バッドガールズ・ダークサイド   作:やーなん

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魔王軍、難易度上昇中

 

 

 この世に存在する悪と言うモノに、水無瀬は怒りと憎悪を抱いていた。

 

 それは戦いの道を選ぶ切っ掛けであったし、人生の岐路でもあった。

 人体に存在する魔力が活性化した人間は、非活性状態の人間よりずっと五感が優れてしまう。

 

「おい、話が違うぞ!?」

 だから、通学の最中に人気のない道から聞こえた切羽詰まった声が聞こえてしまった。

 

「相場が上がったんだよ、グラムで三十万だ」

「ふ、ふざけやがって!! そんな値段聞いたことも無い!?」

「買わないなら失せな」

 水無瀬は直感した。

 薬物の売人とその客である、と。

 

 しかし、持ち前の正義感から彼女がそこに踏み入れようとした直前に、異変が起こった。

 

 無数の羽音が、空から鳴り響いたのだ。

 

「うわッ、くそッ、また来やがった!!」

「な、なんだ、く、来るな!?」

 薬物の幻覚症状には、全身に虫が群がっている光景を目にするというが、この状態はまさにそれに近かった。

 空から無数に、虫の群れが飛んできたのだ。

 

 薬物の売人の手にしていた、白い粉が地面に落ちる。

 虫たちは、狙ったかのようにビニールで包装された薬物に群がり、ビニール袋ごと貪って去って行った。

 

「くそッ、くそッ、クソ虫ども、ふざけやがって!!」

 売人の手に残ったのは、たった一袋の薬物だけだった。

 彼は懸命に殺虫スプレーで抵抗したが、何の意味も持たなかった。

 

「そ、それを寄越せぇ!?」

「ふざけんじゃねぇ、これは俺の分だ!?」

 薬物をめぐり争う、醜悪な光景がそこにあった。

 

「ふん」

 一部始終を見ていた水無瀬は魔法の炎で男たちの奪い合う薬物を爆破し、二人の足を焼いてから去った。

 苦悶に悶える売人と客に、警察がやってくるのはすぐ後のことであった。

 

 

 

 §§§

 

 

「なんであんたが居るの?」

 学校の授業の時間、その女が現れたことに水無瀬だけでなくクラスの全員が驚いた。

 

「それがよ、四天王の仕事は今謹慎中なんだわ」

 この世の者ではない女、魔王四天王。

 “悪逆”のクリスティーンが教室の壇上に上がったのだ。

 

「うちの教団だと、神官ってのは教師も兼ねるんだわ。

 至高なる文明の女神メアリース様は、特に教師の質には拘る御方でな。

 性格、実績、来歴、全てを兼ね備えた人間にしか神官には成れないんだわな」

「じゃあ性格の時点であんたは落第じゃん」

「私の師匠な、教団のほぼ最高位の大神官。オレはその弟子」

「所詮、世の中コネか」

 水無瀬はクラスの皆の目の前だというのにそう吐き捨てた。

 

「お前らラッキーだぜ、このオレに教わるとか一生の経験だからな。

 まあ、人手が足らないからって謹慎中なのに引っ張り出されたから何も用意してないが」

 そして、何かの冗談なのか。

 

「んじゃ、道徳の授業を始めるか」

 この女の受け持つ担当の授業は、道徳の授業だった。

 

「で、何を教えてほしいよ?」

 その上、授業内容は生徒に丸投げだった。

 生徒たちが、ホントに大丈夫かこの人は、と思い始めた頃。

 

「じゃあ教えてください。あなた達四天王は魔王の下で好き勝手してるけど、それは神様に罰せられないんですか?」

「オレ、今謹慎中だって言ったじゃん」

 水無瀬の揶揄するような物言いに、クリスティーンも嫌そうにそう言った。

 

「まあ、オレらは仕事の範囲なら好き勝手していいって免罪符でやらせてもらってるわけだわな。

 人殺しが罪なら処刑人の仕事も罪になっちまうだろう?」

 そう答えてから、ふむ、とクリスティーンは顎に手を当てた。

 

「んじゃあ、過激で有名な海外の魔王様の配下がどこまで許されているか考えてみようぜ」

 これはまさしく道徳の授業である、と彼女は思った。

 クリスティーンは手首に身に着けていた腕輪型の機械を弄った。

 

