GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~ 作:キョロ
メリーは趣味、夏は持ち物です。
この二つの部分にはもう触れたっけな?
では、スタートです。
「おーい、起きてるかー?」
珍しく今日はメリーに叩き起こされなかった俺は今、逆の立場になっている。
俺の部屋の正面にあるメリーの部屋の扉をコンコンコン、と三回ノックして返事を待ってからまたノックする。
だが何回やってもメリーは起きてこようとしない。
なんで、起きてこないんだろうな……。そろそろ疲れてきたよ、右腕。
「おっおーい、起きてるのかー?」
「あたしの部屋の前で何やってんのよ」
「そりゃあメリーを起こしに……、え?」
俺の左側、エレベーター方向からメリーの声が聞こえてきて思わず顔を向ける。
いきなりバッと顔を向けたことに驚いたのか、メリーは若干後退りしていた。別に逃げようとしなくても……。
「めめめ、メリー!? 寝てたんじゃないのか!?」
「バリバリ起きてるわよ。というかさっき起こしに行ったのに今起きたのね」
「……え、覚えてないんだけど」
「鳩尾に確かにヒットしたはずだったんだけどね……」
「ちょっ、起こし方雑だよ!!」
その言葉を聞いて自分の鳩尾の部分をさっと両手で隠す。そ、そういえばちょっと痛い気が……。
「今度から頭を鈍器で殴ろうかしら」お前それ殺人になるから止めてくれ。眠ったら二度目が覚めないとか洒落にならない。
でも、鳩尾殴られてってことはまた部屋に侵入されたって事だよな。……鍵、かけてるのに。
「ほら、早く任務行くわよ」
「あ、ああ。そうだな」
なんだろう、上手いこと話題の転化をさせられた気がする。
まあ部屋への侵入とか鳩尾殴られるとかいつものことだし、この際気にするのはやめにしようか。
……なんだかとんでもないことが日常の一つに組み込まれてる気がする。
自分の常識がすり替えられている気がするな、とため息をついてエレベーターにメリーと乗り込む。
「ふわあ……」
「あんなに寝てたのにまだ欠伸出るわけ?」
「寝すぎると逆に眠くなるんだよ」
「寝すぎの自覚はあるのね……」
呆れたような顔のメリーは放っておく。
今そのことについて何か言えばまた俺が最終的に貶される流れになる気がするからな。
最近ちょっと学んできたよ。
エントランスに着き、エレベーターから降りると入れ違いでサクヤさんがエレベーターに乗っていった。
なんだろう、ちょっと泣いていたような気が……。
「……誰か、行方不明者でもいたの?」
「え、なんでそんなこと分かるんだ? 確かに一人いるけど」
「神機使いがあそこまで悲しみに包まれる機会はそうないわ。特にキャリアのある神機使いだと、ね」
「すげえな……」
メリーはキリッとした顔のまま辺りを観察している。今、俺の目にはこいつが天才だと映っている。
キョロキョロと辺りを見回して、最後にエントランスロビーに残っていたゼルダとコウタの顔を見て、メリーは一つの結論に至ったようだった。
「除隊、みたいね」
「エスパー……!」
「馬鹿ね。死んでたらこんなにいつも通りの喧騒は起きないわよ」
「まあ、少しボリュームは落ちてるけど」とメリーは言った。
確かにメリーの言うとおりエントランスの喧騒はいつもと大して変わりが無い。
ここにいる神機使いでリンドウさんの名前を知らない人はいないと思うから、死亡だったらもっとひどいものになっているだろう。
……そういえば、メリーはリンドウさんがいなくなってすぐに来たからリンドウさんのことは知らないのか。
それに気付いて、俺はメリーに説明をした。
「ふうん……。でもあんまり除隊って例はない気がするわよね」
「まあ、大体死んだ後に出るようなやつだからな」
「恐らく生死が確認できていないんでしょうね。……それにしたって除隊が早すぎるわね……」
メリーがぶつぶつと呟いているが、俺には関係ない。
横を通り過ぎてエレベーターに乗り込んでいったコウタを見送ってから、俺はゼルダに近付いた。
「リンドウさん、除隊か」
「っ、なんでそれを……」
「悪いけど盗み聞きしてたのよ。……大丈夫?」
いきなりメリーが嘘を言うから俺は苦笑するしかなかった。
あの時俺たちはあらかた話がついたであろう後にエントランスに来たのだ。話が聞けるわけが無い。
というか盗み聞きが出来ていたらメリーの推理を聞く必要なんてなかった。
「私は、大丈夫ですよ。他の皆さんは私の倍苦しんでいるんです。そんな中で私まで崩れたら……。第一部隊の柱は崩しちゃいけないんです」
「……そうやって、全部一人で抱え込もうとするからあんたは馬鹿よね」
「え……」
視線が地面に向きかけていたゼルダはメリーの言葉を聞いて顔をあげた。
……瞬間、
パァァァンッ!
