バッドガールズ・ダークサイド   作:やーなん

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幕間 女神の遊戯

 

 

 

「くっそ、何なんだよあいつら」

 魔王四天王、アウトサイダーこと和夜は謁見の間の出来事から逃れるように自室に戻っていた。

 

「ハーレの奴も、何を考えてるんだ!! 

 あんな連中を使うなんて!!」

 だん、と壁に拳を叩きつけ、彼は叫んだ。

 

「僕はあんな連中と一緒にされるのなんて嫌だぞ!!」

「じゃあ、消しちゃえばいいじゃないですか?」

 囁くような声。

 和夜は即座に身を翻した。

 

 ──そこには、悪戯っぽく笑う少女が居た。

 

 見た目は、十代半ばの少女。

 黒いローブにとんがり帽子、アニメか何かの魔女っ娘にしか見えない彼女。

 短い黒髪にひと房だけ入れた緑色のメッシュを撫でながら、少女は笑っていた。

 

 だが、和夜は知っていた。

 この自分と同じ日本人にしか見えない少女が、ヒトの理解を超越した超常の存在だという事を。

 

「いきなり何さ、今日はお勉強の時間じゃないだろ」

 そこに居るのに存在感は無く、しかし彼女からはある種の未知の圧力を感じられる。

 だが、和夜にとっては慣れたものだった。

 

「いえいえ。だって和夜くん、すごく荒れていましたから。

 この私、超絶美少女スーパーウルトラ救世女神たるアンズちゃんが慰めてあげようかなって」

「その馬鹿みたいな肩書、毎回変わってるよね」

 ツッコミもそこそこ、余計なお世話だよ、と彼は吐き捨てた。

 

 そう、彼の前に現れたのは女神。

 今この地球の管理者たる二柱とは全く別口の、されど彼に力を授けた者だった。

 

「私が与えた魔法の力、好きに使って良いって言ったのに。

 和夜くんったら全然使わないんだもん。チートですよ、チート!! 

 拡大解釈し放題の、無限大の使い道があるマジックパゥワー!! 

 なのに現地人をイジメるくらいしか使わないなんて」

 女神は腰に手を当てて、ぷんすか、と頬を膨らませていた。

 その仕草に、和夜はイラっとした。

 

「みみっちいって言いたいのかよ」

「ま、好きに使えと言った手前、これ以上何も言いませんけど」

 彼女は和夜のベッドに腰かけ、眠たそうに欠伸をした。

 

「気に入らないのなら、壊しちゃえばいいのに。

 ムカついたのなら、消しちゃうことぐらいわけないのに」

「僕が貰って、自分の物にした力だ。

 あんたの指図を受けるつもりは無いからな」

「でも、あいつらは目に余るでしょう?」

 幼げな顔立ちの少女が、純粋に不思議そうに彼に視線を向けた。

 

「私のお気に入りのクリスちゃんと一緒に、あいつらを見てたことがあるんですけどあんな腐り切った連中なかなか居ないですよ。

 私も神様人生長い方ですけど、あんなクソ外道どもよく集めたって感じで」

 そのような物言いをする割には、彼女は笑いをこらえるように口元に手を当てていた。

 

「地上の人間は大嫌い、でも自分で手を下す度胸は無い。

 だけどあの連中は? どれだけ痛めつけても、まったく心が痛まない連中ですよ」

「……僕は、あんたの思い通りにはならない」

「あっそ、つまんなーい」

 和夜の答えに、彼女は伸びをしてごろりとベッドに転がった。

 

「ホント……いい加減にしてくれよ」

 この自由な女神に、和夜はこのように何度も嗾けられている。

 流石に彼もうんざりなのだ。

 

「僕に自由に魔法を使って良いと言うなら、僕に余計な干渉をしないでくれよ」

「うーん、素質はある筈なんだけどなぁ

 まあ、別にどうでもいいか。そこまで期待してたわけじゃないし」

 女神は特に隠そうとする素振りも無く、あっけらかんとそう言った。

 

「あのさ、僕に何をさせたかったの?」

「え、嫌がらせ」

「嫌がらせ? 誰に?」

「あの至高(爆笑)の女神ですよ」

「え、メアリース様に!?」

 これには流石に、和夜もギョッとした。

 

「あなたの口から、あの女を“様”なんて付けて呼んでほしくなかったなー」

「一体なんで、僕に嫌がらせなんてさせようと」

「大嫌いだから。それ以上の理由なんて必要ですか?」

「…………」

 彼はここに来て初めて、自分の造物主と自分に力を与えた女神の確執があることを知ったのだ。

 

「あなたを嗾けたら、この世界を滅茶苦茶にしてくれると思ったのにー」

「僕ってそんな風に思われてたの? 

