マキブを集めながら、もんぱらの世界を楽しんで80日は旅をしただろうか?
随分とゆっくりと歩んだものだ。
そりゃゲームと同じようにセーブのロードなんて便利な機能は無い現実味ある毎日。
常に慎重に進んでるに決まってる。
しかし一人旅をしていたとは言えまさか『悪夢の荒野』の近くまでフラフラと冒険してたとは思わなかった。
まぁ、来てしまったのは仕方ない。
そのため俺はしばらく貴婦人の村を拠点に…するのは色々と危険なので、ハーピーの羽のワープ地点として扱いつつ、この一帯でレベリングをしながら『神鳥のほこら』でも見に行こうと命知らずを考えていた。
しかしこの辺り人間なんかでは即蹂躙されてしまうだろう。
鬼とかがいるからな。
けど持っているマキブがどれも強いから助かるものだ。
特にグランドノアの反攻作戦に参加したのがデカイな。
結構貢献した。
マキブの力で強引に前線を押し上げたり、撤退線を援護したり、補給路の確保も勤しんだりと、グランドノアは優勢に立ち回ることができた。
この活躍によって王妃から感謝とばかりに『ヘルメスの薔薇の設計図』を頂いた。
お陰で『Gセルフの換装兵器』でどんな敵も立ち向かえるようになった。
もしかしたらだけど、ゴルド大陸西の大穴にいるアポトーシスとも対等に立ち向かえるかもしれない……が、正直その先は行くつもりはない。
命が惜しいので進むなら神鳥のほこらまでにしようとか考えてる。
俺はまた表世界を楽しみたいので死ぬ気は無いし、まだ見てない場所もある。
それでも…
「ああ、この辺りまで来ると一人旅は楽じゃないな」
一人旅は寂しいってのもあるけど、問題はそこじゃない。
街に行けば酒場とかで見知ったことがある旅仲間に出会えるたりとそれも旅の醍醐味だが、基本一人旅の俺はそう言うのに少なからず寂しさを覚える。 もちろん人肌の恋しさだけではなく一人だと大変な事も多い。 厳しい奥地まで進むとそりゃ痛快する。 この辺りまで一人できて少なからず限界も感じた。 ストーリーの中盤も終わるあたりの場所だからそれもそうだろうけど。
しかし仲間は特に作りもせず孤独奮闘していた俺にもある日、旅の道連れができたのだ。
それは『悪夢の荒野』で旅をしていた時の話だ。
俺は悪夢の荒野まで旅立つ前に貴婦人の村で美味しい情報を得たのだ。
本当に、味覚的に美味しい話だ。
悪夢の荒野にはレアなもん娘が存在しており、そのモン娘が持つゼリー(?)がとても美味だと聞いたのだ。
その話に興味を持ったので悪夢の荒野をただ切り抜けるだけじゃなくて、噂されてるレアなもん娘を求めながら悪夢の荒野を攻略しようとした。
俺は3日分の食料を持ち、悪夢の荒野でレベリングも兼ねてしばらく探索していた。
だがレアなもん娘だけあってなかなかエンカウントしなかった。
それでも食料に余裕を持たせながら探索していたが疲労は蓄積する。
とある戦闘で判断ミスを起こして腕を怪我してしまった。
この世界はゲームのシステムとステータスである程度は守られるが、それでも人間は脆いのだから気をつけなければならない。
疲労での判断ミスはもってのほかだ。
そこそこの長旅故に慣れた痛みだが放置するわけにも行かず、俺は腕に薬草を塗りつけて腕に包帯を巻いた。
しかしその包帯は使用期限が迫っており、そろそろ捨てなければならない。
しかし包帯はまだ沢山あった。
なので、遊び心も兼ねて包帯を無駄に伸ばし、腕に巻いた時に大きなリボンの形を作った。
……道中の枝とかに引っ掛けると危ないから後で解くが、この包帯にグレネードとか巻いておくのはどうだろうか? 包帯を切り離してそのまま起爆とか出来そうだ。
そんな事を考えながら大きなリボンを作った包帯を腕に巻きつけ、この辺りを探索してると…
一体の もん娘 が現れたのだ。
しかもそのもん娘は貴婦人の村で噂されてたレアなもん娘だった。
「わー! 大きなリボンですねー♪」
そのもん娘は『ゼラチナスキューブ娘』だった。
確かに、彼女はレアな分類だった。
俺は貴婦人の村で聞いた話に納得していると、ゼラチナスキューブ娘は友好的に近づいて来た。
俺は友好的なフリをして近づいてこちらの命を刈り取るのではないかと思い、ゼラチナスキューブ娘に警戒するがその眼は純粋だった。
