風鎧の冒険者   作:天魔宿儺

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1.3来ましたね!
無(理のない)課金でショウを当てて、育成やらなんやらやってたら投稿送れましたが、なんとか出来ました!
いやー、つぎの新キャラも楽しみだね!
リーク苦手な人いるだろうから名前は言わないけどね!
楽しみだね!


エピローグ

龍、龍だ。

6つの翼を持ちコバルトブルーとエメラルドグリーンの鱗を持つ、碧眼の龍。

苛烈に風を纏い、熾烈に嵐を引き起こす。

身を捩るだけで災害となるそれは、龍災を引き起こした災厄の龍。

 

【人の子、か。数奇な運命にあるものだな】

 

鈍く発光する目がこちらを見据える。

 

【バルバトスよ、これが彼の自由のためだというのか】

 

どこか悲しむような声色で覗き込んできた風魔龍は、目を細め、目尻に涙を溜める。

 

【身に余る力は命を縮める。我に出来る事は、これくらいだ】

 

大きな雫状の結晶体となった涙が、俺の胸の神の目に落ちる。

するとそれは沈み込むように体に風元素の力を巡らせる。

 

【人の身には有り余る力だ、依代(よりしろ)は必要となるだろう。真に力を使いこなしたければ、後に我の元へ赴くといい】

 

風魔龍は翼を広げ再度飛び立つ。

 

【もっとも、それまで貴様が生きていると言う保証はないがな】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここ、は……?」

「起きたの、随分遅かったわね」

 

目が覚めると、病室のような場所で、俺は横になっていた。

声がした方向を見ると、色白の肌に、血のように赤い髪の女が壁に背を向けて佇んでおり、その周囲には薬品などが置かれた棚や、濡れタオルと水の入った桶などが置いてある。

 

「アンタは……」

「私は教会のシスターよ、自己紹介は必要ないわよね?そんな情報、共有したところで意味ないもの。そうでしょう?冒険者ベント」

 

彼女はそう言いつつ、紙に何かを書くと伝書鳩の足に括り付け、飛ばす。

そしてこちらを振り返ると、氷のように冷たい目でこちらを見てくる。

な、なんだ?なんか怒らせることでもしたか?

 

「貴方、今回の依頼中に神の目を得たらしいわね?」

「え……あ、あぁ!そうだけど……」

 

記憶が曖昧だが、何となく覚えている。

あの時俺は、自分の胸に発生した神の目を使い、アビスの魔術師と遺跡守衛を撃退したんだ。

そしてその後力尽きて……。

 

「あの後、傷ついた貴方とフィッシュルを連れて、ベネットが教会に訪れたわ。あの時はみんな大慌てだったわ。何せ凄腕の冒険者である筈のフィッシュルが動けなくなるほど痛めつけられ、貴方に至っては右腕が欠損していたんだもの」

 

そうだ、確かにあの時俺の右腕は無惨にも吹き飛んで、機能しなくなっていた。

しかし今右側を見ると、そこには、元々あった腕よりは細いながらも、腕……のようなものがくっついていた。

これはどうやら、俺の自由に動かせるらしい。

 

「なんだこれ…?」

「それは義手、確か、『試作錬金義手(しさくれんきんぎしゅ)』だったかしら、流石のバーバラでも欠損した部位の完全な再生は不可能だったのよ、だから、貴方に興味を持った異t……西風(セピュロス)騎士団の錬金術師が、貴方のために(あつら)えたの。それを多少強引ながらも、バーバラが腕として神経をつなぎ合わせた。あとで礼をしに行くといいわ」

「そう、か……」

 

胸には神の目が埋め込まれ、右腕は妙な義手になり、なんだかびっくり人間みたいになっちまったな……。

 

というか、本人の許可もなくこんな訳のわからないものをくっ付けるのに、誰か反対しなかったのか?

