おさかな海賊団の幸せな旗   作:つヴぁるnet

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56日目 〜 外海

〜 西北の外海 〜

 

 

 

マンタ娘の一騎打ちから数日後のことだ。

 

 

「は、はくしょん! ……寒っ!!」

 

 

昨日の夜は軽く発情したエヴァによってしっぽり絞られたのでやや疲れ気味。 体力の関係で俺は午前中のお仕事をサボるため、見張り台に逃げた。 北に近づく毎に寒さがハッキリとしてきたので薄着ではくしゃみを耐えれない。 防寒着を個室から持ってくれば良かったと航海しながら後悔してるところだ(激寒)

 

 

 

「ふぇっっくしゅん!」

 

 

アホ(激寒)なこと言ってたら余計にさむくなってきた。

 

何やってんだ俺は……

 

不安定な睡眠を諦めて周りを眺める。

 

 

「んあ? 何だあれ?」

 

 

水平線の先で小さな物体を見つける。

 

海面に浮かぶものと言えば船だろう。

 

俺は5日ぶりの他の船を見つけた。

 

 

 

「確認するか」

 

 

 

俺はデュナメスが使用する『スナイパーライフル』を召喚してスコープを覗き込む。 別に狙い撃つつもりは無いぞ。 ただこのマキブは倍率スコープが搭載されてるから遠くを覗き込むのに丁度良いのだ。 ダブルオー系の武装を望遠鏡代わりに使うなんて随分と贅沢だけど気にしない。

 

とりあえず俺は最近寒く感じてきた空気とともにスコープの中に写される船を確認する。 船の側面には何も番号は書かれて無いがとても立派な船だ。 密漁船でもなければ違法な船でもない。 てか大陸から離れたこの外海に密漁船とか死ぬ気かよ、笑っちまう。 もちろん海賊船の可能性はあるが船の見た目からしてそのような感じは無いから少し判断に困る。

 

もし海賊船でも無いのならあの船は手練れの冒険者達が乗ってる船って事になるだろう。

 

仕方ない、サボるために見張り台へ逃げたがアシェルと早速判断を問うか。

 

 

 

「おーい、アシェル」

 

 

 

「?」

 

 

 

ピューーーン

 

シュタッ

 

 

 

「っとと」

 

 

「やれやれ、見張り台から落ちてくるとは随分な登場だねぇ」

 

 

「網を掴んで降りるより早いし。 それよりも10時の方向を見ろよ、何か船が見えるぞ」

 

 

「?」

 

 

 

アシェルは自分の望遠鏡を胸の谷間から取り出して、示した方向を覗き込む。

 

すると…

 

 

 

「おいおい、なんであの大国の船がこんなところにあるんだ?」

 

 

 

アシェルの言う『あの大国』とは何のことだろうか? 海軍では無いと思うが一体?

 

 

 

「あれは海戦向き船じゃないからドンパチする事はないと思う。 そのためこちらから何もしなければ安全だと思うが……あまり接触はしない方が得策だねぇ」

 

 

「そうか。 でもなんだろうな? あの船の進行方向から見ると北に行ってるみたいだし、俺たちと同じだぞ?」

 

 

「だな。 でもあの船とは距離を取りながら遅れて行こうか。 何があるか分からないからねぇ」

 

 

アシェルは警戒を呼びかけながら子分に指示を出す。 あまり寒い海域には居たくないが仕方ないな。 安全策を選んで寒さは耐えよう。 今日は暖かいポトフでも作るか。

 

 

 

「因みにあの船には人が乗ってるのか?」

 

 

「お? そうだが……なんで人だと分かったんだい?」

 

 

「アシェルは『大国』って言ったからな。 だから人なんだろうって思った」

 

 

「そうか。 まぁ、隠すことでもない。 たしかにあれは人が乗っている。 てか、人が主流で動かしてる命知らずな船だな」

 

 

「人間でこの外海に来てんだ。 それほどに腕が立つ連中なんだろうな。 ……で、あの船はどこの国の船だ?」

 

 

「あれは【サバサ】の船だな」

 

 

 

