僕のヒーローアカデミア~究極生命体幼女RTA~ 作:ヴィヴィオ
目を開ける。視界に飛び込んできたのは大きな貝殻。この貝殻型の巨大ベッドには水を霧状にして噴出する装置が取り付けられており、私達のような地上や水中で活動できる者達に使えるようにされているわ。
「んん……」
横を向けば、水が張られているマットに身体の大半を沈めて眠っている幼い少女の姿が見える。彼女は昨日、私の娘となった子だ。
「起きたか」
「ええ」
身体を起こして視線を声が聞こえた方にやると、そこには夫であるギャングオルカこと、
彼は手に携帯端末を持ちながら、仕事をしている。一昨日までは私と一緒に寝ていた。薬を飲んだ私が気絶する限界までして、そのまま一緒に寝ていたのだけど流石にそういうわけにはいかない。
「その様子だと問題はなかったようね」
「ああ。ぐっすりと眠っている」
「そう」
この子は色々と問題がある子供らしい。違法な研究所で生み出された人造生命体の可能性がある上にその研究所で戦闘訓練を受けていた。同じ姿と似た個性か同じ個性をした幼い子供達で殺し合わせ、戦闘技術と個性を極限まで高めていく。
死んだ子供は文字通り、勝利した子供の血肉となるというおぞましいことも行われていたみたい。そうとわからないように加工されていたようだけど、この子の話と残っていた資料などからそれは事実みたい。確かに個性因子を増やすという上では大量のクローンを作って採取するというのは理にかなっている。倫理を完全に無視したらね。
そんな状態で過ごしてきた彼女はある程度まで育ち、遂に暴走した。正確なことはわからないらしいけれど、残っていた音声データを復元した限りでは暴走し、研究者達を襲っていたのは事実みたい。その後、研究者か彼女かが自爆スイッチを押して逃亡したとのこと。
この時にプロヒーローのハウンドドッグから逃げるために川に飛び込んで港街まで逃亡したことはわかっているわ。その後は何故かまるで目的が決まっているかのように島へと向かっていたようね。その途中で空悟と出会って個性を覚えられたみたい。
まあ、その辺りはどうでもいいわ。私には関係ないし。問題は暴走する可能性があるということ。寝ている間に暴走したら私や空悟でも対抗できるかわからない。その為の対策としてどちらかが起きて見張っている必要があるというわけね。
「それじゃあ、交代する?」
「ああ。後、これを見ておいてくれ」
「なんなの……?」
「名前だ」
「確かに考えないといけないわね。でも、本人の要望が要るでしょう」
呆れた表情をしながら、タブレットに書かれた名前の候補を確認する。この人、本当に子供が好きだから、いっぱい考えたみたい。
「それと仕事はちゃんとしたの?」
「終わらせてある」
「そう。それじゃあ、起こしましょうか」
彼女を抱き上げて水が張られている貝殻型のベッドから出る。この部屋の水位は三十センチぐらいなので、個性を使ってすべるように移動する。
空悟も立ち上がってこっちによってくる。彼の頬に軽く朝のキスをしてから服を着て、この子にも着せてから部屋を出ていく。
廊下も水が張ってある。地下部分にある居住空間は自由に水位を調整できるようにしてあるので、泳ぐことも可能。一メートルぐらいまであげて生活していたけれど、この子がきたので、水位は下げてある。
リビングルームに移動する。ここはひときわ高い位置にあって五メートルほど高い場所と低い場所の二つで構成されている。
低い場所は水中でも寛げるようになっていて、家具も複数置いてある。ガラスを隔てた先にある海へと繋がっている扉もある。ペンギン達の出入りもここからしている。
階段を上った先にある高い場所は水が来ないように設計してある場所で、普通のソファーや防水対策を施した電化製品やソファーなどが置かれている。ここは地上で生活するためのスペースね。
キッチンも当然、ここにあるのでこの子を寝ているペンギン達の横に置いてから朝食の準備をしていく。しっかりと監視しながら料理を作っていく。
「んにゅ……」
料理をしながらこれからのことを考える。彼女が私の個性を手に入れたら、問題はない。それが無理でも、私の子供が出来にくい体質を改善してくれたらなんの問題もなくなる。
一応、せっついてきている実家には個性が発現しなかったから、黙っていたと言えばいい。この子の存在はトップシークレットとして公安以外には秘匿されることが決まっている。そういう話を昨日来た、警察のワンちゃんから聞いたわ。
もちろん、空悟が私を誘拐したというように見られたことについては問題ないことになっている。相手も一応、という感じで手錠をかけただけで、すぐに外している。婚姻届もしっかりと出しているし、夫婦間の話し合いから私が飛び出したので、連れ戻しただけだということを言ったら納得してくれた。
そりゃ、夫がいきなり知らない子供を連れてきたら喧嘩になるのは当然だもの。その説明も兼ねて彼等がやってきたのもあったので、そのままお話をして今まで隠していたということになった。出生届けなども公安が細工してあたかも出されていたかのように調整してくれるらしい。DNAを弄ることが出来る彼女の個性からして私と空悟の細胞を入れたら判別なんてできないもの。後は関係者が黙っていれば問題なしね。
「くっくく……これで好き勝手に遊べるわ」
育児はしないといけないけれど、通院とかも必要なくなったし、本格的に練習を再開すればいい。この子にも教え込んで一緒に滑るようにすれば育児も同時にこなせるしね。
そもそも私が空悟と結婚を承諾したのは、彼がアイススケートや海上で滑ることなどを続けていいと言ってくれたことと、彼の実家が水族館やクルージング船を作って売ったりするドックを持っていることが個性以外の理由だもの。
