GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~   作:キョロ

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ぶっちゃけコウタは脇役みたいなもの。
じゃあなんでタイトルに入れたんだという話になりますがね。

では、スタートです。


15、メリーと俺、とコウタ

 ピリリ ピリリ ピリリ ピリリ……

 

 俺の部屋の中に鳴るはずがない目覚まし時計の音が響き渡る。

 もういいや、このままにしておこう。なんか止めるのがとても面倒だ。俺はそう決め込んで包まっていた毛布の中にさらに潜り込んだ。

 えーっと、で、今何の夢見てたんだっけ。

 

 

――――――――――

 

 

「………」

 

 遅い。遅い。遅すぎる。

 そろそろ忍び込んでセットしておいた目覚まし時計が鳴る時間だ。いや、もう鳴っているかもしれない。

 だというのにあの馬鹿が一向にエントランスから起きてこないではないか。

 これはいくらなんでもおかしい。

 

「……まさか、ここ数日で耐性がついた?」

 

 思い付いて、すぐにそれを否定する。あの馬鹿に限ってそんなことは有り得ない。

 何もできないような、馬鹿馬鹿しい笑顔だけを振りかざしているあいつにそんなことなど……。

 

 あたしには分かる。あいつの笑顔は本物だろうが、時にそれは偽の仮面へと変わると。

 理由が何なのか知らないがそこに『偽』があるなら彼もある意味であたしと同じなのだろう。

 きっと、そこに潜んでいる闇にあたしは惹かれているんだろう、と心の中で決めつける。

 類は友を呼ぶ。つまりそういうことなのだと。

 

「……次からは忍び込んで鳩尾のほうが良いかしら」

 

 それに耐性がついても困るが目覚まし時計が駄目なら手段は限られてしまう。

 これは毎朝が面倒になりそうだとあたしはため息をつくしかなかった。

 

 そんなあたしを見て、目の前にいた人が苦笑する。

 

「大丈夫ですか、メリーさん。大分イライラしていますが……」

 

 目の前にいるのは極東支部のオペレーターである竹田 ヒバリだ。時々あたしが愚痴を溢したり、夏のいじめ談などを語っている相手でもある。

 あたしは基本的に人のことを呼び捨てにするのだが、彼女は『ヒバリさん』と呼ばせてもらっている。

 敬語は使っていないが。

 

「馬鹿夏が来ないのよ! 遅すぎるわよ、いくらなんでも!」

 

「……また目覚まし時計を忍び込んでセットしたんですか?」

 

「そうよ、なのにあいつ起きなくて……」

 

 そこまで言ってからあたしは口を閉じた。

 確かヒバリさんにはいじめ談は話しても、部屋に忍び込んだということは話していないはずだ。

 一体、どこからそんな情報をつかんだのか。やはり、オペレーターは情報が集まりやすい場所なのだろうか。

 

「誰から聞いたの、それ」

 

「本人からです。『あいつまた俺の部屋に勝手に入って目覚ましを~』とこの間愚痴を溢してましたから」

 

「……」

 

「? メリーさん?」

 

「ふふっ……、あとで八つ裂きにしてあげるわ……!」

 

「や、やめてください! そんなこと!」

 

 あたしの言葉を真に受けたのか、ヒバリさんが慌てた様子で制止をかける。なかなかに面白い人だ、この人は。

 あたしはヒバリさんの様子を暫し眺めてから笑った。

 

「嘘よ。そんな残酷なこと人間相手にさすがにしな……」

 

「っ、メリーさん!?」

 

 ドクリ、と胸が痛んだ。

 違う、違ウ、チガウ。その言葉は偽りだ。『アレ』は忘れちゃいけない。いや、『ソレ』はあたしの記憶じゃない。『ソレ』は、お前の……。

 痛みに耐えきれず、カウンターに手を置いたまま思わず膝をついてしまう。

 それを見てまたヒバリさんが慌てているようで、普段より大きめの声が頭上を通る。

 

「ヒバリちゃん、どした? ……って、大丈夫かお前」

 

「……なんだ、タツミか」

 

「呼び捨てにするなよ! というか心配してやったのにそりゃないだろ」

 

