはり、この技を打つなら壁山の存在が必要不可欠だ。
ざん、と砂の音を立てて俺と豪炎寺が着地する。ぽかんとした様子で壁山と会田さんまで口を開けていたが、できないという言葉の意味がわかったらしい。
「……そ、そんなぁ…………荒射さんでも無理なんて……」
「こりゃあたまげたな……高さが足りずに失敗するケースは見てきたが、よもや高すぎて失敗とは……ううむ……やはりこの子たちなら……」
ま、そんなわけでやはりイナズマ落としは豪炎寺と俺のペアでは出来ない。壁山の肩を叩いて、精一杯の励ましの言葉をかけてみる。
「平気だよ、壁山。お前は帝国のブロックにだって負けなかったんだ。必要なのは、ちょっとだけの勇気さ」
「…………勇気、っすか」
「そうだ。お前に実力がないわけじゃない……豪炎寺ならお前に怪我をさせるような跳び方をしないさ。もし、自分に自信が持てないってんなら今はそれでもいい。……豪炎寺を、信じてみないか?」
「…………豪炎寺さんを……」
「壁山!お前ならきっと出来る!それに、弟さんが試合を見にくるんだろ?かっこ悪いところじゃなくて、かっこよく決めてるところ見せようぜ!」
「……キャプテン……お、俺……やるっす!やってみせるっす!」
円堂の激励もあって、壁山は覚悟を決めたようだ。やはり、ここぞというときの一声は俺より円堂の方が重いな。悔しいけど、やっぱりこの熱血に当てられてるとよ……根拠なんか無くても、やってやるぜって気分になるんだよな。カリスマ、ともまた違う不思議な感じがする。
フォームを整えた豪炎寺が、壁山に向かって、飛ぶ。同時に壁山はーー『目を閉じて』飛び上がった。
なるほど、突っ込んでくるものを見ないように目を閉じたのか。浮遊感は拭えないだろうが、恐怖が半減するなら出来るという考えか……!
今度こそ、豪炎寺は壁山の腹をしっかり足で捉えて、さらに跳躍する。それでもまだステラの高さには届いていないが……普通のシュート位置から考えれば、十分すぎる高さだ。オーバーヘッドの要領でボールを足で捉えれば、豪炎寺の足に稲妻が走り……ゴールに向けて、まるで落雷のようなシュートが放たれた。
「……や、やったああぁあっ!成功したぞ、二人とも!やれば出来るじゃないか壁山!」
「うむ、儂の目から見ても完璧なイナズマ落とし。見事じゃったよ」
豪炎寺と壁山に、円堂も会田さんも近寄って褒めたたえる。練習風景を見ていたほかのメンバーも、やったな、と言っているのが聞こえてきた。
「まあ、これで安心だな……ん?どうした壁山」
「……か、かかか」
「か……?」
「…………か、かっこ悪いっす!?俺、ただの踏み台っす!かっこいいのは豪炎寺さんだけっすよ!」
ガーン!とでも擬音がつきそうなほどショックを受けている壁山の表情。かっこ悪いとか良いとか抜きにして、あれは壁山でなければ出来ないことだから素直に凄いとは思うけどな……どうにも本人は納得がいっていないらしい。二度とやらないと言いかけていたが、なんとか円堂がそれを諫めてくれていた。
「うぅ……やっぱり荒射さんが練習した方がいいんじゃあ……」
「時間があれば俺も考えたが、試合は一週間後だ。ものにするにはちと不安があるし……それに、俺は別の特訓があるからな」
「そんなぁ……………」
涙ぐむ壁山だが、こればっかりは仕方ない。それに、イナズマ落としは壁山の一つ大きく成長する機会でもあるんだ、あまり下手に手を出してその機会を奪いたくはない。
さて、俺も練習しないとな。
「……円堂、木野、大谷!ちょっといいか?」
「お、なんだなんだ?シュート練習なら幾らでも付き合うぞ!」
「珍しいね、荒射くんが私のこと呼ぶなんて。いつもは大谷さんに色々頼んでるのに」
「ち、ちょっと秋ちゃん!?」
練習に手を貸してもらいたい三人に声をかける。……何故か大谷は顔を赤くしているが、今の話のどこにそんな要素があった……?まあ、大谷とは席が隣で話しやすいってのもあるからな。実際異性では一番仲もいいし、マネージャーの中で話しかけやすいからつい頼っちまう。
と、まあ、そんなことはさておいて。以前から考えの一つにはあったものの、俺はストライカーだからということで遠慮していた特訓がある。あるんだが……今後のことを考えて、『必殺技』の方向は、あえて斜め上にズラしたままで行くことにした。
「必殺技の特訓なんだけどな、実は……、で……こういうのは……どうかなって……」
「……えっ、本気で言ってるの!?」
「でも、実際悪い話じゃ……それに……って、パターンも考えられるし……」
「いいじゃないか、面白そうだ!よっし、付き合うぜ荒射!」
拳を向ける円堂に、俺も合わせるようにして拳を突き出す。さあ、俺の選択が吉と出るか凶と出るか……頼りにしてるぜ、キャプテン。