Fate/ZERO with シルヴァリオ   作:甲乙兵長

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キャスターとの直接対決。

もうちょっと盛り上げれるかと思いましたが作者の筆力不足でこのくらいが現状限界。

短期決戦重視ってことで。





【Act11/巨獣戦争/Gigantomakhia】

 

 

 破滅の嵐が世界を揺るがす。

 

 

 

GiiiiAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ(オォォオオオオオオオオオオオオオオオオ)!!』

■■■■■■■■■■■■■■■■■ッ(アァハハハハハヒヒャアハハハハハハハハハ)!!』

 

 

 

 暴竜の咆哮と解釈不能の啼鳴。

 雄々しき(トキ)の声と狂喜の絶叫。

 四種の音色が相克し形無き爆撃となって大気を震わせていた。

 腐肉のごとき海魔の触腕が岩躯に絡んで動きを封じ、圧潰せんと戦慄(わなな)いた。

 全身の剣鱗を針山のように逆立て力技で拘束を振りほどくと、巨大な顎が軟体生物の柔い肉鎧に喰らいつく。

 腐臭と血臭入り混じる異形の血潮を振りまく海魔は、狂乱とも苦痛ともとれる金切り声を発しながら、頑強な竜の(くび)に触腕を幾重も巻きつけ渾身でもって絞め潰す。

 さらに、巨竜との接近戦を(いと)ったか、首と胴が分断された怪物を凄まじい膂力で押しのけ距離を空けると、口らしき開口部から毒々しいヘドロのような粘液の濁流を射出する。

 頭頂から首無しの断面に飛び移ったケラウノスは、烈光纏わせた閃剣を無尽に乱舞し向かってくる水鉄砲を蒸発させた。消しきれず散ったヘドロの飛沫は地上や岩の竜体に触れた途端に融解し、無数の歪な穴ぼこを形成する。吐瀉された液体は、一瞬で骨身まで浸透する凶悪な酸性を有していた。

 欲深き星が欠損を補うため天霆の内部で廻り、落下した頭部が不可視の力に持ち上げられて再び接合し据え付けられる。対する暗色の怪物も、巨竜の残した爪痕に泡立つような肉瘤(にくこぶ)を生じさせ元の偉容を取り戻す。

 両者ともに損耗を負いながらもすぐに補い、次々と手管を駆使して(しのぎ)を削る。

 突貫した地竜の体当たりが海魔を灼熱の砂丘に沈め、反撃として軟体の表面より無数乱射された毒棘が岩盤のごとき巨躯を溶解しながら突き穿つ。もう一つの胴体といって差し支えない太さと長さを誇る尻尾を地竜が薙ぎ払えば、同等の強靭さと圧倒的手数を持つ触腕の群れが迎え撃った。捉えた竜尾を無造作に振り乱し、砂塵ごと鈍重な岩躯を冗談のような高さまで浮き上がらせると、自重と筋線維の塊である触腕を駆使して陶器を砕くように豪快に叩きつける。

 隕石の衝突に匹敵する激震は大いなる揺らぎとなって離れた王の軍勢まで波及した。震源たる地形は広範囲に及んですり鉢状のステージに変貌し、沈下した蟻地獄を晒している。

 二体の巨獣が繰り広げる乱闘は、砂地を巻き上げ轟風を呼び、天災のごとき衝撃波を結界内に轟かせていた。膨大で莫大な物理・魔力の衝突は地上だけでなく空間そのものを大震させ、絶大なる負担(フィードバック)を親衛隊に強いている。

 

 

「まったく、好き勝手やりおってからにッ・・・・・・!」

 

 

 ただでさえ固有結界の維持はどれだけ捻出しても数分が限度。それ以上は現実世界が侵犯された領域を元に戻そうとする修正力で結界を保っていられなくなる。心象風景で世界を塗り替えるといっても、それは本当にわずかな間しか拮抗できないのが現実だ。

