おさかな海賊団の幸せな旗   作:てっちゃーんッ

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アリス end

イリアスベルクの近くで俺はとあるもん娘と戦闘を行い、そして…倒された。

 

 

 

 

ああ、わかってるとも。

 

この世界でもん娘に倒されてしまったら、辿る結末はただ一つだけ。

 

誰もが理解してること。

 

それは旅人として終わってしまう末路。

 

 

これから俺はもん娘に貪られるのだ。

 

 

 

 

 

ああ、せめて心はズタボロにされず…

 

自我を保てた終わり方が良いな…

 

敗者だけど、怠惰にもそれを望む。

 

俺は敗北を受け止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って、まだエンドじゃねーよ…ッ!」

 

 

「うむ? なんどかよくわからない事を述べながら目覚めたようだが……?」

 

 

 

 

俺の横から声が聞こえた。

 

その声の持ち主は小さな蛇の妖魔だ。

 

なによりも見たことある者だ。

 

 

 

 

「いや、気にするな。 それよりここは?」

 

 

「イリアスベルクの宿屋だ。 そこまで運んでやったのだぞ。 感謝するんだな」

 

 

「感謝はしますけど、まさか連れ込まれるとは思わなかった」

 

 

 

周りを見ると本当に宿屋だ。

 

しかも使ったことある部屋。

 

 

 

「ふっふっふ、しかし敗者は勝者のなすがままと言うべきか…」

 

 

「な、まさか!? あんた寝込みを襲ったのか!?」

 

 

「さて、それはどうかな?」

 

 

「うわぁ、ここで奪われるのか。 しかも寝てる間に知りもせず……」

 

 

「くくくっ、安心しろ。 我はお主からまだ初めてさ奪ってはおらぬ。 ただ、美味しくちゅーちゅーさせて貰ったがな」

 

 

「やっぱり寝込み襲ってるじゃねーか!!」

 

 

「なかなか美味かったぞ」

 

 

 

まさか初めて敗北しあ相手が無印のヒロインである魔王様とは思わなかった。

 

しかも既に美味しく頂かれてたようだ。

 

 

あ、本当だ。

 

今下着一枚の格好だ。

 

これはたしかに屈辱的だな…

 

 

 

「てか、そんなことされてるのに俺は良く目覚めなかったな」

 

 

「スリープを重ね掛けされていたんだ。 簡単には目覚めぬさ」

 

 

「それにしてはあまりにも無防備すぎないか?」

 

 

「死闘を演じていた訳では無いからな、心が油断していたのだろう。 しかし随分とグッスリ眠り込んでいたなお主? スリープは初めてか?」

 

 

「ああ、あんなにも簡単に落とされるとは思わなかった。 頭がスッーと宙に浮いて、そのまま抗わずに闇の中へ落とされたら楽な感覚だったし…」

 

 

「そこから更にスリープを重ね掛けしたからな、お主によっては強力な魔法だったのだろう」

 

 

「終いににはブラインドで視界が遮られて、起きて目覚めてるのかもわからないし。 なんともひどい妨害呪文だこと…」

 

 

「それが魔法の面白いところだ。 さて、目覚めたところ悪いが明日に向けてまた寝てもらおうか」

 

 

「……は?」

 

 

 

まさか!

 

また寝てる間のように俺を襲うつもりか!?

 

 

 

「お主は強いからな、だからイリアスポートまで同行するのに丁度良い。 遺憾せん今の私にはその力が無いからな。 ……付いてきてもらうぞ?」

 

 

「ええと、拒否権とかはないの?」

 

 

「ない事もないが、ここからイリアスポートに向かうその道中は強力なもん娘で溢れている。 だからそこを我とお主で共に突破すれば楽だと思うが…どうだ? 合理的な話ではあると思うが」

 

 

「ああ、そう言う事…」

 

 

 

しかし魔王(ロリ)が『我が下僕なれば世界の半分をくれてやろう』じゃなくて『ロリの魔王が仲間になりたそうにこちらを見てる、仲間にしますか?▽』の状態は何事かと思う。

 

 

 

「もしかしてあの戦闘はそういうテストだったりするのか? なんか下手に挑発もしてきたし」

 

 

「下手に挑発と言うな。 まぁ、そんな挑発に乗ってくれた貴様も貴様だがな」

 

 

「挑戦的なのは理解してたから俺はそれに乗っただけだよ。 別に殺し合いではなく、いまは己を高めるために少し刃を交えただけだ。 決して殺戮の快楽に目覚めたとかそうでは無いからな?」

