アイルーの女神   作:にゃはっふー

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今度はあの人とあのアイルーの戦い。


バトルアイルー

 目が覚める。女神と共に眠るアイルーたちを起こさずに身体を起こして、ベッドから出て身支度を整える。

 

 こんな日が来るなんて思ってもいなかった。

 

 彼女の名前はフィス。とある妖精が死に、残りカスが残った者だ。少なくても、本人はそう思っている。

 

 奇跡的に残った彼女は、残りの人生は贖罪に使うと決めていた。全ての罪の清算。その為に生きていこうと思う。例え、フィルヴィスと言うエルフは死んだとされていても。

 

 いまは主神である幼い女神とアイルーたちと共に眠りにつき、寝ぼけて起きるアイルーを寝かしつけながら着替える。

 

 今日は大切な日、Lv8とLv7。都市最強とアイルー最強がぶつかり合う日であった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

『皆さんお待たせしました。都市最強とアイルー最強決戦。実況を務めさせていただきますガネーシャ・ファミリア所属、喋る火炎魔法ことイブリ・アチャーでございます。二つ名は【火炎爆炎火炎(ファイアー・インフェルノ・フレイム)】。以後お見知りおきを』

 

『俺は司会者のガネーシャだッ!!』

 

 なぜこんな事になったかと言えば、フレイヤがなぜか、フィルヴィス関係を目を瞑る代わりに、ヘスティア側に要求してきたからだ。本人もフィルヴィスと言うエルフには興味なんて無い癖に、理由を付けておはぎとオッタルをぶつけようとしている。

 

 ヘスティアたちは渋々受け入れ、フィン、ガネーシャはすでになにも言わないと言うスタンスを取っていた。

 

 レフィーヤはフィンに対して、フィルヴィスに対してどう思っているか気になったが、いまはもう彼女になにを言っても意味は無いと告げる。むしろ彼女が知る、闇派閥関係の情報を嘘偽りなく報告してもらう事が大切だと告げる。

 

 ガネーシャも、フィルヴィスはすでに死んでいるとしている。レフィーヤは彼女が許される日まで、友人として生きるとフィスに言う。

 

 アイズたちには申し訳ないが、いまはヘスティア側の席に座り、彼女と共に戦いを見守る。

 

「……私の所為ですまない」

 

「気にする事は無いよ。君云々なんて、フレイヤは考えてもいない。時間の問題なだけだよ」

 

「ですけど、おはぎ様が負けた場合、ベル様を一日貸して欲しいって」

 

「それは死んでも嫌だけどね!!」

 

 リリの言葉にヘスティアは怒り、春姫もはらはらしながら闘技場の席に座り、アイルーたちは応援(スタミナ上げない)をしていて、ベルは静かに向かいの席、フレイヤ側を見る。

 

 向こうは向こうで不気味なほど静かだ。ファミリア全員、オッタルの応援に来た訳でも無く、ただいるだけでプレッシャーを放つ。フレイヤはテラス側の席で優雅にステージを見ているのだろう。

 

「Lvはおはぎの方が上だが、勝てるのか?」

 

 ヴェルフの言葉にアイルーたちは心配、応援、白熱ににゃおにゃお言う。

 

 全員が見守る中、その時は迫る。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 自分のファミリアを初め、観客が見守る中、二人の戦士がステージに姿を表す。

 

 一人は獣人、二つ名【猛者(おうじゃ)】オッタル。大剣を背負い、静かにたたずむ。それの反対側から、一匹のアイルーが姿を現した。

 

 腰に二本の短剣を下げ、大剣を背負いながらアイルーが現れる。

 

「……ニャ」

 

「………」

 

 お互いに無言のまま、だがオッタルは静かに口を開く。

 

「お互い、口で話す事は無いだろう。これで語れ、Lv8」

 

 瞬間、空気が変わった。

 

 観客の雑音が静まり、二人の戦士は大剣を構える。

 

「いにゃ尋常に……」

 

「……参る」

 

 試合開始の瞬間、撃音が都市に響き渡った。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 激突する刃、競り負けるのはおはぎの大剣。だが弾かれたおはぎは空に浮かび、身体ごと回転することでオッタルへと斬りかかる。

 

(なるほど、力負けたのでは無く、わざと弾かれたか)

 

 妙な炎にも包まれていない剣戟。オッタルは冷静に迫る白刃を見据えながら、身体を傾けて避けた。

 

