「861番、告解の時間だ」
「告解だぁ?」
番号で呼ばれた男は、顔を上げた。
ここは、東京の某刑務所。
彼は死刑囚として、独房に収監され五年目になる。
「そんなの、頼んだ覚えはないぞ」
刑務所では囚人に悔い改める機会を与える為に、修道士が派遣されることが有る。
だが、彼はそんなこと頼んだ覚えはなかった。
「お前が、じゃない。
我が神がお前を所望なんだ」
刑務官がその女の登場に顔を顰めた。
「女だと?」
刑務所は、女性が一切存在しない場所だ。
だから死刑囚は、彼女の存在に目を見開く。
「開けてくれ」
「いや、しかし……」
「あんたに責任が及ぶことはない。さっさとしろ」
黒いローブ姿の女は、刑務官に独房のカギを開けさせた。
「どういうことだ……?」
独房の扉が開け放たれ、金髪の女が独房内へと入り込んでくる。
「気を付けてください、そいつは8人を殺した殺人鬼です」
「それくらい、事前に聞いているさ」
その女、クリスティーンはニヤリと刑務官に笑い返した。
「薬物を使用し、ラリッて知り合い五人を殺傷。
警察から逃走の際に、三人の親子を車で轢き殺した」
「はッ、だから何だよ。
告解だかなんだかしらないが、あんたみたいな神父がいるわけねぇ。俺に何の用だ」
死刑囚はこの状況が全く呑み込めないが、とんでもない権力がこの女にあることは理解できた。
でなければ、刑務官がこんな横紙破りの連続を許すはずも無い。
「お前のやったこと、お前は納得してるのか?」
「はあ?」
「我が神は全てをお見通しだ」
クリスティーンは死刑囚の前に膝を突いた。
「お前は悪い仲間から薬物を盛られ、その中毒症状に苦しんだ。
仲間を殺したのも、薬物の力でその関係性を断ちたかったからだろう?
そして、そのことについて何にも悪いと思っていない」
「ッ、ったりめーだ!!
あいつらのせいで俺はずっとその稼ぎをクスリにつぎ込み続ける羽目になったんだからな!!
しかも真っ当な仕事を出来るようになった俺をハメやがったんだ!!
お陰で仕事はクビさ、人生もお先真っ暗!! ぶっ殺してやって何が悪い!!」
「いや、全然」
激情のまま、心境を吐き出す死刑囚に、クリスティーンは微笑みながら首を振った。
「じゃあ、お前が轢き殺した親子三人についてはどう思っている?」
「そ、それは……」
「悪いと思っている。そうだな?」
死刑囚は目を逸らした。
それは、情状酌量の余地なしとして死刑を待つ身である彼の、最後の良心だった。
「私の眼を見ろ」
ガッと両手で顔を掴まれ、無理やり彼はクリスティーンと視線を合わせられた。
「なにをッ──」
彼女の両目を見ることになった彼は、その瞳の奥の深淵に気づいた。
クリスティーンの瞳を通して、暗黒の奈落が存在していた。
まるで星の無い宇宙のように果てしなく、延々と続く闇が在った。
そしてそこに座する、赤い瞳の女神が彼を見ていた。
彼は全てを察した。
自分の行いは全て、この御方に見られていたのだと。
そして誰も同情しなかった、誰も知ろうとしなかった彼の全てを哀れみ、慈しんでいた。
いつの間にか、死刑囚の両目から滂沱の涙が流れていた。
大いなる慈愛が、彼を赦し、罰すると言っていた。
そして──。
「あの御方は仰いました、償いを以って俺を赦すと」
まるで敬虔な信者のように、彼は祈りの姿勢を取った。
その姿に、刑務官はギョッとした。
彼は今まで誰にも心を開かず、頑ななままずっと収監されていたのだ。
「ならば、その償いを以って我が女神によりお前の犠牲者の魂と、その被害者家族も痛みから癒される。
お前が残した両親も、悲しみから解放される」
「はい、神官様……」
「心残りはもうないな? では、罪を償うのだ」
そのクリスティーンの言葉と同時に、死刑囚の体に異変が起こった。
「ひッ」
その変貌を間近で見てしまった刑務官が腰を抜かした。
平均的な日本人男性の身長しかなかった死刑囚の体が膨張し、毛で覆われる。
顔は人間のものから獣のそれになり、人間だった面影は二足歩行しているぐらいであった。
「こ、これが、オレ?」
まさに彼は、二足歩行する全長3.5メートルの巨大なオオカミそのものになっていた。