メリーの平手打ちがゼルダの右頬に炸裂した。
って、えええええ!? なんでだ。さっきの空気がどうやったらそんな状況になるんだ!
「辛気臭い面晒さないでよね」
「お前本当酷いな!」
「ゼルダは別よー。あんたは一生泣き寝入りしていればいいと思うわ!」
「俺は一生お前にいじられなきゃいかんのか!」
「跪け奴隷よ!」
「誰が奴隷じゃ、ボケェ!」
ぎゃあぎゃあと言い争いへと発展。ここ最近慣れてしまったパターンです。
もっとも騒いでいるのは俺だけで、メリーは俺の言葉に冷静に言い返しているだけなんだが。
「クスッ」と誰かが笑ったような声が聞こえた気がして、俺は口を閉ざした。メリーも同様に。
笑ったのはゼルダだった。メリーに叩かれた右頬が少し赤くなっているが、それを気にせずにクスクスと笑っている。
それを見たメリーもわずかに微笑みを携える。
「それ。ゼルダは明るく笑ってた方が可愛いわ」
「あー、確かに……、ってそれで殴ることは無いだろ! ちゃんと謝れ」
「ごめんね、ゼルダ。痛かったでしょ?」
「いえ、大丈夫です。今は痛くありませんので」
「俺の時は謝らないのに……!」
俺の呟いた声が聞こえたのか、メリーがハッと鼻で笑ってきた。マジむかつく、こいつ。
とりあえずゼルダの右頬にポケットの中に入っていた湿布を貼ってやる。その後から取れないように紙テープを湿布の周りに貼った。
「きゃ!? ……夏さん、いつからそんなものを持ち合わせてるんですか?」
「メリーに殴られるようになってから。応急処置が上手くなったよ……」
「良い前進じゃない」
「よくねえよ! お前のせいで変なスキル増えたんだからな!」
「変なスキル……? サクヤさんも出来ますよ?」
「あの人衛生兵だから! 俺、関係ない一般兵だから!」
もしかしたら俺は今日から衛生兵と名乗ったほうが良いのかもしれない……。
いや、待て。でも俺が覚えてるスキルは殴られた時用だ。本当の怪我の時は慌てる他に出来ることがないぞ。
……せっかくだから、覚えようかなあ。
「じゃあこれも治せるんだ?」
「ぶふぅ! いきなり、鳩尾はないだろ……」
「ほら、治してみせなさいよ」
「人前で出来るかよ! 服脱がなきゃ無理なんだから!」
「きゃーへんたーい」
「お前が言い出したんだろ! そして棒読み止めろ!」
早くも俺の喉と鳩尾がご臨終になりかけてるよ。
誰かこの悪魔を止めてください……。俺の出来る範囲でのお礼をするんで。
出来ること、あるかな。あると信じよう。
「ところで、お二人は任務に行かないんですか? 私はもうしばらく時間がありますが……」
「「あ、忘れてた」」
「……息ぴったりですね」
呆れたような苦笑をするゼルダ。
えー、なんでこいつと息が合わなきゃいけないんだよ。
「えー、なんでこいつと息が合わなきゃいけないのよ」
「おまっ、酷くないか!? 俺も思ったけど!」
「人のこと言えないじゃない」
「ほらほら。お二人とも早くヒバリさんのところに行ってください」
「おっ、押すなああああ!」
「わっ、とととと!」
ゼルダが強引に階段の下にあるカウンターに連れて行こうとする。
ちょ、ま、階段あるんだって! 階段の前で押されたら確実に事故が起こるんだって!
ゼルダが常識人だと思ってたのに、意外と変なところで常識がなかったようです……。
無論、階段の前で押され続けたら目に見えた結果が起こるわけで。
「のわあああああああ!!」
「い、ああああああ!?」
「きゃあああ! 夏さーん! メリーさーん!」
俺たちは雪崩のように階段から転落した。
そして気付いたら階段の下にいた。落ちたからだね、そうだね。……頭、痛い……。
あとなんでか分からないけどすごく重い。うつ伏せになっている状況なんだけど、背中に重量を感じる。
「お、重い……」
「おっ、重い!? 失礼なこと言わないでよ! 一応女よ!」
ボコボコとメリーは背中に乗ったまま頭を何回も殴ってきた。お前のパンチは結構効くから連続は勘弁してほしいな……。
というか一応はないだろ。一応は。
「早く降りろ! 重いんだよ!」
「また言った! 半殺しにするまで降りないわ!」
「うっさい、女捨ててるくせに!」
「人に言われたら腹が立つのよ!」
「理不尽だ!」
この後、俺はヒバリちゃんとゼルダに止められるまで頭を殴られていました。
正直に言うと、依頼の時の記憶がありません。殴られ過ぎたよ……。
夏さんに似合う服がなかなか見つかりません。
なんででしょうかね、なんか似合わないんです。
色々組み合わせを探してみようかと思ってます、いいのあるといいな。