さて、中級者狩り(仮)をいぢめるのにいそしんでミッションを失敗した研究会の面々であるが、その一方でスズカ、ジント、ホウジの三人はランクアップを果たした。
ミッションとは別口で、上位ランクの人間を降したポイントが入ったからである。ああ見えて中級者狩りの連中は全員がランクC以上。その分スズカが得たポイントは多かった。
つまり。
「これで、この研究会もフォースを組めることになりました!」
「「「「いぇー!」」」」
ヨウヘイの言葉に、諸手を挙げて喝采する研究会の面子。OKOKと、皆を抑える仕草をしてから、ヨウヘイは厳かに告げた。
「それで、早速だがフォースの名を決めたいと思う。……実は前から考えていた名前が一つあってね」
一呼吸置いてから、彼はその名を告げた。
「【ホットショット】というのはどうだろう」
ぐるりと部員たちを見回してから、ヨウヘイは続ける。
「これは名人、やり手などという意味を持つ英語だ。手前味噌かつ贔屓目になるが、それぞれそう評されるほどの物を持つ僕たちには、相応しい名だと思う」
へーそーなんだーと感心するスズカとジント。うんうん頷くクロウ。
そしてホウジはにっこり笑って、ヨウヘイに問うた。
「会長……もしかして、チャーリー・シーンのファンだったりします?」
びきりと、一瞬ヨウヘイが凍った。そして思いっきり目をそらして応える。
「……はっはっは。なんのことかな?」
「やっぱりですかせめて炎のストライカーで誤魔化そうという気概はなかったんですか」
「うわなに理解しまくってるねアイザワ君!? フライングハイにしなかっただけマシだと思って欲しい!」
※そういう名前のパロディ映画がある。ちなみにホットショットは大物ぶる人、でかい口を叩くヤツ、などという意味もある。
「うちの親父が好き者でしてね。ああいうパロディ映画は大概見てるんですよ。スペースボールとか」
「そっちの方がレアじゃない!? つーか炎のストライカーの原題分かってる時点でおかしいよ!?」
「ネット社会って偉大ですよね」
「情報化の弊害か!」
変な方向で盛り上がる二人。置いてけぼりにされているスズカとジントはぽかんとした顔だった。
「なにあれ。どゆこと?」
「会長がマニアックな映画のネタ振って、ホウジがそれに反応したって事しかわかんない」
ホウジの幼なじみであるジントは、彼が変な映画に詳しいと言うことは分かっていたが、それについてこれる同年代の人間がいるとは思っていなかった。ジント自身も、ホットショットの元ネタ時点ですでに置いてけぼりである。
「ボイジャー号がレッドドワーフ号だったとしたらもっとお気楽な旅路になっていたと思わない?」
「むしろ逆に殺伐とした旅路になりそうですが。艦長の胃痛的な意味で」
「いや分からん分からん」
だんだん話が明後日の方向に飛んでいくところをツッコむジント。放っておいたら映画や海外ドラマの話だけでページが埋まってしまうかも知れない。
そんな様子を見て、クロウはくつくつと笑う。
「まあ映画の題名が元ネタではござろうが、自分たちが名人、やり手と誇れるようでありたいという心意気は本物でござろう」
「そこで冷静に解説されるとこっぱずかしいんだけど!?」
クロウの言葉に反応するヨウヘイ。今の一連の流れはどうやら本心を誤魔化すためだったらしい。
「あと悪い意味があることも踏まえ、そう受け取られぬよう自身を律しようという事も考えておるでござるよ」
「やめて冷静に分析するのやめて」
頭抱えて縮こまるヨウヘイ。いや別にそこまで恥ずかしいことじゃなくない? とスズカは思うが当人にとっては恥ずかしいことなのだろう。
顔は良いんだから素直に格好良いこと言っとけばいいのにとか思いながら、クロウは言う。
「拙者は気に入りましたぞ、映画のネタと言うことも含めて。面白おかしく楽しくGBNをプレイする、そういう気持ちの表れとも取れるでござろう? 結構なことではないですか」
結構前向きかつ真面目なことを言う。あれ? ひょっとして僕良いところ取られた? などとヨウヘイが言っているようだが、クロウは半ば無視して言葉を続けた。
「まあキャラの濃さから言えば、ポリスアカデミーでも良い気はするでござるが」
「あんたもかい」
とまあなんかぐだぐだな感じにはなったが、他に誰も良いアイディアが思い浮かばなかったので、結局はヨウヘイのアイディアが採用されることになる。
陽昇大付属高校模型研究会改め、フォースホットショット。
彼らの伝説は、ここから始まった。
……などという壮大な展開とかがあるわけではなく。
「ほへ~、なんか殺風景」