 加えて、大質量の怪物を二体も収容し、それらが無頓着に暴れ散らしている状況。ライダーたちが脂汗を掻き結界の維持のみに専心してもあと何十秒保っていられるか。

 しかし、征服王とその臣下たちは舞台装置としての役割を貫かんと足掻いていた。小世界の展開に魔力リソースが刻一刻と削られ、征服王の絆であり手足であり武具たる臣下たちの姿が一人、また一人と現世に実体を保っていられず消えていく。

 気配が消失する仲間たちの姿を王は顧みない。彼らを蔑ろにしているのではなく、イスカンダルには見届けなければならないと己に誓った責務がある。

 否、もはやそんな言葉は単なる欺瞞だった。

 彼はただ、目先の戦いを()()()()()

 最果ての海を目指した数多の冒険。その中でも心躍る戦い、心気奮い立つ旅路はいくつもあった。だが、イスカンダルという男の壮大な覇道の原点はたったひとつの物語。両手に収まる詩編の中にこそある。(ページ)に手垢がつくほど夢想を馳せたイリアス。サーヴァントとして蘇ってなお読みふけった紙上の世界こそが始まりだった。

 いま、イスカンダルの厚い胸に去来するのは、叙事詩をめくるワクワクに劣らぬ興奮である。神話の具現といって差し支えない、巨大な怪物同士のあくなき死闘。狂人と英雄が綴るギガントマキア。こんな戦いを前にして、己の不甲斐なさで緞帳(どんちょう)を下ろしてしまうなど耐えられない。

 昂ぶる気炎が活力をもたらす。気づけば笑みを浮かべていた。

 イスカンダルの瞳には、英雄の背に憧憬を抱く童心が返り咲いていた。そしてそれは、征服王だけにあらず。軍勢の多くが、眼前で繰り広げられる英雄譚に心を熱され子供のように眼を輝かせていた。

 すでに親衛隊の数は半数を切り、結界を維持する力はなくなっているはずである。それでもいまだ世界に固着せんと水際で踏ん張れているのは、男たちの意地が成す奇跡に他ならない。

 なぜなら彼らは一人の王が目指した夢のためにひとつとなった馬鹿者ども。(ツワモノ)たちが懐いた夢想は、死後になってすら途絶えることなく続いている不滅の灯火なのだから。

 よって彼らはかつての限界(ジブン)を超えていく。

 ただ、物語の決着を見たいがために。

 そして・・・・・・・・・。

 

 

「いかんな」

 

 

 黒き偉丈夫は嘆かわしげに呟く。

 溶解液と触腕の攻撃によって地竜の身体はあきこちが欠損と修復を繰り返し、最初よりもなお頑強になっていた。約1.5倍は体積を増やし、金剛じみた強度の剣鱗が各所に節くれだって刺々しい魔改造が施された有様である。竜騎士を担う彼も戦いの余波を浴びて満身創痍と化しているが、苦痛に呻くでもなく傲然とした気風を保っていた。

 対して、敵である巨大海魔もまた幾度なりとも腐肉を増強して抗っているが、修復速度は目に見えて遅く、動きにも鈍重さが現れ始めていた。いよいよ召喚維持のための魔力に底が見えてきた様子である。

 だが、ケラウノスが抱いたのは安堵ではなく危機感だった。

 勝敗は確かにケラウノスへ傾きつつある。時間が経つほど燃料不足で弱まっていくキャスター側に対し、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()光の奴隷にとってこれは当然の帰着であった。

 この地に降り立ち、サーヴァント化に伴って色々と増えた枷もおおよそ取り除かれてきている。因果の破却こそまだ不完全であるが、瞬間出力はかなりアチラに近づいていた。

 しかし。いや、だからこそ。

 頸木(クビキ)を破った天頂神が本領を発揮するのを避けねばならない。でなければ、ライダーが苦心して展開し続けている箱庭(世界)に止めを刺しかねないし、魔力の提供元である切嗣を吸い殺してしまう。いまでもかなりギリギリの綱渡りなのだ。邪竜も自分も加減などろくに利かない阿呆だから。余計な刺激を与えれば、辛うじて保っている均衡を己が手で破壊することになる。

