お久しぶりです。
活動報告では上げてましたがとりあえずリアルのほうは落ち着いたので再開します。
残念ながら、今回あまり動きはないんですけどね。
「なんだよ! これからが良いとこだったってのに!」
野次馬が集まりだしていた未遠川近郊、ウェイバーたちが立っている河川より彼岸に位置する場所で、ひとりの若者ががなり立てた。
右手甲に令呪の痣を持つ男、雨生龍之介は不平を露わに歯噛みする。
無惨に焼き払われた貯水槽の暴虐によって悲嘆に暮れ、尊敬する師に諭され、己が長年培った有神論を詳らかにし、触発された涜神の暴徒はこれまでにない芸術の大制作を実行するに至った。
今までのように少年少女の臓腑を暴くのとはわけが違う。本物の超常現象が具現体を持って実害ある災禍と化し都市を闊歩する。それによって人々は思い知らされるのだ。自分たちが温め固執していた『変わらぬ日常』とやらが脆くも崩れ去る砂上の楼閣に過ぎないと。不変の穏やかさとやらが、どれほど退屈で陳腐なのかを。
人生は刺激的でなければCOOLじゃない。龍之介は一度も殺人に快楽を直結させる己を恥じたことなどないし、犠牲にした人々を貶めてたこともない。挑戦と失敗に塗れながらも、みなすべからく素晴らしい芸術であったのだと、自信を持って喝采できる。あくまで龍之介の価値観に当てはめれば。
事実、度肝を抜かれた大衆は濃霧の中に幻想を観た。巨大怪獣というまぎれもない
そんなスペクタクルな大演劇を目前にして、この仕打ち。
何がしかの無粋によってジル・ド・レェの
「肩透かしもいいとこだよ! 誰だっ、旦那の創作の邪魔する奴は―――」
彼の脳裏で、此度の犯人と焼失した工房の原因が結び付きかけたところで。
若き快楽殺人鬼は、一発の凶弾に撃たれた。
「え――あれ――?」
突然何かに押されて体幹を崩した龍之介は尻もちを突く。
座り込んだ彼は最初、人垣とぶつかったのかと錯覚したが、胸に広がる熱と痛みに顔をしかめて手を当てると、ぬるっとした赤い液体が付着しているのが分かった。それが自身の血だと理解して、異常を察した周辺の人間が傍から身を逃していく。
騒然と湧き立つ人々の悲鳴を耳にしながらも、龍之介の意識は手のひらの真紅から離れなかった。
何百と流してきた人間の血潮。そこに求めたまだ見ぬ艶めき。そも、雨生龍之介が殺人の中に渇望していたのはどんなモノだったのか・・・・・・ことここに至ってようやく、彼は原点を思い出し、血反吐混じりに苦笑した。
「あぁ・・・・・・そうか。こんなとこにあったのか。灯台下暗しとはよく言ったもんだよ。そりゃ、見つかんないはずだよなぁ―――」
ついに知れた宝の所在に、龍之介は納得の安らぎを得て・・・・・・。
続く第二射がキャスターのマスターの額を撃ち抜いた。
衛宮切嗣は、召喚魔の出現に浮足立つ観衆に魔術回路励起時独特の発熱反応を見つけ、速やかに処分した。狙撃銃に搭載した熱感知スコープごしに、人影が
が、マスターを排除したとて安心はできなかった。人間を襲って自給自足を始めてしまえばマスターの所在など関係ないのだ。現世に実体在る限り、怪獣の脅威は継続中。先日ライダーが明かした最終宝具である固有結界にセイバーごと取り込んだことで、今はなんとか落ち着いているが、事態は予断を許さない。
とはいえ、急ごしらえの対応として悪くない選択だった。マスターの魔力供給を失って、補給源がろくにない固有結界の中で持久戦に持ち込めば、勝機の芽はなくもない。あれだけの大規模召喚を維持するには相当量のエネルギーを喰うはず。キャスターの宝具が貯蔵する魔力量がいくら膨大であろうとも、湯水のように消費する現状ならそう長くは保つまい。あの英雄があからさまな脅威の敵を前にして膝を突く未来を想定し得ない切嗣は、最終的に粘り勝てる可能性を弾き出していた。パスで繋がっているゆえか、彼らしからぬ信の寄せ方ではあるが。
であればこそ、並行してことに当たれる。
急場で強奪した大型船舶を怪魔召喚地点より上流で待機させ、狙撃体勢から立ち上がった切嗣は懐から鳴る電子音に応えた。
『ロード・エルメロイの婚約者、ソラウ・ヌァザレ・ソフィアリを捕縛しました。右手の令呪を確認し切除済みです。やはり彼女がランサーの代理マスターかと』
鼓膜に響く怜悧な声音は相棒である久宇舞弥のもの。一昨日夜の森林地帯にて生死の狭間を彷徨った彼女だが、その凍てつく心胆に揺らぎはない。実際の舞弥はほんの数時間前まで昏睡しており、目覚めたからといってまともに動けるはずのない重傷者に変わりないが、切嗣の要請を受けたなら負傷を押して任務遂行するのが彼女という装置の役割だ。
アイリスフィールとケラウノスには秘密裏に、姿を見せていない他のマスターの捕捉並びに捕縛を指示していた切嗣は、部下の手際よい行動に了承を示す。
「わかった。あとで合流しよう。バーサーカーに関しては?」
『マスターもサーヴァントも、それらしい影はいまだ発見に至っていません』
「そうか・・・・・・」
依然、あの激闘の夜以来雲隠れしているサーヴァント。所在は間桐邸に違いないだろうが、強襲をかけるにも時期が悪い。横殴りを警戒しつつ現状は頭の隅に留める。
