おさかな海賊団の幸せな旗   作:つヴぁるnet

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エル end

 

〜 ライラの大滝 〜

 

 

 

 

「1、2、3、4……ふん、ふん……7回か」

 

 

子供の頃の川遊びを思い出す。

 

俺は綺麗な川で水切りしてるところだ。

 

わざわざ遊ぶためにココまで来たわけじゃ無いが、太陽に反射されてキラキラと綺麗に輝く川を見ると、ガキ大将の頃を思い出したので少し楽しみたくなった。

 

靴を脱ぎ、ズボンを捲り上げ、川に足を浸す。

 

ひんやり冷たくて気持ち良い。

 

長旅で歩き回った足の痛みと疲労が拭われて行くようだった。

 

 

 

「そぉい」

 

 

 

それから平べったい石を探すと水平に投げ飛ばし、水切りで遊ぶ。

 

かなり良い形をした平石があるので結構な回数を水切ってくれた。

 

やばい。

 

少しだけ楽しむつもりだったのに川遊びが止まらない。

 

川岸に移動して頭だけを水の中に突っ込む。

 

 

「……ぷはぁ!! 水ウメェ〜」

 

 

 

水も非常に美味しい。

 

人気も無いから隠れた憩いの場だな。

 

周りは静かで、水のせせらぎは心地よい。

 

 

 

「お腹すいた、作るか」

 

 

ある程度遊ぶと調理道具を取り出し、料理を開始する。 ヤマタイで手に入れたうどんの乾麺とカツオの粉末、そしてここの川から汲み上げた美味しい水でうどんを湯がき、そして完成させる。 最後に乾燥させたかまぼこを乗せて、多少彩りを良くする。 木影に腰を落として、割り箸を片手に準備完了だ。

 

 

 

「さーて、早速いただきま…………誰だい? そこにいるのは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の名前はエル。

 

 

お母さんがマーメイドだから私もマーメイド。

 

でもお父さんは人間だったようだけど、あまり話してくれない。 私が生まれたときはいなかったから多分死んでしまったのだと思う。 人間ともん娘は寿命に差がある。 他にも種族的強さも差がある。 だから長くは生きられないらしい。

 

お父さんが居ないのは少し寂しかったけどわたしには優しいお母さんがいるから大丈夫なんだよ!

 

でも少し過保護すぎるのかな?

 

あまりお外に連れ出してくれないの。

 

ジェネラルマーメイドをお供につけたら少しは外に出れるけど最近はあまり洞窟の外に出させてくれない。

 

だから私にはあまりお友達がいない。

 

同じ年くらいのマーメイドの女の子と遊ぶことあるけど、私のお母さんがクイーンマーメイドだからみんな身分の違いを気にしてあまり寄り添わない…

 

マーメイド達は私に遠慮するんだ。

 

だから『他の種族』とお友達になろうとすれば私にも遊び相手が増えるかな? もちろん身分を隠した上で友達になってくれた子とお付き合いすれば問題は解消されるかもだけど……なかなかお外に出れないから困ってる。

 

そんな感じに悩みを持ちながら私はマーメイドの隠れ家として使われてるライラの大滝で過ごしていた。

 

しかしある日、お母さんと門番のジェネラルマーメイドの目を盗んで私だけが知る秘密の抜け穴からこっそりと抜け出した。 お目付役をつけていないが、少しくらいは良いでしょうと甘い考えで外の空気を楽しんだ。

 

 

久しぶりに浴びる日差し。

 

 

もちろん洞窟からも日差しは浴びれるが、草原の上で浴びれる日差しは全くちがう。

 

綺麗に済んだ空気と小鳥の鳴き声は気持ちよく体に染み渡る。

 

 

だけどお母さんが心配してると思うと罪悪感が湧き、引き返そうと考えた時だった。

 

 

水を切る音が聞こえた。

 

 

この近くに誰かが来るのは珍しい。

 

 

いまこのライラの大滝はマーメイドの縄張りだからマーメイドよりも力劣る生き物はココに踏み込まない。

 

 

私はそのことが気になったので音のする方へ向かう。

 