特に野心は無くふつうに友好な娘。
でも手で静止するとゼラチナスキューブ娘はその場で止まった。
でもニコニコとしている。
ある程度、警戒を解いて俺は腕に巻いてる大きなリボンを見せる。
「残念ながら、これは使用期限ギリギリの包帯なんだよなー」
「そうなんですか? でも遊び心あって良いと思いまーす♪」
なんかお褒めを頂いた。
予想してた反応と違って出鼻を挫かれたが、悪い気はしない。
なので俺は「ありがとう」とお礼を言った。
だがちょっとだけ、ゼラチナスキューブ娘は残念そうにしていた。
本物のリボンかと思って近づいたらしい。
「リボン好きなのか?」
「はい〜♪ 大好きなんですよ〜♪」
ゼラチナスキューブ娘は自分の頭にゼリーのリボンをつけている。 そのくらいリボンが好きなようだ。 だから俺に近づいできたらしい。
あわよくば「殺してでも貰う」とかそんなんだろうかと思ったけど全然そんな気はしない。
彼女からしたら近くで見れたら万歳らしい。
それもそうか。
ここは『悪夢の荒野』と言われるくらいだ。
まず人間はこないし、来たとしてもこんな危ないところでリボン結んだオシャレをする余裕もあるとは思えない。
リボンをつけるほどお洒落をしてるとしたら、それは腕の立つ冒険者だ。
しかしレアなもん娘と言われるゼラチナスキューブ娘とエンカウントする事も稀である上に、こんな危険は場所は早々に攻略して切り抜ける筈だから。
しかし俺は彼女を探すために根気よく数日間探索してたから、こうして出会えたようだ。
「そっか、でも、リボンじゃないのですね…」
「……」
残念そうだ。
俺は少し可哀想と思った。
だから俺は少しだけ考える。
こうしてレアな彼女に出会えたのだ。
何かの縁だと思ってここは一つ腕を振るおうと考えた。
「ちょっと待ってろよ」
「?」
まずサバサで手に入れたアクセサリーのパーツを道具袋から取り出した。
太陽の光に当てればキラキラと輝く黄色の紐状のアクセサリーを適当な長さに切り、それを小道具で細工する。
因みに紐の大きさはプレゼント箱とかに結べるお洒落なアイテムだ。
これはサバサの酒場でやっていたビンゴ大会で手に入れたのだ。
使い道は分からなかったがとりあえず道具袋にそのまま保管していた。
「何をするのですか〜?」
「いいから、見てなって」
お洒落な紐をちょちょい細工。
頭つけるには丁度よいサイズのリボンを作り上げたのだ。
最後は結び目の真ん中にボタンで留めて軽く針糸を通して固定する。
「はい、どうぞ」
「!!!」
数分で作り上げた大した価値もないリボン。
それをゼラチナスキューブ娘にプレゼントすることにした。
するとゼラチナスキューブ娘は目を輝かせながら手のひらに受け取る。
彼女はリボンと俺の顔を交互に見ながら「いいの!? 本当にいいの!?」と驚いていた。
そんな彼女の様子に笑いながら「余り物で悪いけど」と言ってプレゼントした。
それでも大変喜ばれたのだ。
この時、ゲームシステムにすれば…
『ゼラチナスキューブ娘の好感度が80上がった』って感じに好感度が上昇していたらしいがそんな事は気にもしなかったし全く考えてなかった。
それから仲良くなったゼラチナスキューブ娘とお昼頃を食べることになり、お昼休憩を取りながら俺はこれまでの旅を話した。
サバサでビンゴ大会を楽しんだ事。
マステギアで魔導を体験した事。
グランドノアで反攻作戦に参加した事。
マキブを集めながら世界を旅してる事。
色々とだ。
彼女は貪欲に話を聞いていた。
彼女は悪夢の荒野から出ることが無いため外の世界の話に興味深々である。
するとゼラチナスキューブ娘から質問を受けた。
それは悪夢の荒野と恐れられる場所になんで来たのか? その理由を聞かれた。
俺は素直に『貴婦人の村で聞いた美味しい話題』をゼラチナスキューブ娘に話した。
「これ美味しいの? 聞いたことないな〜」
「噂じゃ大変美味だと聞いたぞ」
「…じゃあ、食べてみる?」
リボンのお礼とばかりにキューブに触れる事を許された。
俺はキューブに触れる。
それを手に取って食べる。
「っ、うまっ…!?」
いや、これ本当に美味しい!