それほど大きくないサバサの船を眺めなら教えてくれた。

 

 

 

「サバサか。 しかしこんなところに何の用だ?」

 

 

 

ふさ、ふさ…

 

ぱら、ぱら…

 

 

 

「おおや?」

 

 

「雪だな。 じゃあ今日はやはりポトフだな」

 

 

「突然何のことかわからないが賛成だな、…って事で言い出しっぺのフラッグが作れよ」

 

 

「作るのは良いけど冷たい水で野菜洗うの嫌です。 マーメイドなら水の温度は気にならないんだからそこだけ頼むよぉ〜」

 

 

「やれやれ、困った旦那さんだ」

 

 

 

本格的に北の外海に踏み込んだ俺たちはサバサの船と距離を取りながら目的地に向かう。 しかしサバサの冒険者はこんなところに来て何がしたいのか? 外洋のモン娘と命張り合いながらの航海に見合う価値ある冒険でも見つけたのか?

 

 

だが…

 

 

「なーんか忘れてるよな俺? サバサから何かがやってくる件について、なんかあったよな?」

 

 

 

小さなイベントなんだけど、ちょっとした驚きがあったよな? ……まぁ、覚えてないってことは大したことではないってことなのかな? とりあえずこの件は保留でいいや。

 

じゃあ大根のポトフ作るぞ〜。

 

 

 

「芋はやめてよね!」

 

 

「ポトフはそもそも芋だろうに」

 

 

「だめ!」

 

 

 

ポトフ関連でエヴァと一悶着ありそう。

 

おさかな海賊団は今日も平和です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜 雪越えの洞窟 〜

〜 57日目 〜 朝 〜

 

 

 

夜が明けた冷たい朝、とうとう目的の場所に辿り着いた。 そしてここは30年前に北西の海に落ちてきた『天界』………って事実は俺達プレイヤーだけが知る事であり、ボニー達にとっては未知なる大地だ。 外海の環境に立ち向かえないと当然この先はお断りな場所だ。

 

そしておさかな号も海岸に寄せて停めたが、その隣は崩壊した船が無惨に流されそうになっている。

 

 

 

「ボニー、アシェル、これって…」

 

「うむ、前日に見つけたサバサの船だな。 上陸と共に壊れておる」

 

「この船に砲塔は搭載されてないな。 船の作りからすると漁船でもない。 甲板はかなり丈夫だから外海の激しさには耐える仕組みだ。 そうなるとただ海を渡るための船だな」

 

「じゃあサバサはこの大陸に手慣れの冒険者かまたは調査団を派遣して調べさせようとした感じか?」

 

「おそらくそうなるな。 しかしこの壊れようだと上陸の間際に敵から船ごと襲われた可能性があるぜ。 乗組員は船を捨ててギリギリ逃げたと思うが…」

 

「骸はないな。 なんとか逃げたんだろう」

 

「この船の行方も気になるが我等もここから先は未知なる世界じゃ、気を引き締めるぞ」

 

「わかった」

 

 

 

俺たちは実力のある者だけの小編成で向かう。

 

今回は俺とボニーとアシェル、そして数名の子分で組んだ6人編成による探索だ。

 

因みに連れてきた『子分』はどんな子かと言うと…

 

 

 

「……入り口から嫌な空気だ」

 

「そうだねー、ここは楽にいかないねー」

 

「全滅は嫌だぞ、おれ」

 

「そうだねー、でも私がいるから安心してねー」

 

「はい先輩、頼りにしてます」

 

 

この子の名前【リリッタ】だ。

 

俺ことフラッグ甲板長の下で働いてくれる子分の一人だ。

 

ちょくちょく登場してると思うけど『語尾を伸ばす話し方』をする海賊マーメイドだ。 主に戦利品の整理や、おさかな海賊団の会計課を務めれるほど頭が良い。 海賊としての経験が長く頼れる先輩だ。 元々は【海賊】の職業だったが現在は【マスターシーフ】として支援している。

 

それでこの子は五人姉妹だ。

 