「出会い最悪なんだから不仲になっても仕方ないと思うけど。……よっと」

 

「ん、もう立っても平気なのか?」

 

「ただの眩暈だから大丈夫よ」

 

「突然の眩暈ってとてつもなくヤバイ気がするんだが……」

 

「ヒバリさん、暇つぶしになる任務あるかしら」

 

「無視するなよ」

 

 隣でタツミがため息をついていたがそれを無視する。まあタツミとそのまま喋って暇をつぶすのもいいのだが、それはそれで疲れるものがある。途中で本当の悪口に変わってしまいそうで怖い、というのもあるのだが。

 ヒバリさんがカタカタと端末を叩いて、手を止めた。

 どうしたんだろうと思い、ヒバリさんの顔を覗き込むと少しの驚きが顔に出ていた。

 

「メリーさんに特務が出ているようです。よって、本日は別任務ですね」

 

「特務? お前、支部長にいきなり目をつけられてたのか」

 

「まあ支部長に連れてこられたようなものだから」

 

 ここに来るにあたっての条件。それの一つが特務だった。

 向こうが来ないかと誘っておいて、更に向こうが条件を提示する。

 随分とおかしな話ではあるが退屈しのぎになることは違いないし、何よりあのころのあたしにそこまで情報整理の能力はなかっただろう。

 死人同然だったしね、と懐かしい思い出のように思い出してすぐにそれを振り払った。

 

「特務が出ているなら、それに行かないといけないわね。受けさせてもらうわ」

 

 なんであたしは待っていたのだろうと思わずため息をついてしまった。

 

 

――――――――――

 

 

「……いない」

 

 俺がエントランスに来てまず思ったことはそれだった。

 いつも居る筈のソファにその姿はなく、だからと言って部屋に籠っているわけでもなかった。

 おかしいな、おかしいな、と思いながらヒバリちゃんの元へ俺はゆっくりと歩いていった。

 え、目覚まし時計はどうなったのかって? そんなものあったっけ?

 

「おはよう、ヒバリちゃん。メリー見なかった?」

 

 そう、俺が先程から探しているのはメリーだった。

 いつも何故か俺と一緒に依頼へと向かってくれている、今やパートナー同等の存在の凶暴かつ冷酷な後輩であるはずの新型。

 ……なんか最後の方が愚痴になってるな。

 

 聞いてみてから気付く。

 いつもここに立っているヒバリちゃんにメリーの居場所が分かるわけが無いと。

 馬鹿すぎる質問しちゃったなあ、と頬を掻いているとヒバリちゃんはにっこりと笑った。

 

「メリーさんなら個別任務がありましたので、そちらに向かいましたよ」

 

「そっかー。って、えええええ!?」

 

 あまりにもヒバリちゃんが普通に言うものだから一瞬流しかけたぜ。危ない。

 まあ、期待の新型だもんね。いつまでもこんな旧型と同行させるわけにはいかないよね……。ちょっと悲しい。

 でもいきなり個別任務ってどういうことだろう。そういうのってなかなかないと思うんだけど。

 

「個別依頼ってどんな内容の?」

 

「私には分かりません」

 

「ヒバリちゃんが分からない? それってどんな依頼……」

 

 そこまで言ってみて少し考え込んでみる。

 むむ、こういうのなんか噂で聞いたことがあるぞ。

 依頼内容は極秘で、実力を持ったもので上からの信用がバッチリの人に与えられる特別任務。略して特務! ……うん、噂だよ。俺は受けたことないしね。

 

「いないものは仕方ないか……。じゃあ俺の依頼ってある?」

 

「はい、ありますよ。……愚者の空母でクアドリガの討伐ですね」

 

「ク、クッ……。クア、クアドリガ?」

 

「随分時間かかりましたね」

 

 仕方ないじゃないか。喉に痰が詰まってたんだよ。……うん、嘘だ、ごめん。

 初めて聞く名前だったからなかなかすぐに言えなくって……。

 

「そのー、クアドリアってどういうアラガミなの?」

 

「名前が間違ってますよ。それに関してはご自身で調べてください」

 

 うっ、ヒバリちゃんににっこりと言い捨てられましたよ!

