GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~ 作:キョロ
ピロリロリン ピロリロリン ピロリロ ピッ
「……もしもし」
俺は今、とても機嫌が悪かった。
なんでかって言われれば、それは携帯のせいとしか言いようがないんだけどな。
今日はメリーに目覚まし時計がかけられることもなく、自分のペースで起きようと思ったんだけど、その代わりというかのように携帯が鳴った。
目覚まし機能が使われたわけじゃない。普通に着信が来たんだ。
新手の起こし方かと思い、イライラしながら携帯の向こうの人に問いかけたのだが、
『やあ、夏くん。おはよう』
電話の相手はサカキ博士だった。
思わず開いた口がふさがらない。二十秒ぐらいは開きっ放しだったと思う。口が渇きまくった。
「え、ぁ、おはようございます」
『うん? 寝起きだったみたいだね、すまない』
「いえ、全然大丈夫です!」
『そうかい? そうだ、とりあえず後で来てくれるかな』
なんかいきなり話の方向性が変わったような気が……。さすがペイラー・サカキ。何を考えているのかさっぱりわからないぜ!
なんで俺の周りの人たちは奇想天外な方が多いんでしょうか……。もうちょっと、まともな人……。ゼルダ、カノン、サクヤさん、コウタ……。あと、誰だ……。
……うん、もう考えるのを止めよう。悲しくなってきた。
っと、で、あとで研究室に来てほしいって言うことだったっけ?
特に俺には損はなさそうだしなー。行ってみても大丈夫かも。何を仕出かすか分からないから、頼み事はサカキ博士限定で利益を計ります。
汚いとか言わないで!
「分かりました。後で行きます」
『うん、ぜひ頼むよ。できれば任務前に来てほしいね』
「はあ……」
つまり今すぐ来いって事ですかね。酷いお方だ。
俺の生返事の後に電話は唐突に切れた。酷いお方だ!!
生返事にも似たため息を、切れた後に俺は大きく吐いた。どう考えても厄介事の臭いしかしないね。これからはサカキ博士の依頼は全部断ったほうが良いのかな?
「忙しくなりそうだ……」
ぼんやりと呟きながら俺は部屋を出た。
メリーは扉を叩いても出てこなかったからもうエントランスにいるんだと思う。俺にとってはちょうどいいことだ。
メリーが本当に部屋にいないことを確認してから、俺はサカキ博士の研究室があるラボラトリへと向かった。
――――――――――
「やあ! よく来てくれたね」
「ど、どうも」
俺は今、サカキ博士の研究室にいる。だが体勢がヤバイ。
研究室に入って一歩進んだところ。そこで俺は歩を進めるのを止めていた。
何故か。サカキ博士に進行方向を断たれていたからだ。
サカキ博士は俺の目の前に立ち、何が面白いのかズイッと身をこっちに向かって乗り出してくる。
当然俺が仰け反らなければ男同士でアレをしてしまうわけで。……いや、してないからな!?
今現在、俺は大体二分は軽く仰け反った状態で固まってます。いい迷惑だよ!
「な、何の用ですか」
「ああ、そうそう。そのことなんだけどね」
サカキ博士がようやく元の姿勢に戻してくれた。それと同じく俺の姿勢も元に戻る。
うあー、腰が死にそうだ。いつも仰け反ったりしないからな……。いや、なかなかそんな機会に恵まれることはないし。恵まれたくないけど。
右手で腰を擦りながらサカキ博士の話を聞く。腰が痛いので手短にお願いします。
「実はコアを採ってきて欲しいんだよね」
「……コア? コアって、アラガミの?」
「うん、そのコアだよ」
俺たち神機使いはアラガミを倒したときに必ずコアを回収する。俺はいつもメリーにやってもらってるんだけどね。
コアはアラガミを動かしている、俺たちで言えば脳と心臓が合わさったようなところだ。
アラガミはコアを摘出される事で霧散する。いずれ集まるだろうけど。
回収されたコアは外部居住区の対アラガミ装甲になったり、新しい神機になったりする。
「サカキ博士。そんなもの何に使う気ですか」
「近々研究で入用になりそうでね。夏くんにこれから集めてもらおうかと」
「……まさか、今回だけじゃないって事ですか?」
「うん、そのまさかだよ。頼めるよね?」
またズイッと身を乗り出してくるサカキ博士。一瞬だけ反応が遅れた。は、鼻を何かがかすめた気がするけど、き、気にしない!!
と言うかこれ、脅されてるわけとかじゃないよね? 脅されてるの、俺?
……つまり絶対協力してもらうってことだね。酷いお方だ……。
「分かりましたよ。受けますよ、それ」
「おお! やってくれるかい。嬉しいねえ」
「受けなきゃ帰さない気だったでしょう?」
「はて、何のことだい?」
ごまかしやがったぞ、この博士。もうため息しか出ない。
俺はその後一言二言会話を交わしてから部屋を後にした。あのまま残留してても疲れるだけだし。
エントランスではやはりメリーが待ってくれていた。ありがたいです。
俺がいなかった間、ずっとブラックコーヒーを飲んでいたみたいで、いつも座っている隅っこのソファテーブルの上には空になった缶が六個散乱していた。
おまっ、さすがに飲みすぎにも程があるだろ!
「遅いわよ。何してたのよ、ばーか」
「開口一番に貶された!!」
「っは! 当然でしょうが、この間抜け!」
「何で今日はこんなに貶されなきゃならないんだよ!」
掃除のおばちゃんからゴミ袋を貰い、転がっている缶を入れていく。
とりあえずなんでメリーがこんなにも荒れているのかを本人に聞いてみた。
曰く、先にエントランスに来ていたのだがなかなか起きてこないので、起こしに行ったら誰も居なかった。それがイライラの原因らしい。
……ん? なんでメリーは部屋に俺がいなかったって事が分かるんだ?
