おさかな海賊団の幸せな旗   作:つヴぁるnet

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57日目 〜 雪越えの山

 

〜 雪越えの山 〜

〜 朝? 〜

 

 

 

「生きてるよな!? おい!」

 

 

ハイパー・メガ・ランチャーを地面に落とすと役目を終えたように消える。 氷で壁に張り付られてるクノイチを助けるため俺は駆け寄る。 念のため3本の旗を投げながらヒートホークを召喚する。 大きく振りかぶり、クノイチの体を蝕む氷を叩きつける。

 

 

 

「気を持たせろ! せっかく飛び出したんだ!まだ死ぬんじゃねーぞ!」

 

 

「お、お前…は?」

 

 

「それはあとでだ! ここを切り抜ける!」

 

 

 

しかしヒートホークではなかなか破壊活動が捗らない。 ならばと思い不要になったヒートホークを氷の魔女に投げ飛ばす。 直撃して熱に焼かれて苦しみ出す氷の魔女を他所に俺はABCマントをクノイチの頭から被せる。 しっかりと肌全てを覆い隠してから腰に常時装備してるビームライフルを片手に構える。 次にビームサーベルを取り出すとブーメランのように回転させながらクノイチに投げつけると俺は投げたビームサーベルに向かってトリガーを引いた。

 

 

 

「『ビームコンフューズ』!!」

 

 

 

拡散するビームの波はクノイチと張りつめられた氷に浴びせられ、一定の威力を保ちながら破壊される。 ABCマントによってクノイチは攻撃を受けない。 ちなみにビーム兵器によるX線の害は生物に無く、ビーム兵器のほとんど『無属性の魔法攻撃』に変換されてるから人に向けて安心である。 なんというか、この世界のシステムに合わせて都合が良い。

 

 

 

「ぅぅ……」

 

「しっかりし…ッッ!?」

 

 

 

つ、冷たい。 そして心なしか体が軽すぎる。 まるで生気を奪われて中身を無くしたかのようだ。 だがクノイチの心臓はまだ動いてる。 まだ生命は機能しているのだから再び息を吹き返せる筈だ。

 

 

「くっ、まだ人間がいた……なにッ!? アガガガ、か、体…が!?」

 

 

 

先程投げた3本の旗はドラゴンガンダムの主力である『フェイロンフラッグ』であり、それに引っかかると氷の魔女は体が痺れてしまう。 そりゃ初見殺しな技だからな。 まさか側の間を通ると痺れるなんて思うか? 残念、エクバだから出来る所業なんだ。

 

 

 

「…はぁ…はぁ……助かった…の、か?」

 

 

「かもな。 いきなりで悪いけど背負うぞ。 苦しいかもしれないが、逃げるために走るからな」

 

 

「ぅ…す…すまない……」

 

 

「構わんさ! 俺は腹を括った!!」

 

 

 

一刻もこの場所から離れるために俺はクノイチを背負う。 彼女の道具袋を回収する暇もなく走り出した。 まだ痺れている氷の魔女を横切り、そして亡骸となったバトルマスターを通り過ぎる。

 

 

 

 

 

__どうか……生きて……くれ………

 

 

 

 

 

 

「っ」

 

 

 

勝手に頭へ入り込む『何者かの想い』を拾いながら保険のためにシールドビットを展開する。 リロード時間とかどうでも良い。 今はなりふり構ってられないのだ。

 

 

 

「くっ、逃がさん!」

 

 

即座に詠唱を開始すると数秒も経たずに魔法を放てる体制に入った。

 

さすが氷の魔女だ。

 

詠唱速度もバカにならない。

 

 

 

「サイコジャマー!」

 

 

 

残りのMPを振り絞りながら氷の魔女を囲う。

 

 

「ふん、麻痺ならもう効か………なっ!? バカな!? 詠唱が!?」

 

 

 

氷魔法を使うための精霊、またはエレメントはサイコジャマーにより妨害を受けてしまい、氷の魔女の魔法詠唱は解除されてしまう。

 

