ガンダムビルドダイバーズ ホットショット!   作:捻れ骨子

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5戦目・ドレスを選ぶようにガンプラを……ってな風に言うと格好良く聞こえるけど、実情は全然格好良くないからな。

 

 

 

 朽ち果てた、町並み。

 砂塵が吹きすさび、瓦礫が半ば埋まった様子があちこちに見受けられる。うち捨てられて幾ばくかの年月が経過したのだろう。人間はおろか生き物の気配もしない。

 風と砂嵐の音。それのみが支配していた亡骸の町に、轟音が響き渡る。

 

「こっちに引きずり込みました! あと20秒で来ます!」

 

 スラスターを吹かしホバリングで後退しながら機体各所の火器を撃ちまくるEX-SガンダムR。間接各部には防塵のために布のようなシーリング処理が施してあり、砂塵の中でもその動きに支障はなさそうだ。

 

「了解。僕とH・A君で上から牽制する。オタクロは敵を引きすり込んだら弾雨を降らせてやれ」

「分かりました。会長に続きます」

「承知。任されよ」

 

 少し離れた位置から、砂塵を曳いて飛び出すフリーダム・ノイエとナイトオウル。上空から見下ろせば、砂煙を上げてこちらに向かい来る一団がある。

 デザートザク、ドムトローペンなど旧ジオン系かつ砂漠仕様のMS部隊だ。ジオン残党のMS部隊掃討。そのような通常ミッションを模型研究会の面子はこなしている最中であった。

 上空に陣取った2体からの銃撃が、突っ込んでくるMS部隊の周囲に降り注ぐ。散開しようとしていた彼らは、蛇行しながら攻撃を回避しつつ、速度を緩めずEX-SガンダムRの後を追おうとするが。

 

「いらっしゃいませこんにちわ。あなたの町のオタクロでござるよ」

 

 ずしん、とミサイルランチャーをフルオープンにしたヘビーアームズが姿を現す。

 イーゲル装備。その半分以上が追加のミサイルランチャーユニットであり、装弾数は最早数えるのも馬鹿らしい。それらが一斉に火を噴いた。

 

「ミサイルストーム! でござるよ」

「やっぱ弁慶意識してるでしょその格好」

 

 H・Aの小さな突っ込みは、殺到するミサイルの爆発音にかき消された。下手をすれば戦術核くらいはありそうな爆発が、MS部隊を巻き込み派手に爆煙をまき散らす。普通ならばこれでけりがつくはずだが。

 ごばっと爆煙を曳きながら1体のドワッジが飛び出してくる。左肩の装甲は欠落し、全身に幾ばくかのダメージは受けているようだが、その機動力は落ちていないようだ。NPDにしては根性入っているのか、せめて一太刀とばかりにまっすぐEX-SガンダムRに向かって突っ込んでくる。

 ジンは慌てず騒がず一声上げた。

 

「スズさん!」

「かしこまり!」

 

 どがん。間欠泉のような砂煙が上がり、横合いからマントのごとく防塵ローブを纏った機体が突っ込んできた。腰に佩いた太刀の鯉口が切られ、目にもとまらぬ速度で抜刀。横合いからの一閃は、ドワッジの胴体を半分断ち斬り吹き飛ばす。

 二の太刀を入れるまでもなく、ドワッジは爆発。電子の塵と化す。同時に電子音声がミッションのクリアを告げた。

 

「あ、今ので終わりなんだ」

 

 追撃を警戒して残心していたスズが、ふっと緊張を解く。彼女の操作に応えローブを纏った機体――レッドフレームは、くるりと太刀を回転させてから納刀する。

 

「おーし今日も順調。やっぱ仲間多いと楽できるわ」

「各自損害はないね? まあこのくらいの相手ならほぼ無傷でいけるか」

 

 研究会の面々が集まってくる。スズをランクアップさせるための経験値稼ぎ。ここ最近はそのために適度なミッションを選んで挑戦する毎日だ。

 スズを慣れさせるため、宇宙、地上を問わず様々なシチュエーションのミッションをこなしていた。さほど難易度の高いものではないのでポイントはそれほど稼げないが、スズを慣れさせるという意味では適切な選択であった。まあ世の中にはいきなり厳しいところに突っ込ませるなんて言う鬼畜外道な先輩プレイヤーなどもいるが、キラ☆はそういう類いではない。「楽しむのが目的なのにつらいとこ突っ込ませてどうする」とか言っちゃうタイプだ。

