こんな作品を読んでいただいて本当にありがとうございます。また、作中での荒射の態度についていくつかの補足を。
この作品で彼はあくまでアーラシュの皮を被った転生者です。故に原作をなぞろうとかそういう話ではなく、荒射逹がどのように成長するかを楽しむ作品だと思ってください。
また、風丸への態度については作者の気持ち半分、理由あっての気持ちが半分ですね。
ご意見や感想、ありがとうございました
「次の対戦校を決めてあげたわ、サッカー部の皆さん。相手は……尾刈斗中学。負ければ勿論廃部ですので、せいぜい頑張って下さいな」
めちゃくちゃ急だなおい。練習の前、突然部室に乗り込んできたかと思えば、この学校の理事長の娘ーー雷門夏美がそんなことを言い出した。この子は一部、学校の権限を持ってるからマジだろうな。ていうか、中学生の娘に理事権限持たせんなよ……
さて、試合は僅か1週間後とのこと。ゴーストロック対策も含めて、できることをやるだけだな。
「それともう一人、入部希望者よ。随分と増えたわね、部員も」
「音無春菜です!新聞部との掛け持ちですが、マネージャーとして頑張ります!勧誘から相手の情報までなんでもお任せくださいませ!」
マネージャーがこれで3人、部員は13人か。あのクソみたいな状況から良くここまでになったよなぁ。ある意味これも帝国のおかげなんだろうか。これっぽっちも有り難いとは思わないけど。
「ま、んじゃよろしくな、音無さん」
「はい!あ、それと荒射先輩!あのシュートについて詳しく記事を……あっ、ちょっと逃げた!?」
逃げるわそら。二度と使わねーって言ってるだろうがよ!!!
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グラウンドで練習が出来る日とあってか、着替えてすぐに練習を始めることができた。新しく豪炎寺達がメンバーに入ったこともあって、いつになく皆やる気なんだが……ちょっとそのやる気が変な方向に向いちまってるやつがいるなぁ。悪いことじゃねーんだけど、ちょっと見てられねえ。
「…………くそっ、まただ!またダメだ……!なんでだ!?」
染岡だ。まあ俺は焦っている理由も知ってるが、中々に目立ってるな、悪い意味で。
パワープレイがいつになく多いし、力尽くでシュートを打ってるせいで狙いはめちゃくちゃ。壁山にはファウル寸前のプレーをしてるし、このままだと『ジャッジスルー』みたいな技でも覚えるんじゃねえかって気迫だ。俺は片手にスポドリを持って、地面に座り込んで頭を抱えている染岡に近づいた。
「よっ、染岡。どうしたんだよ、そんなに焦って。なんかあったのか?」
「………荒射……。……なあ……必殺技って、お前どうやって打ってるんだ?……あれっきり、もうドラゴンが、浮かばねえんだ」
「は?」
「見ててくれ」と染岡が立ち上がり、徐にゴールに向けてシュートを撃つ。……力強い足の振りだったと思う。だが、帝国戦のとき見せたようなドラゴンのオーラは全く見えない。威力も並みのシュートよりは強いという程度で、到底必殺技とは呼べない代物だった。打った本人がそれは一番わかっているだろう、シュートとは真逆に力なく染岡は項垂れていた。
「……ドラゴンクラッシュが撃てねえ。いや、撃てなくなっちまったんだ」
……必殺技とはイメージだ。自分の思い描く強い力を載せて、それをイメージとしてボールに反映する。もし染岡が本当に打てなくなったのだとしたら……それは、『ドラゴン』というイメージを失ってしまったからだ。何者にも打ち勝つという、気迫や自信。メンタルの調子は、染岡だけに限らずそのままあらゆる必殺技に響いてくる。
「…………なあ、染岡。そんなに気を落とすなよ、お前なら絶対撃てる」
「……けどよ、俺は豪炎寺みたいなテクニックもねえし、荒射みてえなパワーだって……」
「だって俺の『ステラ』は、未完成だったからな。一度ちゃんと成功させてるお前なら出来る、大丈夫だよ」
「…………そう、か。……ん?いやお前なんて言った?」
「ステラは未完成」
『はァ!?』
俺のつぶやきに、円堂や豪炎寺までもが叫び声をあげた。そりゃそうか、あんな威力のシュートが未完成なんて普通は思わない。というか、俺もつい最近……帝国との試合で撃つまでは、完成したものだと思ってた。
だが、違う。
俺の流星は、あんなチンケな威力じゃあないのが、あのギリギリの状況だからこそはっきりと分かった。
おそらく威力は、本来の20%も出ていないだろう。一重にその理由も、わかってる。
「おま、えっ、嘘だろう荒射!?」
「マジだよ、染岡。……原因はわかっちゃいるが、中々うまく行かなくてな。どうしようもねえこともあるし、俺だって足掻いてんだぜ、これでも」
…………俺がステラを使える理由は、俺がアーラシュであるからだ。
アーラシュという男は流星、人に煌きと希望を見せて、争いを止める男。
だが、俺はどうだ?中身の伴わない……見た目だけがアーラシュの男に、本当の意味でステラが、流星一条が放てるのだろうか。
答えは否。だからこそ、あの程度の威力なのだ。
アーラシュであって、アーラシュではない。それが今の荒射弓也という男だ。
どうすればあの大英雄のように、漢らしく、輝かしく勤められるのか。色々やってみてはいるが、当たり前のようにうまくはいかねぇ。
「…………ま、俺にも悩みはあるってことだな。なーに、だからってわけじゃねえけどよ、染岡にだって悩みくらいあるわな!気にすんな、困ったら円堂でも俺でも、なんなら会田さんとかにも相談してみりゃいいのさ。一人で悩んで出せる答えなんて、たかが知れてるしな」
「…………そうか、お前も悩んでんだな。……悪かったな、みんな。変に一人でギスギスして、八つ当たりしてよ」
染岡が、ボールを片手に頭を壁山や円堂に下げた。円堂たちは気性のやや荒い染岡が素直に頭を下げたことに驚いていたが、すぐに笑みを浮かべて「気にすんなよ!さ、練習の続きしよーぜ!」と染岡を連れて行った。
あの調子なら、きっと問題ないな。我らがキャプテンはびっくりするほどの人たらし熱血サッカーバカだ。あの熱血がどうにも嫌いになれなくて……みんなついて行ってる。円堂なら、染岡をちゃんと立ち直れるように付き合ってやれるはずだ。
「……っし、俺も練習すっか!風丸、目金、やるぞ!とりあえず今日はドリブル練習からだな」
「任せてくれ、これでもドリブル……速さには自信があるんだ。これを生かして必殺技にできないか検討中だよ」
「ぼ、僕はまだ覚束なくて……できればブロックの方を……」
「オーケー、一つずつやっていくか!尾刈斗に負けてられねえしな!」
そしてついに、尾刈斗との試合を迎えた一週間後。
最後まで、染岡はドラゴンクラッシュを打つ事ができなかった。