スコープで一瞬アイリスフィールたちの方角を確認し、すぐに下ろす。彼女らの近接にランサーが存在しているためあまり意識を向けるのは危険と判断した。ケラウノスと切り結んでいたあの槍兵なら、レンズ越しの敵意だけでこちらを察知しかねない。
「にしても、アイリを敵サーヴァントの傍に置くとは厄介な真似を・・・・・・やはり英雄なんて連中は信用ならない―――」
嘆かわしげに使い魔の失態を蔑む切嗣。
武功に酔った英雄同士のシンパシーをこけ下ろした彼は、対岸の河川に戻って密かに監視を行うべきかと思案する。
だが、そんな
「はッ・・・・・・な、なんだ」
まるで全力疾走を遂げたあとのような息苦しさに胸を押さえた。頭から血の気が引き、貧血を起こしたかのように意識が靄がかる。不自然な乱れ方をする動悸の最中、彼は己を襲った異変の正体に推測を立てる。
(魔力が・・・・・・急激に吸い上げられるッ)
切嗣のパスを通じて、いずこかへと供給されていく膨大な魔力。
急激な魔力欠乏は血液を瞬間的に抜かれるのと同じく、命の危機に陥る場合もある。貧血のような症状はそのためだろう。飢えたエネルギーを補おうと魔術回路が悲鳴を上げて駆動するが、生産した端から接続された『向こう側』に流れていく。必要な供給量に自己生成力が全く追い付いていない。
過剰な魔力の向かう先は使い魔と繋がった不可視のライン。それはケラウノスが相応の力を発揮している証左だが、ここまで暴力的な吸引は初めてのことだった。
(アイツ、一体、なにをした・・・・・・んだ・・・・・・)
いまだ通話状態の電話から狼狽した部下の声が響く中、切嗣はついに耐え切れず船舶の縁にもたれかかり、抗えない暗闇に意識を沈めていった。
***
「聖杯に求める願いなどない」
アインツベルン城内で唯一美的景観が残された中庭で、傷ありの男は厳めしく断言した。
持参の樽から酒をすくい己の器へ注いでいたTシャツ短パン姿の征服王は、胡乱げに眉を顰める。
「フム? ではお主、何故聖杯戦争に加担しておるのだ? わざわざ使い魔なんぞの身に貶めて、命がけで魔術師に臣する相応の理由があろうが」
「己の成さねばならぬ使命のため」
「その使命とやらを聖杯で叶えるのではないのか?」
「否だ。そも、己の願望を他者の一存で叶えてもらって、一体なんになるという。他力本願も甚だしい」
聖杯戦争の意義そのものを否定するような言い分に、背後のアイリスフィールもこれには鼻白む。
「征服王。貴様の願望は、天下を己が身で征服するための受肉であったな」
「応よ。いかにサーヴァントとして現世に魂は舞い戻ったにしても、まず余という存在を確固たるものとして世に繋ぎ止めねばなるまい。そのために、肉の器が必要不可欠なのだ」
「貴様の掲げる征服論の善悪は一旦横に置くとして、端的に述べれば、俺は貴様を見直した。よくぞ言ってのけたと尊敬すら覚える」
胡坐をかいた対面の巨漢に対し、ケラウノスは忌憚なく心証を述べる。
「英霊などと呼ばれていても、我々は所詮は過去の残影だ。すでに滅び去った存在が世界によって支えられ、仮初の生を得ているに過ぎん。つまりは死人だ。在りし日の栄光が形を成しただけの操り人形。サーヴァントとは、結局その程度の骨董なのだ。事実、貴様もまた、いまだに征服という原点をいつまでも忘れられず、こうして蘇っている」
「まぁ、否定はできんなぁ。イスカンダルとしての生涯に未練がなかったかと言われると、少し考えさせられる。
「貴様がそのまま、聖杯の力で事を成すと安易に考えているだけであったなら、俺は問答無用で貴様を打ち倒すのみだった。だが、貴様は己の手で世を征すると言ってのけた。聖杯の力は、あくまで過程。手段のひとつに過ぎないと。ならばこそ、対話する価値がある。未来を見据えている、貴様とな。イスカンダル」
「・・・・・・・・・」
「ある男の話をしよう。度を越した、救いようのない
かいつまんだ異邦世界の常識や技術にやや難儀したものの、異文化を取り入れ適応する能力に一家言あるイスカンダルにとっては些末事である。
肝要なのは、ケラウノスの語る男が紛れもない当人という暗黙の事実。
守るべき民草の永久の安寧。流血と落涙の根絶。そのためなら己が地獄の責め苦を受けることすら厭わない剛直な精神性。悪を赦さない光の亡者、明かされた英雄の正体にライダーは深いため息をついた。
「なるほどな・・・・・・まぁ小難しい理論理屈は抜きにしても、お前さんが余に劣らぬ特大の馬鹿だということは理解したぞ」
「十分だ。人理に名を刻むような連中は、総じて似たり寄ったりの愚者だろう」
「違いない。だがな、異邦の王よ。人々の描いた輝かしい
「語るまでもない。俺という存在は、ただ一つの理念に純化した魔人なのだから」
すなわち。
「存在してはならぬ『悪』を断つ。それのみが、ケラウノスという個体に冠された衝動だ」
読了感謝です!
作風的に仕方ないのですがシリアス場面とかしか描けないのが結構ストレス。
久々だから余計に厳しめ。
それに閣下を喋らせるのもしんどいですね。
この人こんなこと言うのかな? という不安が常に絶えない。
もうちょっと肩の力を抜いて書けるヤツがいるかもなぁ。