流星一条って知ってますか???   作:ぽぽぽっぽ共和国

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5話:流星が落ちる

『さあ雷門からのゴールキックです!圧倒的な点数差、ここから逆転などあり得るのか!?』

「ふん、下らん……所詮、弱小サッカー部ではこの程度。『あの男』以外は三流も良いところだな……」

 

鬼道の呟くあの男、とは豪炎寺のことだろう。見えてるぜ、豪炎寺……木陰に隠れてるけど、試合開始からずっと見てただろ。なあ、お前の好きなサッカーをこんなふうに使われて悔しくねーか?

 

……俺は悔しいぜ。

正直熱血キャラなんて俺の柄じゃあない。だが、アーラシュは間違いなく熱血キャラだし、漢気溢れるキャラクターだ。皮だけでもアーラシュの俺のプライド的に、こんなところで豪炎寺が出てきてはい終わり、ってのは許せない。

……影野と松野のこともある。流石に友人二人を痛めつけられて、黙ってるほど薄情でもねーぞ、俺はよ……!

 

「頼んだぞ皆……!壁山!」

「はいッス……!は、半田さん……上がってくださいっス!」

 

円堂から放たれたゴールキック、ギリギリ動けるメンバーで一番近い壁山に向けて放たれた。

すかさず寺門が走り込んでくるが……壁山は、恐れずに突き進む。壁山の体躯なら、ビビりさえしなきゃキラースライドで吹っ飛ばされることなんてねえ。頼む、壁山……繋いでくれ……!

 

「キラースライドォォォッ!」

「ひぃっ!?こ、怖いっス……死ぬほど怖いっスけど、ここで逃げるほど臆病者でもないッス……!!!半田さァァァんっ!!!」

 

………よくやってくれた。あんなに怖がりな壁山が、キラースライドを真正面から受け止めて突っ込んできた寺門を逆に弾き飛ばす。

「なんだと!?」と向こうも驚いているが、壁山にはそれだけのパワーやタフネスが元々あるんだ。ビビりさえしなきゃ、よほどのことが無い限り正面から負けることなんてねえ。

 

壁山の放ったパスは一直線に半田の元へ。何をやっても中途半端、なんて言われてるけどよ、人一倍努力してるの俺は知ってんだぜ……!見せてやれ、お前の『必殺技』をよ!

 

「お前にならパワー負けするものか!喰らえ、キラースライド!」

「馬鹿の一つ覚えみたいに連発しやがって……!見飽きたぜ!ジグザグ、スパァァァァクッ!」

「な……!?」

 

佐久間がすかさずキラースライドを仕掛けるが、半田がジグザグに走るドリブルでスライディングを躱し、さらに地面から走る蒼い稲妻が佐久間を痺れさせ、抜き去った。帝国の連中には動揺が走っているが、そりゃそうだ。ナンバー2が、弱小に抜き去られるなんて考えないよなぁ……その慢心が、今からのゴールに繋がるんだぜ……!

 

「染岡ァァァァァァ!」

「任せろ……!ここまでされて、ボールを奪われるなんざ、してたまるかよ!」

 

信じる。

もはや俺にできることは、染岡を信じてただ走るだけだ。帝国のミッドフィルダーを潜り抜け、ディフェンダー……大野と万丈の目の前まで走り抜ける。俺にマークをしてきているがそんなもの無駄だ。このシュートは、ファイアトルネードのように天高く……いや、それよりもさらに天空へ舞い上がるシュート技だ。イナズマ落としよりもさらに上、高く高く、俺自身が流星となるために、何処までも高く飛び上がる……!!!

 

「なんだあの跳躍は……!?野生中の奴らよりもさらに上……ッ、源田、構えろ!何か仕掛けてくるぞ!」

「しかし、いくらなんでも位置が高すぎるぜ……!あんなところまでパスが届くものか!」

 

いいや、届く!染岡、お前ならできるはずだ。たしかに単なるパスじゃこの高さまで届くことはないだろう、だけど『シュート』なら届くはずだ!

ゲームではできなかったこと、シュート技をパスとして繋げる技術。細かいコントロールはいらない、ただ思い切り俺のところまで蹴れ、染岡!