そう、この兵器は麻痺が喰らわなくとも詠唱妨害としてかなり有効なのだ。 外洋に出て初めて知った。 低コストだろうと2000機を軽く見たら痛い目に会うことがよく分かる。 サンドロックの『ゼロシステム』と言い、エクシアの『トランザム』と言い、それぞれの長所を引き出せばこの職業は2000機の強さだけでも最強クラスにのし上がる。 MPやSPの消費量は馬鹿にならないけどレベル差を簡単に埋めてしまう。

 

 

「『アイアン・ネット』だ! そのまま絡まってろ!」

 

 

ゲルマン忍法が扱う網を片手でぶん投げて氷の魔女を抑え込む。 ダメージはともかく鈍足効果が高い。 これによって俺たちを追えない。

 

 

 

「片手で…あのような投擲を……見事…」

 

「網は訳あって良く使うからな」

 

 

船に乗って海賊しているとそれなりにな? だから両手で扱わずとも投げ慣れてる。 そこらへんはクナイを扱う忍者として投擲の技量は気になるところなのかな? てか喋れるくらいにはまだなんとか生きてるようだ、少し安心した。

 

 

 

コロコロ…

コロコロ…

 

 

 

「うおっと、急ぐぞ!」

 

 

 

俺は氷の魔女から背を向けて再度逃亡を始める。 その場から魔法も使えず、そして追いかける事ができない。 しかし氷の魔女は遠距離攻撃は可能だろう。 氷柱を放つくらいには容易いはずだ。 しかし…

 

 

「そのくらい計算積みだ、バーカ」

 

 

コロコロ……ピカーン!

 

 

 

「なっ!?」

 

 

 

ドカーン!

 

 

足元まで転がったハンド・グレネードが起爆、氷の魔女を吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜 シロクマの里(頂点)〜

 

 

 

「さむさむ……いらっしゃい。 ここはシロクマの里さむさむ……」

 

 

「え? シロクマの里、さむさむ?」

 

 

「うん、シロクマの里さむさむ、だよ……さむさむ…」

 

 

 

どうやらシロクマの里さむさむまで来たようだ。 と、言うことは雪越えの山の山頂までやって来たのか? 生きのびるのにかなり必死だったけど、気づいたらここまでやって来てたのか。

 

 

 

「さむさむ……その子は?」

 

 

「ええと、寒くて動けないんだ」

 

 

「さむさむ……なら奥のコテージを使って、とても暖かいから。 さむさむ…」

 

 

「ありがとう」

 

「はぁ…はぁ……す、すまない……」

 

「気にするな、そして喋るな、体力を使う」

 

「……はぁ…はぁ…」

 

 

 

随分弱り果てているな…

 

俺は原作知ってるから雪越えの山で暖かく休めるポイントまで歩みを止めずここまで来た。 生気を失いつつあるこのクノイチを助けるために休んでる場合じゃなかったからな。 このまま冷え切って朽ち果てる可能性を考えると命削ってまで足を働かしたよ。

 

そして気づいたらその場所に到着した。

 

まぁお陰で『安全に休める場所』と聞いた足がガクガクと嬉しさに笑っている。 でもまだダメだ。 ちゃんとコテージまで責任持って女性をエスコートしないとな。

 

ガチャ

 

 

 

「!」

 

 

扉を開ければ部屋の中はたしかに暖かい。 コテージの天井に張り巡らされた赤い魔法陣が目立つが、多分アレがあるからコテージの中は暖かいのかの?

 

 

 

だがそれよりも驚いたのは…

 

 

 

「!!?」

 

 

「なっ!! なっ!!?」

 

 

 

そこに『天使』が居たことだ。

 

 

 

「ぁぁ…お迎えが…来た…のか」

 

 

「だからあまり喋るな、無駄に体力使うだろ」

 

 

 

天使の姿を見たクノイチは耳元でつぶやく。

 

天国に招待されたとでも思ったのか?

