ガンダムビルドダイバーズ ホットショット!   作:捻れ骨子

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 今回推奨戦闘BGM、 DAITAで【Volcano High】。




8戦目・今宵の虎徹は血に飢えておる系の人間に餌を与えたら、そらねえ

 

「たっめしぎり~、たっめしぎり~。うへへへへ」

 

 めっちゃ上機嫌でなんか物騒すぎる台詞をぶちかましまくってるスズカ。

 そんな彼女の様子を見ながら、イズミは傍らのヨウヘイにこそこそと問う。

 

「ねえ、スズタニちゃん大丈夫なの?」

「多少浮かれてるだけです」

 

 どきっぱりと断言するヨウヘイだが、その頬には一筋汗が流れていた。

 

「なに、人死には出ません。GBNですから」

「それアカン系じゃない確実に」

 

 今にもくるくる踊り出しそうな様子のスズカを見て、尋常じゃない不安を覚えるイズミ。

 ノーベルガンダム・ブレイザーのテストプレイを兼ねて、久しぶりにガンダムベースを訪れた模型研究会一行だったが、スズカの浮かれっぷりが周囲をドン引きさせていた。

 

「や~、道場で初めて本身を使わせてもらったのとおんなじくらいのドキドキ感だよ~。テンション爆上がりってヤツ~?」

「気持ちはめちゃくちゃ分かるけど、少し落ち着け?」

 

 ジントがなだめているが、あんまり効果はなさそうだ。

 

「これは早いところディメイションに放り込んだ方が良さそうでござるな」

「むしろ時間がたてばたつほどリアルが危険な気がします」

 

 クロウとホウジは達観したような眼差しである。楽しみにはしていたようだがここまでとはこのリハクの目をもってしても、と言った心境であった。

 とはいえ浮かれまくって不気味なだけで、特段他人に迷惑をかけているわけでもない。引くけど。イズミはため息をはいて言う。

 

「まーその、調子に乗ってると痛い目を見るのはGBNでもどこでも一緒だからね。注意しなよ?」

「心得て。いざというときは後ろから撃ってでも止めますよ」

 

 す、とヨウヘイの目が冷酷と言ってもいい鋭さを見せる。普段の二枚目半といった雰囲気ではない、切れ者としての鱗片が見受けられるようであった。

 へえ、とイズミは感心したような声を上げる。

 

「キミがマジになるって、スズタニちゃんけっこうやる感じなの? 【空中要塞(エアフォート)】君?」

「はは、恥ずかしい名前を出されましたね。……僕の方が強いですよ。()()()()

 

 真剣な眼差しで浮かれるスズカを見るヨウヘイ。

 

「彼女が真剣にGBNと向き合うのであれば……恐るべきダイバーになるでしょうね。彼女だけじゃなく、ナカモノ君やアイザワ君も。いや、アイザワ君なんかは状況が同じなら、僕らでも危ういかも知れない」

 

 実はジントよりホウジの方がダイバーとしての技量は上だと、ヨウヘイは見抜いていた。彼らとのプレイでおおよその技量と特性はつかめている。ジントとホウジは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。そういう意味では自分やクロウと()()()()()()()。要するに類友だった。

 果たしてスズカはどうなのか。GBNを心の底から楽しめるプレイヤーとなれるのか、それとも。その端正な顔に似つかわしい視線は、上機嫌で筐体へと向かう背中を射貫くように向けられている。

 

「しんのぞ~を~ひとっつき~♪」

「……ホントにスズタニちゃん大丈夫なの?」

「……若干じゃないレベルで不安です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 システムオンライン。コンディションオールグリーン。アクセススタート。

 ――ダイブ。

 

「そういうわけで、今回はスズ君の機体の慣らしもかねて、ちょっとだけレベルの上がったミッションに挑もうと思う」

 

 ロビーで集合すると同時に、キラ☆はそう宣った。

 

「ふむ、これまでのようなミッションでは慣らしには向かないと?」

 

 オタクロが眼鏡を人差し指で押し上げながら問い、キラ☆が頷く。

 

「スズ君もだいぶGBNに慣れてきた頃だ。2週間ほどプレイしていなかったとは言え、今までのミッションだと物足りなくも感じるだろう。機体も本人の特性に合わせた物だ。だから戦闘パターンも一考する必要があるしね」

 