その姿は、まさしく──怪人。
「これから街に出て、好きなだけ暴れろ。
そして、その暴虐に立ち向かう者の試練と成れ」
怪人となった彼に下されたクリスティーンの、彼女を通して彼に伝えらえた女神の勅命は単純だった。
「……そいつらは殺してしまっても、良いんですね?」
「当然だ。そうでなければ試練にならん」
「わかりました」
死刑囚は頭を下げると、独房を出ようとするクリスティーンに付き従う。
「上に伝えておけ、861番の死刑は執行された、とな」
「は、はいぃ!!」
刑務官は震えながら頷くことしかできなかった。
そうして、その日、一人の死刑囚の死刑が執行された。
魔法少女二人の試練として、
§§§
怪人を町中に解き放ってすぐ、クリスティーンは次の仕事を実行した。
「私の指示に従えば、異世界へと連れて行ってやる」
上位者対策局の地下にまとめて押し込まれている転生者たちに、彼女はそう言った。
「ほ、本当なのか!?」
「ああ、我が神の名に懸けて保証しよう。
働きが良い者を、我が女神が所望だ。そいつらを異世界へ勇者として送り出す」
クリスティーンは嘘は言っていなかった。
本当の事をちっとも話していなかったが。
「世界の危機に瀕した異世界にて、活躍する機会をやろう。
そこでお前たちは、お前たちに与えられたすべての能力を自由に使用しても良いのだ」
彼女の甘言に、彼らが唾を吞んだ。
「そこには魔法が女性しか使えないなんて縛りもない。
新しく好きに魔法を会得できる才能を、お前たちは既に有している。
──さあ、自らの価値を示してみろ」
その言葉と同時に、軟禁されている彼らの地下室の扉を開け放った。
それだけで、先日暴動に参加した転生者たちは我先にと地下室を飛び出した。
地獄のような現実を突きつけられた彼らに与えられた、蜘蛛の糸。
それに縋ろうと、彼らは必死に飛び出した。
「……はぁ、あんな馬鹿どもまでチャンスを与えようとは。
我が女神様のことながら、理解に及ばんぜ。やれやれ、これも我が師も通った道だ。これも仕事だ仕事……」
なんて愚痴りながら、クリスティーンは地下室から姿を消した。
さて、アウトサイダーに騙され転生した彼らは、具体的に三種類の人間が居た。
ひとつは、多くの転生者たちを勇気づけた真のイケメン。
ひとつは、大多数を占める元ニートたち。
そしてもうひとつ、元ニートたちと同じ募集要項に該当しながら、ニートたちと決定的に違う人種である。
それは。
「いいか、お前ら!! 異世界に行くのは俺らだ!!」
彼らは対策局の一部を制圧し、職員たちを捕虜に取ると同じ転生者たちを威圧した。
見るからに粗暴さが隠し切れない、暴力に慣れた極数名。
そんな彼らが、大多数を占める元ニートのイケメン達に牙を剝いたのだ。
彼らは暴力で元ニートたちを黙らせると、洗脳した女性職員たちを侍らせ王様気取りだった。
「彼の言うことが正しいのよ!!」
「あんたたちは彼らに従いなさいよ!!」
「そうすればすべて上手くいくんだから!!」
或いは、この洗脳されて相手を持ち上げることしかできなくなった憐れな女性たちを見て冷や水をぶっかけられたかのように冷静になったのかもしれない。
彼らは元々、大した度胸なんて持っていない、その場に流されるだけの人間に過ぎなかった。
本物の悪意を目にして、彼らは委縮していた。
「気持ち悪い……」
それは、知能が下げられた女性の言動なのか、そんな状態にさせてしまった一部の連中に対してなのか。
彼らも、そのおぞましさに吐き気を催した。
「他の場所の連中を残らず制圧するぞ!!」
「何人か残って、こいつらを見張っとけ!!」
洗脳できない男性職員は、部屋の片隅に縛られて放っておかれていた。
「女はここに連れて来い、男どもは縛ってあそこに置いておけ!!」
「は、はい……」
それでも、暴力の恐怖に屈した転生者たちは従うほかなかった。
…………
…………
………………
対策局は三階建ての建物で、防衛線は二階に敷かれていた。
「さっさと俺たちの盾になりやがれ!!」
「どうせ復活できるんだから躊躇うんじゃねえよ!!!」
即席のバリケードに取り付こうとする転生者たちと、局員たちの攻防が繰り広げられていた。