茂みに隠れて観察すると…

 

 

 

「人間!?」

 

 

 

男の人が川に顔を突っ込んでいた。

 

そして男性は顔を上げると『うめぇ!』と叫び喜んでいた。

 

それから川の水を鍋に汲み、硬くて白い棒の束を投入すると湯がき始める。

 

最後に粉状を鍋に入れて味付けをすると、鍋ごと食べ始めようとしていた。

 

 

この時、私は仲間に人間が近くまで来てることを知らせるべきだった。 ジェネラルマーメイドを洞窟の入り口で待ち受けさせ、そして対話でお引き取りを願うように手配させるべきだった。

 

しかし私は眺め続けていた。

 

楽しそうに自然の恵みを受ける人間の姿から目を離せずにいた。

 

だが夢中になり過ぎた体は前に乗り出すと体を支えていた枝をポキリと音を立てて折れてしまい、うつ伏せで倒れ込んでしまう。

 

 

 

「!?」

 

 

………見つかってしまった。

 

 

 

 

「誰だい? そこにいるのは?」

 

 

 

人間はこちらを睨む。

 

 

見つかってしまった…

 

私は好奇心に動いてしまい、そして失敗してしまったことに後悔する。

 

ここから逃げなければならないのに体は怖がって動かない。

 

 

私にわかる。

 

あの人間はどこか強い。

 

本能が逃げることができないと言っていた。

 

 

 

 

「(お母さんっ、ごめんなさいっ)」

 

 

 

わたしは…

 

母に謝りながら覚悟を決めた…

 

 

 

 

 

だけどそんな覚悟は裏切ってくれた。

 

 

 

 

「……なんだ、マーメイドか。 とりあえず用があるならあとでにしてくれ、うどんが伸びる」

 

 

「え…」

 

 

 

男性は特に興味は示さず、お昼ご飯にありつき始めた。

 

私の心配は彼の食べる音で段々と消え失せてしまう。

 

 

 

「うん、ヤマタイの乾麺もうまいな。 職人からは試作品として貰ったけど結構いけるじゃん」

 

 

「……」

 

 

「カツオ出汁も効いてるし、麺類にはピッタシだ。 さすがヤマタイと言うべきか」

 

 

 

鍋ごと楽しむ彼の姿はまるで子供のようだった。 でもヤマタイと言う単語から彼は色んなところを旅する冒険者だとすぐにわかった。

 

格好も冒険者が着こなすような姿だ。

 

ただ襲いかかるもん娘を倒すだけじゃなくて、この世界を楽しむような空気を感じさせる。

 

 

だから、羨ましく思った…

 

 

 

「……君はさっきからそこでジッとこちらを見てるがどうしたんだ? 食べる邪魔をしないのはありがたいが」

 

 

「え?…ええと…」

 

 

「…もしかしてこれ気になるのか? ならこっちに来いよ。 出汁も余ってるし、おかわり作ろうと思ってたから。 よければ一緒に食べるか?」

 

 

「!!」

 

 

 

男性は最初と違って柔らかな雰囲気を漂わせると私を食事に招く。

 

本来は警戒すべきお誘いなのだが…

 

 

「良いの?」

 

 

「ああ。 一人分増えようが変わらない」

 

 

 

そう言うと彼は同じ料理を作り始めた。

 

湯がき終えるまで少し時間がいるようだ。

 

 

 

「ところで君の名前は? おれはフラッグ」

 

 

「わたしはエルだよ」

 

 

「エル…?? ああ、そうか……なるほど、可愛い名前だな」

 

 

「う、うん! えへへ、ありがとう…」

 

 

 

何か考える素振りを見せるが彼は私の名前を褒めると鍋の中を長い棒二つでかき回す。

 

 

 

「ここら辺に住んでるのか?」

 

 

「うん。 今はあの洞窟に住んでる」

 

 

「そっか。 そうなると、あの洞窟はマーメイドで沢山なのか?」

 

 

「え? うん。 しばらく前に滅茶苦茶強い女性が現れてね、それでマーメイドこの洞窟に追いやられたの……あ! こ、これは内緒だからね!」

 