 

 

「そこは分かっておる。 それでどうだ? イリアスポートまで同行せぬか?」

 

 

「良いよ、一緒に行こう。 君なら強いし、俺と組めばイリアスベルクからイリアスポートまで突破できそうだ」

 

 

「よし、交渉成立だな! なら明日に向けて休むとしよう」

 

 

 

そう言うと、アリスは俺の布団の中に潜り込んでくる。

 

 

 

「おい待て、なんで俺の寝床……あ、この部屋ベッド一つしかないのか…」

 

 

「そういうことだ。 もしほかの部屋を取ると言っても満室だぞ? ならこの部屋で半分コにするしかないだろう」

 

 

「待て待て、俺は椅子で寝るからこのベッドは君が使ってくれ」

 

 

「なんだ? 恥ずかしいのか? 初々しいな」

 

 

にやにやとニンマリ笑うロリ魔王にデコピンしてやると一瞬にして涙目になる。

 

 

「初々しいしのは否定しないし、恥ずかしいのも否定しない。 それに知り合っても間もない女性と床を一緒にするのは正直どうなんだ? 俺そういうのはあまり良くないと思うから辞めとく」

 

 

「ふむ、案外紳士なのだな? まぁ良い。 ならこの布団は丸々使わせて貰おう」

 

 

「そうしてくれ」

 

 

 

それだけ言うと俺は道具袋にあるマキブを確認する。

 

どうやら一つも失っていないようだ。

良かった。

 

しかしまさか魔王のアリスとコンビを組むとは思わなかった。

 

即席で一時的な関係だと思うが、無印のヒロインと一緒になるのは少しドキドキしている。

 

 

でもほんの少しだけ怖いな…

 

元とは言えば彼女はこの世界の主人公の…

 

いや、でもここはパラドックス。

 

そうじゃない事だってありうる。

 

けどやはり抵抗はある。

 

俺はそんな彼女と普通に接していけるだろうか?

 

それは明日になってわかるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、到着したな」

 

 

「ああ、そうだな。 朝早くから出たのにもう夕方だ、時間が短く感じるな…」

 

 

「しかしフラッグと同行出来て正解だったな。 他の者ではこうも行くまい」

 

 

「そんなことないさ。 むしろアリスが強かったから楽だったんだよ」

 

 

「いや、我は剣も扱えるが魔法も活用して全力を出せている。 しかし長旅で魔力も長くは持つまい。 そうなると我に残るのはこの剣のみであり、戦闘面において一気に辛くなるだろう。 しかし幾らでも使えるマキナ師のお主がいるからこそ安定した旅路だった。 ありがとうフラッグ」

 

 

「い、いや、そんなことないさ。 それに俺もありがとうと言いたい。 いずれここまで通る道だから今回アリスが居て助かった」

 

 

 

俺はアリスと握手をして感謝を表した。

 

さて…

 

 

 

「宿屋は早めに取らないと無くなるよな?」

 

 

「うむ、そうだな。 急ぐか」

 

 

「ちゃんと2部屋あれば良いけど」

 

 

「なんなら同室でも構わないぞ?」

 

 

「また寝込み襲われたら困るからやめとく」

 

 

 

そう言いながら俺はふと思い、港を眺める。

 

荒くれたちが出港する船に乗り出した。

 

 

 

その時だが…

 

幻覚だろうか?

 

一瞬だけ船に乗る『俺』の姿が見えた…

 

 

 

「?」

 

 

 

荒くれ達に押し退けられて無理やり乗せられたような幻覚が見えてしまう。

 

何故だ? 疲れてるのか?

 

俺は首を振って、もう一度眺め直す。

 

 

するとその船には『俺』はいなかった。

 

 

「…」

 

 

やはり気のせいのようだ…

 

厳しい道中の緊張感によって精神的にも疲れてるのだろう。

 

早く疲れを取った方が良いようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「__なるほど、なかなか大変なことになってんだな」

 

 

「全く、あの白兎はどこに消えたと言うのだ…」

 

 

「しかも配下にいる四天王ってやらも反応が無いと来た。 魔王様はなかなか厳しい現状に立ち会ってることになるよな?」

 

 

 

宿屋を訪ねたが部屋が一つしかなかった。

 

海が荒れ狂い、まともな航海ができないことで船員や行商人がイリアスポートに滞在してることで宿屋の部屋が殆ど埋まっているとのことだ。

 