【ラリッタ】は長女

【リリッタ】は次女

【ルリッタ】は三女

【レリッタ】は四女

【ロリッタ】は末っ子…のように、この順番で生まれてリリッタは2番目のおねーちゃんな訳だ。 それでこの姉妹は全員おさかな海賊団に所属していて、それぞれの役割を持っている。

 

 

 

「うおぉぉお!!」

 

「気合入れるのは構わないけどそこで鉄球ぶん回すなよ? お前の投擲まじて危ないんだから」

 

「えー? そのマントで防げないの?」

 

「ABCマントは『魔法ダメージ』を防ぐだけで物理は防げないの! もしレリッタの攻撃に当たれば俺は粉々だるぉぉ?」

 

 

 

こいつの名前は【レリッタ】だ。

姉妹の中では4番目である。

 

戦闘能力の高い【メガファイター】として前衛で活躍する。 マーメイドにしては腕力があり、良く武器をすっぽ抜けさせてしまう。 しかし投擲する時の一撃がバカにならないので【鉄球】を扱わせた職業を進めた結果メガファイターになったのだ。 最初は乗り気じゃなかったがこの職業で戦う内にすっかりハマっている。 まぁボニーに続いて強力な前衛として立ち回ってくれるから助かる。 ちなみに頭はまだ良い方だと思う。

 

ちなみに、レリッタはボニー達よりも先に俺が出会った海賊マーメイドだ。

 

さて、どのタイミングだったか…

 

まぁいいか。

 

 

 

「ルリッタ、準備できたか?」

 

「はい!できました!」

 

「じゃあ、今回も頼りにしてるぜ先輩」

 

「いえ!むしろ頼りになるのは甲板長です!」

 

 

この子の名前は【ルリッタ】だ。

姉妹の中では3番目である。

 

元気で優しい女の子って感じだ。 おさかな海賊団には回復専門の仲間が数名配属されており、その中でルリッタはナースの上位互換である【医師】の職業に就いている。 マーメイドなのに生まれつき魔力が無いことをコンプレックスにしていたが、アシェルの勧めでナースに就いて仲間を助けることを選んだ過去を持つ。

しかしSPが重要な医師の職業に就いてのにブーストドリンクが辛く感じるらしく、あまり使用出来ない。 そのため俺が牛乳や蜂蜜などを混ぜて辛さを抑えた味を作り上げてる。 仮名て付けた『甘味ブーストドリンク』を好んでSPを回復してる子だ。

 

 

 

「では出発じゃ!」

 

「「「おーー!!」」」

 

 

寒さに負けない元気の良さで俺たちは奥の洞窟に歩き出す。

 

 

ー 編成 ー

 

Level39 フラッグ(エクストリームバーサス(2500機の熟練度)

Level40 ボニー(海賊)

Level44 アシェル(海賊)

Level36 リリッタ(マスターシーフ)

Level35 ルリッタ(医師)

Level34 レリッタ(メガファイター)

 

 

六人とも上級職だから簡単には全滅しないと思うけど、あまり戦闘にならなければ嬉しい。 アイテムにも限りがあるからあまり消耗しないように進みたい。

 

でも、この先の入り口は確か……

 

 

 

「むむ? これはなんじゃ?」

 

「……結界、ですかね?」

 

「なんと! この先に入れないと言うのか!」

 

 

 

そう、雪越えの山は結界が張られて入れない設定だった。 とあるフラグを解除するまでは白兎が待ち構えていて、ルカ御一行を入れさせなかった。 最終局面の場所だからいきなりは入れないのだろう。 ……あれ? そうなるとサバサの連中はどこに潜ったんだ? もしかしてハーピーの羽で引き返したとか?

