GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~ 作:キョロ
「あーあ、結局この任務なのね……」
「今から愚痴を言ったっておそーいっ! 俺はっ、これを待っていた!!」
「はいはい、馬鹿夏くんはここで待ってようねー」
「馬鹿とはなんだ馬鹿とは、がべえ!?」
「……うるさいわねー」
どうも、夏です。ただいま出先の贖罪の街にいます。
実は前からお願いしていたヴァジュラがついに見つかりましたっ!
やったね、俺! 今日こそ肉球を確かめるチャンスだよ。
……なんだけど、何故かいきなりメリーが酷いです。怖いです。いつもの三割増しで。
そして嘲りの目線もひどいです。俺が一体何をしたというのだ……。
「それにしても……、前のヒバリさんの『いない』がもう『行った』って意味だったとはねー」
「手ひどい裏切りを受けた気分です」
「確実に倒すには第一部隊のほうが実力あったもの。当然よ」
「ひでぇ……。まあアリサが完全復帰したみたいだからいいか」
この間の事を覚えているだろうか? え、どの日か分からない?
……んー……、確かコウタから冷やしカレードリンク貰った日だった気がする。あれ、いつだったけ、それ。
ああ、リッカさんはめっちゃ喜んでくれました。なんかはしゃぐ姿が微笑ましかった。
んで、話を戻すけど、その日確かにヴァジュラは贖罪の街で観測されていたそうな。
メリーがその依頼を受ける前に第一部隊が受けたので、ヒバリちゃんは『いない』と言うしかなかった、というわけだ。
その時に何があったのかは分からないけど、後日大分吹っ切れた顔のアリサが見れました。復活おめでとう!
あ、ちなみに俺たちはその日鎮魂の廃寺でした。最近サカキ博士のパシリで連日鎮魂の廃寺です。
「久しぶりだよな、鎮魂の廃寺以外の出先は」
「そうね、軽く二週間はあの周辺に通い詰めてたわね」
「うわー。考えただけでも嫌な数字だわー」
「もう凍死しちゃえばいいのに。サカキ博士と夏」
「さり気なく巻き添え!」
うぅっ、俺の精神はもう崩壊寸前だよ……。って言ってる間は大丈夫か、そうですか。
気を取り直して周りを見回す。実は今のところヴァジュラが全く見当たらない。
というか倒したその数日後にもうヴァジュラ出るとか荒れすぎだろ。
今回の依頼も同じくサカキ博士の依頼だ。つまりコア回収してこいと言う。もう飽きたよ。ツッコむ気力もない。
「コア回収、あんた上手くできたっけ?」
「自信はないが出来るぞ」
「……あんたに任せるのは止めるわ」
「……頼んだっ」
「なんかむかつく」
「そうか。……って、え? 何故?」
メリーはそのまま探索のために先へと進んでいった。えぇー……。
「コア回収の練習は雑魚とやって頂戴」これは邪魔だから雑魚と戯れてろということだろうか。
最近メリーにないがしろにされる事が多いです。主に俺の部屋での一件以来。
え、何が起こったか忘れた? ……俺の口からは、言わせないでくれ。
あれは俺の人生最大の黒歴史だよ。あっ、今ちょっと眩暈が。
「あ、夏。後ろにヴァジュラ」
「あー、そう。……は?」
メリーの声を拾い生返事を返してからもう一度言葉の意味を確かめる。
「後ろにヴァジュラ」……え、これなんて死亡フラグ?
「あっぶねええええ!!」
すかさずステップで回避。急にやったもんだから少しバランスを崩して回避先で膝をつく。
そして元俺がいた場所に振るわれるヴァジュラの尖った爪。……死亡フラグ、壊したと見ていいんだよな?
「ちっ、斬死体はそう簡単には見れないか」
「俺仲間! あいつ敵! どっち優先するんだよ、お前は!」
「斬死体が見れるならどちらでも構わない!」
「お前神機使い辞めちまえ!!」
くそぅ、連携なんてあったもんじゃねえぞ!
きっとあいつにチームワークを問うたら即「死ね」って返される。言いきれる自信があるよ、俺。
……今更ながら俺がこいつと組むことになった理由が分からない。本当、これなんていじめ?
