バッドガールズ・ダークサイド   作:やーなん

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前回は、新しい現地の魔法少女を出すとあとがきで言ったな?
あれは嘘――じゃなくて先送りになりました。ごめんなさい。
その代わり、今回魔法少女フェアリーサマーの活躍が見れますよ!!

それでは、本編どうぞ!!


魔法少女 VS 魔王

 

 

「とりあえず、おおよその知りたいことは分かったわ」

 千利との対話を経て、夏芽はこの世界の状況について必要な分は把握し終えた。

 

「でも、いくつかの疑問があるのよね」

「疑問ですか? 私に答えられることであれば」

「いいえ、多分この疑問はあなた達に答えられない」

 夏芽は先ほどの魔王の映像を見て、違和感を抱いた。

 

「一応……千利さんは、彼らの崇拝する女神について知っていますか?」

「……申し訳ありません。それについては詳しいことが分かっていません。

 どちらかと言えば、魔王を崇拝する人間がいることが問題になっていると言いますか」

「あのふざけた態度の魔王を?」

「これを見てください」

 千利がオペレーターに指示を出すと、また中央のモニターの映像が変わった。

 

 今度は動画ではなく、静止画だ。

 だがそれは、到底現実感の無い宗教画のような光景だった。

 

「あ、天使さん」

 夏芽は思わず言葉を漏らした。

 その映像に映っていたのは、無数の天使だった。

 

 雲の切れ目から光が地上に差し込み、それを背景に無数の天使が舞い降りようとしている姿だった。

 天使は頭上に天使の輪(エンジェルハイロゥ)を頂き、幾学的な翼を左右に広げている。

 

「彼らは五年前に魔王からの使者として、各国政府に通達を行ったのです。

 曰く、天使なら魔王自身が出るより親しみやすいだろう、と」

「100%嫌がらせじゃない」

 魔王は分かっているのだ。

 この世界の宗教において、天使は大きな意味を持つ。

 

「こっちの歴史が私の世界とどれだけ同じか知らないけれど。

 こっちじゃあ昔、特定の天使が崇拝され過ぎてわざわざ禁止されたくらいよ」

「ええ、まあ、ですので、あまり言いたくは無いのですが。

 魔王は天使を遣わすことができるということで、いろいろと足を引っ張る方々が出てきてしまいまして」

 それもまた、魔王の齎した“混乱”だろう。

 彼は人類のウィークポイントを実に的確に理解している。

 千利の物言いも歯に物が挟まったような言い方だった。

 

「でもおかげで、私の中で明確な疑問が一つ浮き彫りになったわ」

「明確な疑問、ですか?」

「ええ、この世界に、そうね、ファンタジー小説やゲームに出てくるような、ゴブリンとかコボルトとかオークとか、来てないわよね?」

「はい?」

 夏芽の質問の意図が分からない、と言った様子で千利は首を傾げた。

 

「私、昔に別の魔王とやりあったことがあるんだけど。

 その時の連中の手下は、そういう怪物とかだったのよ。

 そしてその怪物たちは、ある女神が下僕として遣わせる。かの女神は魔王に天使なんて与えないのよ」

 それが、夏芽の抱いた違和感。

 

「やっぱり、直接聞いた方が早いかしら」

「え?」

「悪いけれど、ちょっと行ってくるわね」

 夏芽は席を立つ。

 そして、転移ゲートを開いた。

 

「ま、待ってください。危険です!!」

 声を荒げる千利に、夏芽は振り返った。

 

「大丈夫、私は誰にも負けない」

 彼女はニッと笑ってそう言った。

 彼女は、千利は、その背を、その英雄の道程を見送ることしかできなかった。

 

 

 

 §§§

 

 

「さーて、と。一発かましてやりましょうか」

 魔法で浮遊する夏芽の眼前には、巨大な円盤が浮かんでいる。

 

 その大きさ、都市三つ分は優に納められるであろう広大な銀色の構造物。

 彼女は単身で、それに今から挑もうとしている。

 

「ごめんくださーい、日照権の侵害で訴えさせてもらいまーす!!」

 魔法のステッキを振るいながら、夏芽は大声で言った。

 魔力で形成された弾道弾が、円盤の端に直撃。大爆発。

 

 そうして出来た風穴に、彼女は突入する。

 

「賠償金の取り立てじゃ、おらー!!」

 矢のような速さで、彼女は魔王の居城に入り込んだ。

 

 

 一方その頃。

 魔王の居城、その中心部。玉座の間。

 

「やはり来た、やっぱり来た!! 必ず来ると思っていた!!」

 魔王に侍ることを許された四人の四天王、その一人が歓喜の声を上げた。

 

「永遠の乙女、夏の妖精の化身よ!! 