 

「わかったよ、内緒だ。 でも災難だったな」

 

 

 

彼は野菜をハサミで切ってお鍋に投入する。

 

 

 

「ねぇ、フラッグは冒険者?」

 

 

「そうだよ。 俺はこの世界を歩き回って、色んなところを冒険する」

 

 

「一緒に冒険する仲間はいないの?」

 

 

「いないよ。 ずっと一人だ」

 

 

「……お友達も?」

 

 

「いないね。 どこかに腰が落ち着けたらお友達は作れるけど、旅してる時はお友達は作れないかな」

 

 

 

彼は少し困ったように笑う。

 

でもあまり寂しくないようだ。

 

 

 

「ところで君は知ってるかい? いまグランドノアとグランゴルドは戦争中だってこと」

 

 

「そうなの!?」

 

 

「うん。 俺はその戦争に参加したくないからここら辺まで逃げて来たんだ。 だからしばらくココで身を潜めさせてもらう。 だから俺もここにいることをマーメイド達に内緒にしてくれ」

 

 

「あ、うん! わかった!」

 

 

 

フラッグはそれだけ言うと火を止める。

 

鍋から"うどん"と言う食べ物を器に取り分けるとわたしに渡してくれた。

 

 

 

「熱いぞ」

 

 

「う、うん…」

 

 

 

わたしは初めて見る食べ物にワクワクしながら一口放り込む。

 

熱々だけど美味しい味が口の中に広がった。

 

 

 

「美味しい!!」

 

 

「それは良かった」

 

 

 

彼は私の反応を見て満足そうにすると彼は鍋ごと食べだした。

 

 

 

「冒険すればこんな風に美味しい食べ物にありつける。 エルも世界を見たいと思ったら旅すればいい。 誰かと一緒にとか…な?」

 

 

「旅……誰かと一緒に…」

 

 

「まぁ強くないとそれは難しいけどな」

 

 

「私はそれなりに強いよ! だってお母さんの子供だから!」

 

 

「エルはお母さんのこと大好きなんだな」

 

 

「うん!」

 

 

 

彼は熱々のお鍋にもかかわらず出汁をゴクゴクと飲み干してしまう。

 

そのあと『ご馳走さま』と手を合わせた。

 

 

 

「ねぇ、フラッグはまだココにいるの?」

 

 

「ああ、いるぞ。 グランドノアから身を潜めるためにな」

 

 

「それなら街に飛んだりしないの? ノア地方以外とか?」

 

 

「人間のネットワークはあまり舐めない方がいい。 俺がもし街に行けば、グランドノアから派遣された優秀な情報屋などが俺のことを捕まえようとする。 フラッグって人間は腕が立つから戦争に加えよう……とかね? だからこうして人気の無い場所に逃げ込むんだ」

 

 

「大変なんだね…」

 

 

「ああ。 力を持つとそりゃな」

 

 

「……じゃあ、しばらくココに居てくれるんだね?」

 

 

「なんだい? 俺がココにいるならまた遊びに来ようとか思ってるのかい?」

 

 

「えへへ、フラッグお兄ちゃんと居ると楽しいから」

 

 

「そうか」

 

 

「そしてね! 私がお兄ちゃんのお友達になってあげる!……ダメかな?」

 

 

「!!……そうか、ありがとな」

 

 

 

フラッグは柔らかく笑みながら私の頭に手を置くと優しく撫でました。

 

初めて人間に触れられたけど、それは暖かに感じられた。 人間の体温は人魚よりも熱く高いと聞かされていたが、火傷するような熱さではなく、嬉しくなる温かさを感じられた。

 

だけど段々と恥ずかしくなった私は「ごちそうさま!」と容器を置くいて逃げるように川の中へ飛び込んだ。

 

 

 

「お、お母さんが心配するから帰るね!」

 

 

「わかった。 またな、エル」

 

 

「うん! またねフラッグ! また来るから!」

 

 

 

 

川の深いところまで潜ると急いで離れました。 でもそれは怖いからじゃなくて、恥ずかしくなった顔を見られたくないからだと思っている。

 

