アリーナバトルのフィールドは、コロシアムのように閉鎖されているわけではない。限定されてはいるものの、軍勢同士が衝突しても十分な余裕があるほどだ。
つまり、たかだか10体程度のガンプラなら、縦横無尽に暴れ回っても全く支障はない。
先に仕掛けたのはウィンターテーブル。鋭い指示がナベから飛ぶ。
「ネギ! カブ! あんたらは空飛べない2体を押さえて! シラタキは青いヤツ、カモは紅いのを! あたしは……」
ぎ、と憎々しげな眼差しをフリーダム・ノイエに向ける。
「あの小僧をヤる!」
どがむとスラスターを全力で吹かし、駆ける。その機体は。
「【レジェンドガンダム】。少々手を入れているようだが、さてどれだけの力があるものか」
ガンダムSEEDDESTINYのラスボスとも言える機体。その能力は作中でもトップクラスのものだった。しかしGBNではキット自体の完成度と、そしてダイバーの腕がものを言う。どれだけの力が出せるのか……それは未知数だ。
「指示は的確のようだが……ねっ!」
己の機体を奔らせながらも、キラ☆は仲間の動向を頭の隅で捉えていた。そしてそのまま指示を出す。
「総員、そのまま自分に向かってきたのを相手にしてくれ。
言ってから、レジェンドガンダムを迎え撃つ。
レジェンドのバックパック備えられた突起物――思考誘導兵器ドラグーンが前を向き砲台として機能。次々とビームを放つ。それをひらひらと回避するフリーダム・ノイエ。
「あたしの前にフリーダムで現れるとは……よほど死にたいようね」
ひらひらと馬鹿にしたように回避を行うキラ☆の様子に苛立ちながら、ナベは唸るように言う。
「おや、キラ・ヤマトがお嫌いで?」
珍しいこともあるものだと、キラ☆は思う。ガンダムSEED系の女性ファンは、多くが主人公のキラ(☆のついてない方)や、そのパートナー(あながち間違いではない)であるアスラン・ザラを好むものが多い。最低でも嫌っている女性は少数派だろう。
キラ☆の言葉に、ナベはハン、と鼻で笑う。
「あんなNTR野郎趣味じゃないのよあたしは。むしろくたばれち●こ折れろって言いたいわね」
色々な方面を敵に回しそうな台詞である。つーか筆者の身がリアルで危険になりそうなので是非ともやめていただきたい。
そんな筆者の魂の訴えなど知るよしもなく、ナベは憎々しげに言葉を吐いた。
「それにあたしの愛しのシンきゅんを酷い目に遭わせたあげく、主役すら奪うなんて真似やらかしてくれたんだもの、恨み骨髄ってヤツよねえ?」
どうやらこの女、SEEDDESTINYの本来の主役であったシン・アスカのファンだったようだ。ガナーザクウォーリアやレジェンドを使っているのはその辺りが要因らしい。
「……なら素直にディスティニーを使えば良かったのでは」
「え~、シンきゅんの背中を護りたいって言うか~、むしろ護ってもらいたいって言うか~、絶対裏切らない相棒ポジがいいな~って」
キラ☆の言葉に、なんかくねくねもじもじし出すナベ。なんか色々とこじらせてるぞこの女。
とにもかくにも、だ。
「それはそれとして、あたしの前にフリーダムで現れたあげく、キラ☆とかふざけたネーム名乗ってるアンタは徹底的に潰す!」
「うわあ、酷い八つ当たりだこれ」
「ほざいてなさい! レジェンド持ち出したのは伊達じゃないのよ!」
言うが早いか、レジェンドのバックパックからがきん、と音を立ててドラグーンユニット分離する。
それは縦横無尽の軌跡を描き、フリーダム・ノイエへと襲いかかった。
オタクロはクローラー駆動でヘビーアームズを走らせながら、ミサイルやガトリングガンを放ち続ける。
「【ヒルドルブ】とは、なかなか渋いチョイスでござるな! しかもよく動く!」
機動戦士ガンダム MS IGLOOに登場した、モビルタンクと呼ばれる陸戦兵器。巨大な戦車に見えるそれは、オタクロのヘビーアームズに勝るとも劣らない勢いで、大地を駆けている。
「そっちこそ、その大重量の機体をよく振り回せる!」
ヒルドルブを駆るのはウィンターテーブルメンバーの一人、カブ。己の機体を走らせながら、彼は内心舌を巻いていた。
(あの装備だと機体重量は通常の倍はある。だと言うのにあの速度、
最低でも実際に稼働するレベルのものだ。戦車のキットかなにかを流用したものだろう。そうでなければあれだけの走破性を出すことは出来ない。
「だが……
