邪魔だゴッ太郎が原作でしたことのオマージュをやり返された結果、女神によって異世界転生する話です。▼邪魔だゴッ太郎の過去について、設定がなかったのででっち上げました。▼牛を殴るとか許せねーよなぁ!なのでアンチ・ヘイトです。原作があまりにもバカバカしいからアンチ・ヘイトというわけではありません。▼焼肉食べたい。

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あけましておめでとうございます。今年は丑年ですね。最近は天狗のお面をした男が「判断が遅い」とビンタをするのが流行っていますが、ここは原点である邪魔だゴッ太郎に立ち返ってみてはいかがでしょうか。


(自由を奪った状態で殴るなんて……!)モォォォォォ!!(やめろよ卑怯者!!)

 随分と落ちぶれたものだ。そう男は自嘲する。

 

 ──男の人生は、始まりから異常だった。男が生まれて数日後。一瞬だけ赤子から目を離した彼の親が見たのは、ピアノ線ほどまで細くされていたベビーベッドの手すりと、それを握りしめる赤子であった。

 この時は、まだ男の力が強いというだけで終わった。親は彼を恐れながらも、それでも子供だからと大切に慈しんでいたのだ。

 最初の転機は、男が初めて人を殴った時のことだった。当然、男は暴力をむやみに振るってはいけないと教育されていて、人を殴った理由も、通っていた塾に押し入ってきた強盗にとっさに反撃したためだ。

 

 ──結果、強盗は爆散した。比喩ではなく、骨に伝わった衝撃が全身に回ったことによって爆発したのだ。当然ながら警察の捜査はあったが、小学生の拳で強盗が弾け飛んだなどといった証言を真に受けることはなく、強盗の自爆テロと、それによって錯乱した生徒や教師たちの集団幻覚として事件は片付けられた。

 

 これには、両親の心も限界だった。反抗期が来ただけで、自分たちの命の保証がなくなる。そんな子供を育てることはできないと恐れた両親は、男を暗黒街、群馬へと捨て去ったのだ。

 それが、■■■■という名の男の最後であった。

 

 力こそすべての群馬県において、男は瞬く間に頭角を現した。群馬県で最も邪悪と謳われる暗黒闘技場『動物の拳利センター』における最強の戦士として王者に君臨した男だが、しかし男を妬んだ者たちのネガティブキャンペーンによって、その居場所さえも失ってしまった。

 

 そうしてどこにも行くあてのなくなった男が身をやつしたのが牛泥棒だ。依頼を受け、牛を盗むその仕事は、怪力を誇るこの男には、皮肉にも適職であった。

 そして、某日、とある牛舎に侵入した時のことだ。

 

「環境が悪すぎるだろ……」

 

 その牛舎は、あまりにもひどい環境であった。牛を、それも健康状態が大きく関わってくる乳牛を育てているにしては、あまりに杜撰な環境管理だ。建物を買ったそのままで使用しているようなコンクリートの床に、場所を固定するためではなく、苦痛を与えるためとしか思えない状態の枷。

 

「なんだ……ここは……」

 

 動物虐待でもここまで金のかかったことはしないだろうし、本当に牛を飼育しているのだとしたら異常すぎる。その時だった──

 

 微弱な空気の動きを感じる。牛に気づかれたッ!鳴き声を出されると自分の侵入に気づかれると思った男は、牛を殴ったッ!

 

「邪魔だ」

 

「モォォォォォ!!」

 

 600kgを誇る体重を持つ牛の、さらにその頭部を殴り抜くなどということは、普通ならばあり得ない。だが、一流の格闘家であれば、それすらも成しうる。まだ、ありえないという程のことではないだろう。

 

 ──もう一匹、啼いた牛がいる。今度は、殴る前に声を出された。だが、まだ間に合うかもしれない。取る手段は先程と同じだ。

 

「うるさい!」

 

 ゴッという音が鳴り響くほどの一撃。これが真実なのだろうか?しっかりとした構えからの一撃ならまだしも、流派もないただのフックで……いや、認めざるを得ないだろう。この男は、技術すら必要ない、地上最強だとッ!

 

──だが、突如として男の体が急に動かなくなった。正確には、足を撃ち抜かれたのだ。地面に崩れ落ちるはずの肉体は、しかし筋肉の力だけで仁王立ちとなって未だに地に直立している。

 

「ッ!一体何が」

 

「ギャッハッハァ!掛かったな!いくら強靭なテメエだろうと、無数の対物ライフルにゃあ勝てねえだろォ!テメエの首には懸賞金が掛けられてんだ。おとなしく死んじまいなァ!」

 

 笑い声と共に姿を現したのは、トゲが付いた肩パッドを装着したモヒカンたちだ。男は彼に見覚えがあった。かつて男が所属し、最強の格闘家として君臨していた闘技場の7大幹部の1人だ。だが、それより気になっているのは、このモヒカンの言葉。掛かったなということは、まさか。

 

「この牛たちは、罠だったというのか……」

 

 驚愕する男。だが、その心には一抹の納得もあった。

 

「当たり前だろうが!売り物にすんだったらこんなふざけた飼い方はしねえぜ!さあ、冥途の土産は持っただろう。こいつでオサラバだァ!」

「ヒャッハー!死ねェ!」

 

「自由を奪った状態で撃つなんて……!」

 

 仁義も何もないモヒカンたちの行動に驚愕するが、彼らはそんな事は気にも留めない。男を包囲しているヤクザたちの持つ対物ライフルが一斉に火を噴く。いくら男が牛を殴っても平然としているほどの強靭な肉体を持っていようと、強大な重火器には勝てないのだ。

 あっけなく、男の命が失われる。

 

 ──もう一度チャンスがあるなら……俺は……

 

 パサリと、男の被っていた帽子が地面に落ちる。ベッタリと血のついたその帽子は、男の死を否応なく想起させるものだ。

 男の亡骸は最期まで堂々と立ったままであった。末期の思いは、口に出ることはなかったのだ。銃弾の雨は、男の喉を破壊していた。故に、この地球上に、男の願いを聞き届ける者はいない。

 

 ──だが、異世界の女神には届いたッ!そう、男の魂は輪廻を外れ、異世界に転生したのだッ!

 地平の彼方が見えないほどに広々とした白い空間で、女神は語る。

 

「知っての通り、貴方は死んでしまいました。しかし、最期まで立って息絶えることを可能とした精神力と牛を殴りぬいて一切の傷がつかない肉体が失われることは、非常に莫大な損失を招きます。ですので、私は貴方を別の世界に転生させることにしました。さあ、これが貴方の望んだもう一度のチャンスです。願いを言ってください」

 

 その問いかけに、男は一言だけこう答えた。

 

「──俺は、皆と一緒にいたいんだ」

 

 

 

 

 新東暦2019年6月30日。この日こそが、かの悪逆王ミノタウロスを打ち倒して友となった大英雄”ジャマダ・ゴッタロウ”の生まれた運命の日であった。

──帝立魔導院の歴史資料、『自由を求めるために殴るなんて……』より抜粋。

 

 

 

 

 この物語は、再びのチャンスを手に入れた男が、魔王たる牛のミノタウロスを「邪魔だ」と殴り倒すまでの歴史を綴ったものである。




邪魔だゴッ太郎の漫画はシュールなギャグ漫画としては好きですが、例の団体は全く好きではありません。

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