 かといって、敵の自滅を待つほど彼は悠長ではない。

 

 

「ならば―――」

 

 

 ならば、現状扱える最低限の出力と負荷で海魔を討つだけだろう。

 何も難しいことはない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 当たり前のように命懸けを決意しながら、声なき王命を受諾した竜は主を乗せ猛然と地を駆ける。

 触腕を広げて威嚇する海魔の手前で邪竜は急制動をかけながら身を翻す。旋回の勢いのまま地を這う竜尾が砂丘を粉砕して天高くまで舞い上げた。千々に乱れる土砂の噴煙は火山雲のごとく雄大にまき散らされ、怪物たちの姿を覆い隠す。

 すると、数メートル先の視界すら封じられた土色の景色を貫き黒い砲弾が地竜に向けて放たれた。自動車サイズはある砲弾は岩の身体をしたたかに打ち付け瓦礫を飛ばすも、致命傷には至らない。破壊と再生を繰り返した堅固な身体はもはや活動する城塞に等しい。生半な攻撃程度でびくともしないのは道理だろう。

 しかし、異変は現れる。

 突如、張り付いた砲弾は散華した。まさしく蕾が開花するように、星型に開いた内側から黒い蔓が岩肌に取りつき侵食を開始する。

 植物のように見えるそれの正体は、海魔の一部そのものだった。アメーバのように自らの肉を分裂させ、敵に撃ちだしたのだ。竜体に宿る魔力を養分に、巨大な肉腫の枝は固い鱗のわずかな隙間に押し入り、間隙を拡張しながら身体の奥底へと進軍していく。

 咆哮を上げて藻掻く地竜に二の矢三の矢と追い打ちをかける海魔。いくつもの肉腫がいたるところで開花し加速度的に弱所へ群がる。極限の飢餓に苦しんでいた海魔の端末は巨獣を巡る体液(魔力)を歓喜のままに貪った。

 脈動する肉蔓が岩肌を虐げ、まるで全身が黒い亀裂だらけのような痛々しい風貌に様変わりした地竜は、やがて異形の瞳煌を明滅させ糸が切れたように停止。彫像となった邪竜の形骸は星の加護を失い、ただの岩塊として沈むように大地へ還っていった。

 砂塵網も晴れ、無窮の空を統べる一番星が顔を覗かせたとき、佇んでいたのは軟体の偉容。肉腫に割いたぶん半分ほど体躯は縮んでいたものの、敗者は塵と化し勝者は立っている事実になんの誤りもない。

 暗緑にぬめる触腕を掲げ、海魔は原始的本能のまま狂音の勝鬨を吼え猛った。

 ――ふと、体表に嵌る無数の眼球が、一斉に天を仰ぎ見る。

 マケドニアの大地に降り注ぐ灼熱の太陽。その中に、一粒の黒点を捉えた。

 否。それはまったく別のモノ。

 砂粒ほどの点は徐々に径を拡大していき、やがてひとつの輪郭へと変貌する。

 それは、神ならぬヒトが渇望した尊き偶像。

 戦装束をはためかせ、天津(ソラ)より失墜する英雄の雄姿に相違なく。

 

 

「貴様が外見通り単細胞で何よりだ。見え見えの小細工に乗ってくれたのだからな」

 

 

 挑発的な独白は、聴覚を持たない海魔に届くまでもなく虚空に溶ける。

 砂を巻き上げ視界を封じたのは、カタパルトの要領でともに投げ出された天霆の姿をくらませるためだった。無論、少し知恵を働かせればその意味を理解できるであろうが、弱点を持たない代わりに単純な思考回路しかない単細胞生物には無理な話。案の定、囮として地上に残した邪竜と戯れていた。