 

 

 

「あの…その人は?」

 

 

「冷たくて死にそうなんだ」

 

 

「それは大変ですね、ならこちらに来てください」

 

 

 

事態を察した天使に招かれる。 部屋を開けると暖かそうな寝床に誘われた。 ベッドとか大層なものでは無いが地べたよりもマシだ。 俺は今にも崩れそうになる足を踏み縛り、クノイチを寝床に寝転ばせると…

 

 

「ぁぁ…さ、寒いっ…ぁぁ、ぁぁ…ぁぁぁあ!! 嫌だ!嫌だよぉ……助けて、助けて…!」

 

「!?、!?!?」

 

 

 

クノイチは悶え苦しみ始めた。 重くて仕方ない瞼を開けると何かを必死に探し、俺の姿を捉えると手を震わせながら伸ばしてくる。 呼吸を荒げながら涙を流していた。 恐怖から逃げたくて仕方ない表情は彼女の危険を知らせる。

 

 

「その手を掴んであげてください」

 

「…え? あ、ああ」

 

 

俺はクノイチの手を掴むとそれは氷のように冷たい。

 

すると呼吸が更に激しくなる。

 

 

 

「寒い…寒い……さむ…い……さむい…よぉ…」

 

「っ」

 

 

俺は道具袋にある何かでこの症状を抑えれないか考えるがブーストドリンクなんかで治るとは思えない。

 

すると天使が声をかける。

 

 

 

「この人の生命が氷点下に襲われてます」

 

 

「え?」

 

 

「この場合はただ温めても命は救われません。 白魔法でも無意味でしょう」

 

 

「なっ!?」

 

 

「ですが生命は生命で温めればこの方は氷点下の闇に溺れず救われます」

 

 

「だったらどうすれば良い!?」

 

 

「肌と肌を合わせて温めてください。 そこらへんは人間のあなた達がよく詳しいかと思います。 何せ天界から堕ちた天使の私に完璧な答えはありませんので」

 

 

 

そう言うと天使は去り、扉をしめて部屋から出て行く。

 

 

 

「…」

 

 

俺はクノイチの鎖かたびらや籠手などの軽防具を外す。 ボロボロのインナーも脱がせると白く染まっていく肌が見えた。 元々白いかと思いきや、触れると俺の手までが侵食する。 それは体を氷に変えてしまう恐ろしさを見せつけていたが、熱で打ち勝つほかあるまい。

 

 

 

(むご)いことを…」

 

 

 

すると扉が開く。

 

天使は何かを持ってきた。

 

 

 

「ただのお香です、気にしないでください。 それよりもその方に早く生命の温もりを」

 

 

「あ、ああ…」

 

 

 

天使はお香を焚く。

 

その間に自分も服を脱に捨てて下着姿になる。

 

 

「マインド」

 

「!」

 

 

 

天使は魔法を使うと俺の精神力を高めてくれた。

 

 

 

「私は治療は専門外ですが、これだけはやらせていただきます。 あとはあなただけです」

 

 

「っ、ありがとう」

 

 

「いえ……それでは」

 

 

 

天使は俺たちの衣類を勝手に持ち込むと出て行った。

 

何するつもりだろうか?

 

いや、それよりもこっちが大事だ。

 

 

 

「もしあんたが心に決めた人がいても、今は許せよ…」

 

 

 

下着だけを残して互いに裸となった俺は毛布をかき集めるてクノイチとともに覆いかぶさる。

 

全体の肌が触れ合う。

 

 

 

「ぁぁ…ぁぁ、はぁ…はぁ…」

 

 

 

クノイチは温もりを得ると俺にしがみつきはじめた。 首筋に爪が食い込むが『マインド』の魔法で高められた精神力によって些細な傷みだ。 今の彼女に比べたら大した事では無い。 むしろ好都合だ、そのまま強く抱きしめていろ。

 

 

 

「…はぁ…はぁ……ぁぁ…ぁ…」

 

 