 その機械は、プロジェクターみたいに黒板に映像を映し出す。

 

 

『どうも、皆さん』

 映像に現れたその姿を、知っている者も多くいた。

 

『僕は魔王四天王、中東地域担当の……恐れ多くもアバドンと名乗らせてもらってる者です』

 浅黒い肌をした、十歳くらいの少年が白い海の上でそう名乗った。

 

 

魔王四天王 中東担当 『邪悪の申し子』

“塩王” アバドン

 

 

「これから僕は、人類に宣言致します。

 この世界から──薬物を消し去る、と」

 少年は大仰に両手を広げながら、そのように言い放つ。

 

 そこで、水無瀬は気づいた。

 彼が立っている白い海が、蠢いて(・・・)いることに。

 そして何よりも、ついさっき、実物を見た。

 

「あ、忘れてた。虫がダメな奴は目を逸らしてた方が良いぜ」

 クリスティーンが言うが早いか。

 

「きゃあ~!!」

 クラスの女子たちが、悲鳴を上げた。

 それもそうだろう。映像の少年の足元には、見渡す限りの白い──バッタの群れが存在しているのだから。

 

『この子たちを紹介しよう。

 これは塩蝗って言って、僕が神様から授けられた生物兵器だ』

 そう言って、アバドンは手のひらを差し向けると、その上に一匹のバッタが乗った。

 

『こいつらは、何でも食べる。そして純度100%の塩を分泌するんだ。

 素晴らしいと思わないかい? この子たちはこの汚らしい世界を綺麗な塩に変えてくれるんだ』

 少年は、嗤っていた。

 とても子供が浮かべるような、純粋とは程遠い邪悪な笑みだった。

 

『僕の住んでいた地域はね、大麻の栽培やらなにやらの利権争いで戦火に巻き込まれた。

 父親は薬物中毒者で、母さんや僕、そして兄弟たちをいつも殴っていた』

 悲惨な過去を語る彼は、しかし穏やかだった。

 

『両親が亡くなり、まともな水も飲めない、ご飯も無い僕らの前に、魔王様が現れて言った。

 この子らを使って、この世界に破壊と混乱、そして恐怖を齎せ、と』

 少年は画面の外に顔を向ける。

 そこには、戦闘員の格好をした、彼と大して変わらない背格好の人々が居た。

 

『──だから、僕はこの世界から薬物を消すことにした。

 それで利益を上げている国家も、組織も、この世から跡形も無く。

 神話曰く、芥子は人の痛みを癒すべく神が与えたモノだそうだ。

 じゃあ、至高なる文明の女神に、それを返すのは当たり前だよね?』

 そう、薬物とは鎮痛剤としての側面がある。

 人類の歴史とは、薬物の歴史と言っても過言ではない。

 

 この少年は、その歴史や文化を消し去ろうと言っているのだ。

 

『だから薬物の常習者の皆さん。これからは苦しみながら、薬物の無い世界を生きてください』

 その光景を想像しているのか、少年は愉快そうに笑っている。

 

『ああついでに、この争いの絶えないこの周辺地域に平和を齎そうか』

 本当に、もののついでのように彼は言った。

 

『いいこと考えたんだ!! 

 どうして大人たちは争い合って、殺し合うのかって!! 

 それは、思想の違いが有るからだ。在りもしない神様を崇めて、好き勝手な事ばかり言っているバカな大人が居るからさ!! 

 ──なあ、そうだろう!!』

 少年がまた、画面外の別の方向を向いた。

 カメラがそちらに向けられると、そこには磔にされた男たち猿轡をされて呻いていた。

 

『ほら、お前たちが大好きな言葉を言ってみろよ!! 

 お前たちの実在しない神じゃなくて、ホンモノの至高の女神を偉大なりと言え!!』

 少年が磔の土台を蹴りながら、恐怖で震えている大人たちを罵倒する。

 

『くくッ、ねえ、どんな気持ち? 

 自分たちが大事にしていた歴史が、文化がさ、僕みたいな子供に全部全部台無しにされちゃうのって!! 

 あははははは、お前たち大人が後生大事にしていたのは、無意味で愚かな人殺しの罪科だけだってことだね!! 