 これまでは男性陣4人で大体の戦力を削り、討ち漏らしをスズに仕留めさせるというパターンだった。スズを慣れさせるためのものであったが、機体を更新し彼女が戦力として使える目処が立った今、戦い方を見直す必要があるとキラ☆は判断している。

 

「それで、どんなミッションを受けるんすか?」

 

 真面目にやってりゃこの人格好良いんだけどなあと、妙に残念な気持ちでジンが尋ねた。

 キラ☆はにやりと笑う。

 

「ランクC以上推奨ミッション。【キリマンジャロベース攻略】さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 通常ミッションであるキリマンジャロベース攻略は、()()()()の防衛隊を撃破し、ベース内の目標を破壊するのが目的のミッションである。これがイベントミッションになるとZガンダムのストーリーが再現され、サイコガンダムが暴れたりカミーユとジェリドが仲良く喧嘩してたりして難易度が跳ね上がるのだが、通常ミッションの場合ネームドキャラはおらず、配置されているMSも奇天烈な機体は存在しない。

 その代わり防衛隊の配置や数は挑むごとにランダムに変わり、飽きさせずそしてクリアしにくいミッションとなっていた。高くそびえるキリマンジャロ山の内部をくりぬき要塞化した攻略対象を遠目に、フリーダムノイエを駆るキラ☆がフォーメーションを告げる。

 

「スズ君、今回は()()()()()()()()()()()()()

「はい? いいんですかかいちょー」

「ああ、君と君の機体がどれだけ出来るか、それを見極めなきゃいけないからね。……ジン君はスズ君についてフォローを。僕とH・A君で上空から援護する。オタクロはバックアップを頼む」

「俺とスズさんで斬り込むって事で良いんですね?」

「ああ、ALICE(サポートAI)を載せ、乱戦に強いジン君の機体なら十分にフォローできるだろう。しかし油断は禁物だ。スズ君、機体に不調があったり戦闘不能な損傷を受けたりしたら、すぐさま後退するように。いいね?」

「りょーかいです!」

 

 モニター向こうでびしすと敬礼するスズ。彼女の様子を見ながらキラ☆は思案する。

 

(むやみに突っ込む様子はない。今のところは素直に指示を聞いているか……)

 

 これから戦端が開かれればどうなるか。それは不安と同時に興味もそそる。悪い思考だと思いながらも、キラ☆はスズをある程度好きに動し、その動向を見守ることにした。

 

「ミッションスタート。まず僕とH・A君で仕掛ける。相手がこちらに注視したところで、スズ君とジン君は突っ込め。派手に暴れてやれ」

 

 言うが早いか、キラ☆は己の機体を上空に舞わせる。次いでH・Aが機体を変形させて後を追った。

 

「この形態だと1撃離脱が基本になりますが、それでいいですか?」

「ああ、背中は任せろ。存分にぶちかましてくれ」

「了解。じゃあ……H・A、戦闘を開始します」

 

 轟、とナイトオウルのスラスターが吠える。そのまま一直線にキリマンジャロベースに向かって駆けた。

 敵の接近を感知した防衛隊のMSが、押っ取り刀で対空迎撃を開始する……前に、一条のビームが空を灼く。それは狙い違わず対空装備を備えたガンキャノンⅡを打ち抜いた。

 キラ☆の援護射撃だ。正確に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()キラ☆の技量に、H・Aは微かな笑みを浮かべる。

 

「さすが。ならばその期待、応えなければな」

 

 対空射撃を回避しながらスマートガンが吠えた。その閃光は空を裂き、要塞の斜面に空いた搬入口の一つ……の()()()()()()

 外したのではない。あのような搬入口は敵の増援が現れるのと同時に要塞内部への突入口でもある。迂闊に潰すわけにはいかなかった。その周囲を狙ったのは、搬入口が狙いだと思わせておいて敵NPDを誘導するための一手だ。この行動により防衛隊の動きは搬入口の方に集中する。ある程度の纏まりが出来た方が地上のスズたちも動きやすい。そういう思惑があった。

 同時にそれは戦力が集中すると言うことでもあるが。

 

「上手くやれよジン。要はお前なんだから」

 

 対空射撃を避けて一時的に上空へ逃れるナイトオウル。相棒を信じるH・Aは、今の行動が的確な支援だと疑わない。

 その相棒の方は、機が熟したと判断していた。

 

