緑に抱かれて   作:ロクロ

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これはツイッターに上がっているはずのバレンタイン4コマ漫画の補完です。ifの話ですね。
https://twitter.com/r0kuro_/status/1360710344281317381/photo/1

多分、単体で読んでもわかるとは思います。
とりあえず、アーシャはアホでお菓子好き、ソフィアはアーシャを妹みたいに可愛がっているということだけ分かってれば大丈夫です。
タイトルは語感で決めているので特にお菓子を作る丁寧な描写はありません。
そこを書いてしまうと時間が足りなくなりますし、お菓子を作ったのって中学生のときぐらいなので。


番外編
ソフィアの手作りお菓子教室


「アーシャ、いま暇?」

 

「ソフィア、どうしたの?」

 

 もうすぐバレンタインだ。私は皆にお菓子を作ろうと、材料と調理器具を抱えて隊舎にある共同チッキンに向かっていた。その道中、ボーッとしていたアーシャが居たので声を掛けた。

 

「一緒にクッキー作る?」

 

「えっ、お菓子って作れるの!?」

 

「作れるよ~。それに、作りたてだったらとっても美味しいよ。」

 

 きっと、食べたときのことを想像したのだろう。彼女の口の端からよだれが垂れてきた。

 昼食はさっき食べたばかりのはずだが、お菓子には目がない彼女のことだ。いくらでも入るのだろう。

 荷物を脇に置いて、妄想の世界に浸っている彼女のよだれをハンカチで拭う。

 

「私はてっきり、お菓子って工場でしか作れないと思ってた。」

 

 まあ、なかなか既製品以外のお菓子を口にすることはめったに無いので、そう思うのも仕方がないだろう。作るより買うほうが安上がりだし、こういった機会でもないと作ることもないだろう。

 

「どうする?一緒に作ってみる?」

 

「作る!!」

 

「じゃあ、ついてきて。」

 

 お菓子を作れることがよっぽど嬉しかったのだろう。スキップをしながらついてきた。小さいけれども鼻歌まで聞こえてきた。

 

「そんなに楽しみ?」

 

「うん!」

 

 今日のアーシャはたいそうご機嫌らしい。

 

 キッチンに着くと、アーシャがこっちをチラチラ見始めた。

 

「どうしたの?」

 

「私、それ付けないとだめ?」

 

 どうやらエプロンと三角巾のことらしい。

 今まで料理をしたことがないのだろう。別に付けなくてもいいが、付けたら可愛いだろうから持ってくることにした。

 

「私の予備のエプロン持ってくるからちょっと待っててね。」

 

 そう言い残し、駆け足で自分の部屋まで戻る。

 

「可愛いの、買っとけばよかった。」

 

 部屋にあるものは無地ばかり。私はエプロン姿を見せる相手など居ないので今まで買ってこなかった。

 しかし、人に着せるとなれば話は別だ。衣装ケースの底のほうまでひっくり返すがいいものは出てこなかった。

 あまり待たせっぱなしにしているのも悪い。仕方無しにピンク色の一番マシなものを掴んで急いで戻る。

 私がキッチンに戻ったとき、アーシャは調理器具を物色していたがすぐさまもとに戻す。そして、姿勢を正して椅子に座り、すまし顔を作っていた。

 

「ちゃんといい子で待ってた?」

 

「――っ、なにも触ってないよ。」

 

「何かを触ってたかとは聞いてないよ~。」

 

「あっ……。」

 

「今回は危ないものはなかったけど、刃物とか入ってるときもあるからあんまり勝手にいらっちゃだめだよ。」

 

「はーい。」

 

茶化して言ったのが功を奏したのか全然凹まなかった。結果的に彼女のやる気に水を差さずに済んだ。

 

「はい、これ付けて。」

 

 そう言って、彼女にエプロンと三角巾を手渡す。そして付けているところを眺めながら、私は準備を進めていた。

 エプロンに関しては悪戦苦闘しながら付けてはいたが、三角巾は角に引っかかってうまくつけれてなかった。

 彼女の苦戦ぶりを十分に楽しんだ後、私は助け舟を出すことにした。

 

「ほら、貸してみ。」

 

 そう言って三角巾を受け取り、角を避けて彼女の頭に巻く。前髪が完全に出ていて付けている意味がないが、可愛いので良しとする。

 

「よし、じゃあ、作り始めますか。」

 

「おーー。」

 

 それから、何事もなく順調にクッキーを作り始める。生地をこね、型抜きで抜き出し、オーブンに入れた。

 オーブンで焼いている最中、ずっとアーシャはオーブンの前に座って焼ける様子を眺めていた。

 もうすぐ焼きあがるという頃、ふと包装紙がないことに気がついた。きっと、部屋に置いてきたのだろう。

 

「アーシャ、私ちょっと離れるから、焦げないか様子を見てて。焦げそうになったり、タイマーなったらオーブン止めてね。」

 

「はーい。」

 

 さて、取りに行きますか。

 

 

 

    ○●○●○●○●○●○●○●○●○

 

 

 

