GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~   作:キョロ

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27、ゼルダの迷惑特性

「本当なんで固定なのかしらね滅びればいいのに主に全人類」

 

「お前、この前から溜まってるよなあ……」

 

 一息で不満事を言いきったメリーに俺は哀れみの目を向けた。幸いメリーは気付いていないようだ。

 ここ最近俺たちはとにかくメリーの固定された依頼である『特異点探し』をやっている。

 重要な依頼であるはずのこの依頼より彼女は討伐依頼に行きたいようで「ウロヴォロス行きたいウロヴォロス行きたい萌えたい」とよく分からない単語を並べてばかりだ。

 ……ウロヴォロスで萌える女子ってどうなんだろ。てかそれ以前に萌えるのか?

 

「本当嫌になるわー。今すぐ夏を肉片に変えたいわー」

 

「なんで!? なんでそこで矛先が俺に来るの!?」

 

「ねえ、やっていい? やっていい?」

 

「良い訳ないだろ!! そこで目を輝かせるんじゃないよ!」

 

 女、だよな? こいつの性別は女で合ってるんだよな? こういう発言は本当に困る。頻度が増えてきてるから困る。

 あー、ちなみにこの前の俺の羞恥事件についてはあれ以来触れていない。

 は? 羞恥事件ってなんだって? ……俺の過去話に触れたやつだよ。俺の口から言わせんな。

 今度メリーの過去話も聞いてみたいな。それでようやくお互い様だと思うんだ。

 

「でもなんでずっと無いもの探さなきゃいけないんだよ」

 

「いや、あるはずよ。無いものを探させるほど支部長は“馬鹿”じゃないもの」

 

「今なんで“馬鹿”にアクセント付けて俺の方を敵意の目で見たんだよ」

 

「あんたが馬鹿だからよ」

 

「ストレートォ!!」

 

 あとあれ以来割とメリーの口撃が辛い。仲良くなった証拠……とは思いたくない。

 暴力とかで友情が形成されてるとか考えたくないよ。多分事実なんだろうけどさ……。もう嫌だ。

 そういうわけで、一応今回の依頼についての説明をメリーから受けることに。いや、別に必要ないんだけどね。早くも要領掴めてきたし。

 

「あれ……」

 

「どうしたー?」

 

「今回の依頼はゼルダも参加するみたい」

 

「へえ、よく借りれたな」

 

 俺たちが支部長の依頼に振り回されるのと時を同じくして、ゼルダたち第一部隊は何かとサカキ博士に振り回されているようだ。ご愁傷様。

 まあ俺も並行作業としてコアを持っていってるわけだけどね。ある意味掛け持ちだ。

 それにしても本当、なんで来る気になったんだろうな。これ以上関係ない人を巻き込みたくないんだけど。

 ……ん、なんで表現が“巻き込む”かだって? いや、勘。ただの勘でそう思ってるだけだから特に気にしないでくれ。

 

「さて、じゃあ行くわよ」

 

「おう。……え? あれ?」

 

 おかしいな、まだ出撃時間に余裕はあるはず。なんで俺は今現在引きずられてるんだろうね?

 そのまま俺はエレベーターの中に引き込まれました。

 

 

――――――――――

 

 

 場所は所変わって訓練場。どうやら出撃時間まであいつはここに籠る気らしいのだが。

 

「ふっ、は、おうっ!?」

 

 俺めがけて次々と飛んでくるレーザーをひたすら避け続ける。一応今のところは当たってない。

 横に避けたり、後退して距離を取ってから複雑に避けたり、その場で体を曲げて避けたり……とまあ色々な感じで避けてる。

 本当は盾を展開したいんだけど、展開すると早々にモルターに切り替えてぶちかましてくるから使えない。あいつって本当鬼畜だよな。

 

「ははっ、当たれぇっ!!」

 

「俺は射的の的かよ!」

 

「ええ、そうよ。その通りよ! 潰れろお!」

 

「肯定すんな! 誰が潰れるかよ!」

 

 それにしてもこの特訓と言う名のリンチは相当こたえる。

 休む暇など一切与えられずにドンドンと打ち続けられるレーザー。それを回避するのは体力以外にもこの時間を耐えるための精神力も必要だろう。

 段々と体力と共に精神力が削られてきた。結構今辛い。ぜえぜえと口から漏れる息が煩い。

 

「おま、え。相、当ひでえ、よ」

 

「何とでも言うがいいわ! これが私なりの特訓よ!」

 

「私、情はさん、でるくせ、に」

 

「あらあら、随分とバテるのが速いわねえ」

 

「……」

 

 俺はもう喋らなかった。いや、だって、もう怠い。

 かれこれ何分経ったのか、それは俺には分からないけどまあまあの時間が経過した。

 ちなみにメリーはOアンプルを持っているようでそれでオラクルポイントを回復しつつレーザーを撃ってきている。鬼畜め。

 しかし俺にとっての救世主は突然訓練場に現れた。

 

「よう、居ねえと思ったらここにいたかー。……って、なんだこりゃ?」

 

「……失礼だけど、どちら様かしら?」

 

「んー? 毎日見てるだろうよ、普通間違えねえだろ」

 

「ええ、見た目は間違えないわ。でも誰よ」

 

