おさかな海賊団の幸せな旗   作:つヴぁるnet

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58日目 〜 雪越えの山

 

 

〜 雪越えの山 〜

〜 昼 〜

 

 

 

「__とまぁ、そんな感じで俺はマーメイドの海賊団と海を漂ってる訳さ。 なり行き半分だがとても充実してるよ。 潮風浴びながらの航海は非常に楽しい」

 

 

「海か。私もこの大地に向かうまで外海を渡ってきたがかなり過酷な環境だった。 案の定そこで一人が脱落したけどな」

 

 

「え? もしかして……死んだ? フェニックスの羽で生き返らないほどに…か?」

 

 

「え? あー、いや、そうじゃない。 命は絶っていない。 もん娘に連れて行かれたんだ。 セイレーンって鳥のもん娘に気に入られてしまってな、仲間の一人が歌で恍惚に染められてフラフラとセイレーンに抱きついてしまうとそのまま空彼方まで連れられてしまった」

 

 

「なるほど、お持ち帰りされたのか」

 

 

「そういうことだ。 まぁ、死んではないと思うが冒険者として終わったかもな」

 

 

「こんな世界だ。 弱ければ吸い殺されるか、絞られて適当に捨てられるだけ。 それでお持ち帰りにされれたなら行先で廃人に染められるか、飼い殺しにされるか、または生涯をそのもん娘に注ぐかどれかだな」

 

 

「後者は比較的幸せな終わり方かもしれないが己を極めてきたものを否定することになりうる。 私が男として産まれたならそれは嫌だな…」

 

 

「ショウキって負けず嫌い?」

 

 

「別にそんな事は無いが、ただ育てられた形が敗北を許さないのだ」

 

 

「と、言いますと?」

 

 

「そうだな、フラッグには言っておこう。 私は『アサシン一族』として育てられた娘だ。 仕事を必ず全うするため命を落とす事は許されない。 だから性別問わずに敗北は許されないのだ」

 

 

「なるほど、アサシン一族か。 確かサバサ王家を守る約束事が昔から結ばれていて、それは初代から続いてるとかだったな。 律儀だね」

 

 

「ふむ、詳しいな?」

 

 

「まぁな。 内海を渡ってる時期に一度だけサルーンに行った事あるからな。 それでアサシン一族の話を聞いたことあるんだ」

 

 

「なるほどな。 無論、フラッグの言う通りだ。 私はサルーンから派遣されたアサシン一族の娘であり、サバサ王家の密命で雪の大陸に侵入を試みたのだ。 外海で一人脱落しながらもなんとか渡れたが結界に阻まられるアクシデントもあった。 だが洞窟に入れる小さな抜け道も見つけたからそこから侵入した。 だが残った3人の仲間は次々と倒れてしまいこの有様だ……」

 

 

「だがここまで来れたということは仲間は皆強いって事だよな」

 

 

「ああ。 前衛としてバトルマスターと拳聖の二人。 後衛に吟遊詩人と魔法少女の二人。 最後に戦闘以外で支援も果たせるようにレンジャーの私も含めて五人だ。 皆、選ばれた精鋭だ。 謎の大陸を調べるために組まれた最高のメンバーと言っても良いだろう。 だがあまりにも敵が強すぎたため、精鋭の組み合わせでも無残に散ってしまったがな…」

 

 

「仕方ないとしか言えなよ。 だってココは本当に次元が違うからな。 俺も踏み込むまでそれは分からなかった。 一度だけ氷の魔女と本気で対立したけどあまりにも力量が違った。 マキブは初見殺しが効きやすいから良いものを俺自身が弱い。 種族的に押しつぶされる以上は逃げる事を選ぶようにしたね」

 

 

けれどここまでやってきたおさかな海賊団のメンバーは良く渡り合ったものだ。 しかしその代償として仲間二人は瀕死、ボニーは両腕が凍結して使い物にならない。 アシェルと残りの子分も半分以上消費してる有様。 しかもまだ中間地点であり先は続く。 だけどこれ以上進む事は不可能。 しかし俺を探しに後を追ってきた皆は欠けることなく生きてくれて良かった。

 

だからこの洞窟の結界を消して皆を救わなければな。 だが、焦り過ぎるなよ。 俺は強くない。 確実に役目を全うするため何事も慎重に動け。 だが大胆かつ冷静な動きも忘れずち進むんだ。 瀕死の仲間についてはアシェルが命を繋いでくれてるから少しだけ猶予はあるけど、それでも早ければ早いほど仲間を救えるのだから。

 

 

 

「……フラッグ、止まれ」

 

「!」

 

 

 

行先に氷の魔女か。

 

どこか行ってくれたら助かる。

 

