GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~   作:キョロ

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どうでもいいかもですけど、メリーさんのファミリーネームは「バーテンダー」から取りました。
ファミリーネーム決めが下手くそなキョロです。
どうしてもファンタジーと言うか奇妙と言うか厨二と言うか……。
そういう風に捻じ曲がって行ってしまうので既存のものから抜粋が一番だと思ってます。
一応、異世界じゃないもんね、この世界……。

では、スタートです。


24、笑顔の裏に

「いやー、いつも悪いな」

 

「平気平気! 俺、聞き上手だし」

 

「そう言ってくれると助かるよ。じゃ、またな」

 

「ん、またなー」

 

 俺はそう言って去っていく男に笑顔で手を振った。

 エレベーターの中に男が入って行き扉が閉まるのを目に入れると、自然と笑顔が顔から消えるのが自分でも分かった。

 

「……はぁ」

 

 そんな自分に思わずため息。俺は仮面を着けていたって言うのか?

 今の今まで話していたのは俺の同期だ。ただ、名前は忘れちゃって仲良くなったから今更聞けないというかなりマズイ状況になっている。俺本当最低。

 最近は疎遠になりがちなんだけど、時々俺のところに愚痴りに来ている。別に俺的には問題ない。問題ないんだけども……。

 

「俺って、人との対応に仮面着けてたっけ?」

 

 気まずい状況の時に仮面を着けるならまだしも、なんでそうでもないときまで着ける必要があるんだよ。

 ゼルダとか、メリーとかに着けたことは無い。ないけども、なんで……。

 自分に嫌気がさす。もう今日の仕事休んで不貞寝してやろうかな。

 

「あんたにしては珍しく無表情ね」

 

「っ!?」

 

 背後から聞きなれた女の声。驚いて思わず体が強張るのを感じる。

 いつも突然の登場をしてくることはあるけども、なんでこんなに驚く必要があるんだ?

 さっきの状況を見られたくなかったから? 笑顔が仮面だと思われたくなかったから? ……ああもう、自分のことなのに分からない。

 

「な、なんだ。メリーか」

 

 とりあえず深呼吸をして気持ちを整えてから振り返る。

 そして、振り返ってから気付く。今の自分は、笑顔と言う仮面を着けているということに。

 俺の不自然な笑みに気付いたのか、メリーが顔を顰めているのが分かる。俺って本当最悪。

 

「……あんたにしては、汚い笑みね」

 

「貶されたことに関しては泣きたいけど、その通りだと俺も思うよ……」

 

 まさか仮面を汚いと言われるとは思ってなかった。え、そんなに俺の仮面は酷いの?

 まあ仮面だと見破られたならこれ以上着けている必要はないし、それに今は普通の笑顔を向けることが出来なさそうだから俺は表情を無に戻した。

 そのことに関して何故か驚くメリー。なんだよ、俺だって無表情の時もあるさ。

 

「あんたの無表情、初めて見たかも」

 

「そうか?」

 

「ええ、いつも笑ってる印象だったから。……無理して、笑ってるの?」

 

「そんなわけないだろ」

 

「じゃあ、さっきのアレは?」

 

「アレ、は……」

 

 思わず言葉に詰まる。そうだ、さっきのはあの状況をごまかそうとして着けたんだ。

 理由がある。着けたことに関しては理由がある。でも、言えない。

 なんで言えないんだろうか。分からずにそのまま下を向いてしまう。

 

「ああ、あたしに向けたやつじゃなくて、さっきの男に向けたほうよ」

 

「う……」

 

 更に言えなくなってしまった。あれこそぐうの音も出ない。俺にだって理由が分からないんだ。

 そもそも、人との付き合いに仮面を着けるようになったのはいつだったんだろう。

 友達ができないことを恐れて着けたんだったかな? 今では人付き合いがなかなかに上手くなったと思うけども、昔は俺もそれほどでもなかった。

 どうしよう、どう言えばいいんだろう。追い詰められているわけでもないのにどんどん焦ってしまっている俺がいる。ああ、情けない。

 

「言えないなら、別に構わないのよ? 所詮、あたしたちの仲はその程度ってことだし」

 

「……お前、さり気なく追い詰めてるよな」

 

「そうね。あんた、今全力で否定したいって目をしてるものね」

 

「ああ、その件に関しては全力で否定したいな。理由が言えないからどうしようもないけど」

 

 ため息をもう一度吐く。

 そういえばこいつはいつから見てたんだろう。多分言っても話してくれないだろうから諦めてるけど。

 

「で、前までの質問は忘れるとして。なんでそんな汚らしい笑みを着けるわけ?」

 

「……なんでだろうな。寂しいからじゃないかな」

 

「……寂しい?」

 

 メリーに疑問形で返されてハッとする。

 なんで俺はそんなことをメリーに話しているんだ? メリーは俺の事情と全く関係のない部外者のはずなのに。

 ただ仕事仲間で、部屋が近くて、少し仲がいいくらいで、なんで俺は話そうとしているんだろう。

 でも、一度口からこぼれ出した言葉が止まることは無い。

 

「多分、一人になるのが怖くて、媚売ってでも一人になりたくなくて、だからじゃないかな」

 

 きっと今の俺の言葉に嘘はないんだと思う。

 だとしたら、なんで俺はメリーとかには普通に接してるんだろう。ますます訳が分からなくっていって、頭の混乱は止まらなくて。

 

 