 ともかく今日も何事もなく無難にミッションはクリアした。さてログアウトして反省会しようかなどと皆が会話を交わしている中。

 スズだけが妙に難しい顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~ん……」

 

 ガンダムベース支店が入っているショッピングモールのフードコート。

 テーブルに置いたアストレイを前に、スズカが腕を組んでうなり声を上げていた。

 

「いかがしたスズタニ氏。何かこれまでのプレイで不満でも?」

 

 彼女の様子が気になったクロウが声をかける。それに対してスズカは応えた。

 

「いえ、ゲーム自体は何の不満もないんですけど、なんかこの子……ちょっと()()感がするんですよね~」

 

 アストレイを指しながら、スズカは続ける。

 

「なんかな~、素直でいい子なんですけど、物足りないって言うか、パンチがないっていうか……スズタニが使いこなせてないだけかもですけど」

 

 そう、スズカはアストレイを駆る事に違和感のようなものを覚え始めていた。何がどうおかしいと、はっきり言えるものではない。だが紙一重で噛み合わないような、そんなもどかしさのようなものを感じている。

 スズカの言葉を聞いて、ヨウヘイはふむ、と考える。

 

「そのキットは全くノーマルに組み上げたもの、素組みの一歩先と言ったところだ。素直で扱いやすいと思うけど、個人に合わせた調整や改造はしていない。そのフラットな状態ではスズタニさんに合わないのかも知れないね」

「ふむ、さすればスズタニ氏用に手を入れてみるのは? 様子を見ておりましたが相性は悪くないと思うのでござるが」

 

 クロウが口を挟む。非常に可動範囲の広いアストレイと、スズカの技術は組み合わせがいいように思えた。彼女用に改修すればそこそこのところまでいけるとクロウは睨んでいる。

 しかしスズカはどうにも乗り気ではなさそうだ。

 

「……そうじゃなくて、なんて言うか……()()()()()()()って感じ……どう言ったらいいんだろ……」

 

 言いたいことが分からなくてもどかしい。そういった様子のスズカ。それを見ていたヨウヘイは、得心したようだ。

 

「なるほど。少し早いかと思ったけど、スズタニさんには()()()()()()()()()が必要だね」

「自分だけの、ガンプラ?」

 

 きょとんとした表情を見せるスズカ。ヨウヘイの言葉を聞いてクロウが頷く。

 

「そういうことでござるか。誰かの手によるものではない、自分が見いだし、自分の意思で組み上げるもの。スズタニ氏はそのようなものを望んでいると」

 

 与えられたものではなく、自分で得て、自分の好みが入ったガンプラ。それこそがスズカの心に空いたピースにカチリとはまるだろうと先輩2人は言う。

 

「ですが刀のような武器を備えているガンプラは限られます。そうなると選択の幅はあまりないのでは」

 

 懸念したホウジが意見を述べる。恐らくそういった物がスズカの好みだろうと見た上での発言だった。それに対してクロウがすぴしと人差し指を立てながら言う。

 

「アイザワ氏、世の中には【ビルダーズパーツ】というものがありましてな」

「……ああ、そういうことですか」

 

 クロウの言葉に納得した様子を見せるホウジ。スズカは首を傾げた。

 

「びるだーずぱーつ?」

 

 彼女の疑問にジントが答える。

 

「武器とか増加パーツだけのキットだよ。そのシリーズの中に、刀があったはず」

「左様。我が研究会に在庫がありもうす。つまり得物はすでにあるので、好きなキットをベースに選んでもらえばいいのでござるよ」

 

 はあ、とよく分かっていないように見えるスズカだが……その目には、先ほどとは違うやる気のようなものが見え始めている。それを確認したヨウヘイは皆に声をかけた。

 

「じゃ、善は急げだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 で。

 

「早速キットを見に来たってことなんだね。よし、おねえさんが選りすぐって差し上げよう」

 

 話を聞いたイズミが腕まくりしてみせる。ガンダムベースの販売コーナー。数多のガンプラが積み上げられたそこで、スズカに『合う』キットを探し出そうというのだ。

 

「それで、スズタニちゃんはどういう好みというか方向性がお望みなのかな?」

 

 そう問うてくるイズミ。スズカはう~んと考えてから、ぽつりと言葉をこぼした。

 

「千石さん……っぽいヤツかな?」

「三匹が斬るとか渋すぎる!?」

 

 思わずツッコミを入れるジント。その言葉にスズカは口を尖らせた。

 

「格好いいじゃん千石さん。っていうか役所 広司」

「気持ちは十二分に分かるけど。いやあれは名作だと思うけど」

 