 

「これが俺の……ドラゴン!!!クラッシュだァァァァァァァァァッ!!!やっちまえ、荒射ィィィィッ!」

「ここでシュートだとォ!?まずい、そのパスを渡すな!」

 

完全に想定外だったみたいだな、まさか今まで何もしてこなかったフォワードがこんな必殺技を打ってくるなんて考えもしなかっただろ。

雷門の最大の特徴は、この爆発力だ。円堂だけじゃねえ、土壇場になると全員がとんでもないパフォーマンスを発揮する。100%どころか、150%の力で突破しに来る……そして。

 

俺の元まで、ドラゴンクラッシュで弾かれたボールが、届いた。

 

「ご照覧あれ、ってな……!!!」

 

イメージするのは、基山ヒロトの天空落とし。右足で放つボレーシュートだ。……だが、威力はその比ではない。

 

この技の元ネタは、究極射撃。あらゆる争いを終結させる。文字通り「大地を割る」極大射程の、超絶遠距離攻撃。

純粋なエネルギー総量をして放たれるその射程は実に2500km。これが弓矢で放たれるというのだから、意味がわからない。

 

だが、その意味のわからないほどの威力の一撃を俺自身が今から撃つ。腹に力を込めて、痛みに耐える。足が軋みを上げるのを感じるが、こんなもの……影野と松野が庇ってくれたおかげで、一発分のエネルギーはあるんだぜ、帝国……!!!

 

「ば、馬鹿な……なんだあの桁違いのエネルギーは!?止めろ、なんとしてでもボールを奪え!」

「無理だ鬼道、シュート地点が高すぎる……!あそこまで誰も届かない!」

 

そしてこの技、最大の特徴は、この位置だ。イナズマ落としよりもさらに遥か上空からシュートを落とすため、一切の邪魔が入らない。故に、常に100%の威力で放たれる。

 

円堂、壁山、半田、染岡……四人が俺に繋いでくれたこの一撃、止められるものなら止めて見やがれ……!!!

 

流星一条(ステラ)ァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!」

 

ーーーーーーーーーーーー

 

まさしく、それは流星だった。

遥か天空から、圧倒的なエネルギーを伴って放たれた蒼い軌跡を描くシュート。

円堂たち雷門どころか、敵チームである帝国までもが顎を落とすほどの絶大的な威力を誇るエネルギー。

 

反応したのは、キングオブキーパーとしての誇りからか、源田だけ。即座にフルパワーシールドを展開するが……流星の前にそんなものは無意味だ。一秒と持たずにシールドは砕け散り、ゴールネットにボールが突き刺さる。

 

いや、それだけに留まらない。ゴールネットを巻き込んでボールは回転を続け、なんたることか帝国側のゴールそのものを弾き飛ばしてみせた。後ろにいた審判と観客は慌てて退いていたが、こんなこと誰に予想できるというのか。

 

『………ご……ゴール……雷門チーム、一点獲得!!!凄まじい、凄まじいシュートです!!!わたくし、一瞬実況を忘れてしまいました……』

 

角間の声で全員がハッとなる。そうだ、一点……荒射が一点入れてくれたんだ。ここから、あのシュートがあれば逆転だって夢物語じゃあない……!全員の目に、希望が灯る。

 

「……すげぇ……すげえよ、荒射……!あんなシュートできたんだ……!」

「見ろよ、帝国のやつらビビってやがる……!これなら……!」

 

なんであんなシュートを隠していたのか、勿体ぶっていたのか、色々と聞きたいことはあるがまずは荒射を称えてやらなければ。全員が笑顔を浮かべて着地地点に目を向けると……そこには。

 

「………ぐ、う、ううぅ…ッ……!」

「………あ、荒射……!?お前……っ、なんだその足は!?骨折しかけてるじゃないか!」

 

右足をかかえてグラウンドに蹲り、呻き声を漏らすストライカーの姿。右足は赤く腫れあがり、誰がどう見ても試合続行など不可能だ。

ただ、いまこの状況で試合のことを考えているものはいなかった。一重に荒射の人望か、投げかけられる声は心配のものだけ。

染岡と、慌てて駆け出したマネージャーの大谷が蹲る荒射に肩を貸して、ベンチまで運んでいく。

 

「なにこれ、酷い……!?」

「お前荒射、あのシュートってまさか……!」

「………一発切りなのさ、流星はよ。……染岡はグラウンドに戻って平気だ。大谷は……悪い、ベンチじゃなくて……そっちの観客席に、行ってくれないか」

「なに言ってるの、こんな大怪我して!早く手当てしないと……!」

「ーー頼む、大谷。ここで俺が抜けたら、雷門は人数が足りなくて棄権試合になる。……だから」

 

そう、だから。

 

俺は木陰から出てきて、驚愕の表情を浮かべている男……豪炎寺に、視線を向けた。大谷に支えられて、ふらふらと豪炎寺に近寄る。……差し出すのは、大谷が持っていたバッグから取り出した新品のユニフォーム。

 

「……………お前……」

「………豪炎寺、頼む。もう俺はこの試合には出られない。だから……円堂達を、助けてやってくれないか?」

 

 

後は任せたぜ、エースストライカー。




流石に源田の腕ぶっ壊すのはやめました。
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