「とにかく今は倒すのが優先よね」
「ああ、とりあえず倒すのが先だな」
「じゃあさっさと始めるとしますか」
メリーが神機を変形させて銃形態にする。狙いをばっちり見定めて、対象に銃口を向ける。
……うん、戦意があって何よりだ。何よりだけども。
「何故俺に銃口を向ける?」
「いやあ、斬死体と焼死体の二つが見たくなって」
「俺に焼死体になれと言ってるんですか……!!」
「正解。では……逝ってらっしゃい!」
「誰が逝くかーーーーー!!」
その後、俺はこんがり丸焼きになりました。
――――――――――
「……悪夢を。いや、悪魔を見ました」
「すっかり君も常連だねえ」
「おばさん、俺は常連を望んでません」
ただいまラボラトリ、の病室。依頼先での手当てを受けている最中です。
実はメリーが俺と組むことになって以来俺はここに連日通ってたりする。不本意だ。
なんで怪我をしているのか。それは察してほしい。
ちなみに肉球は結局わからなかった。見る前に霧散していきやがった。とことん俺に酷い世界だと思う。
俺は今、割と本気で転生を信じている。
「オ・バ・サ・ン・?」
「……オネエサン」
「君も大変な人生歩んでるわよねえ」
「ええ、全くです」
そして今俺の前に座って丁寧に怪我の手当てをしてくれている四十代前半らしきおば……オネエサン。いつもの人です。
俺の怪我の理由は話していないけど、エントランスでの俺とメリーの攻防は有名らしくなんとなく察してくれているようだ。
それはそれでちょっと複雑なんだけど……、まあいいか。
「今日は随分とまあ火傷が多いねえ。服もボロボロだし」
「ちょっと、地獄のマグマを見てしまいまして」
「……大変だねえ」
ちょっと遠い目でさっきの依頼を思い出す。
あれは、地獄だ。火傷させたあいつは、マグマも同じだ。
こんなに苦労してる俺の存在って、いったい……。
「あ、そういやこの後用事があるんだった」
「おや、また博士のところかい?」
「あれ知ってるんですか?」
「いつも病室の前をあわただしく通ってるからねえ、君は」
そういえば病室をサカキ博士の研究室は同じ区画だったっけ。忘れてたよ。
オネエサンの手当ての甲斐あり、さっきよりは大分痛みとか楽になった。
ご迷惑をかけてしまって、本当申し訳ないよ。
「んじゃ、失礼します!」
「もう来ないようにねえ」
「ははっ、無理ですね!」
「だろうねえ」
あはは、そこは否定してほしかったよおばさん。
……あっ、なんか知らないけどすっごい睨まれてる。もしかしてあなたも心を読める人種ですか。恐ろしい。
病室を出てからそのまま回れ右。歩を進めればあっという間にサカキ博士の研究室ですよ!
と、回れ右をしたところでソーマが俺の横を通り抜けて行った。華麗だね! あ、それはエリックだった。
「にしても怖い顔して……。どうしたんだ、あいつ?」
一瞬だけだったから気のせいかもしれないけど、ものすごく怖い顔してた。あれはキレ顔と見ていいのだろうか。
というか何があったんだろ。サカキ博士の研究室から出てきたから、多分サカキ博士と話が合ったんだろうけど……。
まさか、サカキ博士、何か変な実験を……!? 基本、あの人は信じられない。これ鉄則!
「はぁー。全く、迷惑な人だぜ、サカキ博士……」
大袈裟に肩を竦ませてやれやれと首を振る。
そのまま俺は研究室の扉を開けて中へ、
「ぶほお!?」
入れなかった。
……え? なんで? 俺の身に何が起こったって言うの?
んーと、簡単に言えば扉にぶつかった。理由は扉が開かないのに俺が前進したから。
いや、開かないって時点でおかしいよね。何だこれ、また俺に対するいじめ先が増えたぞ。
「博士ー、はーかーせー!? なんで閉まってるんですか、呼んでおいてそれは酷いですよー!?」
おかしい、俺は確かに招かれたはずだ。招かれざる者ではないはずだ。
……本当にいじめられてるとか、そんなことは無いよな?
