GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~   作:キョロ

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26、怪しげな第一部隊

「うまー」

 

 どうも、夏です。気持ち悪い始まりでごめんね! 自分で言ったのになんか落ち込んできた。

 今は着替えを終わらせて自分の部屋で冷やしカレードリンクを飲んでいるところだよ。

 言わずとも分かると思うけどコウタから貰いうけたやつです。冷やしカレードリンクは最強の嗜好品だよ。

 ちなみにそろそろ賞味期限が迫っているので飲むペースを速めようかと検討中。まああと何本かくらいだから問題ないかなー、とか思ってるけど。

 

「ご馳走様でした、と」

 

 飲み終わった缶はそのままゴミ箱に向けて放り投げる。

 あ、外れた。なんか今日はあんまりいいことないかもしれない。アンラッキデーってやつ。

 まだ少し残る眠気を身体を伸ばすことで解消し、俺はエントランスに出た。

 

「おはよう、メリー」

 

「おはよ、夏」

 

 いつものエントランス、いつものソファにメリーはいた。

 なんでエントランスって時間を問わず騒がしいんだろうね。まあ時々この喧騒がありがたかったりするんだけど。

 どうやらメリーも今来たようで、テーブルの上に開けていない珈琲が置かれていた。ちなみにブラック。なんでブラックなんて飲めるんだろうな。

 俺はメリーに向きなおるようにしてソファに座り、両手をぐでーとテーブルの上に投げ出す。なんか朝から怠いもので。

 

「……夏、あんたちゃんと睡眠取ってる? 隈、酷いわよ」

 

「熊? 飼ってないよ、物騒だろ」

 

「勝手に変換するんじゃない!」

 

「ぷぎゃっ!? 缶を投げるんじゃないよ、缶を!」

 

「うっさい! あんたも前投げてたでしょ!」

 

「あの時はメリーも投げてたろー!?」

 

「見苦しい責任転嫁は止めて頂戴!」

 

 ぎゃあぎゃあといつも通りすぎる喧嘩を繰り広げた後、俺は一度落ち着こうと深く息を吐く。

 うーん、メリーに喧嘩に持ち込まれちゃうとどうしてもあいつのペースになっちゃうな。ますます疲労感が溜まった。

 ため息をついてからとりあえず話題を変えようと俺は口を開く。

 

「で、今日の依頼はなんだ?」

 

「あたしの任務を手伝ってもらうわ。受注済みだから拒否権はないわよ」

 

「さすが用意周到だな」

 

「なんとでも言いなさい。……詳しいことは出先で話すわ」

 

「了解」

 

 そういえば今までメリーの依頼を手伝ったことは無い気がするな。

 メリー自身に依頼があったら大抵別行動が普通だった気がするし……。そういう時に限って俺は雑魚討伐だからなー。

 でもあれだよね、メリーにくる依頼って絶対難易度が高いやつだったりするよね。

 ……うーん、一気に自信が無くなってきた。簡単な依頼だといいな。

 メリーが珈琲を一気飲みした。熱々なのにすげえ。

 

 

――――――――――

 

 

 ただいま贖罪の街。まわりに建ち並ぶビル群が時々邪魔に思えるよ。

 メリー曰く、本日の依頼は支部長直々に発注した依頼だそうです。

 いやー、すごいね。支部長がここで出てくるとはねー。

 

「って、はああああ!? 俺がそんなのについて行っていいわけ!?」

 

「まあ駄目でしょうね」

 

「なんでそんなに普通に言えるわけさ! 連れてくるなよ!」

 

「夏が口外しなきゃ何にも問題ないわよ」

 

「軽い! 支部長の依頼ってそんなに軽いものなの!?」

 

「重いでしょうね」

 

「ぎゃああああ!!」

 

 こいつの神経は本当にわからない。なんで俺を連れてきたんだよー!