 私は待っていた!! お前が来るのを待っていたぞ!! 

 さあ、早く映像を地上に映せ!! 魔法少女フェアリーサマーの新シーズンの始まりだ!!」

「一人でエキサイトしてるんじゃねえよ!!」

 狂喜乱舞しているドクター・ティフォンを、他の四天王がしばいた。

 

「ドクター・ティフォンよ、あれは知り合いなのか?」

 玉座におわす魔王は、化粧を落としているからか厳かに問うた。

 

「ええ、そうですとも魔王様!! 

 あれこそ我が故郷の英雄!! 幾多の紛争を物理的に両成敗して鎮圧し、宇宙に進出した人類から地球を独りで守り切り、たった一人で人類を屈服させた属性(アライメント)が真の中立たる調停者!!」

 それに答えるのは、魔王の四天王ではなく、英雄の眩しさに憧れるただの一人のファンだった。

 

「なんなら今度わたくしめが個人製作した全24シーズンのアニメと実写ドラマ5期分の映像媒体をお貸ししましょうか?」

「布教してるんじゃねえよ!! 

 どうするんだよ、侵入されてるんだぞ!!」

「では私が出向こう」

 同僚の四天王に、ドクター・ティフォンは真顔になってそう答えた。

 

「彼女の出演作品に、私が出ないわけにはいくまい」

「いや、そう言うこと言ってるんじゃ」

「好きにするといい」

 しかし、同僚のツッコミは魔王によって遮られた。

 

 玉座の間に設置されたモニターには、もう既にフェアリーサマーは円盤内の20%を突破している。

 圧倒的なスピードだ。

 

「エンターテイナーとして、ボクちゃんは彼女の挑戦を受けよう。

 僕は準備が有るから、君たちも迎撃に出るんだ」

 魔王の命令が下り、残りの3人の四天王も頭を下げた。

 

 

 

 そして夏芽の方に戻る。

 

「きゃははは!! カチコミじゃー!!」

「ヤッゾコラー!! スッゾコラーッ!!」

 爆発音とともに、二人の妖精の楽しそうな声が響く。

 円盤の内部にて、魔法少女フェアリーサマーの快進撃は続く。

 

「二人とも、ナイトフォームにチェンジ!!」

「はーい」

「フォームチェンジ!!」

 夏芽の纏う衣装が、再構築される。

 

 一瞬にして全身に薄い装甲が増え、魔法のステッキはロングソードに変貌した。

 これぞ、魔法少女フェアリーサマーのナイトフォームだ!! *1

 

「邪魔だぁ!!」

 四方八方から押し寄せる、機械の軍勢を魔力を纏ったロングソードで薙ぎ払う。

 まとめて数十体の蜘蛛型の戦闘機械をガラクタに変え、壁を切り刻んで最短ルートを進む。

 

「この円盤、ぶっ壊し甲斐がありそうねぇ夏芽!!」

「こんなに楽しいの、宇宙戦艦十隻に次々乗り込んだ時以来ね!!」

 夏芽の魔法を制御、サポートする二人の妖精もご満悦だ。

 

「少し黙っててよ……」

 そうしているうちに、次の敵が彼女の前に立ちふさがる。

 

「これ以上行かせるな!!」

 今度は数百人の武装した、黒タイツみたいな恰好にレスラーのマスクみたいなのを付けたいかにもな戦闘員だった。

 

「レプ、コティ、術式“土精の雄叫び”を」

「はいはい、ノーム召喚」

「疑似妖精の輪を展開、同調完了」

 そして彼女は、敵勢に剣の切っ先を向けた。

 

「土精の雄叫び、発動。

 ────ううぅううッッ!! うあぅあッ!!」

 夏芽の口の中でのみ発せられていた唸り声が、周囲に伝搬する。

 喚起された大地の精霊がそれに呼応し、物理的な衝撃波を伴って周囲に迸る。

 

 彼女の周囲に居た戦闘員は吹き飛ばされ、遠くに居た者はそのこの世の物とは思えない雄叫びに恐怖し、戦意喪失し膝を突く。*2

 

「通してもらうわよ」

 たった一回の魔法で数百人を無力化した夏芽は、次のフロアへ壁を壊して移動する。

 

