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「サッカー?いいぜ、まあ一度もやったこと無くてもいいなら、だけどな」
俺と荒射が初めてサッカーしたのは、中学に上がってすぐのことだった。ボールを蹴ってる俺のことを遠目に見てたから誘ってみたんだ。やりたいのかなって思ってさ!
そしたら荒射のやつ、初心者だって思えないくらい鋭いシュートをしてきたんだ。ちょっとびっくりしたけど、体格もしっかりしてたし何かのスポーツでもやってたのかな?って聞いたら、弓道をやってたらしいんだ。
雷門に弓道は無いしどうしようか悩んでたらしくて、サッカー部に誘ったら来てくれた。初めての部活仲間だったなあ。
「くうううっ、やっぱり荒射のシュートは凄いな……!普通のシュートなのに熱血パンチでもビリビリ来る……!」
「まあフィジカルだけは染岡達にも負けねえなあ。……あ、円堂、向こうにボール転がってるぜ。取ってくるな」
荒射はめちゃくちゃ視力が良かった。2.2って言ってたっけ。どんなに遠いボールでも、どんなに細かい動作でも見逃さなかった。えっと……それから、そう。めちゃくちゃ正義感が強いやつなんだ。
鉄塔で俺と秋が不良に絡まれてた時も、大谷を倒れてくる看板から助けたのも、河川敷で稲妻KFCの子供達を助けようと、いの一番に飛び出したのは全部荒射なんだ。「そんなつもりじゃない」なんて本人は言ってるけど、誰かのために動けるのは凄いやつだと思う。サッカー抜きにしても、荒射と一緒に居て楽しかった。
影野や松野を誘ってきたのも荒射だったなぁ。影野は影が薄いことを気にしてるけど、試合中はびっくりするようなプレーや観察眼を見せるし、松野は初心者なんて思えないくらい器用なプレーを見せた。二人とも良いやつで、荒射が慕われてるのがよく分かった。あんなやつと一緒にサッカー出来て、雷門に来て良かったよ!
…………………そんな荒射が、自爆みたいなシュートを撃ったことに俺は怒ってた。荒射にも……そんなシュートを使わせてしまった、俺自身にも。
サッカーは楽しいものなんだ。サッカーでそんな、痛みに悶えて倒れるなんてこと、あっちゃいけない。荒射はもう病院に送られたけど、そんなもの関係ない。あいつになら、何処からでだって俺たちのサッカー魂は届くはずだ!
「これで終わりにしてやる……!沈め、デスゾーン!!!」
目の前に、闇色のオーラを纏った帝国の最強シュートが降り注いでくる。でも、不思議と恐怖なんか何処にもないんだ。それどころか、ボロボロな俺の身体から……心臓から、どんどん力が溢れてくる。
デスゾーン、たしかにすっげーシュートだ。でも、荒射の星が落っこちたみたいな、あのシュートに比べたらこんなもの……!
『……なあ、円堂。ゴールキーパーやってて辛くないのか』
『?なんでだよ。ちっとも辛くなんかないぞ』
『……いや、俺にはゴールキーパーは到底無理だって思ってな。四方八方から襲ってくるシュートを全部一人で受け止めないといけない。背負ってるのはチーム全員のゴールだ。重たいって、思ったりしないのか』
『思わない!』
……だって、俺一人でゴールを守ってるわけじゃない。
風丸や壁山、宍戸に栗松。松野、影野、少林、半田、染岡。そんで荒射に……豪炎寺。みんなが居てくれるから、俺はまっすぐシュートを受け止めることができるんだ。
見ててくれ、荒射。お前のシュート、絶対に無駄にしない……!これが、これが俺の!
「ーーゴッド!!!ハンドォォォォォォォォォッ!!!」
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あんなシュートを打てるやつが、世の中にはいるのかと思った。まるで流星、星が一つ落下してきたかのような凄まじいシュート。俺の必殺技では到底及ばない威力だろう、悔しいが認めざるを得なかった。
事実、やつのシュートは帝国のゴールそのものを弾き飛ばすような威力だった。源田とやらの必殺技に阻まれて尚、あの威力。
……ふと、脚が動いているのに気がついた。なにを馬鹿な……そんな、俺は今……なにを思った?
ーーサッカーやろうぜ、豪炎寺!
そうだ、本当は俺は……まだ。
ーー頼む、豪炎寺。
「………………サッカーを、しようじゃないか」
ストライカーとしての、血が滾ってしまった。俺の焔を、あの高みまで昇らせたいとそう思ってしまった。なにより……悔しいと。
あんなシュートを見せつけられて、黙っていられるほど冷静な……負けを受け入れられるストライカーではなかった、ということか。
ユニフォームを纏い、グラウンドを奥までただ駆け抜ける。後ろは振り返らない。あの男ならーーきっと、止めるだろう。
だから、俺が見据えるのはただ一つーー敵のゴールだけだ。
「豪炎寺ィィィィィィッ!!!いっけぇええええぇぇえッ!」
投げ渡された超ロングパス。足で捕まえて逃がさない。
………『おかえり』。そんなふうに、なぜかボールが語りかけてくれたような気がして、自然と笑みが溢れてしまった。
「抜かせるな!洞面、五条!」
「「キラースライド!!!」」
「……邪魔だ、どけえええぇぇえッ!!ヒートタックル!!!」
全身に炎熱を纏い、陳腐なスライディングを体ごと弾き飛ばす。少々荒っぽいプレーだが、貴様ら相手なら使うことを躊躇いはしない。
ゴールは目前。踵でボールを蹴り上げて、流星には及ばずとも高く飛び上がる。
焔を足に纏い、イメージするのは竜巻だ。そう、あの男のように……俺自身が、爆熱を纏った竜巻となる。
「ファイアァァ……トルネェエエェェェェッド!!!」
ゴールネットが揺れるとともに、ホイッスルと歓声が鳴り響いた。
…………俺は、グラウンドに帰ってきた。
少しだけ、今を楽しむことを許してくれ、夕香。