 かわいそう、本当に可哀そう!! お前たちも、その祖先も、全部無価値なんだ!!』

 純粋で幼く、無垢なる邪悪が、そこにはあった。

 

『神話曰く、神様は災いとしてバッタを遣わした。

 ならば、僕は、神に成り代わり愚かな人類に罰を下そう』

 少年アバドン──蝗害を齎す奈落の王を冠した彼は、手を振り上げ、下ろした。

 

 無数のバッタが、磔にされた大人たちの体に上って行く。

 そして、その姿が虫に隠れて、見えなくなった。

 その下からは、おぞましいくぐもった悲鳴と苦痛に満ちた呻き声が聞こえる。

 

 バッタたちが去ると、そこには磔に使われていた土台さえも、消えてなくなっていた。

 血の一滴も、大人たちが居た形跡は確認できなかった。

 

『ああでも、病気の人とか居るから、少しだけ薬物は残してあげる。

 頑張って、争い合って奪い合ってください。あははは!!』

 少年はひとしきり笑った後、真顔になってこう言った。

 

『この子らを制御しているのは、僕だ。

 彼らは儚い生き物だから、僕が死んじゃうと全滅しちゃうんだ』

 アバドンはゆっくりと、自分の頭を指差した。

 

『つまり、この子らを止めたければ、僕を殺すしかない』

 それは彼の、魔王四天王としての挑戦状だった。

 

『この地球は、虫の星と言われているんだよね。

 じゃあ君たち人間の大人が、人類の歴史とやらが、虫に劣る存在だって認めたくないなら頑張りなよ』

 白い海が、一斉に飛び立つ。

 

 バッタは、風に乗って一日に150キロも移動すると言われている。

 奈落の王の意を受けて、白いバッタたちが世界を貪ろうと飛び立った。

 

 ……映像は、そこで終わっていた。

 

 

「これが、確か先週だったか? 

 日本じゃああまり実感は無いだろうが、ヨーロッパ辺りじゃ連合を組んでアバドンと戦うみたいだな」

 凄惨な処刑を見せられた生徒たちは黙り込み、クリスティーンは退屈そうに解説した。

 

「人類か、虫か。優占種を決める戦い……熱いねぇ。

 だがまあ、結果は決まり切ってるだろうな。普通のバッタが起こす蝗害でさえ、人類は後手に回ってるくらいなんだから」

 或いは、今の映像は世界の終りの始まりの光景だったのかもしれない。

 

「これが今一番イケイケの四天王だな。

 ──なあ、水無瀬。お前はあいつと戦えるか?」

「戦いますよ。躊躇う理由なんてありますか?」

 水無瀬は即答した。

 クリスティーンは意地悪く笑って、そうかそうか、と頷いた。

 

「悪は悪。それ以上でもそれ以下でもない」

 あの少年は悪の道を選んだ。水無瀬にとって、ただそれだけのことだった。

 

「若いお前らにはわからないだろうが、善人が悪いことをするのも、悪党が善いことをするのも矛盾しないんだわ。

 お前がどのように折り合いを付けるか、今から楽しみだな」

「先生だって若いじゃないですか」

「……ああ、そうだったな」

 クリスティーンはどこかぼんやりとした物言いで頷いた。

 

「さて、次はこいつにするか」

 次に彼女が黒板に映したのも、また有名所の相手だった。

 

 

 

『アメリカ国民の皆さん、今日は記念すべき日です。

 なぜなら皆さんは全員、奴隷になるのですから』

 破壊された、奴隷解放を謳った偉大な大統領の像を背に、その男は宣言した。

 

 彼は外見は白人に近いが、クリスティーン同様に地球上のどの人種にも該当しない人間だった。

 

魔王四天王 アメリカ担当 『思想家』

“悪平等”のオリバー

 

 

『我が神は、あなた達に自由意思をお与えになられた。

 しかし、あなた達が自由を得て、何をしましたか?』

 柔らかな物腰のその男は、しかしギラギラとした眼光をしていた。

 

『自由と言う言葉は、甘い毒です。

 自由の為に、いったいどれだけの血が流れましたか? 

 そして獲得した自由に、いったいどれだけの価値がありましたか? 

