Fate/ZERO with シルヴァリオ   作:甲乙兵長

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フェイト世界に閣下を投入したらどうなるかという疑問が湧いたので自分で書いてみました。

連載は初挑戦です。

投稿は不定期、文章力不安定、設定矛盾や独自解釈はつきものと考えて読んでください。

とりあえずの目標は、エタらないこと。


【Act0/天頂の星/Keraunos】

 素に銀と鉄。礎に石と契約の大公

 

 

 降り立つ風には壁を

 

 

 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ

 

 

 

 

 閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 

 

 繰り返すつどに五度

 

 

 ただ、満たされる(トキ)を破却する

 

 

 

 

 ―――告げる

 

 

 汝の身は我が下に、我が運命は汝の剣に

 

 

 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

 

 

 

 

 誓いを此処に

 

 

 我は常世総ての善と成る者、

 

 

 我は常世総ての悪を敷く者

 

 

 

 

 汝三大の言霊纏う七天、

 

 

 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 手順は完璧だった。

 

 

 

 召喚陣の構成、霊脈の確保、触媒の欠陥、詠唱の不備などは一切なく。

 最優と目されるセイバークラスの中でも最高位に近い英霊(えいれい)を呼べるはずだった。

 そのための触媒。そのための聖遺物。

 だというのに……。

 

(一体、どういうことだ?)

 

 魔術師・衛宮切嗣(えみやきりつぐ)は改めて自らの使い魔を(かえり)みる。

 金色の髪に蒼い瞳というありきたりな西洋人の特徴。纏う黒の軍服に完膚の露出なく、手甲などの鋼が佇む偉容の各所を無骨に彩る。セイバーに相応しく腰に()いた七本連なる刀剣はとても実戦的とはいえないが、ただの虚仮威しとも思えない迫力を滲ませる。

 あらゆる苦痛と苦悩を刻み乗り越えたかのような深く(いか)めしい眉間に走る大きな古傷は、かの者の歩んだ生涯の苛烈な一端を物語っていた。

 

 

 

『サーヴァント、ストレンジ・セイバー。召喚に応じ参上した。

 ――問おう。貴様が俺の共犯者(マスター)か』

 

 

 

 輝く陣より現れた使い魔は開口一番告げた。

 聞き覚えのないクラス名。セイバーの枠内にあるのか、まだ見ぬエクストラクラスの名前なのか判然としないその霊基(れいき)も疑問だったが、何よりこの英霊は本当に求めた人物なのだろうか。

 騎士王アーサー・ペンドラゴン。

 かのアーサー王伝説に語られる円卓の王。騎士の中の騎士。英雄の誉れにおいても最高クラスのサーヴァント。

 だが、切嗣は疑いを以て男を見ていた。

 使い魔としてのステータスはマスターたる切嗣の頭に自然と流れ込み公開されているが、ほとんどが不明。あるいは文字化けのように狂って表示されていた。

 この時点で怪しさ全開だが、理由はそれだけに尽きない。

 

(コイツは、聖遺物を破壊して現界(げんかい)した)

 

 騎士王召喚の触媒として台座に設置された概念霊装、聖剣の鞘であるアヴァロン。

 サーヴァントが現れんとした瞬間に、鞘は破裂するようにしてバラバラに砕けたのだ。まるで莫大な内圧に鞘自体が耐えきれなかったかのように。

 それすなわち、眼前の男がアヴァロンの縁に呼ばれたわけではないことを意味しているのではないだろうか。

 

(それに、このサーヴァントはそんな華やかな存在とは思えない。いや、人を導くカリスマ、覇者の風格を備えているのは見て取れるが、どこか泥臭いというか。血生臭い)

 

 極論、英雄と呼ばれる輩は得てしてそうなのかもしれないが。

 騎士の誉れというより、無骨な鋼の剣とでも形容すべきだ。

 

「……お前は、本当にアーサー王なのか?」

 

 短い黙考のすえ、正面から問いかける切嗣。

 対して、男もまた明解だった。

 

(いいや)。まったくもって別人だ」

「―――――」

「俺の真名()はケラウノス。軍事帝国アドラーの第三十七代総統……だった破綻者(オトコ)の末路だ」

 

 切嗣は当惑する。

 軍事帝国? 総統? なんだそれは? 世界各所を巡り、一介の魔術師として神秘に関わる伝承や神話は学んできたが、アドラーなどという国は寡聞にして知らない。ケラウノス……ギリシャ神話の主神ゼウスの使う雷霆(らいてい)の名だが、男の霊基は神霊のモノとは異なる。まして神話の武器がサーヴァントになり得るものなのか。

 韜晦(とうかい)や攪乱の気配はない。男――ケラウノスは微塵もこちらを(たばか)ろうという薄暗さを滲ませていないのだ。つまり当人は至極真摯に切嗣の問いに答えたということになる。

 

「困惑も当然だろう。おそらく我々は前代未聞の事態に見舞われている。俺としても、このような形で実像を得るなどとは考えてもいなかった。

 本来ならば、この世界の人理に俺などという異物が紛れるはずはないのだが……」

()()()()? なんだそれは。

 お前は、別世界からやってきたとでも言うのか?」

「端的にまとめればその認識で正しい。交わるはずのなかった世界間でなぜこのような現象が起こったのかまでは、俺にも分からんがな。陳腐だが、一種の奇跡でも起こったゆえの邂逅(かいこう)とでも言うべきかもしれん」

「………」

 