 っていうか、一体なんでそんなに嫌ってるのさ」

 不満げに和夜が言うと、ベッドに転がったままの女神が備え付けのテレビを指差す。

 

 すると、テレビが独りでに点いた。

 

「うッ」

 そこに映された光景を見て、和夜は思わず呻いた。

 

 そこは、薄暗い地下室のような場所だった。

 中心には手術台のようなモノがあり、そこに縛り付けられている者が居た。

 

「これはまだ私たちがただの人間だった頃のことです」

 それは、その女神だった。

 

『んん~、んん~!!』

 テレビの中の彼女は、布で口を覆われ両手足を鎖で繋がれていた。

 

『メリス、本気なの?』

『もう後戻りはできないわよ』

 そして、その手術台の左右には二人の女性が居た。

 一人は彼にも見覚えがある。忘れようも無い、自らの造物主の顔だ。

 

 その造物主の人間だった頃の名前を呼ぶのは、この世界の管理者の片割れ。

 かつて、人間だった頃の邪悪の女神だった。

 

『私はあらゆる人間より優れた才能を持って産まれた。

 産まれてすぐ魔導を会得するべく育てられ、そして超える者無き実力を得た』

『そうでしょうね』

『なのにこの子は、“あの御方”に見出されただけで平凡な市井の出のくせに、十四才からたった三年で私に匹敵しえる才覚を示した!!』

 それは、嫉妬に近かった。

 魔法の才能は、幼少期の頃であればあるほど効率よく育てられるという。

 十四才という年齢は、遅すぎるというほどでもないが、早くも無かった。

 

 かの造物主は、産まれは貴族。魔法の才能は自他共に認める世界一。

 産まれた時から天才として育てられ、その通りに生きた人間だった。

 

 だが、そこに縛り付けられた少女は、その天才を生み出した育成論の全てを否定しうる存在だった。

 嫉妬では、あった。

 だが、好奇心もあった。

 

『いったいどうなっているか、一度バラバラにして見てみたかったの!!』

 彼女の顔は、好奇心が抑えきれないと言ったような喜悦に満ちた表情だった。

 嫉妬よりも何よりも、知識欲こそ彼女の原動力だった。

 

『……骨は拾ってあげますよ』

『周囲は数万の我が同位体が完全武装で待機してるわ。

 それだけじゃなく、我が錬金術の粋を集めて要塞化したこの工房!! 

 この機会の為だけに入念に準備したのよ!! 

 たとえ、あの御方でも──―』

 それはフラグだろ、と和夜は思った。

 そして、それは現実のモノになった。

 

 いっそ清々しいほど冗談みたいに、轟音と共に薄暗い部屋の天井が消し飛んだのだ。

 

『やあ、■■。面白い格好だね』

 そしてその場に現れた人物に、和夜は猛烈な既視感を抱いた。

 

 彼は、少年だった。

 東洋人に近いが、地球上のどの人種にも該当しない人間だった。

 

『んん!! んん!!』

『ははは、何言ってるのか分かんない!!』

 少年は、縛り付けられている少女の有様を見て笑っていた。

 

 だが、異様なのはその両者の姿では無かった。

 

『……』

『……ッ』

 恐怖していた。

 後に強大無比な権能を振るう女神の二人が、目の前の少年に恐れ、震え、心が屈していた。

 

『──さて』

 少年の視線が、少女を誘拐し監禁した下手人に向けられる。

 映像を見ているに過ぎない和夜でさえ、口の中が渇いてしまうようなプレッシャーがそこにはあった。

 

『死ね』

 死んだ。

 

『死ね』

 殺された。

 

『死ね』

 そうなった。

 

『死ね』

 その言葉が絶対だった。

 

『死んで僕に詫びろ』

 それは、暴君の命令だった。

 

 何が起こっているのか、何が起きているのか、和夜には理解できなかった。

 ただ、まだ人間に過ぎなかった頃の自分の造物主が、一秒ごとに惨殺されていることだけは分かった。

 チートだと言われて与えられた自分の魔法が児戯に過ぎないと、和夜は悟った。

 

『確かお前、同位体全部と命を共有してるんだっけ? 