まぁ、泊まれる部屋が残って良かったと考える。

 

ない場合はどこかの街に飛んでそこに泊まれば良いが、それは少しだけ面倒だ。

 

 

 

「しかしお主も私とそう変わらぬな。 気づいたらもん娘まみれの平原に落とされたりと苦労しておる」

 

 

「本当にな。 まぁマキブに関しての知識があったから今はどうにかなっているけど、このままでは弱いままだ。 もっとマキブを追求して数を揃えないと話にならない」

 

 

「ふむ、では今のお主はそのマキブ集めとやらの旅に出ているわけだな?」

 

 

「そういうことで間違いない。 そんなアリスも白兎を探しながら自分の城に帰りつつ、配下を見つけるって旅だろ? 要するに行き当たりバッタリ」

 

 

「うむ、その認識で間違いない。 行き当たりバッタリなのは否定し難いのも癪だが…まぁ良い」

 

 

「しかし俺たちの目的は似ているな。 俺はマキブを見つける旅、アリスは配下と城を見つける旅。 なにかを求めてるのは互いに同じだな」

 

 

「規模は違うがな」

 

 

「魔王様と肩並べるなんて恐れ多い」

 

 

「そうか」

 

 

「……」

 

 

 

少し長めの沈黙。

 

すると俺はとある事を考え、口を開いた…

 

 

 

「……なぁ、俺少し考えた事がある」

「……一つ、我は提案があるのだが」

 

 

「あ…」

「む…」

 

 

 

互いに言葉が重なり合う。

 

俺とアリスは少し目を見開くが、恐らく今回の旅路のように利害一致してるところがあるため、考えてることは同じなんだろう。

 

だから俺は敢えて尋ねる。

 

 

 

「俺も人のこと言えず、マキブ探しのために行き当たりバッタリだ。 だから一つずつ順に探して行くと思う。 それも旅をしながら己を極めるために、この世界を次々と歩くと思うんだ」

 

 

「うむ」

 

 

「そしてアリスも俺と似たようなものだと思ってる。 だからさ…俺と_」

 

 

「仲間になろうと言うことか?」

 

 

「…あー、やはり分かっていた?」

 

 

「そうなるとは思っておったぞ」

 

 

 

特に驚きもせず、予想してたかのような表情で冷静に告げた。

 

 

 

「そうか。 それでアリスはどう? 悪い話では無いと思うが」

 

 

「そうだな。 もし…お主がどうしようもなく弱かったら断っていたと思うが、今回の旅路でそうで無いことがわかった。 周りと比べてましな程度に賢いところもまぁまぁ高得点だ。 また、世界を回ろうなどなかなか肝が備わっているところもありがたい。 まだ多少荒削りなところはあるが、道連れにするにはまったくもって良い人材だ」

 

 

「! なら」

 

 

「うむ、これからよろしく頼もう。 我が城に着くまでその力を貸してもらおう。 なんなら我を無事届けれたあかつきには我の下部にして高待遇の席に就かせても良いぞ?」

 

 

「なかなか心踊る話じゃ無いか。 いいよ、その時が来たら考えさせてもらう。 でも無愛想なお城だったらその話は受けないけどな」

 

 

「む! なにを言う! 人間どもが作るようなお城よりも立派な場所だ!! ええい、ならばしかとその目に我のお城を刻ませてやらないとならないな!」

 

 

「楽しみだ」

 

 

 

 

 

 

それから俺はアリスの仲間として隣に立つ事を許された。

 

本当は『家来その1』って感じの扱いにするつもりだったが、人間にしては戦闘力が高い事と、おいしい料理が作れることが彼女の中では高得点のようだ。

 

そのため特別に仲間としての平等な扱いが許された。

 

あと呼び捨てにすることも許された。

 

いい魔王様だな。

 

 

それで旅をすればもちろん、意見が衝突したり、食い違いが起きたりもする。 そこからくだらない喧嘩をしたり、アリスのわがままに困らされたりと色々とあったが関係が悪化すること一度もなかった。

 

甘いもので許してもらったりと手段はあったのでたまにそこらへんでコントロールしたりとアリスとの関係は良好に保つ。

 

 

もちろん俺たちは喧嘩ばかりでは無い。

 

 

互いにフォローしながら色んな物を乗り越えた。

 

しかしアリスはプチ魔王のロリになったせいで些か精神面が不安定だった。

 

だからそんな彼女を何度も支えながら俺は仲間として助けた。

 