 所詮、自由とは幻想。箱庭の中で許された行為を真の自由と言えるでしょうか』

 オリバーの背後には、多くの黒タイツの戦闘員が控えていた。

 戦闘員たちが、彼の言葉に呼応し叫ぶ。

 

『差別のある自由より、平等な不自由を!!』

『嘘と殺戮の神より、真なる神の統治をッ!!』

『人類はみな、神の従僕となるのだッ!!』

 口々に彼らは叫ぶ。

 オリバーが手を挙げると、彼らの主張は止まった。

 

『自由とは、数の限られたまやかし。

 そもそも最初から不自由なのが人間ならば、今更奴隷になっても同じでしょう』

 オリバーは手を差し向け、宣言した。

 

『あなた達から思想を取り上げます。信仰も取り上げます。選挙権も要らないでしょうね。職業も適性を見て振り分けます。

 尊厳も奪います、誇りも歴史も文化も差別も不平等も何もかも』

 オリバーが指を鳴らす。

 すると、戦闘員が縄で縛られ、猿轡をされた人間を引きずって来た。

 

 その男は、外見からして警察官に見えた。

 助けを求めようと、必死に呻いていた。

 

『彼は先日、職務中に黒人男性と揉めた際に拳銃で相手を撃ち殺した。

 さて、皆さん。彼に相応しい罰とは何か?』

 オリバーの呼びかけに、戦闘員たちが顔のマスクを取った。

 多くは黒人、かつて奴隷だった過去の有る民族の人間ばかりだった。

 

『死には死を!!』

『殺せ、殺せッ!!』

『ふさわしい罰をッ!!』

 今にも囲まれて暴行にでも遭いそうな状況に、警察官は震えていた。

 

『皆さん、落ち着きましょう』

 しかし、そんな彼らをオリバーは諫めた。

 

『殺生はいけません。彼はもう、神の奴隷。

 我らが神の所有物、資産なのですから』

 その言葉に、彼らは静まった。

 もう彼らは何も怖いものなど無い。なぜなら、自分たちを保護してくれる本物の神が存在するのだから。

 

『彼に相応しいのは罰では無く、──家畜の烙印ですよ』

 オリバーは近未来的なデザインのライフルみたいな銃を引っ張り出し、地面で醜く芋虫のようにもがく警察官にその銃口を向けた。

 彼がその銃口を引くと、眩い光線が放射状に発射され、警察官を照らした。

 

『むぐ、むぐぅぅぅ!?』

 彼に起こった変化は、劇的でわかりやすかった。

 なんと彼の肌の色が、白と黒、それこそシマウマのようにマーブル状になったのだ。

 

『これは遺伝子変質装置。

 肌の色で差別が起こるのなら、全員が同じ色に成ればいい』

 イカレた発想だった。オリバーは嗤っている。

 別世界出身の彼は、肌の色なんかに拘泥している下等な人類を嘲笑っていた。

 

『全員が家畜のように管理され、家畜のように丁寧に育てられ、製品を生産する。

 そこに差別など無く、飢えも病の苦しみも無い。スケジュール管理された工場で働き、適度な休息を与えられ、寿命を迎えて死ぬ。

 それがあなた達全員の、これからの人生設計です』

 それはまさに資産運用。

 数字で管理され、数字でのみ表記される、家畜の扱いだった。

 

 彼らの未来は、完全なるディストピアの悪平等。

 狂った機械が治めるテーブルトークRPGの舞台のような、種の終焉だった。

 

『口だけで行動に移さない者。集団に紛れて何かしている気になっている者。

 いずれも我が神はお嫌いです。片っ端から、この装置で思い知らせてやりなさい。

 自分たちが、いかに惨めな生き物になるのかと、ね』

 彼の持っていた遺伝子変質装置が、戦闘員たちに次々と配備される。

 

『さあ、自由の国アメリカは今日で終わりだ。

 不自由と平等の生産工場アメリカ区画の始まりですよ』

 オリバーの言葉が終わると、戦闘員たちが散らばって行く。

 そこらかしこから、悲鳴が起き始める。

 

 それで、その映像は途切れていた。

 

 

「これも、何日か前だったか? 