もし意識があったら普通に拒否していたと思うが……しかし、個人的な感情とは裏腹に、この『試作錬金義手』は滑らかに動く。

焦茶色の、どこか遺跡守衛を思わせるカラーリングの義手の手を閉じたり開いたりして動きを確かめると、確かに自分の思った通りに動いた。

触れてみれば、僅かながらも感覚があるため、日常生活にもあまり支障をきたすことはないだろう。

 

文句の一つも言いたくなるが、片腕だと困っていたであろうことは事実。

大人しく喜んでおくか。

しかしバーバラ……たしか彼女はこの教会の祈祷牧師だったか。

 

彼女は、モンドのアイドルも兼任しているようで、モンド城には彼女のファンも多いと聞く。

そして同時に、彼女は水元素の神の目をもっており、特に治癒に関する能力が強いらしい。

赤髪の彼女が言うように、後で礼でもしに行った方がいいだろうな。

 

考え事をしていたら段々と頭が覚醒してきた。

そして、目の前にいる彼女に関しても、段々と思い出してくる。

 

「なぁ、あんたもしかして、いや、もしかしなくても……」

「やめて、それ以上言わないで、貴方と私は今が初対面、それでいいでしょう」

 

赤髪の彼女―――いや、ロサリアは、凍り付きそうな雰囲気を漂わせながら威圧的に言ってくる。

なぜそういうことにしたいのか理由は解らないが、きっと彼女がそう言うなら、必要な事なのだろう。

ロサリアとの関係性を一言で説明するのは難しい。

所謂、幼馴染のようなものだが、今ではほとんど会っていない。

10年ぶりか、もっと前か、随分と久しぶりに感じたが彼女はそうでもないらしい。

彼女の中で何か心境の変化があったのか、それとも元々"そう"だったのか、今の彼女はみるもの全てに疑いの目を向けながら、抜き身の刀身のように冷たい敵意を持っている。

知り合いであるということを隠したいのにどういう真意があるのかはわからないが、慎重深く聡明な彼女のことだ、俺とロサリアが知り合いで困ることがあるのかもしれない。

 

「そうだな……看病してくれていたのは、アンタか?」

「いいえ、私は教会のシスターとして貴方が変な気を起こさないか見張ってるだけよ、看病は……来たわね」

 

ロサリアが背を向けている扉の方から足音が聞こえる。

少し感覚が戻り始めているからなんとなくわかる、2人……いや、3人か。

足音は扉の前で止まり、コンコンとノックしてから部屋に入ってくる。

 

「シスターロサリア、ベントさんの容態はどう?」

「今、目覚めたところよ」

 

ロサリアはかわいらしい純白の修道服を着た少女を一瞥し、その後ろにいる二人を見ると「じゃ、私は向こうに行ってるわね」とだけ言って部屋を去っていった。

ロサリアと入れ替わるように入ってきた少女はおそらく、噂に聞く祈祷牧師バーバラだろう。

人のよさそうな笑みをこちらに向けてくる。

そしてその少女と共に来たのは、ベネットとフィッシュルの二人だった。

 

「ベント!起きたのね!」

「心配したんだぞ!!」

「ベネット!無事だったか……よかった!」

 

だが、炎元素を扱うアビスの魔術師とどうやって勝ったのだろうか。

気になって聞いてみると、すぐ答えが返ってきた。

 

「あぁ、あの後雨が降っただろう?炎元素のバリアは水元素にめっぽう弱いんだ。だからあの後すぐにアビスの魔術師と一騎討ちして、あとは流れだな!俺にしては幸運だったぜ!」

 

"後は流れ"で丘々人(ヒルチャール)の大群を追い払えるのは、さすがと言うべきか。

ベネットも一端の冒険者、と言うことだろう。

 

「そんなことよりベント!お前2週間も眠りこけやがって!心配したんだからな!」

「2週間!?そんなに寝てたのか!?」

 

そんなにも長時間寝ていたら、まともに食事も取れていないだろうに、しかし俺は不思議と空腹感を感じなかった。

驚く俺の様子を見て、バーバラは首を傾げる。

 

「あれ?もしかしてシスターロサリアから聞いてないの?」

「全然、アイツ話さねぇもん」

 

まさかそんなにも長い間、意識不明の状態が続いていたなんて。

自分はもう少し胆力のある方かと思っていたんだが、神の目を得た影響か、急に元素力を扱えるようになったせいで体が耐えられなかったのか。

まぁ、原因は多々思いつく。

 