 言葉を交わす2人の様子を見て、残りの3人はこそこそと話す。

 

「なんでナカモノ君話分かるの」

「あいつじいさんの影響で、時代劇も好きなんですよ」

「拙者らが生まれる前の話でござるよなあ多分」

 

 置いてけぼりの3人。それを余所に時代劇話で盛り上がるスズカとジントだったが。

 

「やっぱ役所 広司の至高は千石さんと宮本 武蔵だよね~」

「えェ!?」

 

 スズカの一言に、ジントが眉を寄せる。

 

「千石さんについてはまるっと同意だが、武蔵は北大路 欣也だろォ!?」

「はァ!?」

 

 今度はスズカが顔をしかめる。

 

「北大路 欣也とか上品すぎるんですけどォ~。銭形平次とかでも違和感ありまくりだったんですけどォ~?」

「あの迫力、凄味は欣也が上だるォ!? 役所 広司のはストイックすぎるんだよォ!」

「あのストイックさがマッチしてる感だしぃ! 千石さんとは違うはまり役ですけどォ!?」

 

 ガシガシ額を付き合わせてマニア以外には分からない論戦を交わす2人。それを留めたのは、ぱんぱんと手を叩く音だった。

 

「はいはいそこまで。そういう話をしに来たんじゃないでしょ?」

 

 イズミの言葉に、2人ははたと我を取り戻す。

 

「あ、ごめんなさい。つい熱くなっちゃって……」

「すんません。調子に乗ってました」

 

 素直にペコペコと謝るスズカとジント。イズミはまったくと、腰に手を当てて宣った。

 

「大体、役所 広司の至高は織田 信長で、武蔵は三船 敏郎でしょうに」

「「あ"ァ!?」」

「「「火に油注ぐなや!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、秋山 小兵衛は藤田 まこと以外にはあり得ないということで話は纏まり、スズカのガンプラ選択は始まった。

 

「武者ガンダム、武者ガンダムmarkⅡ、ジンハイマニューバーⅡ型。多分この辺りも違うんだね?」

 

 イズミが選んだ刀類の得物を備えたキットを見て、やはり浮かない顔のスズカ。ピンとくるものがないから合わないというものでもなかろうが、そもそもが感覚的なところから来ている。納得いかないものを選んでも上手くいかないだろうという予感があった。

 

「ごてごてしい感じ、じゃないんですよね。鎧武者とは違う、みたいな」

「千石さん……素浪人じみた感じかあ……そういうのは中々ないと思うんだ」

 

 むむうと考え込みながら棚の方へと戻るイズミ。彼女もプロだがこういう感覚的なチョイスは中々難しい。イズミに任せるだけでなく、スズカ本人も仲間の助言を受けながらガンプラを見て回っている。

 

「がんだむの違いがよくわかんない……」

「シリーズも種類も多いからねえ。ガンダムって名がついてるだけでも100や200じゃきかないかも知れない」

「素浪人に拘らず、インスピレーションで決めるのも手でござるよ。外観などは後から手を加えられるものでござるし」

 

 ヨウヘイとクロウの言葉を聞いてさらに考え込むスズカ。ちょっと考えてから、皆に問う。

 

「ちなみに皆さんのおすすめは?」

「00……GNドライブというのを背負った種類かな? 無改造で空が飛べるから戦略の幅が広がる」

「鉄血のオルフェンズシリーズが拙者のおすすめでござる。細かい説明は省きますがともかく頑強ゆえに、接近戦では有利でござる」

「SEEDの、フェイズシフト……特殊な装甲がついているもの、かな。制限はあるにしても物理攻撃には強い」

 

 ヨウヘイ、クロウ、ホウジの意見である。なぜこいつら揃いも揃って自分の使ってるキットのシリーズを押さないのか。

 やや遅れて、考え込んでいたジントが意見を述べる。

 

「Gガンが合ってそうな気がする。基本格闘用の機体だらけだから、相性はいいんじゃないかな」

 

 お前もか。まあ自分の押しを勧めるんじゃなくて、スズカに合ってそうなものを挙げるのだから間違ってはいないのだが。

 スズカにはやはり判別がつかない。つかないので、もう人任せにすることにした。

 

「じゃあすいませんけど、皆さんがおすすめのキット持ってきてもらえます?」

 

 手を合わせてお願いする。まあ可愛い女の子に頼まれて嫌という野郎はこの場には一人もいなかったので、皆即座に散ってキットを探し出してきた。

 