でも、また彼に会いたいと言う気持ちで沢山でした。

その後、私だけが知る洞窟の抜け道からライラの大滝に戻ってルンルン気分で自分の部屋に戻りました。

 

 

「お母さんは人間って危ない生き物だと言ってたけど、みんながみんな悪い人なんじゃないよね?」

 

 

撫でられた頭に触れながら、今より幼い頃に教えられた疑問と答え合わせをする。

 

人は野蛮な生き物と聞いてた。 けれど人間の彼は別にそんな事は無かった。 優しさで接してくれた。

 

でもお母さんの言葉だって信じたい。

 

 

 

「……だから、それはわたし自身で決めないとダメだよね」

 

 

 

お母さんは言っていた。

 

上に立つ者は何事も自分の目で確かめて、そしてそれを自分の中で真実に変え、答えにしなければならないと。

 

だから私はお母さんの言葉だけじゃなくて、自分でもそれが誠かを知らなければならない。

 

 

 

「また、フラッグに逢いに行こう…」

 

 

 

ウキウキ気分の私を見たお母さんには何があったのか尋ねだけど、楽しい事に巡り会えたと濁した。

 

深くは追求されず、ただ「良かったね」と一緒に喜んでくれた。

 

 

 

それから次の日もフラッグに会うため、私は秘密の抜け穴から抜き出してライラの大滝の外へ飛び出した。

 

彼と初めて出会った場所まで向かう。

 

その近くにハンモックが作られていた。

 

フラッグはその近くで小さなアクセサリーを草原の姉に沢山ばら撒き、細かく整理していた。

 

彼曰く大事な生命線らしい。

 

私はフラッグのアクセサリーに付着した汚れを落とすお手伝いをしながら、旅の話を伺った。

 

例えばヤマタイの山にいるオロチとお供え物のお団子の味を当てるゲームをしたと話してくれた。

なかなかに接戦だったりと面白い話をしてくれた。

勝敗は引き分けだったが、楽しいひと時を与えてくれたオロチはお礼とばかりに軽いおまじないを掛けてくれた。

旅を続けていればそのうち種族的変化をもたらすらしい。

 

他にもグランドノアのコロシアムで開催されたエキスパートクラスの大会に出場した時、回復アイテム無しで決勝戦まで突破するとそのまま優勝した話も聞いた。 全てトランザムで完封したと言ってたけど……トランザムってなんだろう? ……トラとハム? …違うよね?

 

でもコロシアムで暴れすぎた結果、グランドノアがフラッグを軍に加えようと勧誘が激しくなったとも聞いた。 自業自得な部分はあるけど面倒だと頭を抱えていた。 その結果、戦争中は隠れるためにココまで来たらしい。

 

 

でもこれにより彼が強いことはよく分かった。

 

ココまで来れたのも納得いく。

 

腕の立つ冒険者ってこう言う人の事を言うのだろう。

 

だからますます彼のことが気になり、私は何度も何度も会いに行った。初めて作った人間のお友達と遊ぶため。 また世界を見て回っている旅人の話をを聞くために私は彼との時間を楽しみにしている。

 

 

だけど出会いがあれば、別れもある。

 

 

数日経過すると、彼は戦争が終わった事を知るとライラの大滝付近に作った拠点を片付けて旅立つ準備をしていた。

 

 

 

「エル、いつかまた会おう」

 

 

「うん!」

 

 

 

寂しい、行かないで………

 

 

 

 

なんて事は言わない。

 

だって私もいつしか、この世界を旅して彼に会えば良いのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出会いは必ずしも良い展開であることは無い。

 

 

 

「…な、なんでココに……」

 

 

「俺は冒険者だから何処にいても可笑しく無い。 それで? このサン・イリアをどうするつもりだ?……マーメイドのエル」

 

 

 

俺はグランドノアの戦争が終わった後はサン・イリアまでやってきた。

 

ここはマキナの研究が進んでる大国であり、マキブも回収してるのではないかと考えた。

 

そのためサン・イリアに寄ったが、タイミング悪くもん娘による殲滅戦争が開始された。

 

そのまま俺は巻き込まれた。

 