「良い感じで相手が纏まってきた。ナイスな仕事してくれる。……スズさん、行こう」

「おっけぇ、待ちかねたよ」

 

 引き絞られた弓のように、ノーベルガンダム・ブレイザーが身を低くする。

 そして。

 

「いっくよぉ、ブレイザー!」

 

 どん! と間欠泉のように土煙を上げて、ブレイザーが駆け出す。

 速い。元々Gガンダムに出てくる機体――MF(モビルファイター)は、素の機体性能が高めに設定されている。その上で、機体各部を強化されたその疾駆は、スラスターを使わずとも音速に至るかと言うような勢いであった。

 機体を操作しながら、スズカは軽く驚きの声を上げる。

 

「軽い! それに動きのブレがほとんどない!」

 

 アストレイに比べて操作に抵抗がなく、不安定な部分もない。アストレイも十分に扱いやすい物であったが、雲泥の差といってもいい。専用に作り上げるとはこういうことかと、目からうろこが落ちたような心持ちだ。

 あっという間に敵陣へと接近。搬入口周辺の敵が一斉に反応し、ロックオンの警報がコクピット内に響く。

 

「回避っと!」

 

 横っ飛びに軌道を変えるブレイザー。大地を蹴ると同時に肩口とスカートアーマーのスラスターが吠え、某ゲームで言うクイックブーストに似た瞬間移動のようなムーブを生み出す。

 

「反応も良いね! 一瞬でロックが外れたよ」

 

 危なげなく機体のバランスを制御し、稲妻のように大地を駆ける。機体の性能もそうだが、それを難なく扱うスズのセンスも相当の物だ。その後を追うジンは苦笑している。

 

「専用に仕上げたとは言え、もう使いこなしてる。こりゃうかうかしてたらあっという間に抜かれるな」

 

 言いながら彼もスラスターを吹かして加速した。

 

「スズさん、援護する。ALICE、バックパックと腰のビームカノンを任せるぞ。味方に当てるなよ」

『了解』

 

 Iフィールドとビームシールドの防御力に任せて真っ直ぐ突っ込みながら、計6門のビームカノンを乱射するEX-SガンダムR。通常のガンプラ数体分の火力が、スズのブレイザーに殺到しようとしていた敵を牽制し、動きを鈍らせる。

 スズの目が鋭さを増す。

 

「そこっ!」

 

 ブレイザーの髪の毛状のパーツが、そしてジャケットアーマーの背面が跳ね上がる。背中側のアーマー、その内側はスラスター群が備えられており、一斉に噴射する推進力は機体を一気に加速させた。

 髪をなびかせブレザーを翻すような様相で、敵陣へと斬り込む。太刀の鯉口が、切られた。

 一閃。目にもとまらぬ速度で放たれた居合いは、ビームサーベルを引き抜き対抗しようとしていたマラサイを、一刀の下袈裟懸けに斬り捨てる。

 

「なにこれ!? 切れ味が全然違う!」

 

 またも驚きの声を上げるスズ。ジンが手ずから研ぎ上げ仕上げた黒鉄色の刀身は、通常の太刀と比べ切れ味が数段向上している。それをスズほどの技量で振るえば、どこぞの妖刀のごとき威力が生じる事となる。

 

「……いける!」

 

 そこでためらわず、攻勢に出るのがスズという人間だ。瞬時に次の目標を選択。一瞬で距離を詰める。狙われたのは先ほどと同じくマラサイ。ビームライフルを乱射しながら後退し、距離を取ろうとするが、スズが駆るブレイザーは銃撃をすり抜けるように奔り、すれ違いざまの胴抜きで、マラサイを上下に両断して見せた。

 

「……あは♪」

 

 小さく笑い声が漏れる。思い通りの、いや、思った以上の動きができる。その事実はスズに高揚感をもたらしていた。

 

「これはもう、アゲアゲで行くっきゃないよね!」

 

 ぎうん、とブレイザーの両目が光る。そこに数機の機体が一斉に襲いかかってくるが。

 

「やらせねっての」

 

 EX-SガンダムRのスマートガンが吠え、ブレイザーの背後に回り込もうとしていた敵機を吹き飛ばす。

 

「ジン君ナイス! はぁっ!」

 

 1体を斬り伏せ、返す刀でもう1体。さらに踏み込み、奥にいた1体がビームサーベルを抜く前に縦一線に両断。あっという間に3体が沈み、ブレイザーはさらに駆け行く。

 その背中を追いつつ、ジンは舌を巻いていた。

 