 ソフィアが居なくなって静かになったキッチンで、オーブンの動く音だけが聞こえている。部屋には甘さと香ばしさが混ざった香りが充満していた。甘さに酔ってくらくらしてくる。

 突然、アラームの音が鳴り響いて、私は現実に引き戻された。

 

「オーブン止めなきゃ。」

 

 オーブンを止めて、中の様子を覗き見ることにした。オーブンを開けると、甘い香りがより強く部屋に広がった。

 

「おいしそ~。」

 

 きれいに焼き上がっていて、とても美味しそうに見える。思わず涎が垂れてきた。しかし、勝手に食べていいものか。

 

「食べちゃいなよ~。」

 

 頭の中の悪魔がそう私に囁く。

 確かに、一つや二つ、食べてしまってもばれないだろうか。しかし、まだ私には良識が残っていた。

 

「我慢は良くないですよ。」

 

 今度はその良識である天使が囁いてきた。良識とは一体なんだったのかわからないが、全員一致で私の心は食べる方に傾いていた。

 

「じゃあ、ちょっとだけ食べますか。」

 

「食べよ食べよ~。」

 

「食べましょう。」

 

 一人芝居にも満足し、焼きたてのクッキーに手を出す。

 

「あっつっ。」

 

 素手で触るのはだめだった。そういえばソフィアから熱いものを持つときに使うと聞いた手袋が机に置いてあることを思い出した。

 それで掴むと全然熱くなかった。

 

「いっただっきま~す。」

 

 そう言って、私は口の中にクッキーを放り込んだ。

 

 

 

     ○●○●○●○●○●○●○●○●○

 

 

 

 私は足早にキッチンへと向かっていた。

 

「結構時間かかっちゃった。」

 

 部屋を探しても包装紙は見つからず、結局購買で買うことにした。ついでに、お詫びの意味も込めて、アーシャにアイスを買っていく。

 

「ごめんごめん、お待たせー。」

 

 そう言ってドアを開けるとアーシャは見当たらなかった。物音がしたのでキッチンの裏を覗くと、手をバタバタさせて涙目のアーシャが座っていた。よく見ると、舌を出している。

 

「どうしたの?」

 

 そう問いかけながらオーブンの方に目を向けると、クッキーが一つ減っていた。それを見て彼女の行動に合点が行く。

 

「あ~、焼いてすぐのクッキーを食べちゃったか。」

 

 そう言うと、彼女は何度も顔を縦に振った。猫舌の彼女にはどうやらあつすぎたらしい。

 

「ひた、やへどひはった。」

 

 涙目になりながら、そう彼女は訴えた。

 そういえば、ちょうどアイスを買っていたんだった。

 

「ほら、アイスでも食べて冷やしな。」

 

「はひがとっ。」

 

 そう言って、アーシャは舌にアイスを当てた。それで一息ついたのか、自分で涙を拭き始めた。

 

「クッキー、美味しかったけど、とっても熱かった。」

 

「そっか、そっか。次からは気をつけようね。」

 

「うん。」

 

 正直、私はアーシャがクッキーを全部食べてることまで覚悟していたから、一つで済んだのは良かった。一つぐらいなら、かなり多めに作っているので無問題だ。

 別に、全部食べてしまって反省しているアーシャも見たかったので、そこはちょっとだけ残念だった。

 クッキーがちょうどいい感じに冷めた頃、アーシャもアイスを食べ終わったので包装をすることにした。

 

「アーシャは誰にあげるの?」

 

「えーっと、いつもはお菓子くれる人に渡してる。」

 

「じゃあ、ほぼ全員じゃん。」

 

「そそ、バレンタインだから、みんなにお返しするんだ。」

 

「でも、沢山の人に配ったら自分が食べる分が無くなるよ。」

 

「うっ……。」

 

 いい感じに悩み始めた。まだ、材料は沢山余っているので余裕はあるんだが、悩んでる姿が面白いので放っておく。

 すると、彼女が顔を上げた。

 

「で、どうするの?」

 

「でも、やっぱり、みんなに配る。」

 

 意外な答えが帰って来た。てっきり、何人かは市販のお菓子にすると言うと思っていた。

 

「頑張ったから、みんなに食べてほしい。」

 

「そっか。じゃあ、残りも包むの頑張ろっか。」

 

 そう言って、残りのクッキーを手際よく包んでいく。大量にあったクッキーだが、あっという間になくなってしまった。

 

「ソフィア、これあげる。」

 

 そう言って差し出してきたのは、さっき包んだクッキーだった。ちょっとリボンが不格好だが、きれいに包めている。

 

「ありがとっ。じゃあ、これお返し。」

 

 そう言って、私が食べるつもりだった分を差し出す。ごっこ遊びみたいなものだが、アーシャはとてもうれしそうにしていた。

 

「ありがと。」

 

 そういった彼女の笑顔は、今日一番の笑顔だった。

 

 




ツイッターには色々絵が上がっているはずなので、興味がある方はぜひ見に来てください。
本編は自分でも読みにくく感じたので、もっと読みやすくするために改善する予定です。
改善できるかどうかは置いといてください。
章管理は帰ってきてからやります。
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