戦争に参加したいとは思わないが目の前で無力な人が襲われるなら助けようと思って襲いかかってきたマーメイド兵と対立する。

 

ダブルオー系のファングを敵の真上に飛ばして気を逸らすと、何度も使い慣らしたトランザムを発動して先陣を切ったジェネラルマーメイドを斬り刻む。

 

最後に飛び交うファングを刺して動けなくした。

 

殺してはいないが、その光景に敵の動きが止まる一度トランザムを解除する。

 

使い切ってからの反動がやばいので。

 

 

そのため、紅く灯った体は元の色に戻る。

 

エルは紅く灯っていた正体を知ることになった。

 

 

 

「エル、君は人間の敵であるのか?」

 

 

「違う!!」

 

「「「!!?」」」

 

 

 

エルの叫びは今回の作戦を全否定することになる。

 

そのためエルについて来た仲間は驚き目を見開いた。

 

でもごく一部のマーメイドは目を閉ざして反応しない。

 

人間に友好的なマーメイドもいるのだろう。

 

 

 

「違う!! 違うの!! これは!これは!!」

 

 

「……」

 

 

「違うの…違うの……ちがう、の…」

 

 

 

エルは俺の言葉に怯えながら涙を流し始める。

 

やってる事は人間を脅かす所業。

 

しかしエルは間違いだと理解してるからこそ、涙を流しながら否定する。

 

 

 

「なんか理由があるんだな?」

 

 

「!」

 

 

「俺の友達が苦しそうに喚いてるんだ。 何かあるんだろう」

 

 

「っ………みんな、武器を、下ろして…」

 

 

 

エルの指示により武器を下ろすマーメイド兵達。

 

ごく数名はエルの指示に反発しようとする奴もいた。

 

中には戸惑ってまだ武器を下さない奴がいたりとしたが、最終的には全員の武器を下げられる。

 

 

 

「フラッグ……ごめ__」

 

 

「違うなエル。 俺には言わなくて良い。 このサン・イリアに言うセリフだ。 と、言ってもこの状況じゃどうもな…」

 

 

 

街中は大混乱。

 

まだマーメイド兵の侵略は本格的に始まっておらず、入り口にいるサン・イリアの兵しか倒されていない。

 

ただ一部の海賊マーメイドは先に街中へ向かってサン・イリア兵と攻防が続いている。

 

本格的な制圧が始まった訳では無いが人間よりも強い兵が大量になだれ込もうとしてるため、街中は混乱に陥っていた。

 

 

 

「エル、何故こんな事をしたのか話が聴きたい。 いいよな?」

 

 

「うん」

 

 

「よし。 じゃあ移動しようか。 このまま入り口に軍を展開するのよろしく無い。 一旦下げてくれたら助かる」

 

 

「うん、わかった。 みんな、一旦このサン・イリアから軍を引くよ」

 

 

 

素直に聞く者、不満げに言う事を聞く者で様々だ。 しかしマーメイド兵の大体は、エルと俺の関係が気になって仕方ない。 何せ次期女王となる器がただの人間と対等に話すからだ。

 

 

さて、サン・イリアからやや離れた場所に向かい、そこらへん湖の近くまでやってきた。

 

俺は切り株に座り、エルも俺の近くまでやってくる……が、やや遠慮気味な感じがする。 やはり人間が住まう街に攻めようとしたからだろう。 その俺も武力的に支配されそうになってた側の人間だ。

 

でも原作を知ってる俺だから、エルを攻め立てようなど考えやしない。

 

 

なので…

 

 

 

「うどんでも食べながら話を聴くとしようか」

 

 

「!」

 

 

「食べたいだろ?」

 

 

「う、うん!」

 

 

 

と、言って俺はうどんを湯がき始めた。

 

怒ってないアピールのためにも一緒に食事をするのだ。

 

 

「しかし久しぶりだな、エル。 いや、一週間程度だからそんなに時間は経ってないか」

 

 

「でもフラッグがいなくなって寂しかったよ」

 

 

「そうか。 でも君が旅をすればいつでも会えるようになるさ。 今回みたいなことはレアケースだけど」

 