 もしこんなことが知れたとして……。減俸とか食らったら確実に俺が終わるよ。

 この前だってサリエルの剣パーツと装甲パーツを強化したら820fcだけになったのに……。あれは泣いた。

 

「今回から固定任務よ。特別なコア……『特異点』を無傷で摘出せよ」

 

「それが依頼?」

 

「そう。鬱憤溜まりまくりよ」

 

 つまらなさそうにメリーは呟いた。

 まあメリーはこういう探索よりも討伐の方が好きそうだもんな。事実周りにそう言ってるし。

 つまらない、つまらないと言いまくっているメリーだがその顔は殺気にあふれている。こいつ『特異点』を持つアラガミ見つけたら抹殺する気だ。依頼はどこにいった。

 

「その……『特異点』? ってどいつが持ってるんだ」

 

「分からないから探してるんでしょ」

 

「それもそうだね」

 

 確かにメリーの言うとおりだ。というわけで勝手に妄想してみることにする。

 とりあえず特別なコアっていうもんだからいつも討伐しているような大型、小型アラガミは除外だな。

 んで、特別と言うからにはそれ相応の特別さを持っているわけだから……。特別さってなんだ。

 サカキ博士が前に言ってた犬、とかかもしれない。猫とかハムスターとか。癒し系に走ってしまう自分がいるよ。

 果てには、

 

「人間とかだったら、面白そうだよな」

 

 なんて。馬鹿馬鹿しいことかもしれないけどさ。

 メリーはきょとんとしていたけど急に真面目な顔になり「そうね、それもあり得るわね……」と考え込み始めた。うわっ、似合わないな。

 それにしても、なんでここまでメリーは不満そうなんだろうな。

 

「報酬とかいいんだろ? なんで不満なんだよ」

 

「別にお金とか今そんなに必要じゃないし」

 

「貧乏人には聞き捨てならない台詞が!!」

 

 こいつ……。俺より金を持っていやがる! まさか後輩にまで負けるとは思っていなかったよ。悔しい。

 とりあえず冗談は置いておいてぐるぐると俺たちは一周したわけですが。

 

「何にもいなかったわね」

 

「そうだな、見事にいなかったな」

 

 それらしきアラガミは見当たりませんでした。

 どんどんと隣でメリーが不機嫌になっていくのが分かるよ。肌で感じることが出来るよ。

 このまま帰ろうか相談しているとオウガテイル三体と遭遇。即座にメリーに狩られました。コアはサカキ博士のお土産として俺が貰いました。

 

「足りない……、血が足りないわ……!」

 

「お前こえーよ! ちょっと落ち着け!」

 

「……」

 

「メリー?」

 

 急に押し黙ったので、どうしたのかと俺はメリーの顔を覗き込む。

 すると目をギラギラと光らせたメリーが悪魔のような笑みを俺に向けてきた。ちょっ、怖い!

 

「いい獲物がいたじゃない……。帰ったら特訓してやらないとね……」

 

「それ簡単に言っちゃうと八つ当たりだよね!?」

 

「八つ当たりして何が悪い!」

 

「俺はサンドバックかー!?」

 

「当然!」

 

「ひでえ!」

 

 帰還の最中には逃がさないとばかりに肩を掴まれて愚痴を聞く羽目になりました。

 

 

――――――――――

 

 

「博士ー。あ、今日は鍵かかってないや」

 

 良かった。またいじめられるかと思うとここまでの道のりがちょっと重かったんだよね。

 ん? 特訓はどうしたって? ……ついさっきまで受けてきたよ。メリーが剣の形態で斬りかかってきたときは死ぬかと思った。

 早速サカキ博士に今日手に入れたオウガテイルのコア三個が入った袋を渡そうとして……、俺はゼルダが傍らにいることに気付いた。

 

「あれ、ゼルダ? なんでいるんだ?」

 

「あー、えっと、その……」

 

「私がお願いして奥の部屋を掃除してもらってたんだよ」

 

「あ、それです。それでした」

 