だけど動く気配がない。

 

 

 

「ショウキ、数秒隙を作れ、俺が動きを止める」

 

「わかった」

 

 

 

特に打ち合わせはない。 ただ返事をするとショウキは飛び出して氷の魔女を背後から忍者刀で切り裂いた。 氷の魔女はショウキの奇襲に気づくと魔法を展開する。

 

 

 

「いけ! サイコジャマー!」

 

 

 

魔法の演唱を解除させるとスタン状態にした。 そのまま俺はレッドフレームの『ガーベラストレート』を投げ飛ばして氷の魔女を貫く。 鈍足効果とスタン効果で動きを制限すると勢い良く氷の魔女と間合いを詰めると25機特有の前格(蹴り)の真似事で突き飛ばした。 ショウキに指で支持をすると俺と一緒に離脱した。

 

 

 

タッタッタ

 

 

 

「逃走は成功。 一気に距離を離すぞ」

 

「ああ」

 

 

 

 

倒す必要は無い。

 

無事に逃げれたら良いのだから。

 

 

 

「!?」

 

「なに!?」

 

 

 

氷の魔女から逃げ延びた。

 

しかし逃げた先でとある敵キャラと出会ってしまう。

 

とうとう現れたか。

 

 

 

「む!?」

「ふぇ!?」

「なに…?」

「あらら?」

「これは…」

 

 

 

五人の天使兵だ。 体は俺よりも小さいが、たわわ実ったおっぱいはボニーやアシェルと同じレベルだ。 とても柔らかそうで、五人に囲まれれば簡単に埋もれてしまう楽園は男の性を無条件で擽ぐってくれること間違い無しだろう。

 

 

 

「まさかこのタイミングでボニー達と同じ絵師さんのキャラが立ちはだかるとはね!」

 

「え、えし、さん?」

 

「え? あー、いや、こっちの話だ」

 

「そうか。 ………むぅ」

 

「?」

 

 

俺の言葉よりもショウキは天使兵達を観察する。

 

 

「……羨ましい…」

 

 

そんなショウキの視線はやや下の方を見ており、ボソッと呟いた。 何に対する言葉なのか理解できるが俺は余計な事は言わないようにノーコメントでスルーして武器を構える。 目の前の天使兵もそれぞれ個性的な武器を構えて対立する。 別に痛々しい事はしないと思うが快楽による拷問で心を落とすつもりだろう。

 

でもそういうのはやることが単純で逃げやすいから助かる。 しかし少しでも施される快楽に身を任せてしまったらその沼から抜け出せないだろう。 俺は快楽の耐性はないに等しい。 しかも楽園を見せることが得意な天使の性技なんかは論外だ。 興味があっても絶対に受け止めてはならない。

 

 

 

「ショウキ、わかってるな?」

 

「ああ」

 

 

 

倒そうと思わないこと。

 

突破して逃げること。

 

相手にしすぎないこと。

 

これらを楽しく守って全速前進(逃げるん)だぁぁぁあ!!

 

 

 

「行け!『ファンネル』!」

 

 

 

両手をバサっと広げるとABCマントからファンネルが次々と現れて天使兵の周りを囲う。

 

 

 

「『ミラージュコロイド』!!」

 

 

「消えた!?」

「うそ!?」

「何者なの!?」

「それよりもこれは何だ!?」

「絶対何かあります!」

 

 

いつもながらマキブってのは初見殺しの塊だ。 それは実際にゲームをプレイしてる時も同じだ。 ありえない挙動や性能はいつも初見プレイヤーを苦しませてきた。 それはどんな時も変わらない。 目の前の天使達のように。

 

 

 

ピュン ピュン!

ピュン ピュン!

 

 

「「「!!」」」

 

 

 

無数のファンネルが天使兵達に過激に襲いかかる。 さすがハマーン様のキュベレイ(2500機)が扱うファンネルは質と量が低コストの機体達と桁違いだ。 しかし俺が扱えきれないのと、MPの量は馬鹿にならないことが欠点であり、放ったファンネルの数は五体を相手にするに足りない。 しかし撹乱する他は充分足りているようだ。

 

 

 

「きゃー!」

「痛い!痛い!」

「払って!早く早く!」

「これはどうしたら!」

「もう!ちょこまかと!」

 

 

ピュン ピュン!

ピュン ピュン!

