師匠シリーズの不完全オマージュを書かせていただきました。
オマージュなのでキャラも何もかも持ってこずに、
悪魔で「師匠シリーズ」の「関係性」と「雰囲気」をこの幻想郷に入れてみただけの作品となります。(時系列のバラバラ感とか書きたかった…)
駄文で見にくい点や矛盾が多いと思いますがこれから徐々に改善するよう努めます。
僕には師匠がいる。
拳法とか仙人とかそういうモノの師匠ではない。
オカルト道の師匠だ。
人間なのに人里には住まず、少し離れた魔法の森に家を構えている。
なぜそうしているかは今は書かないでおこうと思う。
師匠の名前は霧雨魔理沙といって恰好といい趣味といい、彼女はいわゆる魔女だった。
いつからか彼女と出会った後に、彼女を畏怖と敬愛を込めて「師匠」と呼んでいた。
師匠は霊感が強く、妖怪がチビッて逃げるような幽霊にさえ喜んで会いに行く。
それはもう、幽霊のほうが可哀そうに思えるほどだった。
時にはいわくつきのアイテムをどこから拾ったのかそれを見せてくれたりした。
今思えばあれらは彼女からしたら僕を囮にして何かと試していただけだったのかも知れない。
それらを確かめる術はもう無いが、これからはその師匠と体験したことを書いていこうと思う。
★
これは2007年の秋頃の話だ。
妖怪の山の木々は既に枝先を赤や黄、緑などに化粧し始めていた。
僕は電話で「良いものを拾った」と言われたので師匠の家を訪ねた。
といっても住んでいるのはほぼ隣なのでわざわざ電話じゃなくても、とは思う。
師匠の家のドアをノックする。
木製のドアからコンコンと軽い音が鳴る。
中から「開いてるぞ」と聞こえたので「知ってます」と言ってドアを開ける。
師匠の家はセキュリティがほぼないに等しい。
なら勝手に入ればいいと思うかもしれないが、仮にも女性の家なので勝手に入るのも悪いと思って毎回聞くようにしている。
開けると、温かい空気と薪の焼け爆ぜる音が僕に飛び込んでくる。
まだ秋になったばかりなのにもう暖炉をたいているのか、と思い師匠に目をやると師匠は散らかった部屋の中で何やら小さな箱の中を難しい顔で見ていた。
「前にも言いましたけど鍵はかけたほうがいいですよ」
「こんな所には誰も来ないから大丈夫だ」
師匠である魔理沙さんは箱から目を離さずに言った。
僕は勝手に師匠の向かいにある椅子に座りながら聞いた。
「さっきから何を見てるんですか」
「ん? あぁこれか。これなぁ、さっき分かったんだけどどうやらダイヤモンドらしい」
ニヤリと笑った師匠が小さな箱から石を取り出してそれを机に置く。
「ダイヤモンドってあのダイヤモンドですか?」
「そうだ」
それを僕は手に取り、少し上にかざしてみる。
それは確かに宝石の様で暖炉の揺らめく炎が宝石と重なり、煌々とその石を輝かせていた。
しかし形はとてもいびつで本で見たような綺麗な形はしていなかった。
瞬間、僕の背筋に冷たい何かが走った。
僕は勢いよく立ち上がってついダイヤモンドを机に放りだしてしまった。
師匠は「バカ!!」と言いながらその宝石を取り上げる。
幽霊とはまた違う怨念というのだろうか、悪意の塊の様なモノを感じた。
今、この部屋には僕と師匠の二人だけのはずだ。なのに何故か視線を感じる。
「し、師匠… それ本当にダイヤなんですか? 明らかに普通じゃないです。」
「当たり前だ。私は普通のダイヤなんて拾ったりしないぜ」
師匠は続けた。
「これはたぶん、ホープダイヤモンドってやつだな。
普通のダイヤは白く光っているだろ? まぁといってもそれは一般的なダイヤなだけで本来は色んな色があるんだ。でもこれは青いダイヤだ。なんでか分かるか?」
僕は勢いよく首を左右に振った。
「実はこの青いダイヤにはホウ素が含まれていると言われいる。しかし謎なのはダイヤモンドが自然につくられる場所にはホウ素なんて存在しないはずなんだ」
相変わらずその知識はどこで手に入れたのか、そもそもそんな宝石をどこで拾ったのか、いろいろ不思議だったが僕は一番気になることを聞いた。
「じゃあ、さっき僕が感じたものは何なんですか」
「それは今から話そう。
このダイヤはインドで掘られてからルイ14世に渡ったと言われていてな」
師匠はそのホープダイヤを箱に閉まってしまった。
「ルイ14世は当時113カラットのサイズだったダイヤをハート形にカットしてしまったんだ」
しかし先ほど見た宝石はハート形どころかそこらへんに落ちている石の形の様に見えた。
「ハート形にカットした際、確か69カラットになったんだ。」
僕はそれを聞いて何故かゾクゾクした。
師匠は何が言いたいんだろうか。
「このダイヤ、
例えば、ルイ14世はこれを購入した途端に政治が傾き始めた。ルイ15世は病死だ。ルイ16世はみんな知ってるフランス革命で処刑されている。他にもその後に宝石ブローカーが購入するも発狂して自殺したらしい。」
「もしかしてそれって…」
暖炉のせいだろうか、酷く口の中が酷く乾く。
僕は恐怖心からか先の言葉が声にならなかった。
背中を振り向くのが怖くなっていたのだ。
「いいや、コレは違う。そもそもハート形じゃないし力も雑魚すぎる。」
当たり前だが、師匠も気づいていたのだ。さっきから家のドアの前に怪物の様な黒い何かがいる気がした。
何かを言っている気もする。あれが雑魚だって? 僕は今にでもそのダイヤを捨てて師匠と博麗神社に駆け込みたかった。
「師匠、それ捨てましょう。持っているとヤバいですよ。」
焦る僕を師匠はなだめるように「まぁまぁ」と言う。
「ルイ14世がカットしたとき、69カラットになったと言ったが残った44カラットのダイヤはどうなったんだろうな」
師匠はそう言ってダイヤの入った箱を軽く振った。
★
あの時、師匠がホープダイヤを見せてくれた理由を今になって考えてみると分かるような気がする。
師匠は今でもダイヤを持っているのだろうか。それは分からない。師匠の所持していたアブナイ物の数は今でも計り知れないのだ。
師匠の言葉を今になって思い出す。
「世界中にある『持っていると死ぬ』というモノを集めるとどうなると思う?」
師匠の言う世界中というのはおそらく、幻想郷だけでなく外の世界を含めた「世界中」だろう。
師匠は笑顔で僕の答えを待っている。
僕はあの時なんて答えただろうか。