おさかな海賊団の幸せな旗   作:つヴぁるnet

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58日目 〜 雪越えの山

 

 

〜 シロクマの里 〜

〜 朝 〜

 

 

あた〜らしい〜、あ〜さがきた〜

 

きぼう〜の、あ〜さ〜が〜

 

 

……ってことなので、たっぷり12時間くらい眠った。 でも今の時間は朝ではないかな? 時計が意味を成さない航海にて時間感覚は身に刻まれている。 今現在の体内時計からするとおそらく昼くらいだと言っている。 お腹もすいたし。

 

 

さて

 

 

次に機能するのは嗅覚であり、ふんわりと漂うお香は微かに鼻を擽っている。

 

次に『さむさむ…』と声が聞こえる。

聴覚も機能し始めたようだ。

 

最後に機能するのは体の感覚だが、急に異性を刺激する感触が胸元から足の先まで伝わる。 全身に密着する生暖かい温度と柔らかな肌触りはつい抱きしめたくなる。 そして何故か目の前の何かを抱きしめてやらなければならない使命感が再び湧き上がる。

 

深い眠りに誘われるためだけにこのコテージに来たとは思えない。 記憶ではどこか恥ずかしいシチュエーションの中だったはずだが一体俺はどんな風に眠りについたんだろう?

 

 

 

「んっ………んんっ?」

 

「……へ?」

 

 

 

目を開けてその正体を確かめる。

 

するとそこには女性がいた。

 

 

 

「……」

 

「……ええと?」

 

 

 

下着をつけたままあとは肌を晒すだけ。

 

ほぼ丸裸な姿で腕の中に収まってる。

 

 

 

「お、おはよう…」

 

「………」

 

 

 

まず出てきた言葉がこれである。

 

俺は一体何をやってんだ?

 

 

 

コンコン、ガチャ

 

 

 

「失礼します。 おや? ちょうど起きましたか」

 

 

「? ……あ、天使さん」

 

 

「とりあえず服はここに置いときます。 こちらの方は清めましたのでどうぞお着替えになってください」

 

 

「あ、はい」

 

 

 

天使のお力だろうか? 服が綺麗になっている。 ともかくこのまま素っ裸は今となって恥ずかしい。 それに久々に人と触れ合って心が紅潮してるところだ。 一旦会話できる姿勢に持ち込みたい。

 

 

 

「……確か君は」

 

 

「お目覚めで安心してた。 とりあえず衣類を着てから話さない?」

 

 

「?」

 

 

「……な?」

 

 

「……う、うん」

 

 

 

こういうシチュエーションは大体頬を引っ叩かれるが目の前の女性は頬を染めながら毛布を包め取って肌を隠した。 ……! いやいや、見惚れとる場合じゃないだろ。 動揺を隠しながらも笑みを崩さず、タオルで汗を拭いてからそれぞれ着替えに移った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さむさむ…」

「さむさむ…」

 

 

 

「コテージがシロクマ娘だらけだな」

 

「そもそもここはシロクマの里って名前が付いてるくらいだからな」

 

 

 

外を見ればシロクマ娘だらけ。

 

あとは氷の魔女がお一人だけ奥の方で見える。

 

天使はコテージのキッチンでスープを作ってる。

 

 

 

「……ココは氷の魔女までいるのか」

 

 

「シロクマ娘とは共存関係に当たるらしい。 だから見かけることも珍しくない」

 

 

「……」

 

 

「複雑か?」

 

 

「いや、そんな事はない。 この世は弱肉強食の世界だ。 弱者は当然過酷な世界に耐えれず最後は敵に討たれて幕を閉じてしまう。 そんなは私は氷の魔女に今の弱さを思い知らされた。 複雑な気持ちもあるが、情けない自分が許されない。 私はあそこで終わってしまうほどの者だったことを知ってしまうとな……」

 

 

「……」

 

 

「私は死んでいたのだ。 あの場所で助けられたなかったら無念を抱いて死んでいたのだ。 全身は凍結してしまい、死後も止む事ない吹雪の世界で魂は永遠と凍えてしまう。 あれは救われな闇だ。 抜け出せない暗闇なんだ」

 

 

 

視線を落としながら自虐的に力なく笑っている。

 

語っている出来事を思い出しながら体を震わせながら片腕で自分を抑えていた。

 

 

「私はどんな状況でも心が負けないようにする訓練を施されていた。 しかし氷の魔女に命の炎を冷たく染められてしまばそれな何の意味も成さない。私は怯え、苦しみ、生にしがみつき、生命の暖かさを求めた」

 

 

