GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~ 作:キョロ
ピリッ ピリリリ ピリリリ
「……くかー……」
ピリ ピリ ピリ ピリ ピリ
「……んあ……?」
ピピピピピピピピピピピピピピ
「……」
ビビビビビビビビビビビビビビ
「うるさーい!」
唐突に響き始めた目覚まし時計。ちくしょう、あいつ、また仕掛けたのか。
というか、こうやって目覚まし時計を勝手にセットされて起きたのは久しぶりな気がするなー。
いや、久しぶりと言うか二度と来なくていい体験なんだけどさ。
「って、多っ!!?」
俺のベッドの周りにある目覚まし時計がまず二つ。ここの時点で既におかしい。
普段使っているテーブルの上に所狭しと目覚まし時計。多分十五はあるな、あれ……。
そして見事なバランスでピラミッドのようになっている目覚まし時計、が一人掛けの椅子に乗っていた。
更に扉の前にも進行を塞ぐようにばら撒かれた目覚まし時計。あいつ、どうやって出て行った……。
目覚まし時計の総勢、五十二個。なんだこの数。どこから持ってきやがった。
というかそれ以前にこの音煩すぎる。こーまーくー切ーれーるー。
「うぅっ、地味だけど朝には辛いなこれは……」
全ての目覚まし時計を止め、部屋の隅に寄せておく。あとで売りに行こうかな。
ガンガンと頭に響いていた音がまだ響いてる。依頼に響かなきゃいいな、なんて。
とりあえず適当に身だしなみを整えて部屋を出る。
ぼんやりした頭のまま自分の部屋の扉にロックをかけようと振り返って……、
「うえええええええ!?!」
自分の扉に藁人形が刺さっているのが見えた。しかも頭に極太の釘が刺さって留めてある。
……まさか、この頭の痛みはさっきの目覚まし時計だけじゃないというのか。
って、いつ俺の身体の一部採った? 髪の毛なら取れなくはなさそうだけど。
あの人、人の部屋に忍び込んでくるから、採取時間は夜かもな。
「あんの野郎……」
扉に刺さっていた藁人形を力任せに抜く。また頭が痛んだ気がした。
これ、どうやって廃棄処分すればいいんだろうな。身体の部分のを取ってから燃やせばいいか。
藁人形に付着していた俺の髪の毛を回収。後で燃やすことに決定する。
それにしても、俺の部屋の扉どうしよう。
穴、空いちゃったよ……。後でガムテープでふさいでおこうかなー。
「まあ、まずは文句を言うのが先だよな」
あそこまでしておいて、メリーが起こしに来なかったのは藁人形のせいだ。
ということは恐らくメリーはいつもと同じく部屋にいない。エントランスだろう。
「メリー!!」
エントランスに着くなり、大声を張り上げる俺。
通りがかりの同業者の女の人がビクリと身体を震わせていた。あ、ごめんなさい。
軽く頭を下げて謝った後、俺は階段を下りて端にあるソファテーブルに近寄っていった。
そこにいるのはすでに見慣れた黒コートの女。
「あら。……なんだ、頭は凹んでないのね」
「凹むかよっ! 大体なんなんだよ、あの嫌がらせ。いつもの比じゃねえぞ!」
「おかしいわ。釘で藁人形の頭は凹んでたから対象も凹むと思ってたのに」
「聞けよ!! てか本当に凹んでたら藁人形での犯罪が多発するっての!」
「それもそうね」
涼しい顔しやがって……。
調子に乗るから絶対に言わないけど、実は結構頭が痛い。キリキリと。
もしかしたら本当に凹むかもねー。はははは、洒落にならないわー。
「でもさ、さすがにあの目覚まし時計と藁人形のコンボは酷いぞ……」
「昨日任務中に思い付いたのよ。あたしって本当いいこと思いつくわよね」
「俺にとっては不吉すぎるわ」
この女、相変わらずの酷さである。
一体どんな教育を受けてきたんだか……。全く、親の顔が見てみたいもんだぜ。
「親、ね……」
「ん? ……あっ、漏れてたか!? すまん!」
「気にしなくていいわよー。そのままお返しするから」
「うわあ」
うぅー、こいつに言われると随分傷つくぞ、この言葉。
というか俺は親戚のおばさんに預けられて育ったからな。本当の親ではないんだよなー、あのおばさん。
……親、かあ。
「さて、今日の任務のことだけれど」
「ヴァジュラ行こうぜ!」
「昨日言わなかったから忘れたと思ってたのに……」
「絶対行くからな! 俺はまだ肉球を諦めたわけじゃないんだ!」
「もう勝手に逝きなさいよ」
「漢字!!」
うお、頭痛が増した。
今日はもう怒鳴るの止めるか……。あー、痛い。
だがよくよくメリーの話を聞いてみると、ヴァジュラの依頼はないとのこと。
なんだかんだ言って確かめてくれていたようだ。ありがとう。
「と、言うわけでコンゴウ行くわよ」
「何故にコンゴウ!?」
「そうね、ぺしゃんこ夏くんが見たいからかしら」
「死ぬ!!」
そういえば前にも嫌にコンゴウに好かれて、ひたすら踏み潰し攻撃を仕掛けられたような気が……。
「先、ヘリで待ってるわよ」カンカンと音を立ててメリーは階段を上って行った。うーん、俺も特に準備する必要ないしな。
まあ、一応たかがコンゴウなわけだし。頑張れば、死ななくても済むだろ。そう祈ろう。
俺はメリーと同じように階段を上って行った。
――――――――――
「うーあーあー」
「何よ、煩いわねえ。死ななかったんだからいいでしょ」
「その分身体を貫くものが二十はあった気がするね」
「ふーん、まあ外傷はなさそうだけど」
「外傷がない分、酷いいじめさ……」
どうも、今依頼終わって俺の部屋です。
え? 依頼中の描写が見たかったって? 君は俺がいじめられているところを見たいのか。とんだSだな!