 

 

うどんを器に入れ、お互いに食べ始める。

 

しかしお目付役のマーメイド兵は毒を盛った可能性を考えて止めようとしたが同じ鍋で作った料理だ。 まず俺が食べることで無害を証明すると黙り込んでくれた。 でもまぁ次期女王を守りたいその精神は悪いことではないから責めようとは思わない。

 

 

さて、それからエルに話を聞き続けた。

 

 

やはり原作通りと言うべきか、母親に『人間はヤベーやつ』と吹き込まれたらしい。

 

でもエル自身は原作とは違って、人間を侵略して恐怖に陥れてしまうのは間違いだと理解していた。 それは俺と出会った事で変わったのだろう。

 

しかしエルは母親が大好きであり、母親が言うことはなんだって聞き入れたい。 そのため母親を困らせる事は出来なかった。 さらに言えば次期女王として軍を率いれる実績すら積まなければならない立場だ。

 

このように彼女は悩み続けていた。

 

これらを放棄する事はできず時は流れて、遂に決行の日が来てしまう。

 

母親の期待に応えたい気持ちが優先されてしまい、軍を率いてサン・イリアに侵略を開始してしまった。

 

でもそのかわり、武器を持たない人間は襲わないでと命令を付け加えた。 殺傷も論外だとエルは指示を出す。 ただ敵の城を落とすだけ。 阻む敵だけは戦って退くようにしたのだ。

 

しかし半分勝手に加わった海賊マーメイドは言う事は聞かずに、エル達に便乗して街中で暴れていたらしい。

 

精鋭部隊であるサン・イリア兵によって追い出されたが。 街中はあまり被害が無かったのは原作とは違う展開だな。

 

 

だが気にした方が良いのはエルがこの後どうしたいかだ。

 

侵略しないで去るならそれでいい。

 

だがこのまま侵略を行うなら俺は人間側としてエルたちと戦う羽目になる。

 

そうなれば俺とエルじゃなく、人間ともん娘の争いだ。

 

そこに平和や友好関係は意味をなさない…

 

 

 

「私は人々を襲いたくない。 ねぇ、どうしたら良い?」

 

 

 

彼女は侵略の選択技は捨てた。

 

だからどうしたら良いかを尋ねた。

 

自分ではもうどうする事も出来ない…

 

そんな気持ちで押しつぶされ、まだ幼い顔立ちを持つ彼女の瞳から涙が流れ出した…

 

 

 

だから、原作を知る俺はこのために鍛えてきた。

 

 

 

 

「俺がエルの母と対話しよう」

 

 

「!!」

 

 

「人間と人魚が喧嘩しなくても良いようにやってやるさ…」

 

 

 

 

アレからヤマタノオロチのおまじないが効いた。

 

そうして『対話』に向いた種族に変わった。

 

だから敵の憎しみを根絶するときだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは一人の人間の話。

 

 

ライラの大滝の最深部で激戦が繰り広げられた。

 

それは金色に眼の奥が染まった『イノベーター』と呼ばれる青年。

 

そして人間に増悪を抱く現クイーンマーメイドが『対話』を行なっていた。

 

最初は少しだけ言葉を交わした。 しかし声に耳を傾けなかった。 それだけ人間に憎しみを抱いていることを証明している。 だが彼も退くことは許されなかった。

 

 

それは人間のためか?

 

またもん娘のためか?

 

もしくは次期女王となる彼女のためか?

 

 

それははっきりとしない。

 

ただトランザムで体を紅く染めれば、憎しみを吐き出すクイーンマーメイドと戦うだけ。

 

大津波を起こせばクアンタが扱うGNソードで斬り裂いた。

 

大魔法が来ればGN粒子をレーザー光線にして打ち消した。

 

青年は完全に人間を超越した力で戦った。

 

クイーンマーメイドが地に伏せてしまう。

 

力が弱まってる間に青年はエルの手を握るとトランザムを行った。

 

他者と表層意識を共有する。

 

簡単に言えば、三人と心を通わせた状態だ。

 

 

 