 連続、おはぎは大剣を軸に身体全体を使い振り回す。

 

(重心を刃に預ける事で、全身を使っての攻撃。攻撃は軽いが連続した手数での攻撃。だが)

 

 Lv8。それに相応しい力での一撃は、並み大抵の威力では無い。

 

 すでにおはぎは剣戟による裂傷などのダメージは捨てている。傷を付けるのは難しく、大剣を鈍器のように扱うしかないと判断している。

 

(攻撃はできる限り避ける。弾き返してもそれを利用し、空中で体制を整えてからの死角からの攻撃。長くなるな)

 

 そうオッタルが思いながら剣の打ち合い。おはぎは空中に居ながら、剣を振るい、ずっと空中に自分の身体を固定させている。攻撃を止まず、連続の斬撃がこの数秒の間、放たれ続ける。オッタルは刃が激突した瞬間、おはぎの攻撃を地面へと弾いた。

 

(これをどう生かす?)

 

 このままでは地面に刃が刺さり、連続攻撃が止められてしまうだろう。それをどうするか見るオッタル。地面に刃が突き刺さる瞬間、おはぎはすぐに身体を使い重心を操る。てこの原理のように大剣で地面を掘り、その固まりをオッタルの顔面へと投げつける。それは刹那の速さである。

 

 迫る固まりにオッタルはすぐに固まりを片腕で破壊するが、その瞬間、大剣の柄におはぎがいない。

 

(ッ!? いまの隙に視界から外れた!? どこだッ)

 

 瞬間、腹部に強烈な一撃が突き刺さる。

 

 オッタルの身体が一瞬浮かび、その中で何が起きたか確認する。

 

(掘り起こした場所に潜み、そのまま地面を掘り進んで俺の下に現れたか!?)

 

 例の炎、ビースト化したおはぎの爪に、オッタルは理解した瞬間吹き飛ばされる。

 

 地面へとすぐに両足を付いた瞬間、ブレーキを掛けながら、迫るおはぎの大剣を弾く。轟音の嵐、一撃一撃が大気を震わせ、観客の腹に響く。

 

 観客は決して目を離せられない戦いに魅了され、静かに微笑む女神がいる。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「オッタルが押されてるな」

 

 リヴェリアはその戦いを見ながら感じた感想。すでに体格差はLvによって無い物として扱われ、かつおはぎは体格を利用して戦っていた。

 

「小さい身をうまく利用して、大剣の影やさっきみたいに地面を掘り、瓦礫をぶつける際に身体を隠す。うまく戦うな彼」

 

 フィンの言葉にガレスも納得して、戦う二人を見守る。アイズは決して見逃さないように見守りながら、剣戟が鳴りやまない。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 この勝敗はどちらかが戦えなくなるまで行われる。だからこそ、一撃一撃、重い物で無ければいけない。

 

(だが私にオッタルを攻略するほどの一撃は存在しない)

 

 ならばと、全力を出す。大剣でありながら、おはぎは大太刀の技を駆使する。

 

 数多ある狩技を利用して、応用して、オッタルへと迫るおはぎ。これでも足りない。ならばとおはぎは心を燃やす。

 

 全てを出し切る。耐久も魔力も、敏捷も器用も攻撃へと変える。

 

 轟音の中で手数を以て戦うおはぎは柔の技、対するオッタルは剛の技で対決していた。

 

(………ここだ)

 

 大太刀の構えで、鏡花の構えを取る。

 

 それは一瞬だった。

 

 カウンター、放たれた一撃はオッタルの片腕をえぐる。そのまま吹き飛ばし、鮮血が舞う。初めて舞う血に観客がどよめく中、土煙が舞う。

 

(片腕はいただいた、骨の感触がある。だが)

 

 まだかと思いながら、オッタルを見る。

 

「見事だ」

 

 そう言い、オッタルは楽しそうに笑う。

 

「久方ぶりだ、俺が挑戦者になるとは。礼を言うぞ、アイルーの戦士」

 

 そう言い、血が流れる片腕など意識せず、両腕で構え出す。おはぎはやれやれと首を振りながら、静かに構える。

 

(こちらは一撃を喰らうだけで終わりそうだな)

 

 だからと言って負ける気は無い。フレイヤと言う女神の性格を知り、ベルを渡す事はできない。ヘスティアが泣いてしまうから。

 

 お互い負ける事が出来ない中、静かに息を飲む。

 

(もう鏡花の構えは効かないだろう。だがいい、狩技はそれ一つでは無い)

 

 妖刀羅刹を使用して、おはぎはただ攻める。

 

 オッタルもまた攻める中、轟音が鳴り響く。

 

(なんだと!?)