 そこで、彼女は足を止めた。

 

「待っていたぞ、我が宿敵よ」

 彼女に相対するは、魔王四天王が一人。

 ドクター・ティフォン。

 

「そこをどきなさい、と言って退くあなたじゃないわよね」

「無論だ。お前の雄姿を表現させずに、行かせるものか」

 彼は満面の笑みだった。

 彼女がここに居ることが溜まらなく嬉しそうだった。

 

「この世界の住人では物足りなかったのだ。

 せっかく私が怪獣を作っても、それに対応するのは魔法少女ばかり。

 普通は自衛隊が出張らないか!? 全く根性が無い。お約束が分かってない。

 もっとほら、ロマン火力の超兵器を作るとか気概はないのかと」

「あなたの戯言に付き合っている暇は無いんだけど」

「ふむ、では始めようか」

 直後、ドクター・ティフォンの体が爆発的に膨れ上がる。

 

 それは魔王と言う異形を知っていて、そちらが可愛げのあるように見えるほどの醜悪な怪物だった。

 頭は人間。両腕はゴリラ。足は鹿、胴体は毛深く判別がつかない。

 

 魔術を窮め、自らをキメラと化して人間を超えた魔術師が立ちふさがった。

 

「あなたが自分で戦うのは久しぶりね」

「以前の私と思って、侮るなよ。

 この体は魔王様によって取り寄せられた、異世界でも手に付けられないほど狂暴と知られる魔獣の物だ。

 五年前に比べて、その戦闘能力は五百倍に達する!!」

 ドクター・ティフォンの踏み込みが、円盤を揺らした。

 

「多少はお前を苦戦させねば、自分が許せぬよ!!」

 

 

 ドカッ、バキッ、エクスカリバー・オーバードライブ!! *3 ドクター・ティフォンを倒した!! 

 

「ぐへぇ」

 胴体から頭を切り離されたドクター・ティフォンが無様に床に転がった。

 

「無念……」

 頭だけになっても、ドクター・ティフォンは普通に生きていた。

 この男、この程度では死なないし、死ねない。

 

「先に行かせてもらうわよ、今あなたに用は無いの」

 彼の頭を置き去りにして、魔法少女は先を行く。

 

「そうだ、行け、行くのだ、魔法少女フェアリーサマー!! 

 行って、魔王を倒せ、倒すのだ!! ──行けぇぇぇええッ!!」

 英雄の姿に焦がれ続けた男が、その背に力の限りの声援を送った!!

 

 

 

 その日、東京の、日本の、世界中が見ていた。

 

 巨大な円盤から空に投影される立体映像。

 それが、英雄の姿を映し出していた。

 

 幾百、幾千の敵を前にしても一歩も引かず、その全てを撃退して今まで誰も手出しできなかった魔王の居城を闊歩する。

 

『よくぞ、来た。異世界の勇者よ』

 そうして、彼女は円盤の中心、玉座の間にたどり着いた。

 

『まずは古典に習い、お前に問おう。

 我が配下になれ、さすれば世界の半分をお前にやろう』

 ねっとりとした、人の欲望や好奇心に訴えるような声色だった。

 思わず“はい”を選んでしまいたくなるような、破滅を招くような耽美な何かがあった。

 

『お断りよ。私は調停者、この力の責任を己に問う者。

 それにお生憎様だけど、その場合ってこういう返答が一般的じゃない?』

 夏芽は笑って、こう言った。

 

『お前を倒して、全てを奪い取る』

 

 その返答に、魔王はお気に召したのか、堪え切れないと言ったように笑いを漏らした。

 

『じゃあ、これ以上の話し合いは無用だよね~♪』

 魔王は自身の顔を両手で覆い、その手を下ろすと一瞬でその顔に道化の化粧がなされていた。

 

『場所を変えよう。ここは狭すぎる』

 次の瞬間。

 円盤の中心が爆発し、そこから巨大な何かが飛び出した。

 

 それは、人間が想像する四つ足の巨大な龍だった。

 神の使徒たる魔王の真の姿。神龍、真龍とでも表現するしかない、邪悪の化身。

 元の面影は、その顔の化粧以外見当たらない。

 

 それに相対するように、二対の光の翅を背中から広く大きく伸ばした夏芽が空に舞う。

 

 神話の光景だった。

 両者が激突する度に、ビルが、ガラスが、空気が震える。

 

 大地が揺れる。空が割れる。人が膝を突く。

 

 やがて、誰かが口にした。

 