 じゃあ外に寝かせておいた数万体分殺せるわけだ』

 殺した、死んだ、殺された、死んだ、殺した殺した、死んだ死んだ、殺された、死んだ、潰され、焼かれ、爆散した、破裂した、切り刻まれた、弾けた、串刺しになった、感電死した、窒息死した、轢死した、縊死した、人間が想像できる限りの全ての死に方をした。

 

『おい』

 今もまさに、殺され続けている女に、暴君は命ずる。

 

『僕は詫びろと言ったぞ、聞こえなかったのかい?』

 柔和な少年の顔が、かえっておぞましかった。

 

『“暴君”ッ……』

 盟友が惨殺され続けている有様を、目の前で見ることしかできない当時のリェーサセッタは呟く。

 人の身で神の如く恐れられた、暴虐の化身にして魔術師の頂点、その異名を。

 

『し、師匠……もうやめてください』

 手術台から解放された少女が、目の前の惨劇の恐怖から雑巾から絞り出したかのような声で呟いた。

 

『か、帰りましょう』

 青褪めた少女が、彼に懇願した。

 たったそれだけが、如何なる偉業なのか語るまでも無い。

 

『うん? じゃあもういいや』

 少年は、そのたった一言でボロ雑巾同然になった女から興味を失った。ここまでされてなお、99.9割殺しに留められていた。

 彼にとって、全ての才能に愛された天才はその程度の存在だった。

 その横に居る天才の片割れに、興味も示さなかった。

 

「きゃー、マイダーリンかっこいー!!」

 そして、当時の自分が助け出される光景を見て真逆の反応をしている元少女が居た。

 

「とまあ、そんなこんなで私、この時のことを根に持ってるんです」

「それ以上に衝撃的な光景があったんですけど……」

 ツッコミどころしかない女神の態度に、和夜はもう一度テレビに視線を向けた。

 

「──―ッ!?」

 そして、“暴君”と目が合った。

 

 見られた、認識された、確認された。

 暴かれた、晒された、分析された。

 開かれた、閉じられた。元通りにされた。

 

 映像の中の少年が、口を開く。

 

『あの憐れなバカ女が、僕と同じ魂の人間を消して回ってるのは知ってた。

 これでも感謝してるんだ。お前のような見るに堪えない僕の同位体を見なくて済むからね』

 見られる、認識される、ただそれだけが人間には耐えられない。

 魂をごちゃまぜにしてかき混ぜられるような、氾濫した大河が逆流するような、そんな暴虐そのものだった。

 

「ししょー、イジメちゃダメですよ」

『ふん、君も早く帰ってこいよ』

 映像が、途切れる。

 最初と同じように、何も映さなくなった。

 

「あうッ、あうッ、あうッ」

 体が痙攣し、陸に打ち上げられた魚のようにビクンビクンと和夜は悶えるしかなかった。

 

「ぷぷぷ、どうして貴方が魔王に対峙してあの時無事だったか、これで分かったでしょう? 

 あの時あの女、私のダーリンにビビってたんですよ!! 

 あなたを殺したらあの人を怒らせるんじゃないかってッ!!」

 何とかまとまり始めた思考で、そりゃあそうだろう、と和夜は思った。

 格が違うどころの話では無かった。

 

「あなたも頑張ればこの頃のあの人ぐらい行けるはずなんで、そうなったらあの女ももっとビビり散らかすかと思って楽しみにしてたんだけどなー」

「冗談じゃない……」

 自分たちの造物主は、映像の中の“暴君”を才能面で上回っていた。

 ではなぜ、彼女は塵芥のように踏みにじられたのか? 

 

 それは単純に、あの少年が見た目通りの年齢ではないからだ。

 

「僕があの領域にたどり着くまで、一体どれだけ掛かると思ってるんだ」

「確か、この当時の師匠は三千歳ぐらいだったらしいですよ」

「さんぜん……」

 それを聞いて、和夜は頭が可笑しくなりそうだった。

 

「だからあの女、自分より先に産まれただけのくせにって目の敵にしてるんですよ。

 ぷぷぷ、神域にたどり着いても、ちっとも相手にされてないのにね!!」

「とにかく、僕はあんたの思惑には乗らないからね」

 心底付き合ってられない、と和夜は吐き捨てた。

 

「だから好きにして良いって言ってるじゃないですか。

 貴方に魔法の指導をしてるのも、所詮退屈しのぎですし」

 欠伸をしながら、女神の少女はそう言った。

 