 まあこの時間帯が人の利用が多い時間なんだろうな。俺の後ろに数人並んでるし。

 ちゃんと並んでる人がいるって律儀だよなー。メリーだったら絶対割り込むわ。

 

「分かった。自分で調べてみる」

 

「ではお気をつけて」

 

「んー」

 

 クアドリ……ガ。クアドリガねー。

 まあ俺はショートブレードで、サリエルの剣パーツだから特に属性とかないんだけどね。

 ヴェノムでどうにかなる相手だと祈ろうか。

 

「そういえば、最近ターミナルの神機欄開いてないな」

 

 ここ最近の依頼がサリエルばっかりだったからもしかしたら強化できる段階までいっているかもしれないな。

 帰ったら確認することにしよう。

 

「よしっ、頑張らないと」

 

 メリーがいなくたってやってみせる。

 俺は少し緊張していた。

 

 

――――――――――

 

 

 クアドリガ。

 人が造り出した戦車を喰らったのか戦車のような形をしているアラガミ。

 俺がちゃんと見てたのはそこの部分だけだった。というか記憶できたのがそこだけ。

 弱点属性、なんだっけな……。神属性だといいんだけど。

 

「にしても大きいな……」

 

 目の前にドンッと威厳ある姿で立っているクアドリガ。なるほど戦車だわ。

 なんかてっぺんあたりの両側に四角いのあるな。あれなんだろう。

 

「こいつって、やっぱりミサイルで攻撃するのかな」

 

 ぼんやりとクアドリガを観察しながらそう思う。

 うーん、メリーが今この場にいたら「早く攻撃しなさいよ!」って言ってモルターぶつけてくるんだろうな。

 現実で本当に起こりそうなことだから笑えないや。

 

「さて、どこが弱点の部位だろう」

 

 やっぱり正面にある胸みたいな場所かな……。

 考えているとさっきまで気になっていた四角い部分が開くのが見えた。お、あれって攻撃に使うところなのかな。あ、なんか出てきたー。

 って、

 

「ミサイル!?」

 

 シュンシュンと放たれるミサイル。片方で三個、二つ合わせれば六個のミサイルがクアドリガの周囲に放たれている。俺の真上にもミサイルが一個飛んできている。

 まだ着弾には時間があるからここは装甲よりも回避のほうが良いだろう。

 

「よっと」

 

 ステップを踏んで軽々と避けた後、クアドリガの正面に斬撃を与える。

 

「あ、あれっ?」

 

 カンカンと悲しげな音が響く。

 いつも通りの手ごたえの無さだったね! 気にしないで別の場所を狙うことにしよう。

 たとえば、なんか骸骨がついてる頭みたいなところとか、さっきのミサイルが出ていた四角とか。

 

 ……決めた、頭狙おう。なんか面白そうだし。

 そうと決まれば善は急げ、だ。さすがに普通に斬ってるだけじゃ届かない部分だからジャンプしないと。

 

「よい、しょっ!」

 

 一回のジャンプでも届くなんて、空中ジャンプのスキルが無い人にもお得だね! なんか良心的。

 頭を斬ればいい感じの手ごたえが返ってきた。俺はこれを待っていたっ!

 空中からの落下の前に空中ジャンプのスキルを活用して空中に留まる。

 そのまま斬り裂き、地面に着地……できずに右足首を挫いた。

 

「い゛っ!?」

 

 い、今のはヤバイ。アラガミの攻撃に引けを取らないくらい痛い。足を挫いたのはしばらくぶりだな……。

 新人の頃に一人なのに最初のところでカッコつけて降りようとして足を挫いたことが三回ある。

 あれは苦い思い出だよ、本当に。

 

「お、お前なかなかやるな!」

 

 決して空中でバランスを崩したとかじゃないんだぞ!

 と、途中でクアドリガが俺に体当たりしてきて体勢が崩れたんだ。ほ、本当だぞ!

