私は怪盗ニャット。お宝、財宝を求めて神出鬼没な泥棒さんです。
あ、元々私は人だったりします。名前は、桐生院 雅紀”きりゅういん まさき”と言います。30歳後半のおっさんです。
え、仕事ですか?いや、あの……泥棒さん稼業だったりします。と言って闇雲に泥棒する訳ではなく、お宝、財宝、大金を狙います。仲間ですか?基本一人行動です。助手が居れば……と思う時もありますが、今の所はおりません。
はい!?元々は人ってどゆこと?ですか?それはね……。
おおっとそうだ、今回も早速お仕事しましょうかね。後々お話しましょう。
今回のターゲットは国立美術館に10日間だけ展示されるという、さる外国からもたらされた装飾品……ベースは純金でこしらえた首飾りで、花柄にあしらえてある大小のダイヤ、そのふちを純銀で囲っているという超高級な代物なんです。
かの国の女王様に献上された物だそうですが……。
その首飾りが国内に来ています。美術館も記念の年だそうで、そのお祝いかどうかは分かりませんが、展示お披露目させてもらえる事になったようで。さすがに厳重なので、展示される前は盗みに行く事はかなりのリスクが伴いますが、展示されてから……勿論展示も厳重で簡単ではありません。ですが、私としては展示されてからの方がやり易い。いや、やりがいがある……と言った方が良いでしょうか。
私もタイトル通り、怪盗と自称してますので他の有名な方々と同じように名刺(カードですね。猫の顔マークに大きな文字で怪盗ニャットとシンプルに。)を作ってあり、
予告状も警視庁に出してあります。なので、美術館は日中から一般の方々が来客すると共に警察の方々が多数いらっしゃる訳で……。ですが私としては一般の方々を巻き込む訳にもいかないので、美術館が閉館してからと、予告状にもメモもしてあります。担当の警部さんはそりゃ気合が入ってるそうで。何度かお顔を拝見していますが、その度に私に逃げられるので今度こそ!と意気込んでるようです。しかし私の顔はバレてはいませんので、相手は正体が分かってはいないようです。
さて、明日から展示が始まります。私も寝るとしましょうかね、夜更かしはお肌の大敵……ってそこまで気にしてませんけど……。
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さて、当日の夜になりました。美術館が閉館し、一般の方々は入館が出来ない状態になってます。私は近くのビルの屋上から気付かれないように暗視兼用の双眼鏡で覗いてる訳ですが、まあ、まあ、まあ、建物の外側はライトや照明が煌々と照らされてます。入り口・裏口・中までも制服を着た方々が動きまくってます。塀に囲まれた、外観も素晴らしい造りの近代風とはまた違った、優雅さのある立派な建物です。
当然、名だたる名画や彫刻と貴重な品々が展示されている所でもあるんです。そこに大胆にも、予告状を出した訳で………。
皆さま私一人の為に大変ご苦労様ですね。警戒厳重でビックリです……。これはなかなかに難しい……かな?ま、計画通りで行きましょうか。う~ん、屋上からもと考えましたが何人かのお巡りさんがいらっしゃる……。勿論正面も。おお、あそこに警部さんが居ますね。本郷警部さんです。中に入って行きましたか……。さて、裏口も勿論見張られている訳ですから、おいそれとは入れませんが行ってみましょうかね………………。
「ご苦労。変わった様子はないか?」
「はっ!今の所不審な者は見当たりません!」
「そうか、私も今の所は怪しい者は見てはいないが……。”怪盗ニャット”め……一体何処から入る気だ。絶対に逃がさんぞ……。」