 気付いたら泣いていた。

 ああ、情けない、馬鹿馬鹿しい。なんでこれくらいのことで俺は泣いてるんだよ。豆腐メンタルかよ、馬鹿。

 弱い所を見られるのが嫌だったのかもしれない。だから涙で俺はごまかそうとしているのかもしれない。

 

「その顔も、初めて見たわ」

 

「見せたことないからな……。当たり前だ」

 

「……あんたにも、泣くようなことがあるのね」

 

「俺だって人間だから、当たり前だ」

 

「あたし、あんたには悩みとかないと思ってたわ」

 

「よく言われる。……周りから見たら、きっとそれも当たり前なんだ」

 

 「お前といるとなんだか悩みとか忘れられる気がする」さっき居た男によく言われる言葉だ。

 俺がいるだけで笑顔になってもらえるのは嬉しいし、それは別に構わない。

 それでも、心のどこかで「俺はそういう装置じゃない」って思ってる自分がいた。

 それに気付いた時は馬鹿らしいって一人で笑ったけども。

 

「は、はは……。人に話したの初めてだ。本当、お前って不思議だよ……」

 

「ふーん、なんか光栄なことなのかしら」

 

「人の悩み事って面倒だから、光栄とは言わないかもな」

 

「……そう。そうね」

 

 そうだ、人の悩みなんてろくなものがない。俺の悩みだってそうだ。

 でもそのろくでもない悩みに惑わされ続ける人だっているんだから、不思議なもんだよな。

 強引に袖で目元を拭う。これって絶対目が赤くなるよね。顔洗ってからエントランスに行こうかな。

 あー、恥ずかしい。恥ずかしくて今の俺の顔絶対赤いと思うんだよね。メリーにそんなところを見られたら茶化されそうだから、俺は背を向けた。

 

「俺、先にエントランス行くわ」

 

「……夏」

 

「なんか変な話につき合わせちゃってごめんな」

 

「夏」

 

「いやー、本当俺って何やってんだか」

 

「夏」

 

「あ、依頼はちゃんと滞りなくやるから。安心してくれよ」

 

「夏!」

 

 メリーに大声で言われた。まあ、今この階には俺とメリーしかいないから別にいいんだけど、さすがにそんなに言われると立ち止まらざるを得ない。

 うぅ、振り返りたくないんだけどなー。俺の顔と目は赤いこと間違いなしだから。本当に、かなりガチで見られたくないんだよ。

 誰か分かってくれる人いないかな。とにかくすごい恥ずかしいんだよ。

 

 ……で、俺って結局なんであんなにペラペラ喋っちゃったんだろう。場の勢いって恐ろしいな。

 今まで誰にも喋ってこなかったこと。メリーに今言った内容にも言ってないことはまだまだたくさんあるけれど、それでもそれに関する話を俺はした。

 これは、俺がメリーを信頼しているということなのだろうか。

 立ち止まったまま考え事をしていると、無理やりメリーに方向転換させられた。

 

「なんだよ」

 

「……まだ無理してないでしょうね」

 

「当たり前だろ。てか、何回言わせるんだよ『当たり前』って」

 

「『当たり前』で全部を片付けないで」

 

「は?」

 

「あんたも、時々ゼルダみたいになるわよね。苦労してるんでしょ? 無理してるんでしょ?」

 

 ゼルダみたいに……? それは俺が時々自分より他を優先しているということだろうか。敬語とか使わないから多分こういうことだと思う。

 でもそんなことしたことあったかな? 全く記憶が無いんだけど……。あ、周りならよく見てたりすることあるけど。

 

「愚痴ってもいいのよ。聞くだけじゃなくて、あんたも言っていいのよ」

 

「……悩み事まで言ってるのに、なんで愚痴まで聞かせる必要があるんだ?」

 

「たまには頼りなさいよ」

 

「コア摘出とか、頼ってるけど?」

 

「そういう頼るとかじゃなくて……。ああもう、面倒ね!」

 

 ふわっ、と。きっと音を言葉で表現するならそんな音だったと思う。

 気付いたらメリーに抱擁されてた。……は?

 なんでか分からないから、俺は戸惑うことしかできない。

 しかもこいつ、なかなかの腕力なのだ。離れようとしても離れることが出来ない。なんだこれ、新手の拘束か?

 

「我慢しなくてもいいのよ」

 

「我慢とか……」

 

「つーまーりっ! たまには泣けって言ってんのよ!」

 

「涙って命令されて流すものだったっけ?」

 

「こんな時まで話を逸らすの? ……見てないから、泣いてもいいのよ?」

 

「なんで、泣かなくちゃいけないんだよ」

 

「……一人が寂しいって、あたしも嫌と言うほど知ってるから」

 

 メリーにきつく抱きしめられているせいで体勢が変えられず、メリーの顔も見ることが出来ない。

 だけどその時のメリーの声だけは確かに震えていたと思う。こいつの過去話とかも、聞いたことなかったかもしれないな。

 

 そんなたまにしか見せないメリーの優しさを感じ取ってしまったからだろうか。

 情けないことに、俺はメリーに体重を預けてしまっていた。

 

「悪い。数分、いいか?」

 

「大丈夫よ。今回限り、お金はとらないから」

 

「……んじゃ、頼むわ」

 

 女に身体を預けて泣くとか、普通逆だろう俺。

 でも、それでも、今だけはこのままで……、このままでいてほしい。

 俺はそのまま目を閉じた。




次話は過去編を投稿します。
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