 

「お返し千倍な!」

 

 足を挫くのって予想以上に痛いんだからな。小さい時もたくさん挫いてたからちょっとは慣れたけど。

 足が違うクアドリガには別の痛みで分かってもらうからな。覚悟しろよ。

 

「ショウ、タイムだ!」

 

 英語って、難しいよね。

 

 

――――――――――

 

 

「くあっ、疲れたー」

 

 エントランスのソファで体を伸ばしてから置いておいた冷やしカレードリンクを飲む。今日も美味い。

 エントランスで俺がグダグダと過ごしている理由は一つだ。

 

「遅いな、メリー」

 

 メリーの帰りを待っているんだ。

 さすがに依頼の難度が違うだろう特務とやらは相当な内容の様で、メリーはまだ帰ってきていないのだ。

 ゴクリと最後の一滴を飲み干してから出撃用エレベーターの方をちらりと見る。開く気配のないエレベーターに期待ばかりしてしまう俺は馬鹿だと思う。

 ……一人での依頼離れていたはずなのに、いつの間にか俺は寂しがり屋になってしまったようだ。

 

「情けない話だよな」

 

 小さい頃は近所の子と公園で遊んだりしたけど、まだ寂しがり屋じゃなかったはずだ。

 ただ、あのころはあんまり楽しくなかったような気がするな……。

 昔の記憶なんてもうほとんど覚えてないことが多いけど。

 

 新しい冷やしカレードリンクでも買いに行こうかなと悩む。でも離れている間に帰ってきたら待ってた意味ないよな……。

 するとプシュッと音がして出撃用エレベーターが開く。俺は思わずソファから立ち上がった。

 

「疲れたー……。あれ、夏さん。どうしたんすか?」

 

 エレベーターから出てきたのはコウタだった。

 コウタとは時々話したりしている。お互いの愚痴なんだけどね。

 

「あー、なんだ、コウタか」

 

「酷い!!」

 

 おっといけない。ついついコウタに当たりそうになってしまった。って、どんだけイライラしてるんだよ、俺。いつの間にかメリーが近くにいるのが当たり前になってるな……。

 また座り込んでぼんやりとしているとコウタが何か気になったものがあるらしく俺に寄ってきた。

 うわっ、なんだ?

 

「それ、なんです?」

 

「それ? ……ああ、これか」

 

「そうそう。それ、飲み物ですか?」

 

「うん、飲み物だね」

 

 コウタが興味を持ったのは俺が飲み終わった冷やしカレードリンクの缶だった。

 メリーに指摘されてこの前人が分かれる飲み物って気付いたんだよね。

 極東支部でこれを好きな人って、俺とリッカさんの他にだれがいるんだろうな。ちょっと気になる人数だよ。

 

「冷やしカレードリンクって言ってな、俺が大好きな飲み物だ」

 

「へえ……、これが噂の」

 

 心なしかコウタの目が少し輝いているように見える。そんなに食いついてきた人は久しぶりだな。

 というか噂になってるんだ、冷やしカレードリンクって。どんな噂になっているのかが気になるな。

 「次のお土産に持って帰ろうかな……」誰のためかは聞かなくてもわかるけど、これはひょっとしたら止めたほうが良いのかもしれない。

 

「あー、コウタくん。これは人によって味覚が異なるものだから止めたほうがい、」

 

「ありがとうございました! いやー、いい参考になった」

 

「見事なスルー!?」

 

 そのままどこかへコウタくんは去っていきました。あー……。

 コウタは妹想いだから妹に買って帰るお土産なんだろうけど、これはやっぱり止めたほうがよかったのかな。

 ……フラグが立ったな。ドンマイ、コウタ。

 

「帰ってこないなー……」

 

 今日はおとなしく部屋に帰っていたほうが良いのかもしれないな。

 ふう、とため息を吐いた。俺って振り回されてばっかりだなー。

 

「退屈しなくていいけど」

 

 意外と俺はメリーが来たことで起こっている非日常を楽しんでるのかもしれないな。

 俺はそう思って苦笑した。




コウタにフラグが立ちました。
うん……。まあ、ドンマイ。

最近お気に入りが増えてきています。
あと向こうのゼルガーさんのほうでも閲覧数が増えてきています。
ありがたいことです……。いつも読んで下さってありがとうございます。
これからも頑張って参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。
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