 

いや、でもここまで来て逃げるようなひとたちとは思わない。

 

 

 

「お頭! こちらに獣道ありますよ!」

 

 

レリッタが道を見つけたようで叫ぶ。 まさか正規ルートを無視して入り込むと言うのかな? そりゃこの世界はゲームだけど、マップは一マスとか、戦いのルールはターン制限とそんな概念は関係ないからね。 常に俺たちの目の前は自由だ。

 

 

 

「よし、奥へ進むぞ!」

 

「皆、慎重にな?」

 

 

警戒を解かないように山登りを開始する。 ボニーを先頭に列を作って歩き出す。 朝の日差しを浴びながらのハイキングかもしれないが、俺は予めビーム兵器を取り出しながら最後列でついて行く。 どんな敵にも対応できるように準備していた。

 

 

 

 

ゴゴゴッ

ゴゴゴッ

 

 

 

「「!!?」」

 

「なんだ!?なんだ一体!?」

 

 

 

突然激しい揺れが起こる。 でもそれはこの山ではなく『世界の何処か』から全体に響き渡る感覚だ。 もしかしたらこの世界のマナが歪んでると言うのか?

 

 

ゴゴゴッ

ゴゴゴッ

 

 

 

「つ、次はなんじゃ?」

 

 

「お嬢、敵の群れかもしれません」

 

 

「いや、そんな気配は………なッ!? お、お前らァ! 雪崩が来るぞ!!」

 

 

「「「!!??」」」

 

 

 

さっきの揺れにより雪山に衝撃が響き渡ると大雪崩を起こしてきた、最悪だ。

 

飲まれたらひとたまりもない量だ。

 

 

 

「アシェル! ハーピーの羽は動かないから走れ! 飲まれるぞ!」

 

 

「くっ」

 

 

 

俺はアシェルの手を掴んで走り出す。

 

ボニーや子分も雪崩から必死に逃げる。

 

 

 

「む! あそこにちょうど窪みがあるぞ!」

 

「ナイスですお嬢!」

 

「「はやく!はやく!」」

 

 

 

子分が見つけた窪みへ入り込む。 少しぎゅうぎゅう詰めだが入りそうだ。 しかもぎゅうぎゅうに詰まっているお胸が沢山の中に入るのか。 ある意味天国だな。 呑気に考えながら俺も急いで入り込もうとした、次の瞬間だった…

 

 

 

 

 

ズボッ

 

 

「!!?」

 

 

 

 

足元が崩れてしまった。

 

 

 

「「「フラッグ!!?」」」

 

 

 

「うおあぁぁぁあ!!?!?」

 

 

 

重力に従って落ちる感覚を得る。

 

 

 

「おいおいおいおいぃぃい!!?」

 

 

 

どうやら俺の走った場所に穴が空いていたようだ。 上を見れば人間がスッポリ入りそうな穴が空いてるのを確認する。 しかし雪崩によって即座に穴が塞がれてしまい、朝の日差しが閉ざされてしまった。 それよりも落下が危ないッ!

 

 

「ッ! 【アンカー】!!」

 

 

俺は引っ掛けれそうな部分を見つけると"下格闘"に良くある"アンカー'を飛ばして引っ掛ける。 地面とキスを免れるためにぶら下がろうとしたが…しかし、勢いを殺せない。 次に初代(ガンダム)が使う『盾』を目の前に召喚した。 落下の衝撃を控えるためと、空気抵抗を作り上げるために。 あと少しだけも浮遊感を得るため両腰に装備してるヴェスバーを展開して真下に撃ち放った。

 

 

 

「止まれェェ!!」

 

 

アンカーを強く巻きいて落下の威力を最大限に殺す。

 

 

 

キュルルルル…

 

カチッ…

 

 

 

「………?」

 

 

 

アンカーのワイヤが閉まる音が聞こえると次に感じるのは完全な浮遊感。

 

下を見れば地面と激突20センチだった。

 

 

 

「こ、こえぇ……」

 

 

ギャグ補正があるならそのまま地面に正面から落下して大の字で終えたと思うけど生憎俺にそんな能力は無い。

 

 

「し、死ぬかと思った…」

 

 

死ななくても最悪は複雑骨折だ。 とりあえず全てのマキブを解除するとアンカーが消え、軽く落ちる。 余裕で着地した後地面に横たわった。

 

 

「なんとか地面にオネンネを凌いだな…」

 

 

V2の『光の翼』が使えたら飛行なんて楽なはずだがそこまで便利なマキブは無い。 他にもフルバーニアンの『バーニア』も持ってない。 今の俺に飛行性能が搭載されたマキブは一つもないのだ。

 

 

 

「まずは生存報告しとくか…」

 

 

俺はビームライフルを召喚して落ちてきた穴に目掛けて放つ事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪崩が静まると窪みからお嬢はすぐに飛び出した。 しかし穴がある場所は分からず、雪崩によって積雪は思ったよりも高く張り詰めていた。 フラッグの落ちた場所を見つけるのは困難だ。

 

 

 

ピューン!

