まあなんで遅くなったかはリアルの事情で忙しかったのと、無印イレブンを家の倉庫で見つけてちょっとやってたんですよ。夢中になってました。ユルシテ……
フットボールフロンティア地区予選1回戦が終わり、ノートに刻まれたのは野生中との試合のスコアーー勝利の爪痕。壁山や染岡の原作とは異なる方向の進化のせいなのかは分からないが、他のメンバーの起爆剤にもなったようで凄まじいやる気を全員が見せていた。
次なる試合は、御影専農中。サッカーサイボーグとも言われている奴らを相手にする対策は既にできている。だからまあ、いつも通り俺たちは練習する、だけなんだが。
……………目立つな、御影の偵察隊。
皆揃って「ファンが出来た」なんて言ってるが、絶対に違うだろう。むしろなんであの光景をーーアンテナのついたカメラやらノートを叩く様子を見てそう思ったんだ?全員にそれを伝えればガックリと肩を落としていた。いや、仮にファンだったとしてもあんな怪しさ全開の連中からの応援でも嬉しいんだろうか。……嬉しいんだろうなあ。
さて、練習が開始してから凡そ一時間。河川敷に高級車がグラウンドに乗り込んで来たが、まあそんなことをするやつは一人しかいない。
「必殺技の練習を禁止します。理由はお分かりね、円堂くん」
リムジンから降りてきたのは、案の定夏未である。先日、新たに俺達のマネージャーとなった夏未は、理事の手伝いもあってか木野や音無、大谷ほど頻繁には顔を出せない。しかしやはり理事仕事をしているだけあってか、四人の中で誰よりも正確なデータを取ってくれている。有難いことだな。
「いきなり何を言い出すんだ?必殺技無しで、勝っていくのは難しいぞ夏美」
「円堂……さっき偵察隊がいるって言ったろ。御影用の対策があるとはいえ、必殺技を研究されたらそれだけでデメリットになる」
「同意見だな。それに必殺技だけがサッカーじゃない。パス一つにとってもやれる事は多い」
豪炎寺も俺の意見に同意してくれたが、円堂は頭では理解していても必殺技の練習もしたくて堪らないらしく、また突飛なことを言い始めた。なんでも、「誰にも見られない練習場で必殺技の練習をすれば良い」らしいが……そんな都合のいい練習場が、ましてや俺たち弱小中学にあるはずもない。普通なら、な。
さて、あの場所を夏美が見つけてくれるまでにどれくらいかかるかな。
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あれから一週間が経った。しかし、御影からの偵察は減ることは無く、それどころか寧ろどんどん増えている。
必殺技の練習をせずに、基礎的なものを固める練習だけを徹底しているがやはり必殺技という華がないだけに全員の士気は低めになっている。勿論それでサボったりするやつはいないが、まあ俺たちも人間だしな。やりたいことやれなきゃストレスだって溜まるだろう。
次の日にはとうとう、パラボラアンテナをつけた大型トラックが雷門に入ってきた。よくあんなものを入れることを許したなセキュリティ……。というか御影専農って一応農業附属中学だろ?なんであんなもん持ってんだよ。
唖然としている俺たちを他所に、中からは他校の制服を着た二人の男が出てくる。……片方はくっそやべぇ髪型をしている。なんで言えばいいんだ、あのモヒカントゲトゲヘッドは。いや、趣味嗜好は人のそれぞれだし口出しする気もないが。
「御影専農の奴等だな。音無、見覚えは」
「勿論あります!片方はキャプテンでありキーパーの杉森さん。もう片方はエースストライカーの下鶴さんです!とうとう直接乗り込んできましたか!」
「まあいいじゃないか、気にせず俺たちは練習するだけ!さあ、打ってこい豪炎寺!」
円堂の言葉に頷くと、そのまま全員がそれぞれの練習に入り直す。どれほど時間が経ってからか、急に杉森と下鶴が降りてきてグラウンド内に入ってきた。練習中に入ってくるな、と注意をする円堂に対して、杉森はこんなことを言い始めた。
「君達では我々に100%勝てない。何故必殺技を隠す?無意味だ」
「何を!勝負はやってみなくちゃ分からないだろ!それに、わざわざ無意味だっていうなら偵察の必要もないじゃないか」