どぎゃ、と土煙を蹴立ててヒルドルブが駆ける。こちらもまた実稼働するクローラーを備え、運動性能は原作と互角以上だ。ヘビーアームズが放つ攻撃を、回避し続けている。しかもただ回避しているだけではない。
車体の上部に付けられている小型の砲台のような何か。そこから放たれる紅いレーザーらしきものが殺到するミサイルに照射され、空中で爆散させていく。
その正体をオタクロは悟った。
「
実在する対空レーザー兵器。艦船のキット辺りから移植されたのであろうその武装のチョイスを見て、オタクロはそう見て取ったのだ。
果たしてカブは、にやりと笑って応える。
「応とも、こちとらひいじじいの代からのミリオタよ。……さてそろそろいい案配で暖まってきた。お互い全開でいこうか!」
ごうん、と音を立ててヒルドルブが変形を始める。車体から起き上がるのは、大口径の砲を背負ったMSの上半身。そしてクローを備えたサブアームも展開する。
原作よりも幾分凶悪さを増したように見えるその機体は両手にマシンガンを構え、乱射しながら大地を駆けた。
「押さえろって、これ無理ですよぅ先輩ぃ~!」
己の機体を必死に操りながら、下っ端OLシラタキは悲鳴のような声を上げる。
彼女が駆るのはガンダムXに登場した機体、【ガンダムエアマスターバースト】。飛行形態に変形し、空を駆けるそれを追いながら攻撃を加えているのは、H・Aのナイトオウル。
一方的に追い回しているように見える戦いだが、追うH・Aはさほど優位を保っているとは思えなかった。
「よく避ける。素人の動きじゃないな」
後ろからの攻撃をダメージなしで回避し続ける、ズブの素人はそんなことは出来ないと以前ジンは断言した。であれば逆説的に、
事実シラタキは素人ではない。学生時代からGBNで遊んでいる、結構なヘビーユーザーだ。逃げ回ることに関してならば、彼女は一流に手が届く。
ただしそれ以外がへっぽこだったが。
そんなことなど知るよしもないH・Aには、回避に専念して反撃の機会を窺っているように見える。あるいは時間稼ぎか。最低でも自分という戦力がここで釘付けになっているのは間違いない。
「俺のナイトオウルより速いとは。……ちょっとプライドが傷つくなこれは」
最早魔改造と言っても良い領域で手が入れられているナイトオウルは、その分性能も高い。だがシラタキのエアマスターはほとんどノーマルのように見えるのに、ナイトオウルよりも最高速度と小回りに秀でている。これはシラタキが機体のパラメーターを機動性と速度に全振りし、攻撃力も防御力も最低限にするという尖りまくったセッティングにしているせいなのだが、もちろんこれもH・Aの知るところではない。
「ひいいん! 助けてぇええええ!!」
実のところ綱渡りを全力疾走しているシラタキ。そしてそれを知らず深読みし、相手の出方を窺っているH・A。
ナベの思惑通りかどうかは分からないが、とりあえずは一応膠着状態が成り立っていた。
スズの前に立ちはだかるのはネギ。その機体は。
「なんか速い! リーチが長いだけじゃないねこれ!」
鉄血のオルフェンズ1期のラスボス、【グレイズアイン】。通常の機体より延長された四肢により、同スケールのガンプラより広い格闘リーチを持つ。その上で、ネギはパイロットスキルである阿頼耶識システムをプラグインしていた。それにより原作と同等の反応速度を得ていたのだが。
スズのブレイザーには、かすりもしない。
「ネタ枠かと思いきや、機体もダイバーもガチじゃねえか」
一見ふざけた美少女フィギュアにしか見えないブレイザーだが、その機動力、立ち回り。見た目を裏切るかのような完成度と、ダイバーの技量。それは自分を上回ると、ネギは判断せざるを得ない。
どうにも自分たちは運がないと、ネギは思う。学生時代にナベを中心としたフォースを組み、Bクラスまで至ったものの、そこから先がどうにも戦績がよろしくなかった。やけになったナベが中級者狩りなどと言い出したりしたのも、その辺りが原因だ。初回でいきなり叩き潰されたが。
その後も懲りず、学生時代の後輩であるカブと、ナベの会社に入ってきた新人であるシラタキを加え戦力強化を図り、心機一転とばかりに応募したアリーナバトルのテストに参戦してみたらばこのざまだ。あるいは抽選の時点で運を使い果たしてしまったのかも知れない。
「とは言っても、俺らは諦めが悪くてなあ!」