「もう、やめてくれ……」

 両者の激突は、その余波だけで地上を何度焼き払っても足りないほどだった。

 勇者と魔王の激突は、見る者に希望を抱かせるものでは無かった。

 

 恐怖。

 

 理解できない怪物が、自分たちの頭上で暴れまわっているという恐怖だけだった。

 天地開闢か終末か、或いはビックバンもしくはスーパーノヴァ。

 この世の始まりか、或いは終わりか。

 

 いずれにせよ、それの巻き添えは人間の生きていける環境が消え去ることには変わらない。

 

 

『もうやめようか』

 それを口にしたのは、意外にも魔王の方からだった。

 

『ボクちゃんは別にこの地上の人間を滅ぼしたいわけじゃない。

 君は力を示した。君とボクちんが本気で戦ったらすべてが台無しになる。

 それはお互いにとって、喜ばしいことじゃないだろう?』

 聞くだけで魂を握りつぶされるような、立ち向かう者の勇気を挫く恐ろしい声が、優し気に言った。

 

『魔王一族の第四位にして、この“道化”のハーレが地球世界に宣言する。

 彼女を、魔法少女フェアリーサマーを我々と人類の調停者として認めることを』

 その言葉を引き出したことで、夏芽は武器を下ろした。

 

『わざわざ殴り込んだ甲斐があったわ』

 調停者に必要とされるのは、公的な地位や名誉といった名声だ。

 そしてそれを手っ取り早く得るには、武力を証明することだった。

 

 調停者、故に彼女は、魔法少女フェアリーサマーは最強なのだ。

 それ以上どれだけ強い者が居ても、彼女以上は強さの上限に引っかかる。

 そう、今回のように。これ以上は全てを破滅させるほか無くなるのだ。

 

 人々は、ようやく人智の超える戦いが終わったことにほっと息を撫でおろすことしかできなかった。

 

 

 

 §§§

 

 

「それで、何が聞きたいんだい?」

 天上の風通しが良くなった円盤内の玉座の間に、魔王と魔法少女が再び対峙する。

 しかしもはやお互いに、戦意は無い。

 ちなみにドクター・ティフォン以外の四天王はとっくに撃破されて近くに転がっている。

 

「私は以前、異世界に召喚されてあなたとは別の魔王一族と戦ったのだけど」

「ああ知ってる知ってる。弟が苦渋を舐めさせられたそうだね。

 我が神も、君の死後は使徒として招きたいと仰っていたよ」

 魔王一族、と言うが、別に魔王は一人ではない。

 彼ら魔王は、一族全員が魔王。一人一人が支配階級にして、世界の管理人たる存在なのだ。

 

「まあ、弟も君に邪魔された程度で悪態づくくらいじゃ、順位は上げられないと思うけどね。

 僕の四位も、営業成績みたいなものさ。これでも有能なんだよ?」

「知りたくなかったわ、そんなこと」

 魔王の順位がまさか営業成績だとは。思いのほか世知辛い。

 

「それで、私が聞きたいのはあなたの神の事よ。

 教えて、あなたをこの世界を差し向けたのは──“邪悪の女神”なの?」

 夏芽は真剣に、魔王ハーレに尋ねた。

 

「なぜ、そんなことを聞くんだい?」

「私の知ってるあなた達のやり方とはずいぶんと違うから。

 魔王が現れるのは、世界を滅ぼす時。なのにあなたは先ほど滅ぼすつもりは無いと言った。これはどういうことなの?」

 彼女にとって、魔王一族とは女神の命令によって世界を滅ぼす存在だ。

 

 だが、魔王一族にとって女神とは、二柱(・・)居るのだ。

 

 魔王一族が、母と崇拝する邪悪の女神。

 それ以外の人類の文明を司る、文明の女神。

 

 基本的に、世界を滅ぼせと命ずるのは前者の方だ。

 

「察しの通り、ボクをこの世界に差し向けたのはかの至高なる文明の女神、メアリース様だ」

「やっぱり……」

 おかしい、と夏芽は思っていたのだ。邪悪の女神は、天使や機械を使わないからだ。

 

「僕ら一族が、世界を滅ぼすのは、必要に迫られるからだ。

 発展性の無い世界は、停滞してしまう。他の世界の寿命を損なうから、枝を切るように並行世界ごと滅ぼし尽くす」

 それは善悪を超越した、神の視点。神の権能。

 魔王はそれを代行し、神の意志を遂行しているに過ぎない。

 

「だからって、手下に好き放題させるのはどうかと思うけどね」

「それはしかたないさ。邪悪を赦すのが我が母の偉大な権能だからね。

 それに、試練を与え、一方的に滅ぼす決定を覆す機会を与える。慈悲深いことだろう?」

 魔王は滅ぼす世界に、手下を送る。

 その世界の住人を徹底的に追い詰め、試練を与える。

 その一連の行動を、魔王は女神の慈悲と言うのだ。

 

「馬鹿馬鹿しい、何が慈悲よ」

「君はアリの巣を駆除するときに、アリに了解は取らないだろう? 