「僕のおすすめはこれだ。ガンダムエクシア。元々接近戦を重視した機体だから、相性は悪くないと思う」

「拙者のはガンダムバルバトスルプス。これも接近戦主体の機体でござる」

「インフィニットジャスティス。接近戦用の機体じゃないけれど、空も飛べるし背負いものと分離して動きも軽く出来る。結構戦術の幅は広がると思う」

「こいつはノーベルガンダム。こんななりでも格闘戦じゃ他の機体より一歩抜き出た性能だよ」

 

 全員ガンダムタイプであった。

 

「って、なんかこの子だけ毛色違くない!?」

 

 ノーベルガンダムを指して言うスズカ。ジントはすぴしと人差し指を立て応える。

 

「ああ、これは格闘漫画とかゲーム系の女性武闘家枠だから。乗ってるの女の子だし」

「中身女の子だからって見た目もこうするのはどうかと思うぶちゃけ」

 

 そう言いながらも、スズカの目はノーベルガンダムに釘付けだった。

 

「……これ某美少女戦士のパクリじゃない?」

 

 別の意味で注目していたらしい。ちなみにリメイクとか映画化とかの関係で、スズカも某美少女戦士の存在は知っていた。

 

「リスペクトと言って差し上げなさい。デザイナーも制作陣も思いっきりノリノリだったけど」

「いやその、がんだむって、結構ハードな話だったと思うんだけど?」

「ハードだぞ。ノリが独特で熱いだけで」

「どーゆー話なのさ一体」

 

 ジントにブチブチいいながらも、ノーベルガンダムの箱を手に取るスズカ。ボックスアートや参考写真、説明書きなどを鋭い目で一通り見回し、うん、と頷く。

 

「……この子にします。余計なものついてなくて組み立てるの楽そうだし」

「あ、そういう理由」

 

 ヨウヘイを筆頭としてかくんと肩を落とす野郎ども。初心者としては当然の選択だが、彼らはそれを全く考慮に入れていなかった。それ以前にスズカが()()()()()()()()()だったのが予想外と言ってもいい。外観と言動のイメージ、および危険思想から見える人物像に囚われているとも言えた。

 と、気を取り直したジントが口を開く。

 

「まあそういうことなら……」

 

 言いながら、彼は棚に残っていたノーベルガンダムの箱を手に取る。

 

「? スズタニ二つも作らないよ?」

 

 当然の問いに、彼はこう返す。

 

「こいつは俺の分。横からああだこうだ説明するより、目の前で組み立てた方が分かりやすいだろ?」

 

 つまりスズカに組み立ての説明と実演をするために、わざわざ同じキットを購入しようというのだ。先輩2人とスズカは顔を見合わせてから同時に口を開く。

 

「「「お気遣いの紳士だ!?」」」

 

 そこでさらにホウジから追撃の言葉がある。

 

「こいつこう言うヤツです意外なことに。後スズタニさんのキットのパーツが破損したり紛失した場合の予備とか考えてますよ」

「「「好感度アップ!?」」」

「ガンプラ普及のためのお節介なんで。情けは人のためならずを地で行ってますんで」

 

 最終的には欲得尽くと言うジント。本心なんだか照れ隠しなんだか分からないが、スズカを含めた研究会メンバーに対する株が上がったのは確かだった。

 とにもかくにも、スズカのためのガンプラ。そのベースは決まったようである。

 それは果たして彼女を飛躍させる力となるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おまけ

 

 

「うぬぬ、出遅れた……」

 

 なんかハンカチを噛んで悔しがってるイズミさん。

 彼女が持ってきた台車の上にはガンダムナドレ、GNアーチャー、ファルシア、ガンダム00シアクアンタ等々が積んであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ムギャー仕事が忙すぃー! おまけになんか余計なことが押しつけられそうな予感。
 俺はだらだらして金だけもらいたいんだよ!(最低)忙しくなるくらいなら万年平で良い捻れ骨子です。

 はい今回はスズタニさんが自分のガンプラを選ぶ話です。アストレイのままでも良かったんですが、女の子の感性からすると違うんじゃないかなあ、と。いや年頃の女の子の感性とか分かりませんけど。
 大体年頃の女の子が時代劇の話で盛り上がる分けねえだろうと自己ツッコミ。なお時代劇話の内容は実際の会話を元にしています。分からない人は時代劇を見れ。さあ。
 ともかく選ばれたのはノーベルガンダム。それがどうなるのかは次回以降のお話で。

 では今回はこの辺で。また次のお話でお会いいたしましょう。
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