「うっわマジで真っ二つで瞬殺じゃねえか。そりゃ斬れるようにはしたけど、さすがに凄すぎない?」

 

 ここまで凶悪な結果になるとは思っていなかったと、驚くやら呆れるやらである。……とか言ってる彼自身も、ALICEの補助があるとはいえ複数の目標を同時に沈めていく離れ業をやってのけているのだが。

 上空から二人を援護しているキラ☆とH・Aは、眼下の様子を見て言葉を交わす。

 

「あれ下手したら僕らの援護いらないねえ」

「正直ジンだけでも過剰火力な気がしますが、スズさんの技量が想定以上です」

「思い切りもいいし、迷いもない。何より僕らの援護を見越して、こちらから敵に撃ち込みやすい位置取りを意識しているように見える。逸材だよ」

 

 たまに打ち漏らしを始末していく程度で、みるみる敵戦力が削られていく。スズとジンを中核にしたフォーメーションは、このミッションにおいて大当たりであったようである。

 その一方で。

 

「……正直暇でござるな~」

 

 後方で待機しているオタクロに、全く出番がないという弊害が生じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とにもかくにも、そう長い時間をかけずにキリマンジャロベースの地上戦力は沈黙した。

 

「見えてる部分はこんなところ、かな?」

 

 抜き身の太刀を提げたまま、スズは周囲を警戒しながら言う。それに応えるジンは、眉を寄せた表情だ。

 

「……いや、おかわりが来たらしい」

 

 EX-SガンダムRのレーダーは、キリマンジャロベースの裏手から現れた反応を捉えていた。しかしこれはどうにもおかしいと、ジンの勘は告げている。彼はキラ☆に声をかけた。

 

「会長、増援っぽいですけど、どう思います?」

「エネミー表示じゃなくて、アンノウン表示か。恐らくはジン君が感じたとおりだ。……オタクロ、前に出てくれ。多分出番がある」

()()()()()()ということですな? やれやれ、あの手の輩はいくらでも沸いてくるでござるなあ」

 

 交わされる会話に、スズは小首をかしげる。

 

「どゆこと?」

「なに、すぐに分かるさ。それよりスズさん、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「????」

 

 何がどうなっているのか、さっぱりわかっていないスズ。そんな彼女をよそに、状況は変化を始めた。

 山向こうから現れるいくつかのガンプラ。こちらを警戒している様子を見せるが、攻撃を仕掛けようとはしない。

 

「あれ? なんか、変」

 

 ようやく様子がおかしいことに気づくスズ。このミッションのNPDは敵を察知したら攻撃を仕掛けようとする。相手の様子をうかがうことはしないし、時間稼ぎのようなまねもしない。増援に別な行動パターンをさせている可能性はあったが、それだと途中で難易度が変わるというおかしなことになる。ランカー級が作るクリエイトミッションじゃあるまいし、運営はそこまでしないだろう。面倒くさいし。

  そうこうしている間に、なかなか反応しない研究会の面子に焦れたかのように、増援が獲物を構える。しかしロックオンの警報は飛ばない。その事実に確信を得たオタクロは、()()()()()()()キラ☆に問いかけた。

 

「いかがいたす、会長」

 

 その問いに、う~んと考える()()をして、キラ☆はやはりオープン回線で応えた。

 

「帰ろっか」

「あらぁ!?」

 

 予想外の返答に、かくんと小さく肩をコケさせるスズ。しかし反応したのは、彼女だけではなかった。

 

「て、てめふざけ――」

「馬鹿声出すんじゃねえ!」

 

 オープンにしたままの回線に、何者かの声が混ざる。それと同時に敵の何体かが動揺したような動きを見せた。その反応で、やっとスズは察する。

 

「え? もしかしてあれ、()()()()()()()

「そういうこと。……なあ、いい加減バレてんだけど、観念したらど-よあんたら」

 

 ジンがそう指摘し、増援だと思われていた連中は目に見えた動揺の動きを見せた。

 

「なっ、お、おいバレてんぞ!?」

「動揺すんな馬鹿! リーダーが誤魔化すから黙ってろ!」

「ちっ、勘のいい連中だ」

 