あと魔王である彼女の立場が立場だから、旅を続けて先に進むにつれ、彼女は苦悩したり、時には絶望をしたりと、何度も繰り返した。

 

その度に俺は彼女を励ました。

 

 

世界の危機と戦う時も…

 

とてつもなく大きな決断を迫られた時も…

 

 

俺は彼女の味方として常に寄り添い続けた。

 

いつだったか彼女が俺の身を案じて拒もうとしても、その小さな体を抱きしめて離さないようにした。 本心ではない、拒むことが辛くて涙を噛みしめる彼女を強く抱きしめる。 側にいると約束した。

 

 

 

本当の話をすると…

 

最初はここまで彼女の事を深く思おうとは思わなかった。

 

原作の重要な立ち位置にいるキャラと旅できるってワクワクのためだった。

 

それほどに軽い気持ちがあった。

 

でも、そんな軽い気持ちはいつしかなくなり、今では彼女のとぐろの中に溺れていたい気分だった。

 

それほどにアリスが大きくなっていた。

 

 

それもそうだ。

 

 

何日も何十日も何百日も旅を重ねながら、同じ飯と、同じ戦い、同じ空気、同じ寝床、同じ道楽、凡ゆる者を共有してきた仲間だから。

 

パートナーだから。

 

惹かれた異性だから。

 

俺にとって初めてもん娘の魔性に溺れさせて貰った相手だ。 特別だった。 彼女にとって最初は捕食行為のつもりだったが、不安な気持ちを誤魔化すためにいつしか愛を確かめ合う目的でまぐわった。 慰めるために、甘えるために。

 

そう思えるほど俺は彼女に溺れ切っていたのだろう。

 

 

しかしここまで前作の無印ヒロインとここまで仲深まるとは思わなかった。

 

最初はルカさんに申し訳ないと言う気持ちはあった。

 

でも今は違う。

 

彼にアリスを渡そうとは更々思わない。

 

もし仮に、アリスを奪いにきたのなら、それが天使の能力を開花したとしても俺は命がけで立ち向かうだろう。

 

 

この愛しい魔王を絶対に譲りたく無い。

 

 

だって俺はこの妖魔のことが好きだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フラッグ、後悔はしてないのだな?」

 

 

「愚問だよ。 俺はしてないしする筈もない。 そもそも俺がここにいるのは人間とか魔物とか関係ないから…」

 

 

「そうか。 その…フラッグ」

 

 

「?」

 

 

「ありがとう…」

 

 

「ああ。 俺もアリスの仲間にしてくれてありがとうな」

 

 

「ふっ、お前と言う奴は、まったく」

 

 

「随分と困った仲間とでも? あの日共に旅をしてから知ってる癖に」

 

 

「まったくだ。 なんでこんな奴を好いたのか私もわからない」

 

 

「何でだろうね? へんな物でも食べんじゃないか? ロリから大人に戻っても拾い食いの癖は治ってないみたいだし?」

 

 

「た、たわけ! そんな事は…な、無い!」

 

 

「可愛いな、アリス」

 

 

「ッ〜! …ふん、エロめ。 後でこってり搾り取ってやる」

 

 

「この大戦中にそんな暇あれば良いけどね」

 

 

 

魔王城のバルコニーから戦場を眺める。

 

あらゆるところで狼煙が上がっている。

 

もうすぐこの辺りまで来るだろう……

 

この世界の敵が。

 

 

 

「フラッグ」

 

 

「?」

 

 

「この魔王を惑わせたその代償、軽くはない。 勝手に死ぬことは許さぬ。 許さないからな」

 

 

「ああ、もちろんだ」

 

 

 

 

 

この『世界 / パラドックス』は随分と壊れやすい。

 

それでも魔王として守りたいものが多い彼女の事を俺は守ろうと思う。

 

 

例え、抗えない運命が迫り来るとしても…

 

その行動は無駄と…

 

無意味と、述べたくもなるかもしれないが…

 

 

馬鹿らしい。

 

そんなの関係ない。

 

 

俺は、イリアスベルクから始まったアリスと、これまで重ねてきたこのストーリーに思いを馳せる。

 

アリスを大事にしたいためにただこのマキブで戦うだけ。

 

 

 

だって俺は

アリスの仲間なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の名はフラッグ。

 

魔王様の仲間としての許された人間です。

 

 

 

 

 

end root【アリス・フィーズ】

 

おわり





普通に可愛いキャラだよね。

あと公式設定では17歳だったはず。


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