ピューン!

ピューン!

 

 

 

「なっ!?」

 

「これは!?」

 

「甲板長のビームライフルですよ!」

 

 

少し離れた場所から伸びる光線は確かにフラッグが使うマキブだ。

 

 

「い、生きてたのか! よ、良かったのじゃ……」

 

「お嬢、フラッグがそう簡単にやられませんよ」

 

「そうですよお頭!」

 

 

なんて言うけど私も心配で仕方なかった。

 

だが子分がいる前で取り乱すには行かない。

 

私はフラッグの安全を知ると心の奥底で喜びながら雪崩で積もった雪を掻き分ける。

 

するとそれらしき穴を見つけた。

 

 

 

「こんな細い穴に入ったのか…」

 

「こ、これは、入れないですね…」

 

「む、胸が邪魔で入りません!」

 

 

 

たしかに邪魔で入りそうに無い。

 

生まれて初めて胸が大きなことに悔やむ。

 

 

 

「フラッグー! 生きておるかー!」

 

 

 

お嬢は穴に顔を突っ込んで叫ぶ。

 

すると?

 

 

 

> 生きてるぞー! でもあまり声は出すなー! 敵に襲われるぞー!

 

 

 

「お嬢、変わってください」

 

 

私はお嬢を下げると穴の中を見下ろした。

 

するのヒートホークを灯がわりにするフラッグの姿が見られた。

 

 

 

「フラッグ、導きの糸を落とすから使え!」

 

 

 

>待ってアシェル。 実はちょうど持ってた導きの糸を使ってみたが、なんとそれが使えない。

 

 

 

「なんだって!?」

 

 

 

 

_おそらく結界の所為で…? ………ッ!!

 

 

 

 

何かに気づいたのかフラッグはその場から急に回避行動を起こした。

 

フラッグの立っていた場所は氷が広がる。

 

まさかモン娘に見つかったのか!?

 

 

 

_アシェル! サバサの連中が辿った場所を探せ! もし生きてるならそこから洞窟に入った可能性がある!

 

 

 

 

「フラッグ!?」

 

 

 

_それと、もし10日経っても俺を見つけれなかったらナタリアポートまで来い! 俺は山から脱出できたらハーピーの羽でそこまで行く! そのつもりで頼むぞ!

 

 

 

 

「!」

 

 

 

それだけを言うとフラッグの声は途絶え、魔法の爆発音だけが洞窟内にこだまする。

 

聞き慣れたビームライフルの音が広がり…

 

そして静まった…

 

 

 

「ッ、お嬢、一旦戻りましょう」

 

 

「な、なぜじゃ!? この穴を大きく開けて入れば良いのではないか!?」

 

 

「下には氷の魔法で鋭いトゲが張り詰めています。 このまま落ちるのは得策ではありません。 せめてロープを下ろすか、またはサバサの連中が山の中に入ったことを考えて別の入り口を見つける事です」

 

 

「しかし!」

 

 

「フラッグは強いです、そう簡単にはやられません。 だから私達も無茶な行動は避けて、そして彼と無事に合流しなければならない。 いいですか?」

 

 

「ッ……フラッグ! こんなところで倒れたらただではおかぬぞ!」

 

 

 

お嬢はそう吐き捨てると先ほどの獣道を進む。

 

私達はフラッグの生存を祈りながら一旦おさかな号に戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……撒いたか?」

 

 

まさかいきなり 氷の魔女 が襲ってくるとはな。

 

頭に電撃が走ったような感覚が無かったら今頃は愉快な氷のオブジェとなっていた。

 

さて…

 

 

 

「頂上を目指すか……」

 

 

 