「私はもうちょっと、この世界を観察して暇潰しするんで。

 私が手を差し伸べる余地のある人も、リューちゃんが全部潰してるし」

 そして、ベッドから重みが消える。

 彼女が存在した痕跡は、一つも無くなった。

 

「ホント、迷惑な女神だよ」

 和夜は未だに恐怖の名残の動機が収まらない胸を押さえてぼやいた。

 

 

 

 §§§

 

 

「うーん、どれどれ」

 この世のどこでもない場所。

 そこにポツンと浮かぶ、四角い箱。

 その内側は、映画館のシアターそのものだった。

 

 無数に並んだ椅子と、巨大なスクリーン。

 その中心に、ポップコーン片手に座っているのは幼い女神が一柱。

 

「最初は、これにしよう。えい」

 彼女はどこからともなく取り出した、テレビのリモコンのボタンを押した。

 すると、何も映していなかったスクリーンに映像が映し出される。

 それは今地球上で起こっていることだった。

 

 

 

「さあ、行け」

 中東担当の四天王、アバドンの命令によって、無数のバッタが飛来する。

 

 ここは中東のとある貧困地域。

 そしてバッタたちが食らうのは、敵でも薬物でもなかった。

 

 彼の目の前にあったのは、巨大なゴミの山だ。

 車や電化製品のゴミが、山積みとなり毒ガスさえ発生している。

 この周辺の住人、特に身寄りのない子供たちの収入は、もっぱらこのゴミの山から使えるパーツを引っこ抜いて売ることだった。

 彼らは毎日、毒ガスが発生するこの場所に通い、命を危険に晒しながら日銭を稼いでいる。

 

 そんなゴミ山が、今まさにバッタたちによって食い尽くされようとしていた。

 その様子を、アバドンの後ろで子供たちが不安そうに見ていた。

 

 そしてゴミ山は瞬く間に塩の山へと姿を変えた。

 

「さあみんな、今日から好きなだけ塩を取っていいよ」

 少年アバドンの言葉に、子供たちは大喜びで塩の山に向かっていく。

 

「さて、次はどこにしようか」

 こういう場所は、この地域に幾らでもある。

 ゆくゆくは海岸線のプラスチックごみも掃除しようと、彼は思っていた。

 

「みんな、戦闘員を残しておくから、大人たちが塩を独占しようとしたら言うんだよ。

 僕がそいつらをやっつけてあげるから」

 はーい、とアバドンの言葉に、子供たちが応じた。

 

「おーい、戦闘地域はどうなってるの?」

 彼は戦闘員を呼んで、尋ねた。

 

「はッ、アバドン様の御力により、どの陣営も武器や兵器を喪失。

 各地にある大麻畑も食い尽くされ、利権も消失。

 戦場を飛び交う塩蝗によって、撤退を余儀なくされています」

 勿論、それだけではない。

 塩蝗の群は、宗教的な建物や文化的遺産を塩の山へと変えている。

 民族間や、宗教的理由の紛争の理由を、物理的に消し去って行っている。

 

 塩の山となった自分たちの誇りを見て、彼らは崩れ落ちる他なかった。

 

「そうかい、僕の担当地域が平定し終えたら、イギリスやインド、中国にも塩蝗を飛ばそう」

「あ、アバドン様、流石にそれは担当地域の四天王が黙ってないかと!?」

 戦闘員が少年の思い描く絵図に、異論を挟んだが。

 彼が口にした地域にも、既に担当の四天王が猛威を振るっている。それを邪魔するのは、仲間割れを引き起こすと考えたのだ。

 

「なら、そいつらも塩にしてやるだけだよ。

 この大陸が終わったら、アメリカも攻めるんだから」

 しかし、少年の決意は固かった。

 

「僕は本気で、この世から薬物を消してやるんだ。妥協なんてしない」

 彼の言葉に、戦闘員は無言になり、頭を下げる他なかった。

 

 

「ふーむふむふむ。素晴らしい心掛け!! 