「……」

 

 

「手を伸ばせばそこに有る。 絶対零度の暗闇を照らしてくれる生命の暖かさが見えたのだ。 それを与えてくれたのはあなたであることは確かだ」

 

 

「ただ肌を重ねて温めただけだよ。 天使さん曰くこの方法で救えると言ってた。 ……それでその、まぁ、なんというか、突然知らない男と床を一緒にして悪かったと思ってる、はい」

 

 

「!! ふふっ、気にしないでくれ。 私はそうしてくれた事で救われてるのだ。 情けなく背負われてる時、もしこの人の背から離れてしまえば死と共に凍りついてしまう……その恐怖を隣り合わせにして怖かった。 床に横たわった時も、この人が離れてしまえば私は一生氷の檻から出られないと同じ気持ちだった。 このような残酷な運命を辿らずに済んだのだから…」

 

 

「……」

 

 

「命を救ってもらった事に私は感謝している。 だから………ええと、な、名は何と言うのだ?」

 

 

「そういや自己紹介はまだだな。 俺はフラッグ」

 

 

「フラッグ……か。 私の名は【ショウキ】だ。 フラッグ、助けてくれてありがとう」

 

 

「気にするな。 俺はショウキが助かって良かったと思ってる。 だがこれだけは一つ言うよ」

 

 

「?」

 

 

「ショウキは弱くない」

 

 

「!」

 

 

「君は知ってるか? 氷の魔女から生命を奪われてからどのくらい時間が経ったのか?」

 

 

「い、いや…」

 

 

「俺は敵に出くわさないように隠れながらゆっくりと進行して行った。 その状態でショウキを背負っていた時間は役三時間だ。 君はこれだけ耐えたという事だぞ? もし心が弱かったら誰かから触れてもらう事で生命の暖かさを得続けても全身は凍りついて死んでいたはずだ。 だからショウキ、あんたはよく頑張ったんだ」

 

 

「!」

 

 

 

彼女は少しだけ驚くと…

 

張り詰めていた表情が綻び…

 

 

 

「ありがとう」

 

 

 

嬉しそうに笑みんだ。

 

そんなにこの言葉が嬉しかったのか?

 

 

「アツアツの所失礼します。 アツアツの人参スープを作りました」

 

 

 

キッチンの奥から天使が二つのお椀を持ってくる。

 

スープの中味を伺うと具材は人参だけだが美味しそうな香りがしている。

 

 

 

「体が温まります、召し上がってください」

 

 

「はい、感謝していただきます」

 

「…」

 

 

 

早速、手を合わせてひとくち口の中に含む。

 

野菜と塩で味付けされた温かなスープだ。

 

お腹よりも心を満たしてくれる。

 

 

 

「…」

 

 

「……もしかして忍者だから人から与えられる食べ物は無理とか?」

 

 

「!」

 

 

「そこらへんは仕方ないかもしれないけどまず食べないとまた死ぬぞ」

 

 

「……いただきます」

 

 

 

ショウキも頂き始めた。 警戒しながらもひとくち飲むと更に食らいつき始める。 安全だとわかったのか、お腹が減っているのかは不明だが、確かに心の奥底から暖かく満たされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、充分に冒険続行できるくらいまで状態が良くなると俺は早速シロクマの里を出発することを考えていた。 その道中にショウキも一時加入が決定した。 バラバラで行く理由が無いからな、手を組めるなら行くべきだろう。新たな仲間を加え、いざ進もうと思ったその瞬間だ。

 

 

 

入り口から6名ほどの冒険者が現れる。

 

 

いや、冒険者では無い。

 

 

海賊であった。

 

 

それは凄く見覚えがある愛しき人魚達の姿。

 

 

俺は荷物を雪の上に落として駆け寄る。

 

 

 

「ボニー!? アシェル!?」

 

 

 

俺は叫ぶと二人は反応する。

 

しかし再会の喜びは後ろの仲間を見た事で青ざめてしまった。

 

 

 

「ルリッタ!? レリッタ!?」

 

 

 

俺の叫んだ二人は大怪我を負っていた。

 

しかもルリッタは回復要員だ。

 

その彼女がやられてしまってるのなら大変問題になる。

 

 

 

「フ、フラッグ!!」

 

 

「ボニー! 後ろの2人は!?」

 

 

「かなりひどくやられたのじゃ……敵が強くて、それで……ぐっ…」

 

 

 

ボニーもフラつくと俺は急いで肩を貸した。 腕がすごく冷たい。 あと…これは折れてるのか? だとしたらボニーもかなりやられている。 まだなんとか動けるアシェルに聞いたところ回復アイテムも底をついていた。 とりあえず仲間をコテージに招き入れた。 まず二人の出血は止めなければならない。