ボニー達がもしこの洞窟に入り、奥へ進軍してくれるなら必ず頂点にある『シロクマの村』に到着するはずだ。

 

あそこは安全だからな。

 

 

 

「または出口を目指すか……」

 

 

 

だけど結界の所為で出れるとは思えない。

 

ならば奥へ進んで脱出するのが得策だろう。

 

 

 

「いま手元にあるアイテムは1日分の食料か。 ケチれば2日は持ちそうだな」

 

 

 

モタモタしてられない。

 

死活問題に関わるなら急ぐしかない。

 

 

 

「……」

 

 

 

そしてひとり旅か…

 

何気に久しぶりだな…

 

いつもは周りに愉快な仲間がいるのに…

 

 

 

「一人だとこんなにも不安なのか、忘れてたな」

 

 

 

出来るだけ寒さを防ぐためにABCマントを羽織り、ヒートホークを構える。 少しだけあったかいし、松明を代わりになってくれる。 あと火属性だから戦いやすいだろう。 この場所ではこの方が良いな。

 

 

 

「そうだ、矢印刻むか」

 

 

 

俺は壁に矢印を刻み、お魚の絵も作る。

 

これで俺が進んだ方向を知ってくれたら良いがな。

 

 

 

「あと、もん娘との戦闘は極力避ける……」

 

 

 

そして『天使』が現れたら絶対に戦うな。

 

昇天に耐性が無い俺はすぐに力尽きるからな。

 

 

 

 

タッタッタ…

 

 

 

「!?」

 

 

 

誰かの足音だ!

 

 

天使兵か?

 

シロクマ娘か?

 

それとも氷の魔女か?

 

 

まずは落ち着け……

 

俺には一応『ミラージュコロイド』がある。

 

 

次の使用にかなり時間がかかるけど使いどころを間違わなければ必ず危機を乗り越えれるはずだ。

 

ここからは賢く、立ち回れよ……

 

俺は人間で、朽ちるに容易い。

 

だから、なんとか生き残るようにするんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから1時間が経過。

 

しかしもう何時間も経過してる気分。

 

不安で仕方ない。

 

気を抜けば心が負けそうだな。

 

このまま天使兵辺りに身を任せて、そのお胸に挟まれてしまえば幸せに果てれるだろう。

 

まぁ、肝心の天使兵はまだ見てないけど。

 

 

 

 

チュドーーン!

 

 

 

 

「!」

 

 

 

戦闘音!? もしかしてアシェルか!?

 

いや、まて。

 

俺はそれなりに奥へ進んでいるし、音のした方向は俺が進もうとしてる場所だ。 ボニー達の姿は見てないし、後ろから追い抜かれたことも無い。

 

そもそもこんな短時間でここまでくるか?

 

いや、それはありえない。

 

もしかしたらこの戦闘音はもん娘同士の争いかも知らない。

 

だがシロクマ娘は穏やかな生き物だ。

 

氷の魔女も好戦的では無いはず。

 

そもそも氷の魔女はシロクマ娘と共存してるから争いは無いな。

 

 

そして残りの天使兵も争いは好まないだろう。

 

 

 

ならやはりアシェル達か?

 

その希望はあるがしかし…

 

 

 

「……」チラッ

 

 

 

 

俺は息を殺して乱闘の場所を覗き込む。

 

そこにいるのは…

 

 

 

「氷の魔女………いや、ほかに誰かいる!?」

 

 

 

 

その先には氷の魔女がなにかを掴んでいた。

 

それは…

 

 

 

 

「その精気、奪ってやろう」

 

 

 

 

「ぁ…ぁぁ…ぁ…」

 

 

「ぐぬぅ! 氷が邪魔で、動けぬ!」

 

 

 

 

人間が……いる、だと??

