GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~ 作:キョロ
本日の天気。多分快晴。外に出てないから分かりません。
本日の気分。最悪です。鳩尾に朝から一発とか……。
本日の後輩。絶好調。お前一回道徳を学んできたほうが良いと思うぞ。
「まさか夏から扉を開けて出てくるとは思わなくて……」
顔の前で両手を合わせて「ごめんね」と言ってくるメリー。
残念ながら俺から見てもそれは謝ってるように見えない。うん、謝る気なんてないんだろうね。
ため息を一つ。きょとんとするメリー。お前のせいだよ。
「自分から出てこないと扉が壊れるからだよ。蹴るなって言ってるだろ」
「だって手で叩いたら痛いでしょう?」
「知ってるか? お前のせいで俺の部屋の扉ちょっと凹んでるんだぜ?」
「良かったじゃない。後でなんかお祝い持ってくわね」
「ちげーよ! そこは弁償しろよ!」
「完全に壊れたらね」
「ひでぇ……」
こいつは俺の部屋の扉を完全に壊す気なのか。
……ああ、なんだか頭が痛くなってきたような気がする。
いつだって頭痛の原因はこいつなんだから皮肉なもんだよな。
俺たちは今、エントランスにいる。ヒバリちゃんが見える下の階の隅っこのソファだ。
もうすっかりここが定位置になってるよなあ、としみじみ思う。
前の俺なら、受注、依頼、帰投、部屋直行だったからな。ここでゆっくりと時間を過ごすなんてなかった気がする。
「――実戦にはいつ復帰するんですか?」
「……まだ、未定です……」
ふと、聞こえてきた声に耳を傾ける。
聞こえてきたのはゼルダとアリサの声だ。俺たちのいるところに見られないということは上の階ということか。
……そうか、ついにアリサが復帰したのか。前の会話を思い出してちょっと嬉しくなった。
あいつも立派なこのエントランスの喧騒の一員だからなー。また騒がしくなるといいな。
メリーはその方向――ちょうどメリーは背を向ける形になっているが――をちらりと見た後、ブラックコーヒーを一気飲みする。
そういえばメリーはアリサに会ったことないんだよな。後で会わせてみようか。
考え、俺も持っていた冷やしカレードリンクを一気飲みした。うむ、今日も美味いぞ。
「おい知ってるかよ。あの壊れた新人」
……あは、おかしいな。一気に不味くなっちゃった。
こういうのは何て言えばいいんだろう。後味が悪いって言うのかな。
俺がいる位置からはよく見える。二人組の男だ。名前は知らないし、話したことはないけどまあ第五部隊とかかな。そこらへんはあんまり詳しくないけど。
「知ってるに決まってるだろ。リンドウさんを閉じ込めて見殺しにしたヤローだろ」
「やっと復帰したんだってさ」
「マジかよ。俺は閉じ込められたくないねえ」
「違いねえな!」
「さあて、仕事行こうぜ」
いるよな。こうやって陰口を叩くやつって。気に食わないなら正面から嫌なところを言ってやればいいのに。弱い人間だ。きっと勇気がないんだろうな。
態々聞こえるように悪口言ってるくせに、正面からは言えないのか。
身を乗り出して反論しようとするゼルダがみえた。
「わっ、悪口なんて――!」
「ぎゃっ?!」
「いでっ?!」
二人組の頭に、それぞれ空の缶がヒットする。
片方はブラックコーヒー。買ってからそれほど時間が経っていないからまだ温かさが残っているだろう。
片方は冷やしカレードリンク。持っていた手が冷たいから冷気は残ってるだろうな。
エントランスがシン、と急に静かになる。誰もが呆然と立ち尽くし、投げた方と投げられた方の顔を比べ見る。
「……あら、良い腕してるじゃない」
「褒め言葉と受け取っておくよ」
「しかも全力で投げてたでしょ」
「人のことは言えないんじゃないか?」
「ええ。でも本気じゃないわ」
一切の感情を顔に出さずに、無表情でメリーは淡々と言葉を告げている。結構冷静にそれを返している俺も無表情なんだろうな、と思ってみる。
……なんだかんだ、影響されてるんだなあ、俺。
メリーは急ににっこりとした笑みを浮かべ、二人組に顔を向けた。
手に持っているのはまだ飲んでいない、開けたばかりの、熱々ブラックコーヒーが二本。
「これ、あなたたちにかけたらきっといい悲鳴が聴ける気がするの」
「……ばっ、ふ、ふざけんじゃねえよ!」
「なんでかけられなきゃならねえんだよ!」
ギャラリーと同じように呆然としていた二人組は自分たちに何をされるか分かったらしく、慌てて声を荒げる。
にっこり笑顔のメリーが止まる。笑顔も、止まった。
「黙れ。雑魚が叫ぶんじゃない。……腹立たしい」
「な、なんだよ、さっきの悪口のことか!? お前は庇うってのかよ! あいつのしたことを!」