負け続けているからこそ、たまの勝ちがとてつもなく楽しく思える。正直パチンコにはまっている人間と同じような心境なのかも知れなかったが、そんなことはどうでも良かった。多分ナベと自分たちは負けず嫌いなのだろう。
「付き合ってもらうぞ! 最終的にこっちが一人残れば勝ちだ!」
「う~ん、気合いの入り方がなんてーか、こう、合わないなあ」
振り回されるアックスと、両肩のマシンガンを回避しながら、スズは困ったような表情を浮かべる。相手には1人1殺の覚悟らしきものが見受けられるが、ちょっと的がずれているようにも感じる。まあジンたちと因縁があるようなので、躍起になっているかも知れなかった。
とはいえ勝負は別の話だ。感情とは別の、闘争本能と言うべき感覚に従って大雑把な攻撃をかいくぐり、グレイズアインの懐に肉薄する。
「ちょいやさっ!」
太刀を担いでからの打ち込み。狙うはグレイズアインの右脚。陸戦型のMSであれば、足を失うのは戦力の大幅な減退につながる。剣道であればルール違反、そうでなくとも真っ当な剣士であればまず行わない手段だ。だが、スズは迷いなくそれをやった。
しかし。
がぎん、という堅い手応え。
「なに今の!? 完全に流し斬りが入ったのに!?」
今までの相手であれば切り裂いていたはずの装甲は、中途半端に切り傷が入った程度だ。驚愕しながら回避を続けるスズに対して追撃のマシンガンを放ちつつ、ネギは言い放つ。
「これがナノラミネート装甲だ! 多少腕が立つ程度で通じると思うなよ!」
鉄血系のMSが標準で備える強固な装甲スキル。それはスズの剣技をもってしても、一撃で切り裂くのは困難であった。
「ふくかいちょーの言ってたやつ? ここまで頑丈なんだ」
むむ、まだ修行不足かと眉を寄せるスズ。世の中には太刀で鉄兜の鎧を一刀両断にしてみせるような達人も存在するが、スズはまだその域には至っていない。ナノラミネート装甲を斬れなかったのはそれが原因だと、彼女は判断する。鍛え直さねば。
スズは意外と脳筋であった。
「それはさておいて、どうしようかなこの状況」
振り回されるアックスとマシンガンは回避できるが、装甲を切り裂けなければ有効なダメージを与えることが出来ない。太刀一本のみという兵装を選択した弊害が、ここに出ていた。
しかし、スズの目には諦めとか焦りとか、そういった物は一切乗っていない。
その目は鋭く、勝機を窺っていた。
H・Aとシラタキが行っているのが追いかけっこだとすれば、こちらはアクション映画張りの撃ち合いであった。
「いい機体に乗り換えたじゃねえか! こいつは手応えあって面白すぎるぜ!」
「くっ、変形しないでも空中戦をやれると! それにパワーも桁違いだ!」
ジンの駆るEX-SガンダムRⅡと戦うのはカモ。その機体は赤と黒に塗り上げられた化鳥を思わせるガンプラ。
ガンダムAGEに登場した機体、【ゼダス】の改造機。背面のウイングユニットを、推進器を兼ねた大型のものに換装しており、機動力を向上させたもののようだ。
事実原型機に比べ、カモの機体は凄まじいまでの速さを誇る。その上で近接から遠距離まで対応可能な汎用性を持つ。が、それはジンの機体も同様だ。手数の多さから言えばEX-SガンダムRⅡに軍配が上がる。
(つっても手数の多さイコール強さじゃねえんだよなあ)
むしろジンは
しかしながら、ALICEのサポートありとはいえEX-Sガンダムの武装と機能を使いこなしている彼の技量は、本人が思っているほど低くない。GNドライブが追加され、出力や基本性能が全く別物となったEX-SガンダムRⅡを、大した練習もなくあっさり乗りこなすくらいには変態こなれている。
それはともかく、現在ジンは割と攻めあぐねていた。
強気の言葉を放ってはいるが、さほど優位というわけでもなかった。速度が速い上に特殊電磁装甲を備えたゼダスには、射撃戦だと致命傷を与えにくい。かといって接近戦に持ち込まれるとこの間の二の舞だと相手も分かっているため、迂闊に間合いを詰めてこないし、変形などによる虚を突いた攻撃も警戒しているようだ。
ゼダスには実体剣も備えられているのでEX-SガンダムRⅡのIフィールドを抜いてダメージを与えることが可能なはずだが、先の理由から接近戦を回避しているため、必然的に射撃戦となる。そしてゼダスも射撃武装はビームしかないため、EX-SガンダムRⅡに有効打を与えることが出来ない。