「マズいですね」
この場に居るのは、難を逃れ応戦している警備員数名と千利たちだけだった。
相手は無尽蔵の耐久力でごり押し気味にこちらに攻め込んでおり、徐々に押されている状態だった。
「でも、この様子ならリーンたちの価値には気づいていないみたいね」
「彼らを鎮圧するのも骨が折れそうです。戦力が足らない」
メイリスの言葉を受けて、千利が歯痒そうにそう言った。
「じゃあ、出撃した二人が戻るのを待つ?」
夏芽は、二人に問うた。
「力が有るくせに、出し惜しみするの?」
「私にもまだ、この事態の判断がしかねているのよ。
強い力を持つ者だからこそ、その使い方は慎重にならないといけない」
メイリスに揶揄され、夏芽は不機嫌そうに応じた。
「この対策局の局員たちは、戦う覚悟を持つ者だと思ってる。
それは非戦闘要員でも同じよ。本拠地を攻撃されることぐらい、想定済みのはず」
だからこそ、曲がりなりにもこうして反抗できている。
「私は、あなた達が解決できることはあなた達がすべきことだと思っている」
それが調停者。
「ああそう」
メイリスはその言葉に、頭をがしがしと掻いていら立ちを隠そうともしない。
「自分で何も決めるつもりが無いなら、自分の世界に帰れば?」
彼女は夏芽を戦力に数えるの止めたようだった。
非情で合理的な彼女らしかった。
彼女はすぐに警備員の援護に回った。
メイリスの自動拳銃から放たれる銃弾が命中すると、爆発を起こす。
これが彼女の魔法、物質を自在に変質させる力。
全盛期から衰えてなお、その力を彼女は自在に操っている。
「師匠……」
「わかってる。慣れているわ」
メイリスのような芯の強い人間からすれば、夏芽の態度はおべっかにしか見えないのだろう。
そしてそれを、夏芽は否定できない。
メイリスの言葉は、どうしようもなく本質を突いていた。
「私はとりあえず洗脳された人たちだけでも……あれ?」
そこで、夏芽は異変に気付いた。
時は、少しばかり遡る。
対策局の一階フロア。
一階で一番広いこの場所で、捕虜をひとまとめにされていたのだが。
「おい、お前ら!!」
上に行っていたはずの粗暴な転生者の一人が、まごついていた待機組を怒鳴りつけた。
「上が思いのほか苦戦してやがる、こうなったら女たちも戦線に投入するぞ!!」
「えッ!?」
「お前たちも言う事を聞かせるようにするの手伝え!!」
そう言って、彼は怯える女性局員たちの元へ向かう。
「や、止めて、彼女だけは絶対に何もさせない!!」
そこに、一人の女性局員が魔法抑制装置を付けているドールズハートの前に立った。
「彼女を悪用したら、とんでもないことになる。それだけは!!」
「なんだ、そいつは魔法持ちなのかよ。丁度いいじゃねえかッ!!」
余りにも必死なあまり、余計なことまで言ってしまった局員を洗脳し、横にどかすと彼はぼんやりとしている魔法少女の前に立った。
「なあ、彼女ってもしかして……」
「うん。わかってる……」
その様子を見ていた、居残り組の転生者が何事かを囁き合った後、一人が前に出た。
「……おい、てめぇ、何のつもりだ」
なんと、粗暴な転生者の前に、居残り組の一人が立ちはだかったのだ。
「か、彼女だけは、ダメです!!」
「何言ってんだ、お前!!」
「あ、あなたも聞いたことぐらいあるでしょう!!
あの有名な、ドールズハート事件を!!」
彼らが必死に口にしたのは、その場にいる誰もが知っている惨劇のことだった。
ドールズハート事件。
正式名称は、東京第三中学魔法災害事件。
日本で最大の、魔法災害とされる大事件だった。
教師や全校生徒約五百名が、魔法の発現の際の力の暴走で心を破壊し尽くされた。
犠牲になった彼らは、今や廃校になったその学校で今も歪な学校生活を続けている。
その原因となった彼女は、徹底的にマスコミの餌食になった。
未成年だというのに、その顔写真や名前は出回り、彼女の父親は自ら命を絶った。
彼女の家までマスコミは押しかけ、彼女はインタビューに答えた。
「あの学校じゃあ、誰も心を持ってる人なんていなかった。
だから、お人形さんになっても全然問題ないよね?