ちなみに今回の依頼でメリーはモルターは使ってませんでした。代わりに、レーザーが飛んできたような気がするんだよね。俺の内臓、壊れてないといいんだけど。
味方による攻撃はなんの補正か、あまりダメージを負うことがない。まあだからと言って味方の剣戟は確実に死ぬだろうけどね。
レーザーも無論、直接的に体力への影響はないわけだ。
が、だからと言って貫かれたらそりゃ痛い。当たり前だけど、普通に痛い。
「あー、寿命を三年は使ったね」
「じゃああんたの余命はあと半日ね」
「短い! 俺の人生そんなに短いの!?」
「そうね、具体的に言うと今すぐ終わるわ」
「待て待て待て待て待て!! 殺る気満々じゃないか!」
寄るな寄るな! 普通に怖いんだぞ!
座っていた椅子から勢いよく立ち上がり、慌てて周りを見回して逃げ道を探す。
えーっと、扉は……なんか朝の目覚まし時計で塞がれてる!? ちょ、いつの間に。
あわわ、逃げ道ないじゃないかよー! くそ、用意周到すぎるだろ。
俺はじりじりと後退りすることしかできない。ヤバイ、本気で俺の人生が終わる。
「っ、のわあ!?」
後退りすることで後ろに置いてあった家具に気付かず足がぶつかり、バランスが不安定になる。
後ろにある家具が何なのかは忘れたけど、これは、マズイ! 後ろのが机とかだったら頭ぶつけて俺の人生確実に終わる。
「う、お、おおおおおおお?!」
「……何やってんのよあんた」
後ろに倒れないように慌ててバタバタと手を振り回す。
メリーは一瞬呆れた顔をしていたが、すぐに獰猛な獣の笑みへと表情を変えた。いやあああああ!!
俺の手の努力虚しく、ついに俺の姿勢は後ろへと倒れ込み始める。
ヤバイぞ、まだ俺は死にたくないいいいい!
慌てて姿勢を支えるものはないかと手を虚空に彷徨わせる。ん、今何か右手に当たった。
この際支えられるなら何でもいいと、俺は右手に触れた何かを思い切り引っ張った。
「は? いやあああああああ!!」
「なんぞおおおおおおおおお!?」
だが、残念ながら掴んだものは俺の姿勢を支えてくれることは無かった。
俺が掴んだのはどうやらメリーの腕かコートだったようで、油断していたらしいメリーも前のめりに倒れ込んできた。二次災害いいいいいい!!
うおぅ、ついに俺の命運も尽きたか……。最期をメリーに看取られるってのもいいかもしれん。
さようなら、皆さん。またどこかでお会いしましょう……。
ボフッ
「……え、柔らか」
「いやっ」
「ふぎゅっ!」
倒れ込んだ俺の背中に触れたのは柔らかい何かだった。
訝しげに思っている俺にメリーがダイレクトアタック! 俺の体力は三千減った!
って、もしかして俺が今いるところはベッドか? そういえば部屋の構図はそんな感じだったような気も……。
い、今思ったけどこの状況は少しマズイんじゃないか?