GBNにダイブし、フォースの申請を行ってから初めて【フォースネスト】を訪れたスズの感想がこれである。
フォースネストとは各フォースに与えられる拠点で、最初のデフォルトな物はどこかの会議室じみた、何の特徴もない部屋だ。
スズの言葉に、キラ☆は肩をすくめた。
「最初はこんな物さ。ここからフォースで活動することによって得られるポイントを消費して、色々とカスタマイズ出来る。最初は家具とかだけど、上位ランクとになると城とか要塞とかそういう拠点にすることも可能だ」
「お城、ねえ……」
スズの脳裏には、どこかの白鷺な城がどどんとそびえている光景が浮かんでいた。いまいちこう、ピンときていない。
「中にはネストをアミューズメントパーク化して、客とってビルドコイン稼ぐ剛の者もいるようでござるが、まあそういうのは極端な例でござる。GBN内で駄弁る場が出来た物と思えばよろしかろう」
「それは部室と何が違うのか」
「ミーティングや反省会をするのに一々プレイを中断しなくて良いという利点がござる」
「……なるほど」
スズはそれなりに納得したようだ。ネストがあれば一々ロビーで待ち合わせをする必要がなくなり、他のダイバーやフォースの目に止まらぬところで作戦を練ることも出来る。そういった利点があることを理解したのだろう。
今はそんなところだろうが、そのうち色々な利便性に気づくだろうと、オタクロは見守る姿勢だった。
と、彼は何かを思い出したようで、ぽんと手を叩く。
「そうそう、この間の戦いでござるが、ちょっと動画にして、サイトに上げようと思うのですよ。それでちょっと皆に見てもらって意見を聞きたいのでござるがいかが?」
「ほう? 編集したやつかい?」
オタクロの言葉に、キラ☆が興味を示す。
「左様。可能な限りプライベートには配慮しております」
「へえ、ここで見られるんですか?」
次いでスズが食いついた。
「G-TUBE系のクラウドに保存しておりますからな。こうして、と」
ホログラムディスプレイを呼び出し、操作。すると画面が広がり、動画の閲覧モードへと変化する。
「どんな案配になってるか気になるっすね」
「自分の戦いを客観的に見たことはありませんから、そういう目線はありがたいと思います」
ジンとH・Aもモニターをのぞき込む。全員が注視していることを確認したオタクロは、再生ボタンを押した。
まずはキリマンジャロベースの全景が目に入る。どうやらヘビーアームズから見た状況を記録した物らしい。
そこから戦闘開始。仲間の機体が飛び出していくところを捕らえ、そこからここの戦闘シーンが展開する。
それぞれの機体の形状がはっきりと分かるシーンはない。編集でカットしたのだろう。しかし一撃で断たれた敵機や、複数が同時に吹き飛んでいく様など戦果は分かり易く、見る者が見れば、あ、このように攻撃したのかと分かる構成だ。所々で説明のキャンプションが入り、素人にも配慮しているようだ。
やがて地上戦力が掃討され、乱入者たちが現れるシーンとなる。
「「「ぶふっ!」」」
ジン、H・A、スズが揃って吹き出した。現れた一団には、
『ここでいかにも怪しい集団が登場!』とキャンプションも荒ぶり始めた。キラ☆などは「おおひわいひわい」と、微妙に腹立つ顔でにやついている。
「イヤアスミマセンネ、ウチラタンサクケイノミッションウケテタンデスケド……」
「声がwwwwww声がおかしいwwwwwww」
変な風に加工された声が響き、ついにスズは指さして爆笑を始めた。ご丁寧にキャンプションには、※プライベートに配慮し、画像、音声は加工しております。と表記されているが、どう見ても馬鹿にしているようにしか見えない。
「副会長、中々良い性格してるっすね」
「褒め言葉と受け取るでござる」
半ば呆れたようなジンの言葉に、済まして答えるオタクロ。
そうこうしている間に話は進んで、スズの「斬っちゃっていいんだよね、この人たち」と言う台詞が入る。そこから始まる蹂躙劇。BGMは暴れん坊将軍の剣戟テーマだ。
ばったばったとなぎ倒されていく敵機。時折かーん! と言う効果音に合わせて入るそれぞれの決め台詞。要所を押さえながら、自分たちの機体がはっきりとした姿を現さないよう工夫されていた。オタクロ自身が撮影者なので姿が現れないのは当然だが、よくもまあ姿形をはっきりとさせず
(ふふ、
動画を見ながらキラ☆は愉快に思う。自分たちを格好良く、そしてマナー無用の敵は格好悪く小馬鹿にして扱う。これはただ自己満足の動画でなく、
誇張気味に相手を格好悪く見せているのは、