『人は巨大な力に恐れて誤ってしまったけど』

『だがそれを娘に引き継がせるべきではない』

『そして娘の事をもっと知ってあげて欲しい』

 

 

『エル…』

『お母さん…』

 

 

 

クイーンマーメイドと『対話』を繰り広げた。

 

それが終わればクイーンマーメイドは心を落ち着かせていた。

 

その目はすごく穏やかで怒りは静まっており、優しい母親であった。

 

クイーンマーメイドはエルを抱きしめて、エルはお母さんに抱きしめられて喜んでいた。

 

 

 

 

 

こうして人間と人魚の関係を悪化させてしまう流れは無くなる。

 

原作はパラドックスとなったのだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから時間がかなりの時間が経過したの。

 

私は次期女王として玉座を得て全てのマーメイドを束ねている。

 

 

あ、全てと言っても海賊マーメイドは知らないよ?

 

 

私が束ねているのは静かに暮らしたいマーメイド。 あと人間と共存を望むマーメイドだけ。

 

その道のりはなかなか大変だったけど、わたしにはあの人が常に寄り添ってくれたからここまで来れた。

 

それまでは世間知らずな子供だった。

 

でもあの人と世界を旅して、色んなものを見て、沢山を教えてくれた。

 

お陰で心も体も強くなり、女王としてふさわしい存在になれた。

 

 

懐かしい…

 

もう100年以上前の事なのね。

 

 

あれは確か、ライラの大滝の近くで彼と出会い、うどんを食べて、友達になって、私の母を助けてくれた。

 

それから世界の広さを知って彼と旅をした。

 

滅びに向かう世界を救うために彼は対話を重ね続けた。

 

わたしも共にいた。

 

 

そして全てが終われば彼と結婚した。

 

指輪を嵌めて、口付けをした。

 

すごく幸せだった。

 

それから子供を育んだ。

 

すごくしあわせな人生を…………彼と送った。

 

 

 

 

 

 

「おいおい何が『しあわせな人生を送った』だよ? 俺はまだまだ全然生きてるし取り残されたアポトーシスと絶賛対話中だぞ? まだまだ新種も現れるし…」

 

 

「かと言って体の半分以上がメタルになるなんてバカな人」

 

 

「イノベーターだから仕方ないね。 その分若いままの姿でメタルになってる。 夫がイケメンの姿のままで嬉しいんじゃないの? かれこれ100年はこの姿だからな」

 

 

「ふふ、メタルに関してはもう慣れたから良いけど。 でも私はあなたがヨボヨボでも愛の形は変わらない」

 

 

「そうか、ありがとう」

 

 

 

 

バチャバチャ

 

 

 

 

「もう! お父さん! お母さん! 子供の前でイチャイチャしすぎ!」

 

 

「クイーンマーメイドとしての立場に疲れてるのよ。 夫の前ではイチャイチャしたくなるのよ」

 

 

「そんな訳だ。 だから、子供はお友達と遊んで来て、どうぞ」

 

 

「う〜!! パパ大嫌い!!」

 

 

「ええー、そんなー」

 

 

「あら? 別に嫌いでも良いわよ? パパは私が貰うから」

 

 

「なっ! ダメ! ダメダメダメ!!! 私のお父さんは私の!!」

 

 

「いいえ、残念ながら私のよ!!」

 

 

「むー! ならお父さんの事襲ってわたしも繋がり合うから!」

 

 

「ぶっ…」

 

「それは絶対にダメよ!」

 

 

 

海深く溶け込みあった仲の良い夫婦がいた。

 

その人間と人魚は共存の架け橋となっていた。

 

 

そして…

 

 

二人から生まれた子供は人間と人魚が愛し合ったことで育まれた平和の象徴、その証となる。

 

 

 

「とりあえず二人とも喧嘩はそこまで。 今日の夜ご飯はヤマタイのうどんだよ」

 

 

「「ほんとう!?」」

 

 

うどんのように幸せはどこまでも伸びる…

 

愛情と共に啜り合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の名はフラッグ。

 

対話を重ねた小さな人魚の隣人。

 

 

end root【プリンセスマーメイド】

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