私が、私だけが、心を持っていた。だから私はドールズハート。人形たちの中で、唯一心を持ってるの!!」
とっくに壊れていた彼女のその言葉は、日本全国を恐怖に陥れた。
教育委員会は徹底的に叩かれ、再発防止の為に大規模な教育制度の改革を余儀なくされた。
トラウマが魔法を発現させると広まると、報復を恐れて全国的にイジメの件数が圧倒的に鳴りを潜め始めた。
学校は信用ならないと、塾や家庭教師の需要が大幅に拡大されると言った事態も巻き起こった。
彼女の引き起こした惨劇が、停滞していた日本の教育制度を破壊し尽くしたのだ。
彼女の名前は、日本の歴史に足跡を残した。
結果的に、彼女はいじめの被害に遭うはずだった未来の多くの人間を救った。
「だからどうした!!
そいつを使えば、この建物ぐらい簡単の制圧できるんだろうが!!」
「あなたみたいな人にはわからないんだろうけど!!
彼女のおかげで、俺は救われたんだ!! 俺はあの学校の卒業生だったから……あの学校の酷さは良く知ってる!!」
暴力の気配に怯えながら、それでも元ニートの一人は叫んだ。
「あの学校がこの世から消え去って、清々したんだよ!!」
ぼんやりとしているドールズハートが、彼に視線を投げかけた。
「ねえ」
「えッ?」
「あなたはどうして心があるのに、人形でいるの?」
壊れた少女が、彼にそう言った。
「どうして、心の無いお人形の言いなりになってるの?」
くすくす、と可笑しそうに彼女は微笑んでいた。
「う、う、うわああああぁぁ!!」
彼は叫んだ。自らの奥底に錆び付かせた勇気を振り絞り、目の前の暴力に反逆を試みた。
「調子乗んじゃねえ!!」
だが、相手は喧嘩慣れしているのか、あっさりと撃退されてしまった。
「あ、あはは、そうだよね、俺に喧嘩なんて無理だよね」
「手伝ってあげようか?」
「えッ」
その直後だった。
殴り倒された彼が、まるで操り人形のように不自然な立ち上がり方をしたのは。
「なんだ、てめえまだやるの──ッ!?」
逆転は一瞬だった。
身体能力が強化されている転生者ですら反応できない速さで、凄まじい回し蹴りが直撃したのだ。
「え、あれ、俺は、なにを……」
「教官さんから教わった護身術だよ。えへへ、役に立ったね」
何が起こったのか困惑している元ニートに、魔法抑制装置を自力で外して投げ捨てた魔法少女が微笑んだ。
「私の魔法、他人を強化して思い通りに動かせるけど、自分を強化できないから」
「は、はは、すごいや、これが魔法」
あの粗暴な転生者が、あっさりと気絶している。
彼は現時点で最も凶悪とされる彼女の魔法の恐ろしさを思い知った。
「ドールズハートさん、お願いがあるんだ」
そして、彼は意を決して彼女に願い出た。
「いいよ」
彼女はそのお願いの内容を聞く前に、頷いたのだった。
二度目の転生者たちによる暴動は、それからすぐに収束した。
ドールズハートの操る転生者たちが、戦わされている転生者たちを制圧し、暴力で彼らを戦わせていた数名の拘束に成功。
千利たちとの挟み撃ちの結果となり、優勢になったため戦闘は十分も掛からずに終わった。
「くそッ、お前ら、異世界に行きたくないのかよ!!」
拘束された彼らは裏切った転生者たちに恨み節をぶつけていた。
「そりゃあ行きたいさ!! でも、あんな風に誰かの尊厳を奪ってまで行きたいとは思わないよ!!」
ドールズハートに自分を操ってもらうように頼んだ転生者が、そう叫んだ。
それは、多くの転生者の総意だった。
誰かを踏みにじれるほど、彼らは強くなかった。
「さて、本格的にこいつらはどうすべきでしょうか」
こうなっては、なあなあで済ませることはできない。
どのような処罰をするか、千利が頭を悩ませていると。
「やあやあ、諸君。我が女神は実に満足しておいでだ」
空間が歪み、虚空からクリスティーンが魔法を用いて現れたのだ。
「……この騒ぎ、あなたの仕業ですか」
のこのこと現れて来た彼女を、千利が睨みつけた。
「お、おい!! 俺たちはあんたの言われた通りにしたぞ!!」
「こいつらが裏切らなかったら、ちゃんとこの建物を滅茶苦茶にできたんだ!!」
そんなことを言い出す粗暴な転生者に、多くの冷たい視線が刺さった。
「ああ、そうだな。だが安心しろ。
我が女神は、お前たちこそを召すと仰せだ」
「え、本当か!?」
「ああ。それじゃあ、勇者たちよ。
滅びゆく世界を、救ってきてくれ」
そこはかとなく面倒そうに、特に説明もなくクリスティーンは杖を振るった。
それだけで、粗暴な転生者たちは異世界へと送り込まれた。
「あっちの世界を絶賛滅ぼし中の現地の魔王様に、よろしくな」
そのクリスティーンの言葉を聞いていた他の転生者たちはゾッとした。
そう、クリスティーンは一言も、全てが上手くいく世界に送るなんて言ってはいなかった。
「はい、これで今日の私の業務は終わり!!