実家としては造船所や潜水艦が欲しいけれど、許可とかを取るのは非常に面倒でノウハウもない。それに貧弱な身体をシャチの個性で強化でき、エコーロケーションなどで深海でのやりとりも可能になる。そうなると実家としては優良物件にしか見えない。
空悟の実家は私達が手に入れる海底資源を格安で手に入れることができるし、海流の操作ができるとなると船を安全に航行させることもできる。
故に両家の思惑が一致して結婚することは強制になった。私以外にも候補がいたけど、先の理由から豚共に嫁がされるよりは遥かに優良物件だから私も立候補した。何度かデートを重ねる上で、私が滑っている姿を気に入ってくれたのか、彼も乗り気になって年齢が離れて幼い私を選んでくれた。私の方も何度か襲われた時、身を挺して守ってくれたから安心もできた。まあ、その襲撃自体が実家の仕業だったみたいだけど。
問題は結婚した後。薬まで使ってるのに全然子供ができないのよね。そのせいで実家からグチグチと鬱陶しいくらい言われるし、互いにすごく困っていた。そこにこの子のことだから……頭に来て離婚届まで用意した。結果的には本当にこの子は空悟の子供じゃなかったからよかった。
「んにゅ……ここ……どこ……?」
「ぴぎぃ!?」
「起きたのね。それともうちょっと力を抜いてあげなさい」
起きたあの子はペンギンを抱きしめている。かなり力が入っているのか、ペンギンは悲鳴をあげている。
「朝ご飯?」
「ソレは朝ご飯じゃないわ。食べたら駄目。食べたらすごく怒るわ」
「……ん。食べちゃ駄目……」
「撫でたり、身体をこすりつけたりするのはいいわよ」
「ん」
言ってあげると、その通りにやっていく。気に入ったのか、お腹に顔をこすり付けだした。尻尾で別の逃げようとするペンギンを捕獲して、サンドイッチのようにモフモフを堪能していく。可愛いので食べなければ問題ないとうことにしておきましょう。
「朝食はスクランブルエッグとパン、海藻のサラダよ」
「ん!」
食べ始めたのだけど、色々と問題がある。仕方がないので彼女の後ろに立ってフォークの使い方などを教えていく。
「ほら、こうするのよ」
「難しい……」
「ちゃんと出来なかったら、ごはんが食べられないからね」
「う~」
「その代わり、ちゃんとできたらもっと美味しいのを食べさせてあげる」
「おいしい、の?」
「ええ。ちょっと待ってなさい」
冷蔵庫からおやつの時間に食べるために用意しておいたケーキを取り出し、彼女の目の前に置いて一欠けらをフォークで切り取って口へとはこんであげる。
「あ~ん」
「っ!?」
食べるとすぐに満面の笑みを浮かべて手を出してくる。けれど、私は取り上げて冷蔵庫にしまう。
「ちゃんと出来たら全部あげるわ。できなかったら私が食べる」
「がおーっ!」
「威嚇しても無駄よ」
力づくで奪おうとしてくるけれど、海流を呼び出して押さえ込む。ぐるぐると空中に生み出した海流で回してあげると、大人しくなった。
「はい。それじゃあ、再開ね」
「ん……」
ちゃんと教えると、すぐに覚えたので頭は悪くなさそうね。やっぱり知識が無いだけみたい。これなら仕込んだら良さそうね。
ちゃんと頑張ったご褒美にケーキを食べさせてあげる。それが終わったら、手を握りながら家の中を案内して施設の使い方を教えていくことにした。
空悟が起きてきたので、三人で話し合いをしていく。差し当たって一番必要なのはこの子の名前だ。
「名前は何がいいか? 一応、考えた候補はこれだけある」
「ん~神様が、レッちゃんって呼んでくれてるから、それがいいの」
「神様?」
「神、か……」
「大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫だ。おそらく、別の作り出した人格があるのだろう」
「なるほど」
二重人格か、それとも別の誰かから指示されているか。どちらにしろ、その神様ってのがろくでもない物の可能性があるわね。とりあえずは病院……は嫌がるみたいだし、CTスキャンの機械でも買って調べてみましょう。機械は使い終わったら、豪華客船を作るらしいから、そっちに回しておけばいいでしょうしね。
「それならこれはどうだろうか? 水蓮だ」
「確かにそれならレッちゃんでもいけるわね。私達の娘としても水を入れるのは良い事だわ」
「ん。字、こっちがいい」
「錬の文字か。 金属を良質のものにきたえ上げたり、心身や技をきたえ上げる意味はあるが……」
「ん。これがいい。鍛え上げる。はやく、はやくならないといけないの」
「いいじゃない。徹底的に鍛え上げるなら同じよ」
「まあ、いいか。将来、ヒーローになるのなら重要なことだしな」
「待ちなさい。将来はプリマよ」
空悟と二人で睨み合う。しかし、どちらも引くつもりはないのが、話し合いでわかっていた。
「平行線ね」
「ああ、平行線だ」
「なら、仕方がないわね」
「ああ、仕方がないな」
私達は水錬という名前に決まったレッちゃんの腕を両方から取る。
「うにゅ?」
「「両方だ」」
プリマのヒーローにすればいいだけよ。この子の個性ならそれが十分に可能になる。まずは英才教育の準備をしましょうか。
「メル。服とか必要な物を買ってきてくれ」
「空悟も一緒に来てちょうだい。荷物持ちが必要よ。それに護衛もね」
「それもそうか。社員の女性も同伴させよう。流石に女性物の売り場には行けないからな」
「わかったわ」
持って来させてもいいのだけど、それじゃあ面白くないし、教育にもよくはない。どちらにしろ、まずはお出かけね。
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