 アリに滅ぼされたくなかったら、喉元に食らいついて見せろと事前に通達するのは慈悲以外何物でもないさ」

 結局、アリとそれを見下ろす両者の価値観は違う。

 永遠に分かり合えないことだった。

 

「だけど、今回は違うのね」

「そうなんだよねぇ」

 夏芽の言葉に、魔王ハーレも溜息を吐いた。

 

「私の知る限り、文明の女神は人に無償で文化や生活を与える女神でしょう? 

 何でその女神が、魔王たる貴方に地球に来るよう命じたの」

「知らないよ、僕らが主上の御心を推し量れるわけないだろ」

 その口ぶりからして、魔王ハーレは本当に何も知らないようだった。

 

「君も分かってるけど、かの御二柱は明確に役割が異なっている。

 滅ぼすのは我が母、与えるのはメアリース様。

 指示も曖昧でね、退屈だから君が来なかったら人類の負荷を強めようかと思ってたところだ」

 そう、彼の言う通り、本来文化を与えるはずの女神の指示で彼はこの世界に重圧を掛けている。

 

「地上の人間に聞いていないのかい? 

 僕らの目的は、適度に混乱を与え、適度に破壊し、適度に恐怖させること。

 僕の判断で人類を滅ぼすなんて、越権行為だ。

 そもそも、地球系列の世界は発展性が高い。この世界を滅ぼすには条件が合わない」

 だから彼は彼女との戦いを途中で止めた。

 所詮彼は、魔王と言っても中間管理職に過ぎないのだ。

 

「つまり、あなた達の母神は関わっていないの?」

「それはどうだろうねぇ」

 くくく、と魔王は笑った。

 

「聞くに、地球系列の世界は魔力に縁遠いことが多いんだろう? 

 この世界に魔力に関する法則は無かった。じゃあ誰が、この世界に魔力を齎したんだろうね?」

 ほぼ確信を持った、魔王の笑み。

 

「……」

 夏芽は黙った。

 もはや口に出すまでも無いことだった。

 

「聞きたいことは聞いたわ」

「そうかい。じゃあ地上の人類によろしく。

 何かわからないことが有ったら、地上の事務所で役人に聞くといい」

 魔王はそれだけ言うと、自分の居城を半壊させた勇者の背を見送った。

 

「調停者よ、君が自分で許す限りの肩入れをすると良い。

 君が彼らの希望となり、僕に反逆する者の始祖と成れ。

 ──どうせ、暇なんだろう?」

 夏芽が消え去った通路の闇の奥からは、何の返答も無かった。

 

 静寂が訪れた玉座の間に、くつくつと魔王の笑い声だけが響いていた。

 

 

 

 

*1
魔法少女フェアリーサマーは、基本、ナイト、バード、ドルイド、その他を含め全部で六種類のフォームを持つ。ナイトフォームは近接戦闘特化である。

*2
伝承曰く、ケルトの英雄クーフーリンはその雄叫びだけで大地の精霊を呼応させ、数百人の敵兵を戦意喪失させたと言う。それを元にした魔法、魔術。

*3
魔法少女フェアリーサマーのナイトフォームの必殺技。妖精二人と夏芽の親友が製造した魔法剣を最大出力で解き放つ一撃。破壊力は基本フォームより上。この台詞と共に大抵の場合、相手は死ぬ。




調停者、という立場上、片方の意見だけを聞いて判断するわけにはいかない、と思い至り、夏芽ちゃん魔王城に殴り込み。
この子、ケルト神話系の魔法使うので、その旨タグに追加しときました。
見よ、これが正統派ケルト系魔法少女だ!!

でもポジションはクーフーリンというより、スカアハな模様。
次回こそ!! 本当に!!
新しい魔法少女出しますよ!!

魔法少女フェアリーサマーはどれくらい活躍してほしい?

  • たくさん!!
  • ほどほどに!!
  • 少なくていい!!
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