その上で運営に「なにこんなの放置してんの」と訴える意図もある。まあ面の皮が厚い(偏見)運営にどこまでこの皮肉が通じるかは疑問だが、草の根運動的にダイバーたちへと広まればいい。面白おかしく工夫した裏ではそういったことを考えているのだろう。我が友ながらひねくれてかつ真摯だと、キラ☆は小さく笑う。
動画はクライマックスを経て、そして。
「ふっ……成敗っ!」
この台詞と共にBGNが終わりを迎える。1年生どもはやんややんやと大喝采だ。
「めっちゃ面白いスズタニ超格好良い! これはダイバーにウケるんじゃ……」
『――タイムオーバーです。受注したミッションは失敗しました』
「「「あ」」」
「あらぁ!?」
最後の最後で間抜けな台詞が流れ、スズはずっこける。
「オチまで収録してるんですかい」
「これは外せないでござろう?」
ジンにふふんとドヤ顔して見せてから、オタクロは不敵に笑う。あ、これは狙ってやってるなとジンは察した。
(多分最後に
最後まで計算されている動画だと、ジンは見て取る。この副会長、実のところとんでもないやり手じゃなかろうかと、半ば疑いのような眼差しを向けていた。見られてる方はふふんとドヤ顔だ。
「それで、いかがでござった?」
「色々と言いたいことはあるっすけど、面白い動画には違いないっすね」
「副会長がある意味怖い物知らずだとよく分かりました」
「最後のオチがあれだけど、ふつーに面白かったです」
1年生三人の感想の後、キラ☆が言う。
「公開するのに問題はないと思う。まあ公開した後
「ふふ、会長にはかないませんな」
くくくと悪役じみた笑みを交わす二人。愉快犯がおると、ジン、H・Aの二人は後頭部に一筋の汗を流した。
とにもかくにも、オタクロが作成した動画はG-TUBEの端っこにひっそりとアップされる。
果たしてそれは、どのような影響を及ぼすのであろうか。
「さて、何か新しい動画はあるかな……」
某所にて、端整な顔立ちの男が日課の動画チェックを行っていた。
羅列されているサムネイルから面白そうなものはないかと検索していく。と、一つの動画が目に止まった。
『狩りに来た人たちを返り討ちにしてみた』と題されたその動画。気になって視聴してみれば、中々に興味を引かれる物だった。
一見面白おかしく中級者狩りを引っかき回し小馬鹿にしている動画に見える。しかし男には制作者の意図が見て取れた。これはこのような連中がGBN内にて我が物顔で横行していることを啓発し、注意を促すための物だと。それでいて、
「興味深いな。それに……」
画面に一部分しか出てこない自フォースのガンプラ。そのうちの二つに見覚えがあった。紺色のZプラスと紅いEX-Sガンダム。以前エマージェンシーを受けた先で、初心者狩りと思わしき連中を倒したものだと男は確信する。
「彼らとは縁があるのかも知れないね。……ふふ、楽しみが増えたよ」
動画が映るモニターの横。目元を追うタイプのマスクが鈍く光を反射していた。
ナカモノ家は、本来1階に当たる部分が丸々ガレージになった構造をしている。シャッターが降りたその内部。奥の端っこに備えられた作業机がジントのガンプラ等制作スペースであった。
リューターや小型の旋盤などが整理されて横の棚に収められ、机の上には制作道具やルーズリーフなどが並べられている。そして中央にはガンプラの箱ががあり、その中でEX-SガンダムRが四肢を分解された状態で鎮座していた。
「まあ、こいつを改良する丁度良い機会だったかね」
呟きながら、キットの調整と改良を行う。そうしながらジントはチラリと棚の方に視線を向けた。
「あれの完成も、急いだ方が良いかもだ」
視線の先には、しまわれたガンプラの箱がある。一瞬その中身について思考を巡らせるジントだったが、今はそうしている場合ではないと意識を切り替える。
「それじゃあ、いっちょやってみますかね」
呟いて、一つのパーツを手に取った。
それは短い円錐の形状をしたものだった。
ファっ!? ビルドシリーズが実写化!?
ガン何とかガールといい、最近の財団Bはどこに向かおうとしているのか。困惑する捻れ骨子です。
はいフォース結成の話~。そしてやっと題名のネタが回収できたよ。古い映画だけど面白いぞホットショット。1はフセインのそっくりさんが酷い目に遭って、2はもっと酷い目に遭う話だけど。(はしょりすぎ)
ともかく主人公たちはフォースを結成しプレイの幅を広げていく……のか? それよりオタクロが何やら仕込みましたが、それがどのような展開を呼ぶのか。怪しい人間も出てきそうだし一体どうなっちゃうんでしょうかねえ。(他人事)
それでは今回はこの辺で。