俺の中でまたサカキ博士の好感度が下がったよ。
ガンガンと扉を叩き続け開くのをただひたすらに待つ。
「のわ!」
すると今度は唐突に扉が開き、前に重心をかけていた俺はそのまま前のめりに倒れて床とごっつんこした。
うぅっ、今日は絶対厄日だ。なんでこんなことばっかり……。
「おや、どうしたんだい? 床が好きなのかい?」
痛みに震えながら顔をあげた俺の視界に入ってきたのは、笑顔のサカキ博士だった。
……この人狐目だから、笑顔とかの判断付かねえ。多分笑顔のはずだ。
「そんなわけないでしょう!? なんで扉開かなかったんですか!」
「いやあ、ちょっと手違いがあってね」
「何の手違いで扉に鍵がかかるんですか!」
「それよりコアは持ってきてくれたかい?」
「唐突な話題の転換!!」
駄目だ、この人のマイペースにはついていけない。
俺は思いため息を一つ吐いた後、持っていた袋を渡した。
いつもと同じ袋の中には今回の依頼の対象、ヴァジュラのコアが入っている。
俺が精神的に戦闘不能だったので回収はメリーがやってくれました。
その後にコアを譲り受けるのにまた小一時間時間を費やしたわけだが……。
「うん、ちゃんとあるね」
「いつも思うけど、よく確認できますね」
「興味があるならどんなものだって見れるものだよ」
「さいですか」
サカキ博士の思考が分からない。それもまたいつものことだよ。
多分この人は一生考えが読めないと思うんだ。ミステリアスすぎるよ。
またため息を吐いてから俺は研究室から出て行こうとする。
「おや、今日は言わないんだね」
「何のことです?」
「巻き込むのはよくないことですよ、ってね」
「……ああ」
そう言えばちょっと前にそんなこと言った気がする。ドヤ顔で。
うわああああああ!! 俺、いつの間にか自分で黒歴史増やしてやがる! 何してんだよ過去の俺えええええ!!
「今日は、言いませんよ」
「ほう?」
「なんかもう手遅れな気がして」
「……それは君の第六感かい?」
「ええ、勿論」
「君の前世は獣だったのかもしれないね」
「Why!?」
ちょ、びっくりして英語喋っちゃったよ。俺そんなキャラじゃないよ。キャラってなんだ。
なんでいきなり前世の話が出てきたのかが分からない。そして何故に獣!? それはあれですか、俺の心を傷つけるために言ってるんですか。
俺 は メリー の 同類 を 見つけた ! いらねえ。
「ったく、とにかく失礼します」
「また頼むよ」
「はいはい……」
人遣い荒いくせに頼んでる相手をも貶すとは……。サカキ博士恐るべし。
誰か俺に優しくしてくれないかなあ。
「――もう大丈夫だよ」
「よ、よかったあ」
研究室に入って右奥にある扉……、そこから赤い帽子をかぶった銀の髪を持つ少女が出てきた。
いや、一人だけではない。ソーマを除いた第一部隊と見知らぬ白い少女が、今この研究室にはいた。
「でも、なんで夏さんがここに?」
「ああ、彼はコアの提供者だよ。無論、事情は知らないがね」
「……そうですか」
相変わらず不憫な立場にいる人だ。この場にいる少女とサカキ博士以外の全員がそう思った。
一人楽しそうに笑っている少女は、今日第一部隊が保護してきたアラガミの少女だった。
事情の説明が終わり、さてどうしようかというところで夏がやってきた、というわけだ。
ちなみに鍵はアリサがかけた。当たり前の如くサカキ博士の指示であるわけだが。
「鍵をかけた瞬間にあれですから、驚きましたよ」
「なんか、可哀想だったな……」
「巻き込まれてるのに蚊帳の外って言うのは、確かに可哀想ね」
「この子可愛いですー」
「……リーダーは既に夏さんのこと忘れてますね」
哀れ夏。三人が心の中で合掌を送る。
既にゼルダは少女に懐柔されていた。それはもう一瞬で。
鎮魂の廃寺に出会った時も皆が警戒していたと言うのに、一人「可愛い……」と言って抱きついていた。
少女がお食事中だったのでちょっとグロイ光景だったのにも関わらず、だ。
あれは素じゃないとできないことだが、素だとちょっと困る。
「むにゅーっ、可愛い……」
「んー?」
「ふわああああ……!!」
「リーダー。頼む、落ち着いて」
これから先、まだまだ苦労事は多そうだ。
これからのことを思い、ため息を吐くサクヤであった。