 何かこそこそ会話していた連中のリーダー格らしい男が、回線を開いて愛想笑いを浮かべつつ研究会の連中に語りかける。

 

「いやあすみませんね、うちら探索系のミッション受けてたんですけど、どうにも迷っちまって……」

「ふ~ん? この付近のエリアで探索ミッションとかあったかいオタクロ?」

「はっはっは、変なバッティングとかあったら困ると、そういうのがないことを確認して選んだはずですがなあ?」

 

 男の言葉をぶった切り、絶対分かってるだろうという胡散臭い笑みで言葉を交わすキラ☆とオタクロ。

 続けてジンとH・Aもこれ見よがしに話す。

 

「だったら先に声かけて確認しろって話でな」

「大体20体近くいて、誰一人道が分からなかったなんて通用するかと小一時間」

「うぎっ……」

 

 痛いところを突かれて呻く男。さすがにスズもピンとくる。

 

「もしかしてさ、あの人たちあたしら襲撃しようとかしてた感じ?」

「どっちかって言うと()()()()()()()()()()()感じ。こっちにNPDの増援だと誤認させておいてわざと攻撃させて、難癖を付けて数で叩き潰すのを正当化しようって腹じゃないかな」

 

 すぴしと人差し指を立てて応えるジン。うんうんと頷きながらH・Aが次ぐ。

 

「俺達が復帰したときも似たような輩がいたが、最近は初心者狩りに厳しくなってきたと聞くからな。だから数を集めて初心者を抜け出した辺りかそこらを狙おうと言うことだろう」

 

 GBNに慣れてきて油断している層を狙って狩り、ポイントを稼ごうとしている、言わば中級者狩りをしている連中だと、研究会の野郎どもはそう判断していた。

 そしてそれはどうやら事実だったようで。

 散々好きに言われた男の方はと言うと、茹で蛸のように顔を赤くして、額にぶりぶりと血管を浮かべていた。

 

「ぬ、ぎっ……言わせておけば好き放題……貴様らのような奴らに世間の厳しさを教えてやることが、我らの使命! 我ら――」

「まあ、つまるところさ」

 

 怒りにまかせて何かをほざこうとした男の言葉に被せて、何の気もないようにスズが口を開き、そして。

 

「斬っちゃっていいんだよね、この人たち」

 

 明るく、普段と変わらないようなのに、なぜだか怖気の奔る台詞を放つ。

 そしてその台詞を聞いた研究会の野郎どもは。

 一斉に、にぃっと獣のような笑みを浮かべた。

 

「やっちまって良いぞ! スズさん!」

 

 ジンの言葉を合図に、5人は弾かれたような動きで散開する。

 電光のように駆けるスズのブレイザーと、それを追うジンのEX-SガンダムR。そこまでは先ほどと似ているが、今度は全員が攻勢に出た。

 上空に舞ったキラ☆のフリーダム・ノイエ。滞空し、全ての火器を展開する。

 

(スナイパー)潰しは基本中の基本、ってね」

 

 マルチロックオンシステムを起こす。しかし最大数をロックオンしない。狙うのは狙撃や支援が可能な大型火器を持つ機体だ。

 ウイング基部から生えたバラエーナプラズマ収束ビーム砲2門、腰のショートバレルダインスレイブレールガン2門、そして両手に構えたバスターライフルが火を噴く。味方を巻き込まないために出力は抑えられていたが、それは狙い違わず敵機を打ち抜き、あるいは痛手を与える。

 

「この、キラ・ヤマト気取りか!」

「PS装甲ならビームの集中で!」

 

 地上の敵部隊から反撃が開始される。しかしキラ☆はそれを僅かに身をよじるような動きだけで回避して見せた。

 

「くそ、当たれ! 当たれよ!」

「なんで避けられるんだ畜生!」

 

 ゆらゆら動いているだけで避けられる状況に、迎撃していた連中が躍起になり始める。そして一方的に当てられる射撃。一部で難攻不落の空中要塞などと言われているその実力の鱗片を振るっているキラ☆は、余裕の表情だ。

 

「この程度上位ランカーに比べれば児戯に過ぎないというのに。……それより僕だけに集中していて良いのかな?」

 

 対空攻撃に集中していたガンプラの1体が、突如地上すれすれで放たれたビームに貫かれ爆散する。何で地面に激突しないの、って勢いで地表すれすれを飛ぶWR(ウェーブライダー)モードのナイトオウルだ。