お疲れ様っしたー。帰ってビール飲も」
普通に帰ろうとしている彼女は、ああ、とふと思い出したように転生者たちに振り返った。
「お前ら、これは善意からの忠告だが。
もう既にお前らは、メアリース様から恩恵を受け取っている。
──これは借金と同じだよ」
彼女は心底同情するように、彼らにそう言った。
「恩恵を事前に借りたんだから、返すのは当たり前だよな?
もし何もせず、何も成せなずに今生を終えたのなら。
お前たちの来世はその負債を延々と返すだけの人生になるだろう。その扱いは家畜以下だ」
彼女は、神に祈ることの残酷さを真剣に説いていた。
「せいぜい、本気で、必死に生きることだ。
女神の期待を裏切るのは、それだけ最悪の事なんだからな」
そう語って、クリスティーンは最初と同じように空間を歪ませて消え去って行った。
「ふう、リーンは無事だったわ。
……なに、この雰囲気は」
そこに、リーンを連れたメイリスが戻ってきて、その沈痛な雰囲気に首を傾げた。
転生者たちの今後は、大きく分かれて二種類に分かれた。
これまでの過去と容姿を全て無くしたことを希望とし、新しい仕事を見つけようとそれぞれの道を歩もうとする者達。
そしてもうひとつ、あの真のイケメンに付いて行くことにした面々。
今回の騒動であの粗暴な連中に巻き込まれた彼らはどちらかと言うと後者だった。
「ハッキリ言って、君たちの境遇は同情に値する。
だが、それは許されるという事と同義ではない」
負債を背負わされ、その事実に怯える
「それでも、私は君たちを助けたいと思っている。償いの機会を与えたいと思う。
そこで、ドールズハート……有栖くんの事だ」
ここで彼女の名前を出され、困惑する彼ら。
「彼女の魔法は、君たちの能力と違って不可逆だ。
つまり、彼女の魔法で洗脳されたら二度と元には戻らない」
主任は脳細胞などが損傷したり等医学的な説明したが、結局は全ては解明できていないと語った。
「君たちはその影響を受けた。彼女の魔法は、一度でもその影響下に晒された者を完全に支配する力だ。
要するに、そのまま君たちを野放しにはできない」
それは事実ではあったが、口実でもあった。
「これはそう言った危険性ゆえに、倫理的にも許されないことでもあった為、選択肢から除外されたが。
彼女の魔法で自衛隊員を強化し戦って貰おう、という話もあった」
ここまで丁寧に話されれば、この話の行く先をなんとなく彼らにも理解できた。
「知っての通り、彼女の魔法は強力だ。
多くの人間を統一化させ、統率して戦わせることが出来る」
何の喧嘩の経験も無い人間も、簡単に戦力に出来てしまう力だった。
「君たちの身体能力を合わせれば、それを最も有効活用できるのは彼女だろう。
だから、彼女の元で我々と共に戦ってほしい。
了承してくれれば、衣食住やそれなりの給料も保証する。断るのなら、彼女に記憶を処理してもらう」
主任は、事実上彼らに選択肢を与えなかった。
それが迷惑を掛けた彼らの罰であり、手を差し伸べられる唯一の手段だった。
「お、俺はやります!!」
あの時、彼女に勇気づけられた一人が声を上げた。
「俺も、あの子の為なら戦える!!」
「他に何も道は無いし、やるしかないか」
他の面々も、最終的にはその提案に同意した。
「じゃあ、皆。よろしくね」
その様子を見ていたドールズハート……有栖は静かに微笑んでいた。
こうして、リクルート隊とは別の転生者たちだけの部隊“親衛隊”が結成されるのであった。
転生者たちを魔法少女の肉壁や兵隊として活用する為の話に何話も掛ってしまった。
これからもっと余計なところをバッサリカットしたいところ。みんな女の子が活躍してるのを見たいんだよ!!
とりあえず、次回はアンケートの結果を反映し執筆したいと思います。
それではまた、次回!!
次にやってほしい内容は?
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魔法少女たちの日常
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四天王たちの色々
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夏芽の訓練風景