 ちょっと、おちょくっちゃおう!!」

 その光景を見ていた女神アンズが、隣の席に天秤を置いた。

 彼女が、指の上の何かを弾いた。それは弧を描き、天秤の更に飛んで行った。

 

 からん、からん、と天秤の皿の上に、サイコロが落ちた。

 

 賽の目は、4。から、独りでに1に転がった。

 赤い1の目は、バットイベント。

 

 

「アバドン様、敵襲です!!」

「……へぇ」

 周辺から、戦闘員たちが集まってくる。

 その報告を受けて、少年アバドンは笑みを浮かべた。

 

 そして、襲撃者が現れた。

 

「魔法少女か」

 そう、彼の前に現れたのは、魔法少女だった。

 

「あんたが、アバドンね」

「そうだよ、君は?」

「ソムニフェルムと名乗っているわ」

 その名に、アバドンは思わず噴き出した。

 

「僕を非難する相手はいろいろ居るけど、君はどんな理由なんだい?」

「別に私は、貴方を糾弾するつもりはないわ」

「ふーん」

「ただ、間接的に私の父が貴方に殺されたってだけの話」

 戦う理由は、それで十分だった。

 

「知らなかったの。あの優しかった父が、私の国では麻薬王と呼ばれるようなマフィアのボスで、多くの人から恨みを買っていたなんて。

 父は資金源を失い、報復に遭って死んだわ。それ自体は、自業自得。悲しかったけど、仕方がないこと。

 でもッ、それはそれとしてッ、その報復の矛先は私にも向けられた!!」

 彼女の人生は、滅茶苦茶になった。

 彼女を襲う敵の全てを、魔法の力で打ち破ってここに来た。

 

「これは、八つ当たりだ!! 正当性なんて必要ないッ、お前だ、お前の所為で父も、私も滅茶苦茶になった!!」

「僕は逃げも隠れもしないよ。

 そして言い訳も、見苦しい命乞いもしない」

「正しいことをしているとでも、言うつもりか!!」

「まさか」

 激高する魔法少女に、アバドンは首を振った。

 

「君の父親と同じだよ、悪党が自分の好きなことをしているだけ。それが結果的に優しさに見えるかもしれない。ただそれだけのことさ」

「お前は、この世から薬物を消すと言っているそうだな!!」

 彼女の体に、魔法の力が満ちる。

 ああ、と少年は納得した。なぜ彼女が、芥子の名を名乗っているのか。

 

「だったら、この私もこの世から消してみろ!!」

 脳内麻薬の異常分泌、それに伴う超常的な現象。

 それが、彼女の魔法だった。

 

「神様、ありがとう。僕に最高の敵をくれて!!」

 超人的な身体能力を発揮して、戦闘員たちを薙ぎ払う魔法少女の姿を見て、彼は歓喜した。

 

「さあ、僕が間違っていると言うなら、証明して見せろ!! 

 自分たちの正しさを示せ、悪を討って見せろ!!」

「そんなの、関係ねええええええんだよぉぉぉおお!!!」

 無数のバッタの塊と、魔法少女の拳が激突した。

 

 

 

「あははッ、熱い展開だなぁ」

 その様子を虚空の映画館で見ていた女神は大喜びだった。

 

 そして彼女はリモコンを操作する。

 場面は、アメリカでの暴動を映していた。

 

 彼女が、サイコロを振る。

 からんからん、と天秤の上にサイコロが転がり落ちる。

 

 すると、アメリカ担当四天王オリバーの前にも、魔法少女が現れた。

 

「それ、こっちも」

 彼女は更に映像を切り替える。

 彼女がサイコロを振ると、今まさにVR空間でゲームマスターに射殺されようとしている一般人を庇って、自らを電子化できる魔法少女が現れた。

 

「いーやがらせ、あそーれ、いーやがらせ!!」

 幼い女神が、盤面を乱していく。

 それは将棋で好きな時に王手を掛けられるような、無茶苦茶なお遊びだった。

 

「ワンサイドゲームなんて、面白くないですもんね、あはは!!」

 そして、無邪気に権能を振るう女神の目に、一人の少女が留まった。

 

 

「さーて、どんな出目かな?」

 彼女の視線の先には、夏芽が思い悩んでいる姿があった。

 

 運命を司る女神が、サイコロを振るう。

 からんからん、と天秤の上に。

 

 そして、出目は――――。

 

 

 

 

 

 




次回より、三章です!!
なお、アンズちゃんは直接この物語に関わっては来ません。その予定です。

アンケートは、これをもって終了です。
次回は、アンケートの結果通り、イケメン軍団VSエルフ軍団となります。

乞うご期待!!

登場するリーパー隊の隊員、誰が良い?

  • 下種野郎ゴブリン
  • 狩りをする人狼
  • 撃墜王ハーピー
  • 肉食系エルフ軍団
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