 

「こ、こいつ頭おかしいのか!?」

 

 側面に回ってからとんでもない速度で突っ込んできたナイトオウルをかろうじて躱すガンプラたちだが、すれ違った瞬間ナイトオウルは空中で転がるように変形。地面を滑りつつ着地しながら、背面からスマートガンと腰のビームカノンを打ち込む。

 瞬く間にまた1体が沈んだ。そしてナイトオウルは再び変形し、疾風のように駆ける。

 

「やはり攪乱しながら一斉に仕留めるというのは難しいか。機体と戦術を変えれば別だろうが」

 

 Z系をこなよく愛するH・A。多量の敵を相手にしたりするときには向かない物だと分かっているが、それよりも己の趣味が勝る。全く度しがたい物だと思いながらも、その口元には楽しげな笑みが浮かんでいた。

 

「くっ、数ではまだこっちの方が多いんだ! 囲め!」

「そう上手くいくと思っているでござるか?」

 

 斬り込んだ同好会の背後に回ろうとしていた連中の前に現れたのは、オタクロのヘビーアームズ。その脚部後方に備えられていたクローラーユニットが、ずがんと展開し――

 耳障りな駆動音を奏で、意外なほどの高速で疾駆を開始する。

 

「なに!?」

 

 驚愕しながらも襲撃者たちは攻撃しようとするが遅い。敵の真っ只中に飛び込んだヘビーアームズは、踊るように旋回しながら両腕と胸部のガトリングガン、そして全身のミサイルを至近距離からぶちまけた。

 

「わあああ!?」

「とろいと思ってたら、こいつ、速い!?」

「トロワでもそんなこと……ぎゃああ!?」

 

 あっという間に吹き飛ばされていく敵。ガトリングガンが斉射を止め、からからと空転する。周囲を一掃したオタクロは、硝煙漂う中不敵に笑んだ。

 

「生憎と、拙者動けるデブでござってな」

 

 20体ほどの戦力が、一方的に削られていく。そしてこのフォース、キリマンジャロベースの防衛隊を偽装するために、ZおよびZZ時代の連邦軍MS、しかも派手な改造なしでほぼノーマルな状態をチョイスしていたのがまた拙かった。GBNではキットの出来が良ければ性能に反映されるが、それにも限界はある。ましてやノーマル状態でそれなりの戦果をたたき出そうと思ったら、それこそランカークラスの技量が必要となるだろう。

 そして、このフォースの最高ランクはリーダー含めた数人がBと言う程度。後は言うまでもあるまい。

 それでもリーダーたちはなんか現実が認められないようで。

 

「ばかな、こんなばかなァ!」

 

 ホバリングして絶え間なく位置を変え、射撃を回避しながら反撃するリーダーのGMⅢ。上空と地上から雨霰と降り注ぐ攻撃を回避し続けられるのは相当の技量の証だが、だからと言って状況が好転するわけでもなかった。ZやZZ時代の連邦軍量産MSは、性能こそ悪くないものの突出した能力を持たない。 最初から多数を相手取ることを想定した火力過剰な機体を3体擁する研究会の面子とは、相性が悪すぎた。

 かてて加えて。

 

「なんなんだあのJK風味ノーベルガンダムは!?」

 

 数多の射撃を避けまくり、ほぼ一刀の下相手を斬り伏せていく。まさかランクを偽装した上位ランカーだとでの言うのか。常識外の様相は、リーダーに勘違い混じりの戦慄をもたらす。

 射撃を避けられるのは銃口を向けられる前に回避行動を取っているからで、一撃でぶった斬られるのは太刀の切れ味が向上しているのと、相手が有効な防御手段を持っていないからだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。もっともそんな事実は襲撃者たちにとって何の救いにもなっていないが。

 

「シャァッ!」

 

 短い呼気と共に太刀が振るわれ、また1体が討ち取られる。それを成したときには、すでに次の目標へと駆けていた。速度が、技が、判断が。確実に襲撃者たちを上回っている。その技量はすでにランクFの枠を大幅に超えていた。

 

「さあ、もたもたしてると全員斬っちゃうぞぉ♪」

 

 口調はかわいらしいが殺意にあふれまくっている台詞を吐くスズ。このままであれば彼女の言うとおりになってしまうだろう。

 

「させん、させんぞ! せめてあのJKもどきは道連れに……」

「おっと、あんたの相手は俺だぜ」

 