「これは、本当に、むぐむぐ…」
「あ、あの、お兄さん?」
このキューブはすごく甘くて美味しい。
いつまでも舐めていた魔性の味だった。
体の一部を舐められてるゼラチナスキューブ娘はまさかこのキューブが珍味として受け止められると思わなかったようで、少し複雑な顔をしていた。
「ええと、そんなに美味しいの?」
「ん? …、……はっ!? す、すまん!」
夢中になって味身をしていた。
あまりにもはしたない事をしたと思って謝る。
しかしゼラチナスキューブ娘は「いいよ、別に♪」と微笑んでいた。
「っ…」
かわいい…
そしてこの時、俺は考えが甘かった。
スライムの体を食べている。
スライムの特徴と言えば体に入り込んで支配する能力が高い。
そこから細胞の形を変えたりとするほどに危険だ。
俺は気づかずに彼女の味に支配されていた。
…
…
さて、俺はゼラチナスキューブ娘から珍味を貰い、すごく元気になった。
傷を癒す効果もあるのか包帯に巻かれた深い傷も治っていた。
体もすごく調子が良いので悪夢の荒野を一気に突破しようと考える。
俺はゼラチナスキューブ娘にお礼を言ってこの場を去ろうとしたが、腕が冷んやりとした感触に包まれた。
ゼラチナスキューブ娘に掴まれたのだ。
すると…
「一緒に連れて行ってください♪」
「ふぁ!?」
彼女は俺の旅の話を聞いて外の世界に興味を持ったようだ。
特にサバサのように貿易が捗る場所に行けば、お洒落なアクセサリーが手に入る。
特にリボンを求めて俺に付いて行きたいと言ったのだ。
まさかそう来るとは思わなかったので少し思考が停止していた。
だが彼女はただ付いていくとは言わなかった。
「お兄さんが望むなら♪ わたしのキューブは好きなだけ食べていいので♪」
__魅力的な提案だった。
脳が彼女を欲したくて判断を支配する。
「それにこのキューブに包まれたらすごく気持ちがいいんですよ? お兄さんのためなら幾らでも気持ちよくしてあげます♪」
__そう、とても魅力的な提案だ…
「……だから、その、ダメかな?」
「……俺の行く先は、大変だぞ?」
「ばっちこーいです♪」
彼女にそのつもりはない。
ただ純粋について行きたいと言っていただけ。
しかし彼女と言う味に支配されていた俺は彼女の同行を了承する。
こうしてゼラチナスキューブ娘との旅が始まった。
♢
「フラッグ兄さん、何か釣れました?」
「だめだマージュ、なかなか釣れない。 だからキューブ舐めさせて」
「もう、それはどういうことですの〜?」
「うまうま…」
「……まだ許可してませんよ?」
「うぉ!? 釣竿にヒットした! うおおお!」
「無視ですか……まぁ、別にいいですけど」
「って、うおお!? なんかでかくない!?」
「ほーら、フラッグお兄さ〜ん♪ ふぁいと、ふぁいと〜♪」
こんな感じにゆったりと寄り道しながら楽しんでいる。
いまレムズ海岸で釣りをしている。
妖精の森を抜けるのは大変だった。
彼女の声援を受けながら竿に力を込めて引っ張りあげた。
バシャーン!
「すごーい!でかいよ!」
「よっしゃぁぁマージュ!! やっと大物が釣れ…………は?」
「み、みず…」ぴちぴち
「って! あんた残念なドーメイマじゃねーか!」
「み、水…」
「やかましいわ!」
海にぶん投げた。
「んなアホな…」
「なんか残念だね?」
「だよな。 だからキューブ舐めさせて」
「もう、そればっかり〜! むぅ、そんな食いしん坊なフラッグお兄さんはスライム式のお仕置ですからね♪ えいっ」
「ちょ!? マージュ!? ま、まて!?」
「嫌だよ〜♪ ゆるさな〜い♪ 3回は覚悟してもらうんだから♪」
「あ、でも、うまうま…」
「もう! 緊張感持ってよ〜、お兄さ〜ん!」
このあと、彼女の甘い泉の中で弄ばれたのは言うまでも無い。
もうこの味から抜け出せそうにないや…
別にそれでも構わない。
俺の名はフラッグ。
美味しいお洒落さんと旅をしています。
end root【ゼラチナスキューブ娘】