 

 

 

「アシェル、かなり無茶したな?」

 

 

「数人程度ならともかく5人連れての団体行動だ。 やはり隠密行動は無理だった。 だから大体は戦う羽目になるがココのやつらは強くてな……全滅しなかったのが奇跡だ」

 

 

「そうか…」

 

 

「だけどフラッグが行く先に印をつけてくれたからな、一日もかけずに頂点まで来れた。 ありがとう」

 

 

「いや、こうして来てくれたのだ。 俺は嬉しいよ」

 

 

 

嬉しい再開だけど現状は最悪。 アシェルの手当てだけでどうにかなるのか心配だ。 ルリッタとレリッタの血まみれで、その体はただ休むだけでは治らない。 至る所に凍傷も見あたる。 マーメイドであるため簡単には死なないことが幸運であるが、死に追い込まれてしまうのも時間の問題だ。 つまりこの苦痛は命絶えるまで続くわけであり、精神的に追い込まれて死ぬことは珍しくない。 生命力が高いことが良いわけでもないのだ。

 

もんむすは体が強くも『心』はそこまで強くないから。

 

 

 

「なぁ、アシェル、ちゃんとした場所で傷の手当てを施さないとダメだよな? 医療技術を持たない俺でも分かるぞ? ……どうしたら良い?」

 

 

「……おさかな号に戻ればまだなんとかなるがハーピーの羽も機能しない。 あと導きの糸で戻れないのは分かってるよな? なら私がココで力を尽くさないと…」

 

 

回復アイテムがもう尽きそうな状態なため満足な治療が出来ない。

 

それにアシェルは船医であってもここまで酷い傷は治療出来ないのだ。

 

 

 

「あ、姉御……」

 

 

「レリッタ、喋るな…」

 

 

「私たちはもう良いよ……ここまでひどくやられて……医療のアイテムも底を尽きはじめてる……だから、私達のお頭を……」

 

 

弱々しく笑いながらお頭の治療を推薦する。

 

アシェルは無言になってしまった。

 

 

「レリッタ、私は平気じゃ……両腕が凍結で動けないだけで、そのうちの片腕が折れてるだけじゃ。 まずはお主らの命が大事じゃ」

 

 

「ですが……無理ですよ……わたしも、あと2日も経たないうちに命尽きます……自分で分かります……よ………」

 

 

「っ…」

 

 

「はは…は……マーメイドであることを恨むなぁ……」

 

 

先ほども言ったがマーメイドは生命力がある。 人間にとって致命傷レベルの傷を背負っても生きている事がほとんどだ。 だから人間のようにスンナリと命を絶つことができず、残酷に苦しんだ状態を味わいながら長い時間をかけて死ぬのだ。

 

 

 

「……お嬢…私は、お嬢を治療します」

 

 

「なっ!? そ、それはダメじゃ……ダメじゃ!」

 

 

「わがまま言わないでください。 医療のアイテムも底を尽くレベルです。 子分たちに使ってもほんの少しだけ生命を繋ぐだけで解決にはなりません、だから…」

 

 

「………っ、アシェル…だが、我は子分を見捨てる事は出来ぬ…」

 

 

 

ボニーは治療を拒否する。

 

それを聞いたアシェルは拳を握りしめる力が強まため血が流れ出した。

 

 

 

「ッッ、いい加減にしてくださいお嬢!!」

 

 

「!」

 

 

「お嬢! 仲間を切り捨てなければならない瞬間もあるんですよ! 今がこの瞬間です!!」

 

 

「っ、い、今まで仲間を失うことは無かったのじゃ! だから今回もそんなことは許さないだ!」

 

 

「ならどうすると言うのですか!? 仲間に治療を施しても完全には治らない! するとお嬢の両腕が使い物にならなければどうやってこの場所から生き延びるのですか!? ここは今までの場所よりも比べものにならないダンジョンです! そんなところでまともに戦えないなら私もあなたも死ぬだけですよ!?」

 

 

 

アシェルも仲間を救いたい気持ちは大きい。

 

だが感情論よりも効率を考えてこその副長の役目だ。

 

それを全うするためアシェルは心の奥に押し込めて仲間を見捨てる選択技を取った。

 

 

 

「何か……何か方法が無いのか!? 我らも無事にここを出て! そして仲間全員を救って抜け出せる答えは!」

 

 

 

だが認めきれない未熟な船長は叫ぶ。

 