おそらくは……この、心臓と同化した神の目が関係しているのだろう。

ただ神の目を得るだけではこんなことにはならないはずだ。

神の目は"外付けの魔力器官"であって、本来持ち主と同化するような代物ではない。

これが体に馴染むのに、あるいは"体が神の目に馴染むのに"相当の時間を要したのだろう。

 

「そうなのね……それじゃあ、ことの顛末(てんまつ)を説明させてもらうわ」

 

バーバラから説明を受ける。

 

もう粗方思い出していたが、俺の意識があった時の出来事。

 

神の目を得た事。

 

神の目が俺の心臓と同化した事。

 

その力でフィッシュルを守り、アビス教団の襲撃者を撃滅した事。

 

そして俺の意識を失った後のこと。

あのあとフィッシュルが応急処置をし一命を取り留めた事。

合流したベネットと共にモンド城に担ぎ込まれた事。

 

そして、腕のいい錬金術師の診断によると、神の目の摘出は不可能だった事。

本人の許可なく義手を取り付けた事。

その後2週間、意識不明の状態が続いた事。

 

「腕の件はごめんなさい、緊急時だったから、誰も強引な彼を止められなかったの」

「いや、ちゃんと動くし、それはもういいんだ、気にしてない。そんなことより……そろそろ服を返してくれないか?」

 

重症患者として入院していたためか、俺の今の格好は裸も同然、というか裸だ。

体にかかっているシーツさえなければスッポンポンと変わらない。

俺は元々羞恥心はあまり感じない方だが、だからといって人と面と向かって話すのに、いつまでも裸というわけにもいかないだろう。

 

バーバラは思い出したかのように俺の体を見て顔を赤くすると、「貴方の着替えはすぐそこの台の上にあるから、着たら合図してね」とだけ言って、二人を連れてそそくさと部屋を出て行った。

 

三人が出て行ったことを確認すると、俺は日が差す窓から外を覗く。

小さめの窓からは昼間の、穏やかなモンド城の風景と、象徴の風神像が見える。

―――昼間の景色をまともに見たのは、ここ数十年で初めてだった。

 

関節を除く全身に包帯を巻き、長袖、長ズボン、鈍く黒光りするブーツを履く。

上着にロングコートを羽織り、フェイスベールで顔の下半分を隠したあと、帽子をまぶかに被り、俺は鏡で自分の姿を確認した。

 

いつもの自分の姿が、そこにはあった。

陽の光を通さない漆黒で塗りつぶされた冒険者装束。

必要だからそうしているだけで、なにも格好付けている訳ではない。

昔は西風騎士団に職質にあったりしていたが、今ではみんな、これが俺の姿であると覚えてくれている。

合図をすると、三人が再び部屋に入ってくる、

 

バーバラは少し驚いたような顔をするが、ベネットとフィッシュルはいつもと変わらない。

いや、フィッシュルは少し泣きそうになってるか。

そう思っていたら、フィッシュルは突然俺の胸に飛び込んできた。

慌てて抱き止めると、お互いに抱き合うような形になってしまう。

 

「死んじゃったのかと……思ったのよ……」

 

消えいりそうな声が聞こえてくる。

俺が元の格好に戻ったからか、ようやく実感が湧いてきたのだろう。

体を震わせ、年相応の少女のようにすすり泣くフィッシュル、こんな姿を見るのは初めてだし、聞いたことも無かった。

いつもの毅然とした態度からは考えられない姿に、正直ギョッとした。

 

「私の所為よ……ごめん……ごめんね……」

 

自分のせい。

自分を守ろうとしたから、途切れ途切れにつぶやく彼女の言葉に、勘違いや誤りは一つもなかった。

現実主義の冒険者らしい、賢い考えかただが、その分慰めるのに苦労する。

嘘や方便を言えばわかってしまうからだ。

言葉に詰まる俺は、ただ、俺の胸の中ですすり泣く少女が泣き止むまで、そっと抱きしめるだけに留めた。




というわけで、序章はフィッシュルートでした。
ベネットが空気?
あいつは不幸だからな、物語の重要な立ち位置にもならなければ、メイトリクスにも勝てない。
野郎オブクラッシャーだ。

さて、序章が終わりましたが、次からはモンド編二章、アカツキワイナリー編です、お楽しみに。

ちなみにこちらがベントの外見イメージになります。
落書きですのであしからず。


【挿絵表示】

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