 

 

 

 

 

 

 

「隠密行動流石だなショウキ」

 

「あれだけ撹乱したのだ、切り抜けるには容易い」

 

 

俺たちは駆け足で天使兵達から遠ざかる。

 

上手くいったことに喜びを得ながらハイタッチを誘うとショウキは少し驚くが納得するようにハイタッチしてくれた。

 

ええやん。

 

 

 

「しかしエクバと言うのはやはり凄いものだな。 多芸な魔機武(マキブ)によってどんな状況も切り抜ける事が可能だ。 あと答えたく無いなら構わないがそれは最上級職なのか?」

 

 

「え? あー、いや、まだ最上級職ではない」

 

 

「まだ?」

 

 

「何というか、この職業に最上級とかは存在しなくてな。 どこまでも伸びる練度と共に強さが変化していく。 それで最近になって俺はこの職業の半分のところまで極めたから……ええと、恐らくエクバの職業を最大まで極めた時の半分の強さって感じかな? そのくらい」

 

 

「なっ、まだそれで半分だと…!?」

 

 

「ああ。 でもその分使いこなすのに多大な修練が必要だ。 大海のごとく深くて果てしなく幅広い職業だから両手を伸ばしても全て掴めきれない」

 

 

 

それはアーケードゲームに何枚も何枚もクレジットを落として試行錯誤を繰り返して行くかのようにな。 失敗して、キャンセルルートを見つけて、対策を作って、愛を深めて、台パンして、何回も何回も揺さぶられながら繰り返すだけ。 それは変わらない。 だから俺は何度も繰り返して行くだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幾度なく敵を退け、ここまでやってきた。

 

多少アイテムや気力を消費したが追い込まれるほどでもない。

 

 

 

「これが仕掛けか」

 

 

「この台座にある赤い玉を隣の台に移せば解除されるようだな」

 

 

 

俺は赤い玉に触れ、持ち上げる。 案外軽くてビックリしたが眺めてるとその中に吸い込まれそうなほどのエネルギーを感じる。 長時間触れてると何か起こりそうなのだ俺は急いで隣の台座に移動させた。

 

 

ガコン………パリン!!

 

 

 

「!」

 

 

 

幻聴かと思うような音が聞こえたがこの洞窟ごと包み込む何かが割れる音がした。

 

もしかしたら恐らく…

 

 

 

「!! 見ろよ、導きの糸が色を取り戻している。 どうやらこれで機能するようになったのかもな」

 

 

「だとしたらこれでフラッグの仲間は救われる事になるか」

 

 

「ああ。 これでアシェル達はこの山の外に出て海賊船に戻れる。 そうすれば薬品や物資が豊富に充実してる船の中で治療が可能だ」

 

 

「そうか。 それはよかった」

 

 

 

彼女は言っていた。 ショウキ達の仲間はただ派遣されるために集ったメンバーであり、指令や役目のために団結しただけであってそれほど仲間意識が高い訳では無かった。 しかしフラッグたちは掛け替えのない仲間として繋がっている。 難しいけど誰一人欠けることなく歩んで欲しいと切実に願ってくれたから彼女は俺の事を喜んでくれた。 良いやつだよ。

 

 

 

「さて、ショウキ。 君はこの先に行くのか?」

 

 

「ああ、大陸調査とし派遣されたからな。 だから私はこの先に行く」

 

 

「そうか。 あまり一人で向かって欲しくないけど」

 

 

「心配は有難い。 だがアサシン一族として役目を全うし、引き受けた仕事を果たすべきなのだ。 だからこの場所で燻ってられない」

 

 

「ははは、昨日まで死にそうになったのに使命がある限りは止まらないんだ」

 

 

「ぅ、そ、それについてはもう感謝しきれない程だ。 だから絶対に必ず、この恩は報いらせてもらう」

 

 

「じゃあそのうちサラーンにでも出向いて__」

 

 

 

 

キュイーーン!

 

 

 

 

「!!!」

 

 

脳裏に素早く何かが走る感覚。 俺は足に力を入れるとショウキの可憐な体を強く抱きしめながらそのまま押し倒した。 ショウキは「な、なにを!?」と少し赤くして驚くが、俺たちが立っていた場所には冷凍ビームが通過する。 ショウキはそれを見て目を見開いて横を見る。 俺も腰に構えているビームライフルを取り出して冷凍ビームの主に威嚇した。

 

 

 

「っ、不意打ちとは随分な挨拶だな!」

 

「!」

 

 

 

 

「躱したか。 なるほど、貴様はなかなか厄介な人間のようだ」

 

 

 

俺たちを攻撃した正体はショウキを死に追い込んだあの氷の魔女だ。 もん娘は似たような見た目しているが俺にはわかる。 強い執念を持ってこちらを追いかけてるのだからこの氷の魔女は間違いない。 あと足が火傷してる。俺が転がしたハンドグレネードのダメージだな。

 

 

 

「わざわざここまで追いかけてきたのか? 魔女のくせに肉体労働とはご苦労なこった」

 

 