 ずん、とリーダーの前に降り立つのは、周囲の敵をあらかた掃討したEX-SガンダムR。スマートガンを振り回してから構え、銃剣を展開する。

 

「さあ大詰めだ、そろそろ決着といこうか!」

 

 見れば味方はもう数えるほどしか残っていない。追い詰められたと悟ったリーダーは、その身勝手な憤りを目の前の敵にぶつけんとする。

 

「せめて貴様だけでもぉ!」

 

 ビームライフルを捨て、スラスターを全力で吹かし突撃しながらビームサーベルを抜刀。EX-SガンダムRに斬りかかるが。

 がぎ、と音が響く。GMⅢが斬りつけるより先にスマートガンが振るわれ、それがシールドでかろうじて受け止められたのだ。しかし膂力で遙かに上回るEX-SガンダムRに押さえ込まれ、GMⅢは体勢を崩して――

 

(ここだっ!)

 

 GMⅢの腰が左右。そこには大型ミサイルランチャーが備えられている。本来ならば極至近距離で使うものではないが、リーダーは自身もダメージを負う覚悟でぶちかまして見せた。

 派手な爆発が起きる。爆煙を曳き、煤けたGMⅢが後退する。そして反対側ではビームシールドを展開したEX-SガンダムRが同じように後退する。その周囲で何かの破片が飛び散った。どうやらビームシールドとスマートガンを盾にして直撃を逃れたようだ。

 

「その長物がなくなれば! 懐に飛び込みさえすれば!」

 

 スマートガンがなくなってもまだ火力は残っている。それを生かせない極至近距離でもう一度ミサイルを使えれば。リーダーのその目論見は――

 爆煙を裂く二条の閃光にて絶たれた。

 

「え?」

 

 気がつけば、両腕が切り飛ばされていた。それを成したのは、EX-SガンダムRの両腕に握られたビームサーベル。

 一瞬呆けたリーダーの隙を突き距離を詰めたジンは、にやりと笑って言い放つ。

 

「悪いね。実はこっち(ヤッパ)の方が得意なんだ」

 

 反撃どころか反応も許されず、GMⅢは×の字に斬り伏せられ、爆発の後粒子となって消えた。

 ほぼそれと同時に残りの敵も全滅させられたようだ。周囲を警戒していたブレイザーが、太刀を回転させて納刀する。

 

「ふっ……成敗っ!」

「言いたくなる気持ちは分かる」

 

 びしすと見栄を張るスズの元へ、研究会の面子が集う。

 

「やれやれ、とんだハプニングだったが、なんとかなったね」

 

 ふう、と息を吐くキラ☆。そうしてから彼はスズに尋ねた。

 

「で、どうだったスズ君?」

 

 スズは、満面の笑みで応えた。

 

「さいっっこう!」

 

 ハプニング何もかもを込みで、彼女は本心からそう言い放つ。

 野郎どもは顔を見合わせてから――

 同じように満面の笑みを浮かべ、親指を立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おまけ

 

 

『ジン、タイムオーバーです。受注したミッションは失敗しました』

「「「あ」」」

「「またこのオチか!?」」

 

 元々のミッションのことをすっかり忘れていた研究会でしたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おまけ2

 

 

 中級者狩りの人たち。

 

 増援ありのミッションでNPDの増援を装い、攻撃してきたダイバーに難癖を付け襲いかかるゲスなひとたち。

 しかし今回は相手が悪く、一方的に片付けられた。

 なお一連の有様はオタクロが動画に記録しており、後で編集してサイトに上げた。そのおかげで悪名が広がることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 用事のついでに横浜に動くガンダムを見に行く。
 ……うん、あれがアニメの速度で動いたら脅威だわ。役に立つかはともかく。イグルーでザク相手に生身で戦った人たちの気持ちがよく分かった捻れ骨子です。

 さて今回はノーベルガンダム・ブレイザーの初陣とよくある乱入者の話~。
 なんか久々にバトルシーンを書いたような気がします。スズタニさんがかなりヤバ目な気がしましたが、なんのこたねえ、他の野郎どもも似たり寄ったりじゃねえか。やはり類が友を呼んだのだと思います。
 ともかくこれで話を進める要素は整いました。これから先がどうなるか、それは次回以降のお話にて。

 では今回はこの辺で。 
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