「勝負……?何を馬鹿な、これは害虫駆除に過ぎない。我々がデータを欲するのは、より正確に駆除を行うためであり、次なる駆除の正確性を上げるためでもある。無論、荒射についても対策済み」
下鶴の言葉で、マネージャーも含めて全員キレた。特に染岡なんか殴りかかろうとしていたのを目金に必死で止められていたな。まあ流石に暴力沙汰は勘弁してもらおう。
原作だとやつらは豪炎寺のファイアトルネードをコピーしていたし、俺たちの必殺技をコピーして以降の試合も有利に進めたいらしいな。ま、どっちにしろ見せるわけないが。
そのまま言い合いを続けていると、キリがないと思ったのか円堂がPK勝負を持ちかけた。御影の二人は必殺技のデータが取れると思ったのか、二つ返事で了承してくれた。
……御影の戦い方は、情報収集やデータ分析から相手チームの選手の行動パターンを読み切り、必殺技に至るまでを解析して完封するものだ。ここで相手の情報を得られるなら、それはそれでアリなのか。円堂だし狙って言ったわけじゃないだろうがな。
大谷がPK開始のホイッスルを鳴らすと同時に、下鶴はボールを『踵で弾き上げる』。やっぱり来たな、あの技が。
下鶴の足に炎が纏わり付き、回転を重ねながら上空に舞い上がり……ボールを、ゴールネットに向けて蹴り落とすという、何度も見たドロップシュートが放たれた。
「ファイアトルネード!」
「なんだって!?ご、ゴッド……いや、間に合わない!熱血パンチ!」
円堂を含めた全員から驚愕の声が上がる。正真正銘、フォームも含めて寸分違わないファイアトルネードだ。あそこまで正確にコピー出来るのは見事と言わざるを得ないな……。
ファイアトルネードは一定水準以上のシュート技だ。コピーだろうがなんだろうが、それを習得できたこと自体は御影のレベルが高いことの証明でもある。
驚愕のせいか反応が遅れ、ゴッドハンドで発動が間に合わないと判断したのか熱意を込めたパンチングでボールを殴りつける。しかしやはりというべきか、熱血パンチではファイアトルネードの威力を殺し切ることが出来ずにゴールを許す。……今の威力ならゴッドハンドであれば止まったな。これは初見殺しみたいなもんだ、仕方ない。
「…………っし、次は俺たちの番だ。やらせてくれ豪炎寺」
「……わかった、任せたぞ染岡」
原作とは違い、染岡がPKに出ることとなった。杉森の守るゴールに向けて放たれたのは、青く煌めくエネルギーを込めたシュート。発生とシュート速度の速さゆえに、殆どの必殺技は間に合わないほどのスピードを備えた染岡の必殺技ーードラゴンクラッシュ・ザ・リトル。
ちなみに、染岡は原作のドラゴンクラッシュは野生中の試合を観察することで完成させていた。偵察が来る日の前に、俺と円堂、豪炎寺にだけ披露してくれたからな。……真面目な話、直前までドラゴンクラッシュか、リトルを撃つか分からないストライカーとなった染岡ははっきり言ってめちゃくちゃ脅威になっている。相手の選択肢をギリギリまで狭めるのだ。そりゃ強えわ……。
しかし、リトルのスピードに合わせられるキーパー技を杉森は持っていた。また、あの技が相手では曲がろうが一切の関係はないだろう。
「シュートポケット」
杉森が両腕を広げ、空気の膜を圧縮させたエリアを展開する。エリアはゴールを半球状に覆い隠しており、どう足掻こうとシュートである以上確実に触れてしまう。圧縮された空気のエリアに触れれば、一気にシュートは失速。威力もスピードも、完全に殺されたザ・リトルを鷲掴みにして杉森は見事に止め切った。完敗だな、こりゃ。
発生速度も熱血パンチには及ばないが、止められる技のラインを考えれば優秀すぎる技だ。……え、普通に全国クラスの技じゃないか?
「証明終了」とだけ言い残して杉森と下鶴は去ってしまう。グラウンドに取り残された円堂は「だー!ちくしょー!」と叫んでいたが、あればっかりは対応出来なくても仕方ないさ。まあ杉森の実力が高いことは疑いようのない事実だがな。
励ますように円堂の背を叩いてやる。
「ま、そんな落ち込むなよ。ゴッドハンドなら止められただろうし……俺たちには『秘策』があるだろ?」
「………そうだな。よし、落ち込んでばっかりもいられない!練習練習!」
さて、御影の奴らが試合の時にどんな顔をしてくれるか楽しみだ。……データばっかりに頼ってると、ろくでもないことになるぜって教えてやらねーとな。