 だが、天からの強襲に気付かれたからには迎撃されるのは必定。身を逃す術もない空中では、ろくに防御も叶わない。彼我の距離はおよそ百メートルを切り、あと数秒で肉薄するといったところで。

 海魔はやおら頭上に巨大な口腔を向け、英雄を地獄の直通口に誘った。

 あらゆる物体を粉砕する獰猛な牙の群れが、勢いよく迎え入れた餌を粉微塵に攪拌。結果、流動食と化した餌は醜悪な怪物のささやかな栄養源になる・・・・・・はずだった。

 

 

「――本当に、単純で助かる。いっそ哀れだな。まさか自分から放り込んでくれるとは」

 

 

 不規則に軟体をくねらせて、海魔が苦痛の絶叫を上げた。

 砕けない。貫かれない。まんまと巨獣の内側に飛び込んだケラウノスは光差さない湿った闇黒で握った刃を幾十幾百と振り乱す。硬質な歯牙を、柔い肉壁を、血管を神経を臓器を、存分に乱雑に、斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬りまくる。右手の呪いなどなんの痛痒でもないように。いっそ狂乱したかのごとく、怜悧な極光を浴びせかける。

 殲滅光を帯びた剣閃は細胞を崩壊させる光の猛毒。それを(はらわた)の内から幾百と受け続ける痛苦たるや、痛覚を持って生まれたことを後悔する所業だろう。

 そして、英雄の切っ先はついに海魔の『核』を捉える。

 斬り破った肉壁の向こうで埋没していた青白い人肌の影。ガンマレイの残照に垣間見た存在はまぎれもなく魔導書を抱いた首魁・キャスターの実体だった。

 

 

「終わりだ魔術師」

 

 

 宿敵に向け死の宣告と同時に双剣を振りかざすケラウノス。

 魚眼のような目を見開き、呆然と自らに迫る断刃をただ見送るジル・ド・レェ。

 彼の胸中に在るのは恐怖でも、無念でもない。

 薄暗い体内で燦然と輝く光刃の眩さの中に、かつての懐かしい光を見たのだ。

 怨讐と憎悪に曇っていた景色から、永らく忘れていた霊基(タマシイ)に刻まれた記憶が、郷愁の地へ刹那男の意識を運ぶ。

 それは今なお色鮮やかな情景。清冽な鐘の音色。整然と居並ぶ同志たち。ステンドグラスを背景に見る、誰よりも敬愛する神の祝福を一心に得た、聖なる乙女。荒んだ戦場に凛然と咲き誇る唯一無二の綺羅星たる御方を。

 

 

(ああ・・・・・・なぜ忘れていたのか。あの日、あの瞬間。まぎれもなく祝福が満ちていた、我が生涯の絶頂を)

 

 

 悪徳を極めし魔術師は知らず落涙していた。その清らかさたるや、これまでの所業には見合わぬ代物で、ジル・ド・レェ自身も忘我するほど。

 己が愛して止まぬモノを貶められ、屈辱に塗れ、狂乱ののち自らも衆生の強欲に取り殺された愚か者は、二度目の死を間近にしてようやく思い出す。

 神にも誰にも侵せはしない、胸の内に秘められた過去までは。

 ただそれを顧み、認めればよかった。

 その気づきにようやくたどり着いて、狂気の魔術師は断罪の極光に飲み込まれた。

 

 

 

 






読了感謝。


最近になって呪術アニメをちゃんと視聴。

毎話の作画レベルが大体高水準。一部はもはや変態的。バトル描写と音楽の適合率が異常。月並みに素晴らしいとしか言いようがない。

漫画も全巻電子で買いました。アニメを見た故に序盤の描写が淡白に感じていたが未読だった渋谷事変前後あたりから超盛り上がってる。


・・・・・・フェイトに関係ないことしか言ってないので報告。塔は登り切ったよ。高難易度? 全裸待機のまま放置したが?

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