「このまま逃げられては癪だからな」

 

 

「そうかい。 冷たいのにお熱い追っかけで心温まるよ、ありがとう」

 

 

「……その余裕面、絶対零度の快楽に堕ちながら崩してやろう」

 

 

「やってみろ。 氷の魔女という存在は対策済みだ。 アーケード画面に映る台バンシィ如くいい加減見飽きたぜ。 行け!サイコジャマー!」

 

 

 

手を伸ばすと浮遊する小さな物体が氷の魔女を囲い込む。

 

 

 

「ふん!」

 

 

 

しかし氷の魔女は手を払うと冷気が広がり、浮遊する物体は凍りついて地面に落ちる。

 

 

 

「愚かな、二度同じ手にーーー」

 

 

「行け!『サイコジャマー』!!」

 

 

「!?」

 

 

 

再度俺のマントから浮遊する物体が氷の魔女の周りを飛び交う。

 

するとジャマーは発動された。

 

氷の魔女の動きを止めてしまう。

 

 

 

「な、なんだ、と?」

 

 

「一度仕掛けを見られてる敵に対して誰が真面目に同じこと繰り返すか。 俺はそんなに愚かじゃ無い!」

 

 

 

今飛び交わしたのはただのファンネルであり、本物のサイコジャマーは後から出した。 どうせ対策くらいはしてるだろうからこちらもその上を踏んで対策させてもらっただけの話だ。 しかしファンネルは強力だから残しときたかったけど致し方あるまい。

 

 

「ショウキ、洞窟の外に逃げるぞ」

 

 

「なに!? そんなことしたらフラッグは!」

 

 

「仕方ないだろ。 生き延びるためだし」

 

 

「!……わかった」

 

 

 

ショウキが気にしてるのは俺がおさかな海賊団と合流できなくなるからだろう。 もし俺がこの洞窟から出てしまえば『導きの糸』は『スノーヘブン』方面の洞窟入り口に登録されてしまう。

 

洞窟を出ないで導きの糸を使えばおさかな号が止まっている方面の入り口に戻る事が可能でありそのまま仲間と合流できる。 だがこのまま外に出てしまえば導きの糸を使用してもおさかな号側の洞窟入り口には戻れないだろう。 システム的な関係でそうなる。 だが生きていればまた会えると信じてるから、俺は迷わなかった。

 

 

 

「退くぞ!」

 

 

 

ベルガ・ギロスの『ショット・ランサー』を撃ち放って逃げる。 ゆっくり飛んでいくランサーは氷の魔女へ直撃するとスタン+スタン効果で強制的にダウンさせてしまう。 俺たちはその隙に洞窟の外に出た。

 

 

 

「逃げれたのか?」

 

「それはどうだが…」

 

 

俺は洞窟の入り口にフェイロンフラッグを投げ、あからさまなトラップを仕掛けながら洞窟から離れ続けた。

 

 

 

「……追いかけては……無いな?」

 

 

「恐らくあの洞窟からは出ないだろう」

 

 

 

しばらく様子を見るが出てくる気配は無い。

 

強敵から逃れた事を知ると力が抜ける。

 

 

 

「これで抜け出せれたか……」

 

 

「おつかれショウキ。 そしてついに新大陸だぞ」

 

 

「そうだが、しかしフラッグ、お前は…」

 

 

「それは大丈夫。 10日後にナタリアポートまで行けば会えるだろうし。 いや、2日くらいは経ってるから後8日経過すればナタリアポートだったかな? とりあえず俺はそう言葉残してるからどうにかして会えるだろう」

 

 

「そうなのか?」

 

 

「そう約束取り決めてるし。 アシェルが覚えてるならの話だけどな。 まぁ細かいことはどうにかするさ。 それよりも奥に見える街まで行こうぜ、ここに立ち往生してても仕方ないし……あとお腹空いた…」

 

 

「! そうだな」

 

 

 

俺とショウキは雪越えの山を背に向けて街の方に向かった。

 

 

 

 

 

つづく






氷の魔女から逃げることができた二人ですが、フラッグはゲームシステム上おさかな号の方面に導きの糸で戻ることができなくなりました。 とりあえずもんむすファンならお世話になった天使たちが住まうスノウヘブンに向かう二人の行方はどうなることやら。


《ミラージュコロイド・ステルス》

ブリッツガンダムが使用する特技であり、光学迷彩にて比較的透明になるシステム。 ステルス中は視認不可なレベルに落したりとかなり強力なマキブ。 ただし歩行以外のアクションを起こすと解除されるため、攻撃を絡める場合は即座に繋げなければならない。 簡単そうな性能だが使い方次第では大物と渡り合う力を持っている。


ではまた
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