「ゆ、ゆゆゆ許せるとでも思ってんのかよ!」
「残念。あたしはそれ知らないから庇うも何もないの」
「ただ、イラついてね」そう告げるメリーの姿は正しく悪魔。
こういうときばかりはこいつが黒のコートを着ていてよかったと思う。とてもドスがきいている。
きっと彼らにはメリーの背後に死神を見ているだろう。
「屑共め。今からここで喰らってやろうか?」
「はっ!? 人間だぞ、俺は! そんなこと可能だと思ってんのか!?」
「この人外め! てめえは外道だよ!」
「ええ、あたしは既に人の道を踏み外しているわ。……だからこそ、これはただの脅しじゃなくなるのよ」
冷え切った目で二人組を見据えるメリー。
冷や汗を流してガチガチと歯を鳴らしている二人組。
どちらが今優位に立っているかは誰が見てもわかるだろう。
「ほら、マグマのプレゼントよ」
「っ、ぎゃあああああああ!?」
「あっ、あちいいい!! てめっ、なにしやが」
「何をしている! 朝から騒々しい」
……うわあ、俺にとっての悪魔来たよ……。
いつだってメリーの関わっている騒動を止めるのは上官の役目の様です。
上官……、ツバキさんは対峙しているメリーと俺を見てため息を吐く。
そして熱々のブラックコーヒーをぶっかけられた二人組を見て目を見開く。
「さっさと着替えてこい。だらしないぞ」
「くっ、……はい」
「ちっ、……覚えてろよ……」
内心で「覚えるかよ」と反論しながら去っていく二人の後姿を眺める。
それにしても酷い姿だ。もうあの服は臭いと色で使えないだろうな。
ツバキさんは俺たちを見て、もう一度ため息をついた。
「またお前たちなのか……。どうしてこうなったんだ」
「はい。アリサの悪口を言ってたので腹が立って空の缶を頭にヒットさせました」
「空? だがあの二人はコーヒーを被っていたぞ」
「あたしがそれを引き継いで、脅した後にかけました」
「……お前ら……、少し行動を慎め。そろそろ減俸までいくぞ」
「えぇっ、それは困る!!」
「相変わらず金欠ねえ……」
隣でメリーが呆れたように呟いているけど、俺にとってはとっても大事な問題なんだぞ。一番脅す方法として最適だよ。
俺の心情を察したのかメリーがため息をついた。ひでぇ。
「ところで、」と俺はさっきのメリーの発言を聞いて疑問に思ったことを聞いてみた。
「お前、『外道』って言われて肯定してたよな? それに『喰らう』って……、どういうことだ?」
「っ、」
苦いものを噛んだかのようにメリーが顔を歪める。露骨に嫌そうだ。
(多分)困り果てているメリーに助け舟を出したのは、階段から降りて来たゼルダだった。
「『外道』は夏さんいじめのことですよ。『喰らう』のは部屋に忍びこんで食物と金品を漁るから。そういうことですよね?」
「……ええ」
「なんか前半は肯定してほしくなかった!! しかも後半は犯罪だよね!?」
「あんたの部屋のジャイアントトウモロコシは頂いた!!」
「既に犯罪は起こってた!!」
なんてこったい。最近ジャイアントトウモロコシの数が少ないと思ったら……。
あれ、食べにくいけど結構美味しいんだぞ。俺は大好物だ。
「ともかく!!」
ツバキさんが突然大声を出したので思わず体が縮こまる。
弱い立場の人の反射神経だよ! ……はあ。
「派手な行動は控えろ。ただでさえ問題が多いんだ、お前たちは」
「分かりました」
(あれ、俺も含まれてんの?)
心外だ。俺はメリーと一緒にいるだけなのに。
確かにさっき一緒に缶投げたけどさ……。それだけで、っていうのは酷過ぎないか?
え、まず缶を投げるな? いいだろ、別に。みんなもゴミ箱に向かってよく投げるじゃんか。それと一緒だよ。
「分かったなら仕事に戻れ」
「はーい……」
「はい」
メリーの投げやりな返事に、ツバキさんはまたため息をついたがこれ以上いうことは無いらしく去っていきました。いつもご苦労様です。
「さて、」と俺は意気込む。すっかり忘れてたけど依頼行かなきゃいけないよ。
「仕事行こうぜ、メリー」
「あら奇遇ね。あたしも今言おうとしてたの」
「いや、これで他のこと言ったら職務放棄だからね」
「ヒバリさん、何か任務あるかしら?」
「華麗なスルー!!」
いや、考えろ俺。無視なんていつものことじゃないか。気にしてたら俺の精神が持たない……。ぐすん。
ヒバリさんは落ち込んだ俺に対して苦笑しながらもカタカタと端末を操作する。
そ、そうだ。ここは依頼でこの俺のストレスを解消っ!
「オウガテイル三十体の討伐ですね」
えー。
そういえばこの小説ではメリーさんはかなり強い設定です。
そしてメリーさんは私の操作キャラです。
めちゃくちゃ弱くなります。私の腕が悪いからだねっ!
……ごめんね……。