 

 すでに傷付いた片腕で剣戟を防ぐオッタル。その瞬間、自分に向かって白刃が迫る。ここでオッタルはさらに傷を負う事を受け入れ、自分に突きを放つとは思わなかった。

 

(なめるなよ!!)

 

 すぐに大剣から手を放ち、迫る白刃の上を転がるように滑るおはぎ。

 

 それに驚愕するオッタルの顔へ、傷を付けた。

 

 だが、

 

(くっ)

 

 その瞳はおはぎを見失わず、突きを放ったまま薙ぎ払う。それにガードはできたものの、受けてしまったおはぎは数メートル先へと吹き飛んだ。

 

「………剣は回収したか」

 

 吹き飛ぶ際、剣の柄を掴み、そのまま大剣と共に離脱。ダメージを負ったものの、おはぎはすぐに立ち上がり、肩で息をしながら大剣を構える。

 

「……強いニャね」

 

「……お前もな」

 

 オッタルは嬉しそうに笑みを浮かべ、顔の血を拭い構える。おはぎは次の一撃は無いと思い、静かに剣を構え直した。

 

 そして激突が鳴り響き、それが終わるまで轟音が都市へと響き渡る。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 結果から言おう、決着は付かなかった。

 

 二人の轟音と剣戟に、闘技場が持たなかった。最終的にはガネーシャがフレイヤに泣き付き、フレイヤも、

 

『そうね、このままじゃどちらかが死んでしまう。それはいまでは無いわね』

 

 オッタルは負傷した腕を後の事も考えず行使し続け、ただの治療では後遺症が残るレベルまで負傷。おはぎは尻尾がちぎれていた。

 

 もう少し見ていたい。だがここで潰れるのは惜しいとフレイヤは思い、フィルヴィスの件もさっさと終わらせることにした。ガネーシャは自腹で闘技場を直す事になり泣いた。

 

 残念そうに呟き、試合は終了。マカロンたちのおかげで、オッタルたちの傷は癒された。やはり、腕などを治すマカロンは凄いと、観客は思った。

 

「おおーおはぎ無茶はしないでくれよっ。尻尾が切れた時、ボク泣いちゃったじゃないかーーーうわーーーんーーー」

 

 アイルーの子供たちも泣きだして、ヘスティアに抱き着いている。おはぎは面目にゃいと告げて謝る。フィスはすまなそうな顔をしたが、その頬をにくきゅうで叩くおはぎ。気にするなと告げておく。

 

 フレイヤは戦いに満足したから、フィルヴィスの件は任せるとすぐに放置、やはり興味は一切なかった。その後のヘスティア・ファミリアはいま豊穣の女主人のキッチンなどを借りて、お祝いをしていた。

 

「マザー特製のシチューよ、いただきますして、食べてね~」

 

「ベルさん、おはぎさん、お疲れさまです♪」

 

 微笑むシルは、おはぎの頸をこしょこしょ撫でる。ゴロゴロ鳴くおはぎにヘスティアは良し良しと撫でる。

 

「姉ちゃん唐揚げ取ってー」

 

「はいはい」

 

 フィスは唐揚げをアイルーの為に取ってあげて、赤子のアイルーを背負って面倒を見る。いまのフィスは大変だが、過去に、悲しみに囚われている時間は無い。

 

 子供の面倒を見ながら、レフィーヤも手伝っていた。

 

 アイズは子猫たちのモフモフを堪能しつつ、おはぎと練習試合できないかベルに尋ねたりしている。

 

 こうして都市を揺るがす騒ぎは収まらず、あのまま続けたらどちらか勝つか、酒のつまみにされながら、一日は終わるのであった。




さすがに切りが良いし、この作品はここまでかな。この後はヘスティア・ファミリアはゼノスとの共存に突き進むんでしょう。

おはぎが道を切り開き、マカロンは治して、スイーツは本をばらまいて魔法やスキルをばらまく。

フィスは罪の償いでレフィーヤと共に生きて、ベルは英雄の道を進みます。

物語は終わりますが、おはぎたちの冒険は続いて行くでしょう。

それでは、お読みいただき、ありがとうございます。

ヘスティア・ファミリア『『『ありがとうございます!!』』』
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