「これだけ至る所に署員を配備している訳ですからそう簡単には入れないと思うのですが。」
「いや、奴の事だ。これでも足りるかどうか……。ともかく怪しい者がいたらすぐに報告するように。私は中に入って巡回する。」
「はっ!了解しました!」
警部は中へと入って行きました。裏口は5人体制で見張っています。機動力は凄そうですね。5人相手は私もさすがに辛すぎます。
私は裏口から中へとはいった通路を3階にある目的場所へと歩いてました。
え、どうやって中に入ったかって?ほら、今しがた言ったじゃないですか、中に入って巡回するって……。
館内の 全廊下に赤いカーペットが敷かれています。要所には警官がしっかり配置されてます。凄いですね、これでもかと言わんばかりの配備です。それぞれの署員が私に敬礼をしていきます。私も歩きながらもそれに対応していきます。本物に会わないようにしなければ………。
しばらくして、何とか展示室の近くまで来られました。しかし、本題はここから。展示室の入り口の前では、本物様が部下たちとやり取りしています……。そこは特別に設けられた一室で、出入口はそこだけで、中には窓はありません。中央に1m20cm 位の高さの台があり、その上に飾られているというのは、昨日の新聞に写真が載りました。それだけ注目されているお宝という事……。盗みがいがあります。おや、館長さんもいらっしゃる。んん!?入り口前には円柱の斜めカットになった台があります。よ~く見るとアルファベットと数字のボタンが……。解除キーを押さないとですか。なるほど……。
「では、私は裏口の方を確認してきます。」
「よ、よろしくお願いします。」
「頼んだぞ。」
「「はっ!!」」
2人の署員が警部に敬礼をしています。館長さんもそこに残りそうですね。本郷警部さんだけが反対通路から裏口の方へ。ちょっと間を置いてと。さて、第一関門と行きますか。私は慌てる振りをしながら急ぎ足で入り口の方に。
「奴が動いた!侵入された形跡がある!警戒しろ!」
「ほ、ほんとでありますか!?」
「そうだ!どうやって侵入したかは不明だが、建物内に潜伏している可能性が大だ!館長!2重3重の警戒の為に私自身が扉の向こう側で待ち伏せしようと思いますが、良いでしょうか?」
「え、ええ!中はレーザーが張り巡らせてあるんですよ。ちょっとでも触れれば反応します!そこまででなくても……。」
「いえ、奴はどこからでも入り込める奴です!現に建物内に侵入している可能性がある!安易に考えていては奴の思うつぼです!」
しかし、私も自分を追い詰めるようなことをよく言えるものです。これで逃げ切れなかったら、ジ・エンドです。
「わ、分かりました。ただし、この扉のすぐ向こう側で待機してください!でなければレーザーの蜂の巣に会いますよ!」
「了解です!扉を開けてもらえますか?」
「は、はい!」
館長さんが暗号化キーを押して行きます。私は敢えて見ないようにしてました。そこで見ていれば逆に怪しまれる恐れがあるので……。
機械の動作音がしてゆっくり観音開きに扉が開きました。館長さんが眼鏡を用意してくれます。掛けてみれば、確かに部屋中にレーザーが張り巡らされてます。こりゃ手強い……。
私は一歩中に入って振り向き仁王立ちに。
「いいですか?くれぐれも……。」
「了解です。お前たち入り口を頼むぞ。」
「「はっ!」」
同時に扉が閉まっていきます。第一関門突破です。完全に閉まった後、第2関門スタートです。このレーザーの網をかいくぐって目標にたどり着かなければならない。しかもですよ、それも本物の本郷警部さんが戻って来て扉を開けられるまでに。その時間内が勝負です!