そしてゼダスを駆るカモの技量も向上している。以前の戦いから何か思うところでもあったのだろう。はっきりとした違いではないが、改造したゼダスを使いこなしジンと互角に渡り合うくらいには強くなっている。
膠着状態。それを打開できるであろう手段をジンは持っている。しかしそのカードを容易に切るつもりはなかった。
(俺と互角以上のランクであれば……【必殺技】を持っている。迂闊に先出しはできねえ)
ランクCから解放される必殺技システム。それは文字通り己のガンプラが必殺技を放つことが出来るスキルシステムである。
ダイバーの経験と特性、そしてガンプラ自体の完成度、構造、設定。それらをシステムが総合判断し必殺技は形成される。
その種類は千差万別。ある者は強力無比な攻撃を放ち、またある者は機体の限界を大幅に超えた能力を発揮させる。ダイバーの数だけ必殺技はあると言っても過言ではない。
ただ強力なだけでなく、何らかのカウンターのような特性を持っていたら先出しは致命傷になる可能性がある。よほど追い詰められるか、あるいは向こうに先出しさせてそれを凌ぐか、何らかのきっかけが生じるかしないかぎりは使わない方が賢明だろう。
「おいおい消極的だねえ。それじゃ俺には届かんぜ!」
「好き勝手言ってくれる!」
焦るな、機会は必ず来る。カモを挑発する裏で、ジンはいっそ冷徹とも言えるクレバーさを保ち、勝ち目を探り続ける。
戦況は互角。ドラグーンの猛攻を回避し続けながら、キラ☆は
「この! ひらひら鬱陶しい! 当たんなさいよ!」
「当たると撃墜されちゃうじゃないですか」
いきり立つナベの言葉に飄々と返す……ように見えるキラ☆。だが実際のところ彼は結構いっぱいいっぱいだったりする。
(うーむ、戦況を見ながらこのレベルの相手をするとか無謀だったかなあ。全然反撃する余裕がないや)
戦場全体を把握しながら敵と渡り合う、なんて真似はキラ☆には難しかったようだ。精々余裕のある振りをして、必死で攻撃を回避するくらいしか出来ない。
かといって目の前の敵にばかり集中するというわけにもいかなかった。アリーナのシステムがよく出来ているのか、それとも単なる偶然か、このフォースは
二つのフォースは驚くほど編成が似ている。遠距離攻撃を主体とし指揮を執るリーダー。火力を重視したサポーター兼アタッカー。機動力の高い遊撃。接近戦主体のアタッカーに防御力や機動力も高いマルチアタッカー。キラ☆が相性がいいと判断したとおり、それぞれ同じようなタイプが相対している。
それは多分、
そんなのを相手に真っ正面からただ挑む、なんて真似は
(さて、そろそろ打開を図るべきだが……普通の手段では読まれる可能性があるな)
どうやって目の前の相手を出し抜くか。キラ☆は機体を操りながら策を練る。
「ええい! 腹立つくらい避けるわね!」
一方ナベは苛立ちを隠そうとはしない。なお演技じゃなく素である。
大体にしてこの女、キラ☆が考えるほどの策士じゃない。ノリと勢いと勘だけでGBNをプレイしてる動物的な何かだ。完全にキラ☆の買いかぶりだった。
勘が当たれば大当たりする類いだが、外れると酷い目に遭う。戦績が振るわないのもその辺りが原因だったが、彼女は一向に反省しない。
で、この戦いでは今のところ上手く当たっている。むかつくがとりあえず自分の相手は押さえ込めているし、手下ども(酷)も互角に渡り合っているようだ。これならばいけると見て取った。
「今回は勝ーつ! だからとっとと墜ちなさいよアンタはああああ!!」
本能のまま叫び、彼女はさらに攻勢を強めた。
後半に続くっ!
ファっ!? 俺が自治会班長!? ファっ!? さらに書記までやれと!?
ラノベの題名風な目に遭ってますが、私は元気じゃありません疲れています。リアルにどうしてこうなった捻れ骨子です。
はいバトル話~、そして長引くだろうから前後編~、の巻。かませかと思いきや意外に勝負になっている感。鍋パーティの人たちも随分鍛えたのかも知れません。ここからどういった顛末になるのか。
なおナベさんのキラ・ヤマト評価は知り合いの女性が言っていたことです自分じゃありません信じてください。大体キラとか好きな女性が多い中、珍しい意見だったので印象に残っていたのですよ。世の中にはこう言う考えの人もいると言うことで。
とにもかくにもバトルは続きそうです。次回で決着がつくのかどうか、乞うご期待?
と言うことで今回はこの辺で。