 

 

 

「(もしかしてサバサの派遣とでも言うのか!?)」

 

 

 

一人の男性は屈強そうな戦士だ。

 

おそらくバトルマスター辺りだろう。

 

しかしソイツは氷の魔女の念力によって持ち上げている。 そして氷の魔女の両手はバトルマスターの下半身に伸ばされて、手のひらで転がすように優しく愛撫する。 しかし凍てつくような冷気を纏いながら魔力を放っていた。 これを受けるバトルマスターは白目で真上を見上げながら恍惚していた。

 

 

「ぁ、ぁぁ…き、気持ち……いぃ、ぁぁ」

 

 

「まて! 耐えろ! もしまたーーー」

 

 

 

もう一人の仲間が叫ぶ。

 

しかしそれも虚しくバトルマスターは目を見開いてガクンガクンと体が飛び跳ね、そして…

 

 

「ァ、ァ!!!?! ァ…… … … … …」

 

 

 

「……最後に心地よく果てたな。 さよなら」

 

 

 

そして氷の魔女は男を投げ捨る。

 

幸せそうな顔をして死んでいた。

 

ああ、酷い事だ…

 

 

 

「次は女、お前だ…」

 

 

「っ!!」

 

 

 

氷の魔女は人間の女性に目を向けた。 その女性は氷によって腕と足が壁に貼り付けられ、身動きが取れずにいた。 いろんな忍具が足元に転がっている。 どうやらあの女性は『くノ一』のようだ。 しかし封じられた手足では何もできない。 どうすることもできないクノイチに氷の魔女は息を吹きかける。 するとクノイチは体を震わせて息苦しく呼吸し始めた。

 

 

「ぁ、ぁぁ、か、はっ…」

 

 

「寒いか? 寒いか?」

 

 

「は、ひゅ、ぁ…ぁ、が…ぁ…」

 

 

 

苦しく震わせる。 死期が近づくことを悟り始める。 もう何もできない。 氷の魔女によって全てが吸われて終わってしまうだろう。

 

 

あのクノイチはここで冒険を終えるようだ。

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

俺は、そして、どうする?

 

 

まさか…

 

 

何かしようとでも思わないよな??

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

俺はここまで見つからずに逃げ延びている。

 

 

だから俺は何も見なかったように済ませ。

 

 

ココを去るべきだ。

 

 

ボニーとアシェルが俺を探しにくる。

 

 

だから俺は無事でいなければならない。

 

 

なら何もしてはならない。

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

冒険に死は付き物だ。

 

 

だから都合のいい事なんて無い。

 

 

生きるか、死ぬか、その二択だ。

 

 

そしてあの冒険者は『死』の選択技に辿り着いてしまった。

 

 

ただそれだけなんだ。

 

 

だからクノイチにはその覚悟もあるだろう…

 

 

それだけだから…

 

 

それだけなんだからさ…

 

 

 

 

俺は何故このビームライフルをあの氷の魔女に向けているのだ??

 

 

 

 

「じゃあ、人間。 ここまで来たのは賞賛に値するがココで終わりだ、安らかに終えろ」

 

 

「…ぁ…ぁぁ…」

 

 

「仲間の跡を辿らせてやる。 さよなら」

 

 

「み………んな……」

 

 

 

 

 

 

 

「……っ」

 

 

 

 

 

 

 

俺は…

 

 

 

 

次の瞬間…

 

 

 

 

トリガーを引かなかった…

 

氷の魔女に撃たなかった…

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

俺はビームライフルを腰に仕舞ったのだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その代わりに【ハイパー・メガ・ランチャー 】をお見舞いした。

 

 

 

 

「くたばれェェェェえ!!!」

 

 

 

ビームライフルの何倍も破壊力を持ち合わせたZガンダムの特殊射撃による砲撃は氷の魔女を吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

つづく




種族的劣等感を抱きながらもフラッグは足踏みせずしっかり進もうとするあたりちゃんと強いですね。
しかし大丈夫だ!
君は主人公だからちゃんと強化イベントはあるさ!(ネタバレ)


《ハイパー・メガ・ランチャー 》
Zガンダムが扱う大型のビーム砲であり、原作ゲームでも銃口、判定、発生、誘導、火力、補正、覚醒時の弾数増加、などそれは上位クラスで非常に強力な武装であり、もんパラの世界でもその強さは猛威を振るう。 単発で氷の魔女を吹き飛ばせるくらいには心強い武装。 しかし大きくて重たいので取り回しが辛いのが欠点。

ではまた
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