さてと……。私は、レーザーの当たらない場所に上着を脱いで、そこに置きます。覆面も脱いでね♪中に黒のスーツ上下を着ているので、下着や裸ではありませんよ。その場に立って静かに目を閉じます……。
そして、目を開くと視界が随分と低くなりました。しかも四つん這いに……。爪があり、この暗い中でもお宝やレーザーが良く見えます。
「ニャ~オ……。」
そうです、私、猫に変身”トランス”出来るんです。私がニャットと名付けた意味は……。しかも、服を着たままで毛の色も服の色になるんです。逆に服の色を考えておかないと後で後悔する羽目にもなりますが……。
そして更に……。私は早速動き出しました。ゆっくりとではありますが、レーザーの一本一本を前脚、後ろ脚と跨いでいきます。時にはほふく前進、時にはジャンプして……。対人用になってる感があるレーザー配置なので、猫としての私は割と容易に目標の下にたどり着きました。
そこで一度人の姿に戻ります。ゆっくりとレーザーに触らないように……。私はポケットから鉛の塊を出します。実は、おもり感知の機能があってはまずいと思い、すり替えの為に用意した次第で。お宝の周りはレーザーがありません。おもり感知が反応する前にすり替える……。第3関門です……。左手に鉛を……、右手にお宝を……。
一瞬で入れ替えなければ失敗に終わります。しかし、タイムも待ってはくれません。じきに警部さんが戻って来るでしょう。その前に何とかしなくては……。私は慎重に、しかも思い切って伸ばした両腕を同時に動かします!!………………………………。
ふうぅ………………。作動しない、良かった第3関門は突破です。私の手元に首飾りが……。やはり素晴らしい輝きを誇ってます。献上されるだけの事はある。私のチートぶりはもう一つ、首飾りを懐にしまい目を閉じます。
猫の姿になった訳ですが、普通ならお宝や財宝は大きさや形はそのまま……と思うでしょう?一緒に隠れちゃうんです、これが。何も咥えても持ってもいない自然の猫ちゃん状態になれるんです!なので、動きやすいしバレにくい…………。おっと、警部さんが戻ってきたようです。さてさて、部屋の隅っこに居ましょうかね。
「何か異常はないか?」
「は、はっ!……。け、警部……。どこから……。」
「そ、そうです!どうやってこの中から出られたんですか!?」
「な、何を言っている!私は今裏口から戻ってきたばかりだ………………。ま、まさかっ!!」
全員がやっと気づいたようで驚いてます。
「か、館長!!すぐに扉を!!」
「は、はい!!」
館長が慌てて解除キーを押してます。なかなかの慌てぶり。やっと押し切って扉が開いて行きます。中に光が差し込んで来ました。レーザーも解除され4人が中に押し入ります!
「「「「ああああぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」
台の上にはあるはずの首飾りが無く……、代わりに鉛の塊と私のカードが…………。
(首飾り頂戴致しました。ありがとう。怪盗ニャット)
「やられた~~~~~~!!」
「そ、そんな…………。」
余りのショックに放心状態の館長さん。
「け、警部!これを!」
ああ、先程私が脱いで捨て置いた小道具ですか。警部が肩をわなわなと震わせてます。
「くそぅっ!私に変装するとは不届きな奴だ!総員、出入り口を全部封鎖だ!奴を逃がすなぁ!!」
「「はっ!!」」
警部と署員が脱兎の如く廊下を走って行きます。私はここに居るんですけどね。しかし、出入り口を固められると脱出をどうするか迷いますね。さて、どうしたものか………。
「あれ、何処から入ってきたんだ?お前は。」
あ……、館長さんに見つかった……。マズイな、どうしたものか……。
「ここは、お前さんの来るところじゃない。まったく、ねこの子一匹入れないでしょうとか言っていた割りには浸入されてるし……。はぁ……。」
とか言いながら、私の首の後ろを掴まえて持ち上げ、私はそのままぶら下がったままで裏口まで……。運んで頂けるなんて感謝感謝。楽ですね、こんなに安全に外に出られるなんて。
「もう来るんじゃないぞ!ここに迷い込んでも、餌など無いからな!」
「ニャ~オ。」
…………………………………。
私は美術館を後にしました。近くのビルを通り過ぎ、狭い路地を抜け、通りの角を右に曲がった所に私のマイカーが。周りを確認して、元の姿に戻ります。私のマイカーはスポーツカーで初代の三菱GTO、お気に入りです。さて、我がアジトに戻りましょうか。
「怪盗ニャット~~~~!!この次は必ず捕まえてやる~~~!!」
と、館内に叫び声が響き渡っていたことは知る由もなく。私はお宝に満足しながら、車を走らせていました。
さて、次は何を狙おうか……。もしかしたらあなたの心を戴きに参上するかも…………きゃぁはずかしいぃ!はっ、失礼しました。また、何処かでお会いしましょう。では…………。
読了ありがとうございます。まだまだいろんな作品を執筆していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 紅龍騎神でした……♪♪