 オリバーの奴はオレと同期でな。やな奴だがやり手だ。

 それにしても、これがメアリース様の指示か。明らかに難易度を上げてやがる」

 クリスティーンは改めて同僚たちを見て思った。

 これ、勝ち目有るのか、と。たとえ魔王がこの世界から撤退しても、後に残るのは凄惨な状況だけだろう。

 

「な? これに比べたら日本の四天王はヌルイと思わないか?」

 なぜか彼女は生徒たちに同意を求めるかのようにそう言った。

 

「お前らも、オリバーのところの奴らみたいに、全員の扱いが悪くなれば平等だって思考停止するんじゃなくて、向上心を持って勉学に励めよ。

 我らが主上は必ず、その向上心を評価してくれる」

 と、最後にそんな教師っぽいことも忘れず言っておくクリスティーンだった。

 

「えーと他には、中国担当とかも絶好調だが、これは教育に悪いな。パス」

「……先生は聞いていないんですか?」

「あん?」

「日本の四天王の、難易度上昇を」

 自分で言ってゲームみたいだ、と水無瀬は思った。

 だからこそ、本当にゲーム感覚で人間を弄んでいる文明の女神に怒りが湧いてくる。

 

「うーん、聞いてないな。

 オレが謹慎になったってことで、別の穴埋め要員が派遣されるだろうが」

 この時、こう答えたクリスティーンは想像もしていなかった。

 まさか自分の代打が、知り合いであるという事に。

 そして、謹慎の筈の彼女の立場が、予想外の方向に転がり始めるという事も。

 

 

 

 §§§

 

 

「……今のは、冗談ですか?」

「私がそんなこと言うと思う?」

 

 地球より遥か上、雲よりも高く、宇宙よりも上の次元。

 実体を持たない神々の座する領域。

 

 そこで、文明の女神と邪悪の女神が業務に勤しんでいた。

 

「あなたは今、あの(・・)リーパー隊*1を日本に送ると言ったんですよ」

「戦争の無い国に、あの戦争しか能の無い男を送り込む。

 最高に皮肉だと思わない?」

「…………はあ」

 邪悪の女神リェーサセッタは溜息を吐いた。

 

「これは試練ですよ。あの、私があらゆる世界から集めたクズの中のクズの、殺すことしか頭に無い殺人鬼どもを解き放つのは、今回の趣旨から外れます」

「それを制御するのが、あの男の役目よ。

 大丈夫でしょ、実績はあるし」

「…………はあ」

 彼女は盟友の物言いに、もう一度溜息を吐いた。

 

 彼女の盟友は完璧主義者のくせに、人間の頃から大分大雑把なところがあった。

 それで何度も失敗しているのに、改めない。神は不変故に、もう改めることもできない。

 

「殺戮が目的ではないのは分かっているわ。

 でも、私にすら勝ち切ることを許さなかったあの男を、あの小娘がどう対処するか見て見みたくなったのよ」

「フェアリーサマーですか」

「ええ」

 二柱は、夏芽の存在に注目していた。

 彼女ほどの英傑は、この二柱からしてもなかなかにお目に掛かれない。

 

 そして英雄に試練と苦難を与えるのは、女神のサガみたいなものであった。

 

「……分かった、彼を貸しましょう」

「じゃあ、そう言うことで手続きをしておくわ」

 この二柱の今の感情を、人間に説明するのは難しい。

 

 神とは、偉業を成して至る存在だ。

 この二柱もそうして、神の座に至った口だった。

 

 だが人間が神の領域に至るのは、また別の方法がある。

 その両方の条件を満たす夏芽と言う存在に、この二柱は興味を持っているのであった。

 

「そう言う事だ、子細は現地の魔王の指示に従え」

 女神の視線は天啓となり、待機していた相手に伝わった。

 

「はッ、全ては我が主上の御心のままに」

 軍服を着た犬人間──コボルト族の男は膝を突いて深々と頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

*1
拙作『ラウンドテーブル』にも登場する懲罰部隊。地獄に墜とす価値も無い連中で構成される。今作には怪人役として登場を予定。




と言うわけで、海外の魔王四天王の動向でした。
ついでに、魔法少女と言えば怪人!! え、それはライダーとか戦隊ものだろうって?
細かいことは気にしない。連中は次回が終わってから、三章から登場する予定です。

次回はアンケートのとおり、魔王ハーレの独白となります。
ちなみに、本当なら中国の四天王も書こうと思ったんですが、というか当初は四人分出すつもりだったんですが、長くなったので割愛。
中国担当はそのうち登場しますので、お楽しみに!!

では、また次回!!

次回はどんなお話が良い?

  • 魔王ハーレ―の回顧
  • 夏芽のガチバトル
  • 四天王の掘り下げ
  • 海外の四天王の動向
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