何がマズイって俺とメリーのこの状況だよ。俺がベッドであおむけに倒れてて、メリーがかぶさるように俺の上に乗ってる、この状況……。
誰かに見られたら、俺の人生が色んな意味で終わる。
「夏さーん! 聞いて下さいよもう、ノゾミのやつー……」
まだ混乱しているせいで正常に働かない頭に入ってきたのは、コウタのそんな声だった。
ノック無しでシュッと扉が開く。入ってきたコウタの手には大きめのダンボール箱。中々重そうだ。
「……ぇ」
しかしコウタは俺たちを見るなり持っていたダンボールを手から落とす。
ガンッ、といい音がしてコウタが
「す、すいません。お邪魔しましたー」
「待て待て! 誤解だ! すべて誤解だ!」
空気を読もうと思ったのか、コウタは痛みに耐えながらもダンボールをもう一度手に持って部屋を出て行こうとする。
コウタの気持ちは分からなくもない。俺だってこんな光景見てたら逃げ出す。ついでに「リア充が!」って捨て台詞も吐く。
だけど、だけどだな。本当に誤解なんだ!!
慌ててメリーを退かそうとするが、何を血迷ったのかこいつは寝ていた。
おい……。あの状況でどうやったら睡眠に辿り着くんだよ。
メリーをきちんと部屋に戻し、俺が水分補給をするまで暫し時間がかかり、コウタに弁解することになったのはその十分後のことだった。
不本意ながらメリーの運搬は俺がお隙様抱っこですることになった。コウタにニヤニヤされてちょっとイラッとした。これ、予想以上に恥ずかしいんだぞ……!!
「で、何をしようとしてたんですかー?」
部屋に招き入れ、椅子に俺とコウタが座った瞬間、彼はそういった。
俺はそれに答えた。
「うーん、そうだね。コウタくんは明日俺の特別レッスンを受けようか」
「わーわー!! 嘘! 嘘ですって!」
にこやか笑顔で告げてやったら一瞬にして顔を蒼白にしたコウタが腕を振って止めてきた。
賢明な判断だね、お兄さんは嬉しいよ。
「コウタは何しに来たんだ? 俺の部屋に来るやつなんて、そうそういないぞ」
「ああ、過疎ってますね……。だからその貼り付いた笑顔怖いって!!」
事実でも人に言われると腹立つことって、経験ないですかね?
まさしくそれが今の状況ですとも。明日、本当に連れ回してやろうかな。
「なんかメリーさんに似てきてる……」否定できないなー。
「これですよ、これ」
コウタが頬杖をしながら右手で指示したのは先程持っていたダンボールだ。今は机の脇に置いてある。
中身を見ても問題なさそうだったので俺が開けてしまう。
するとなんと、中に入っていたのは俺にとっての宝物だった。
「ひ、冷やしカレードリンクがたくさん……!」
ズラッと綺麗にダンボールの中に詰められている沢山の冷やしカレードリンクたち。
うわ、ヤバイ。涎が堪らないぞ、これは。
思わずごくりと唾を飲み込んだところでコウタは思いため息を吐いた。
「この前、妹の土産に持って帰ったんですけど、批判が……」
「つまり好みに合わず残ったわけか」
「俺自身、あとで飲んでこれは無理だって思ったんですけど……。さすがに腐らせるわけには」
「……それで俺のところに持ってきたと?」
こくりと頷くコウタ。
そういえば前にリッカさんが「冷やしカレードリンクが自販機から消えちゃった!」って騒いでたような気がする。
買い占めたのは、こいつだったのか。ちょっとお前の財布どうなってるんだよ、羨ましい。
「ちなみに何本だ?」
「五十買って、俺とノゾミと母さんで飲んだから四十七、かな」
「お前、財布スゴイな」
「いつも土産のために頑張ってお金溜めてるんですよ」
なるほど、さすがシスコンだな。
兄妹がいるってやっぱりいいことなんだろうなー。遊び相手でもあるわけだし。
……よくよく考えたら、コウタはまだ遊びたい盛りの年頃だよな。早く、終わったらいいのに。
「引き取ってくれませんか、これ」
「何の問題もない。むしろありがとう!!」
最近金欠が更に進行して冷やしカレードリンクのお金節約してたんだよな。これで勝つる! 主に人生に!
内心舞い上がる俺とほっと息を吐くコウタ。受けなかったのは悲しいけど、仕方がない事実だ。
一本はメリーにあげるとして、あとは二十三本ずつリッカさんと分けるか。後で持っていこう。
「あー、よかったあ……。処分できなかったらどうしようかと」
「まあ今度から好きそうなもの持ってけ。女の子なんだからアクセサリーとか」
「そうします」
用件はそれだけだったようでコウタはその後帰っていった。
俺は一本をメリーの部屋の前、二十三本を冷蔵庫にしまった後リッカさんのいる神機保管庫に向かった。
喜んでくれるといいなあ。
最近ほのぼの生活に嵌まってしまったという罠。
ちくしょう、抜け出せねえ……!
でもよくよく考えたらそれの小説ない気がする。
まあネタ切れで終わりだよね、どう見ても。