 なんだか怪しげな雰囲気を感じるぞ。

 まあ俺は部外者なんであまり深く立ち入るつもりはないがな。

 俺はサカキ博士に袋を渡そうとして……、奥の部屋からアリサとコウタが出てきたのを目撃した。

 

「あれ、アリサにコウタまで。お前らも奥の部屋の掃除か?」

 

「え? いや、俺たちは……むぐっ」

 

「そうなんですよ。あの部屋、すごく汚くて綺麗にするのに苦労しました」

 

「アリサくん、少し失礼じゃないかい?」

 

 コウタが何か言おうとしていたがアリサに口を塞がれてしまったので何を言おうとしたのかは分からなかった。

 というか奥の部屋って汚かったのか。あそこを出入りしているサカキ博士は見たことがないけど、物置になってるのかもしれない。

 俺は今度こそサカキ博士に袋を渡して部屋を見回した。なんかすごい面子になっている気がするのは気のせいか?

 

「んじゃ、俺は眠いんでもう行きますね」

 

「また頼むよ」

 

「……あ、今金欠なんで今度何か貰ってもいいですか?」

 

「別に構わないが、今回からじゃなくていいのかい?」

 

「今日は眠いんでもう帰りたいんです」

 

「君らしいね。その件については考えておくよ」

 

 俺はサカキ博士に「ありがとうございます」と軽く頭を下げた後部屋から出て行った。

 サカキ博士の「また頼むよ」ってもう聞き飽きたな。いや、そんなこと言っちゃいけないけども。

 

 

――――――――――

 

 

「シオちゃーん」

 

「んー、ぜるだー?」

 

「きゃーーー!! 可愛いです!」

 

 夏が去った後の研究室。

 今回もソーマ以外の第一部隊全員がこの部屋に集結していた。

 ゼルダは相変わらずアラガミの少女……基シオに夢中となっておりいつもの頼りある姿は完全に消え失せている。

 そんな盛り上がる研究室の隅で一人意気消沈している少年がいた。

 

「なんでだ……。なんでノラミが採用されなかったんだ……」

 

 その少年、名を藤木 コウタと言う。

 実はつい先程まで少女の名前を決めようという話し合いが行われており、コウタは「ノラミ」という名前がいいのでは、と意見したのだ。

 しかし仲間の意見は冷たかった。誰もが「それはない」という目線や「うわあ……」という目線でコウタを見、受け入れなかったのだ。

 終いには少女自身に「イヤだ」とばっさりと斬り捨てられた。彼の精神は直に限界を迎えるだろうというところまで行っていた。

 

「コウタのネーミングセンスが最悪すぎるんですよ」

 

「はうっ!?」

 

 そしてまた精神的ダメージを負わせるこの少女、名をアリサ・イリーニチナ・アミエーラという。長いので皆アリサと呼んでいるが。

 「あの事件の後しばらくは可愛げがあったのに……」とはコウタ談である。復帰した後のアリサは周りと打ち解けやすくなったもののコウタに対してはとても厳しい。

 なんだこれ、新手のツンデレか? と一瞬疑ったコウタである。

 

「サクヤさんなら分かってくれますよね!?」

 

「うーん……。さすがに、あれはどうかと思うわ」

 

「うぅっ!?」

 

 またしてもダメージを負わせるこの女性、名を橘 サクヤという。第一部隊のお姉さん的存在である。

 皆のことを親身になって考えてくれ、相談事を持ち込まれるのが多いのだが……。さすがに今回ばかりは無理だったようだ。

 サカキ博士は取り合ってくれない。少女からは拒否られた。他に否定していないのは……。

 

「リーダー! ノラミって名前、いいと思うよな!?」

 

「ノラミなんて可愛くないです。シオちゃんのほうが可愛いです!」

 

「り、リーダーまで……」

 

 コウタの精神的体力はゼルダの一言で0……いやそれ以上のダメージを追い陥落したのだった。

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