「ああ、鍵開けて入ったのよ」
「いつも思うけどなんで君は堂々と不法侵入が出来るのさ!!」
「そんなこと気にしない気にしない」
「すっごい気になるよ!」
だ、駄目だ。これじゃ埒があかない。
ツッコみ過ぎても俺の喉にダメージが蓄積されていくだけだからな。
話題を転換して、俺はメリーにサカキ博士からの頼みごとを離した。
話している間、メリーは真剣な顔をして聞いてくれた。いつもそうして黙ってりゃいいのに……。
「……ふーん、何に使うんだか」
「さあな、俺には分からない」
「ま、どうでもいいでしょ。あたしも手伝うわ」
「ありがとう……!!」
「かっ、勘違いしないでよね! あんたを出先で半殺しにしたいだけなんだから!」
「お前がそれをやってもツンデレより殺意を感じるよ!!」
台詞はツンデレの子がいうものがベースのはずだ。
なのに……、なんでだろう。冷や汗で服が凄いべとべとしているんだ。
俺の日頃の行いは良いはずなのに。神様って酷いや。……あ、俺らが戦ってるのはアラ“神”だっけか。……はあ。
「よし、さっさと片付けようぜ」
「ええ、今日は読書したいし」
「読書? 本なんて読むのか?」
「割と読むわよ。今読んでるのは『世界の呪い大百科』ね」
「……」
メリーは、なんであんなにも楽しそうに笑っているんだろう。非常に笑えない。冗談だとしてもだ。
「全部覚えたらどれか試してあげるわねっ!」聞かなかったことにしよう。
――――――――――
今、俺はサカキ博士の研究室の前にいます。
は? 戦闘の描写はどこにいったんだって?
……頼む、聞かないでくれるか。本当にメリーの宣言通りになったんだよ……。
あ、あいつはっ、悪魔だ! 悪魔の、化身だ……。
「おぉっ! 随分と速かったね……どうしたんだい、夏くん。その姿は」
「いえ、気にしないでください」
「だがボロボロ……。うん、気にしないことにするよ」
……悪魔の砲撃を食らいまくった結果がこれだよ!
あいつがアラガミで、味方じゃなかったらきっと俺はとっくのとうにこの世からオサラバしているんじゃないかな。
「それでコアの方はどうだい?」
「バッチリです。グボロの極寒型ですが大丈夫ですか?」
俺はグボロ・グボロ堕天のコアが入った袋をサカキ博士に手渡す。
サカキ博士は手渡された後、一度紐を解いて中を確認していた。勇気ありますねー。
「全然大丈夫さ。……ちゃんとあるね、ありがとう」
「偽物を入れるとでも思ったんですか?」
「いや、君の友達が何か細工をしていないかと思ってさ」
「……恐らく大丈夫、だと思います」
「その間はなんだい?」
すみません、サカキ博士。俺には百パーセントあいつが何もやっていないとは断言できません。
現に俺はコアの摘出をメリーにやってもらっているし、何かを仕掛けるには十分隙はあっただろう。
これはメリーを信じすぎた俺が悪いのだろうか……。ちょっと遠い目になってみる。
「今日はありがとう。また頼むよ」
「厄介ごとは嫌いなんですけどね」
「大丈夫。“君たち二人は”巻き込まないから」
今のサカキ博士の言い方、ちょっと気になった。
まるでこれから先、俺とメリー以外の誰かを巻き込むような言い方。
いや、多分既にこの人の中では巻き込むことは決定しているのかもしれない。
……悪狐。
「じゃあ俺は失礼します」
俺はサカキ博士に背を向けて研究室を出て行こうと歩を進める。
そんな俺の背中にサカキ博士の声がかかった。
「ああ、近いうちに何回か頼むよ」
「いいですよ」
「おや、最初の反応よりは素直だね」
「ですが、」
一度そこで言葉を切り、俺はサカキ博士のほうに向きなおった。
相変わらずサカキ博士は目を細めている。この人の喜怒哀楽が分からないから、何考えているか読めないんだよなー……。
「あまり人を巻き込むの、よくないですよ?」
俺の言葉に一瞬、サカキ博士が目を見開く。
あんなに堂々と言葉の中に「巻き込みますよ」発言を入れていたら、さすがに俺だって気付く。
それともまさか気付かないとでも思っていたのだろうか。失礼な。
今度こそ俺は研究室を後にした。
「……普段の彼なら気付かないと思っていたのだが」
研究室の中、一人残されたサカキは誰に言うわけでもなくポツリと呟く。
彼……日出 夏は少し変わった青年だ。いつも馬鹿のような笑顔を辺りにふりまいている。
第一部隊に所属している新型のゼルダ、そして夏と一緒にいるメリーとはまた違った性格の青年だ。
だが、サカキは時々彼に会う時、その馬鹿らしさにちょっとした不自然さを感じてしまう時があった。
だから今回、気付くかどうかを確かめるために態とらしい台詞を入れてみた。普段の自分なら絶対にやらないようなことだ。
それを彼は当たり前のように気付いた。……ドヤ顔で言われた時にはさすがにちょっとイラッとくるものがあったが。
しかしこれではっきりとした。
「夏くん、やはり君は態と……」
サカキ博士の呟きは、誰にも聞こえない。
思わせぶりな台詞を入れてみた。
夏くんの過去話を近いうちに投稿します。
四話くらい先ですね。