 ケラウノスの見解に耳を傾けながら、切嗣は現状を整理する。

 サーヴァントの召喚には成功した。だが現れたのはまったく見知らぬ異世界の住人を自称する英霊。戦力的価値は未知数。協力的かも怪しい。明らかに意志頑強な気質であることがうかがえる。

 総じて問題は、この英霊が使えるか否かだ。

 

 

 

 ――聖杯戦争。

 

 

 

 極東の小さな島国である日本。その地方都市、冬木にて行われる大儀式。

 七騎の英霊を僕として七人の魔術師が最後の一組まで殺しあい、あらゆる奇跡を叶えるという逸話を持つ、万能の願望器・聖杯を争奪する魔術闘争。

 此度(こたび)の召喚は、その主戦力たる英霊――過去に成した偉業や伝承などによって世界(大衆)に偉人・怪人と認められた世界の守護者――を自陣に加えるための重要な工程だった。

 ちらりと切嗣は右手の甲に刻印された令呪(れいじゅ)を見遣る。

 令呪とは召喚主たる魔術師が使い魔に行使できる絶対命令権。使い魔とはいえ、連中には生前の気質や自由意志が存在している。場合によってはマスターとの相性が悪く、マスターを裏切る事例も過去にあったため備えられた魔術師側の救済措置であり首輪だ。呼び立てた英霊の意に沿わぬ命令であろうと必ず遵守させ、自害さえも押し通すことができる。

 ただし、破格の性能ゆえ、使用回数は三度までという制限付き。

 

(コイツが手に余るほど危険な相手なら、今すぐ自害を命じて召喚を仕切りなおすことも視野に入れられるが……)

 

 と考えは巡らせるものの、そう簡単ではない。

 切嗣擁するアインツベルンから与えられた聖遺物を失った挙句、せっかく現界させたサーヴァントも()に帰したとなれば、城主のアハト(おう)の心象に良くないだろう。容易く次の召喚に移れるかも怪しくなり、今回の聖杯戦争参加も見直される可能性すらある。

 

「案ずるな」

 

 機先を制したのはサーヴァントの男。

 彼の放つ鷹の眼光は真っすぐに共犯者(マスター)を射抜いていた。

 

「俺は貴様の呼びかけに応えたからこそこうして立っている。自らの役割も認めたうえでだ。貴様の手足として動くことに今のところ(いな)はない」

(今のところ、ね)

 

 逆説的に、期が熟せば反逆する心積もりとも解釈できるが……。

 信用していいのかどうか。

 

(いや、関係ないことだ。聖杯戦争において英霊は、兵器運用を想定して手駒とする極めて有用な道具に過ぎない)

 

 もとより、どんな経緯や信念を持つ英雄であれ、使い魔の枠組みにある以上、マスターに堂々と逆らえはしない。叛意(はんい)が明らかとなったならば、そのときは対処するまで。

 アヴァロンを失ったのはやや手痛いが、修正の利く範囲内だ。魔術師殺し、異端の魔術師たる衛宮切嗣は冷徹な合理的思考のもとケラウノスの処遇を定めた。

 

「腹は決まったようだな」

「ああ。お前がどんな英雄であろうと、僕の使い道に変わりはない。

 通常の人理にも記されていない未知の英霊……これは観方によっては強みだろう。弱点も来歴も、調べようがないのなら運用の幅も広がるというものだ。

 精々僕好みに使い潰されてもらうぞ、セイバー」

「異論はない。俺も、奇特なこの状況の把握に努めながら、己の使命を成そう」

 

 握手するような間柄でこそないものの、ここに両者の合意が成立した。

 契約は正式な手順へ。魔力のパスは開かれ魔術的に主従は結託する。

 どこか一触即発だった空気がわずかながら弛緩(しかん)したことで、切嗣の背後でほっと安堵の息を吐いた白髪赤眼の美女――アイリスフィールは、今後の方針打ち合わせのためケラウノスを別室へ案内する。

 相変わらず厳めしい表情を崩すことなく付き従う黒衣の偉丈夫。切嗣はそんな彼の通り過ぎる背中を見つめながら、棘のような小さい違和感を胸にくすぶらせていた。

 

(なぜだろう……英雄なんてものは初めから気に入らないが、ヤツに対してはそれだけじゃない。僕の根本的な部分が、ケラウノスという男を拒絶している)

 

 魔術師殺しはまだ気づかない。自らが抱く忌避感の明確な答えには、まだ。

 

 

 

 ――運命の車輪は駆動する。

 

 

 

 外なる地より到来した異端の歯車を舞台装置に組み込みながら。

 かつて、鋼の英雄と呼ばれた新西暦の残骸が、旧西暦の地上に降臨した。

 よって破綻の兆しはここに成る。

 彼のあり様は、どこであろうと変わらないゆえに。

 

 

 

 ***

 

 

 

 光の狂人。その鮮烈なまでの煌めきは、同時に招かねざる敗残の影に波及する。

 

 闇黒(ヤミ)の特異点より零れ落ちた人狼の現身は、眩き勝者を廃滅せんと唸りをあげた。

 

 

 

 

 

 されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし

 

 

 

 汝、狂乱の檻に囚われし者

 

 

 

 我はその鎖を手繰る者――

 

 

 

 

 

「サーヴァント、ストレンジ・アヴェンジャー。大したことないちっぽけな負け犬さ。

 狙い通りのヤツじゃなくて悪いが、こっちにも事情があってね。しばらく世話にならせてもらう」

 

 

 





最後まで読んでくださったかたに万代不易の祝福を。


どうか続くことを祈って気長に待っていてください。
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