副長の言葉は理解してるが仲間を見捨てきれない彼女は残酷な道を取れなかった。

 

だから……俺はそんなボニーが更に好きになる。

 

 

 

 

「方法ならあるぞ」

 

 

 

「「!!?」」

 

 

 

無意味なヒートアップを止めるために俺は言葉を挟んだ。

 

 

 

「ハーピーの羽が使えないのはこの山にある結界のせいだ。 だからその結界を解いて使えるようにする。 そして解くためには奥に進む必要がある…事をここの天使さんから聞いた」

 

 

「はい、言いました」

 

 

 

「「!!」」

 

 

 

いつのまにか天使さんが現れる。

 

 

「どうも迷えし訪問者。 私は名はありませんが彼から天使さんと呼ばれています。 あとサメの人魚さん、気持ちはわかりますがあまり騒がないでください。 外のシロクマ達が怯えます」

 

 

「っ」

 

 

「天使さん、あなたの言葉が正しいなら結界を起動してる仕掛けを止めることで解除されるんですよね?」

 

「ええそうです。 先ほど言った通りです」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 

 

再確認もできたから準備オッケーだ。

 

俺は荷物を持って扉に手をかける。

 

その姿を見てボニーは悟る。

 

 

 

「フ、フラッグ!? ど、どこに行くというのじゃ!?」

 

 

「結界を解除するため奥に向かう」

 

 

「!?」

 

「お主一人で行くつもりなのな!?」

 

 

「一人じゃ無くて二人だ。 いま外に一人のお仲間がいるから大丈夫だ。 俺もその人も万全な状態だからこのダンジョンに遅れは取らないよ」

 

 

「だ、だがお主は人間だ!」

 

 

「……人間だな、たしかに俺は人間だ………」

 

 

 

 

弱くて仕方ない種族。

 

 

男ならモン娘の餌食になるだけのエサだ…

 

繁殖力だけが取り柄の生き物。

 

 

 

 

「でも、それがなんだよ?」

 

 

「!」

 

 

「前の俺なら深く考えていた。 いや、今も考えている。 けど俺は人間でもそうしなければならない事があるならそこに種族の差を持ち込んでしまいたくはない。 それでも心配だと言うなら今からその考えが変わるように証明してやる」

 

 

 

ABCマントを取り出し、ビームライフルはいつもどおり腰に装備する。

 

 

 

「アシェル、今から1時間ペースでハーピーの羽を動ける子分に使わせてくれ。 それでこの山から抜け出せたらそれは結界が解けた証拠だ。 俺が丸ごと救う」

 

 

「!」

 

 

 

ボニーは固まっていた。

 

代わりにアシェルが叫び出す。

 

 

 

「ま、待て! 待つんだフラッグ!」

 

 

「こっちは任せろ。 だからそっちは任せた」

 

 

「頼む!お願いだから勝手に行かないでくれ!また離れ離れになる、なん…て」

 

 

「天使さん、毎回申し訳ありませんがお仲間を頼みます。 大事な人達なんです」

 

「わかりました。 お気をつけて」

 

 

 

俺はまだ何か言ってるアシェルの声を無視する。 外に出ると年がら年中寒がってるシロクマ娘を掻き分けながら山頂の入り口まで駆ける。 すると足音に気づいたショウキがシロクマ娘の腕の中から出てきた。

 

 

 

「ごめん、待たせた」

 

 

「構わぬ。 では早速参るぞ」

 

 

「ああ、仲間のために急ぎたい。 手伝ってくれ」

 

 

「無論だ。 私はフラッグに救われた。 ならこの恩は返そう」

 

 

 

俺はショウキの言葉に頷くとコテージで休んで軽くなった体を動かし、結界の解除へ急いだ。

 

 

 

 

 

 

つづく

 






おさかな海賊団と合流だがものの数分で分かれてしまう。 人間が二人だけで突破するとか普通は正気の沙汰では無いけどこの二人なら可能かもね。 あと"ショウキ"に関してはもんパラやり込んでた人からしたらすぐにわかるだろう。


《ビームライフル》

手軽なビーム兵器で『メイン』と言われる武装。 このマキブの召喚にMPを使うが弾数が許す限りは何も消費無しで何発も扱える武装であり、レベルが高くなるごとに威力や攻撃回数が増える。 無属性の魔法攻撃でX線のような害は無く、ビーム十手でビームを垂れ流しても空気は汚さなかったりと都合が良い。 現時点でフラッグの生命線であり主力であるため自衛も兼ねて常に腰に装備している。 一番使っているマキブは間違いなくこのビームライフルだろう。


ではまた
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