 

ほんの少しだけ身長が高い俺が彼女を包み込むつもりで抱きしめ続ける。 冷たい吐息がしばらく続いたが、だんだんと苦しさに飲まれた体の震えるは収まり始める。 別に体の震えが無くなった訳じゃ無いが落ち着きは見せ始めていた。

 

 

 

「…ぁぁ……あった…た…か…」

 

 

 

首筋に食い込んでいた痛みは少しだけ薄れる。 どうやら力が抜けてきたようだ。 隣の樽に置いてあるお香の効果も聴いてるのか心身共にリラックしていく。 しかしなんだろうこの香り? ふわふわとした気分に包まれる。 天使が持ち込んだから天国のようにふわふわとしたとかそんな感じだろうか? 心が安らぐのはたしかな話だ。

 

 

「……すぅ……すぅ…」

 

 

 

いつの間に眠り込んだらしい。

 

だけど安定した呼吸は彼女の無事を教えてくれる。

 

そう思うと俺も急に疲れと眠気が襲いかかる。

 

 

 

「ぁぁ、眠いな、凄く眠い…」

 

 

 

ボニー達と逸れてしまい、長い時間を逃げ隠れを続け、休憩も取らずに気を張り巡らせ、もん娘とエンカウントしたら直ぐに逃げ延びる。 それの繰り返しだった。

 

 

「すぅ……すぅ……」

 

 

ここまで大変だった。 この女性を助けるためになりふり構わずマキブとSPをフル活用した。 歩けないクノイチために背負い続け、どうにかしてシロクマの里までたどり着こうと生き延びることに必死だった。 限界は来てただろう体に鞭を打って動かし続けた。 正直に言うと足に感覚は無い。 ここまで動けれたのは異常に生存本能が働いたのかもしれないな。 そして安全に休まれる場所を見つけると脳みそは体を休めようとするため睡眠欲が一気に湧き上がる。 お陰で鉛のように重たい。

 

 

 

「おやすみ……」

 

 

 

俺は寒さに震える彼女を抱きしめて惑の眠りに落ちた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢、この印は」

 

「うむ! 絶対フラッグのだ! おさかな海賊団のマークがついておる!」

 

「丁重に矢印まで……」

 

「つまりフラッグは山を突破して出口を見つけようとしておるのか?」

 

「でしょうね。 この洞窟に留まってるよりは出口を見つけた方が早いことを考えた上で行動でしょう」

 

「そうか……あまり無理はしてほしく無いがこの状況では仕方あるまい。 早く見つけるぞ」

 

「はい」

 

 

おさかな号に戻ると即座にメンバーを再編成した私達は抜かりなく準備を終わらせた。

 

そして小さな穴場を見つけた私達はそこを掘り進め、安全に洞窟内に入る事が出来た。 正規ルートでは無いが賊の私たちにそんなの関係ない。 突入できるならどこからでも構わないのだ。

 

 

 

「フラッグ……」

 

 

 

凍えていないか心配だが、彼は賢い。

 

だからどこかでうまくやってるだろう。

 

もしかしたらサバサの派遣達と合流して抜け出してくれてるかもしれない。

 

もしそうなら一人のフラッグよりも安心出来る。

 

 

 

「なんだっていい…」

 

 

 

生きていてくれよ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 





氷の魔女とか言う中章の終盤に現れる難敵。
人間如きが勝てるわけないです。


《フェイロンフラッグ》

ドラゴンガンダムの主力と言われるトラップ武装であり、旗を数本ほど柵のように並べてソレに引っかかった敵をスタンさせる癖のあるマキブだが初見殺しとしてかなり有効。 もちろん打撃武器として旗で斬りつける事も可能であり、細い見た目にして結構丈夫である。

ちなみに作者が2000機の主力として使ってるのがドラゴンガンダムであり、勝率は52.8%の地雷として活躍する。
こんな機体でダブルロックするコスト泥棒だから負ける時は酷い形で負ける。


ではまた
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