 メリーの攻撃の手が止まり、レーザーが俺に向かって放たれることは無くなった。そして同時に俺は足の疲労により床に崩れ落ちる。

 体育座りすらできない。俺は体を預けるようにして床に倒れ込んだ。

 忘れてたけど、この後も依頼で歩くんだよな……。せめて依頼後がよかった。

 

「なーんだよ、俺の名前知ってるくせに」

 

「“彼女”は俺なんて言わないわ。憑依? 憑依してんの?」

 

「ああ? 失礼なことを言う(アマ)だな。殺られてえのか?」

 

「名前聞いてんのよ、答えなさい」

 

「はあ……、分かってねえなあ、お前。わーったよ、言うよ。言やあいいんだろ?」

 

 二人の会話が聞こえてくるのが分かる。今使える全神経を耳に集中させて、必死に声を拾い上げる。

 二人には背を向けていて会話している姿を見ることはできない。動く元気がない俺は聴力に頼って二人の動きをシュミレートしてみる。

 ……ん? メリーに対しているあの声は確か……。

 

「俺の名前は――」

 

 

――――――――――

 

 

 さて、というわけでやってきました贖罪の街。正直、ここにはもう何もないと思うんだよね、俺は。

 それではただいまの状況を今いる人数、つまり三人の会話で表現させていただこうか。

 

「腹立つ……、なんでこんなのと一緒にいなきゃいけないわけ?」

 

「あー、ウザってえ。さっさと帰って寝てえよ……。暇な任務だしな」

 

「……」

 

 やっぱり分かりにくいから一言で表現する。修羅場。

 ヘリの中からずっとこんな調子だ。おかげで俺は一言も喋れていない。なんだこれ。

 うーん、なんだか頭痛の元が増えた気がするのは俺だけか……? あ、腹痛も来た。

 

 

 ――俺の名前は、ゼルダだ――

 

 

 先程からメリーと口論をしている不良のまるで男のような口調の女性、その名をゼルダと言う。

 いつも綺麗なストレートになっている短髪はボサボサになっており、性格のお蔭で緩められている目元はいつもの数倍キツイ。おまけにふんわりとした表情も消え、正しく不良。

 一見して「え、ゼルダ? お兄さんとかじゃなくて?」という人物が俺の目の前にいた。いや、だって本当に男性に見えたんだよ。

 

 普段と違うところが他にどこかと聞かれたら、言えるのは服装だろう。

 ゼルダはいつも同じ服装――クラウドブルゾンというらしいのだが――をしているが、今ゼルダが着用しているのはスイーパーブランと呼ばれる白いコートだ。

 ……お気付きの方はいるだろうか。実はこれ、メリーの色違いである。メリーが普段着用しているのはスイーパーノワール。黒いコートである。

 

「なんであたしのコートでそれなわけ? 訳分かんないわ、滅べ」

 

「んなこた知るかよ。俺は“これ”で出てこれんだから。文句は表に言え」

 

「……」

 

 ちなみにヘリの中ではゼルダ、ここからは裏ゼルダとさせてもらうが説明を受けた。

 裏ゼルダ曰く、表の人格であるいつものゼルダは多重人格者とのこと。

 そして何故だかは裏ゼルダにも不明だが、その人格の発動は“服”によって変わるとのこと。

 裏ゼルダはこのコートで発動するようだ。二度と出てくんな。

 

「で、でも、なんで多重人格になったんだよ? ゼルダは表裏がないように見えるぞ?」

 

「馬鹿だな、夏。表裏が無い人間なんていねえんだよ。……こいつは人格が分かれてちと複雑だが」

 

「……人格が分かれたってどういうことかしら」

 

「残念だがここから先は言えねえ。こいつは表の過去、プライバシーに関わるからな」

 

「……そうか」

 

「俺だって、もう思い出したくない出来事だ。察しろ」

 

 ゼルダの清楚と真面目イメージをことごとくぶっ壊していく裏ゼルダであるが、意外と表ゼルダに対しては優しいようでプライバシーなんかも守ってる。意外ー。

 「聞きたいなら、表と友好関係を深めるんだな」裏ゼルダは言いたくないだろうに道を示した。辛そうな表情だ。

 

「さあて、無駄話はここまでにして。そろそろ行こうぜ、キリがねえや」

 

「そう、ね。さすがに長時間出先に居たくはないし」

 

「それなら手分けして探そう。俺とメリーは左半分、ゼルダは右半分を頼めるか」

 

「了解。こういう時は仕切りがいいなあ、夏は! そこの女とは格がちげえよ」

 

「なっ! 誰が夏以下よ! 失礼にも程があるわ!!」

 

「それ俺に失礼って気付いてる?」

 

 裏ゼルダは嫌そうな顔を隠そうともせずにメリーを睨み付けると、早々に地面を蹴って降りて行ってしまった。

 「十分後に集合なー」どうやら時間制限があるらしい。そんなに帰りたいか。

 

「……態々分けたのはまた口論にならないように?」

 

「当たり前だ。ずっと聞かされたら発狂する」

 

「しちゃえばいいのに」

 

「今日は初めから疲れてるからツッコまないからな」

 

 ため息を吐きながら俺はメリーと一緒にエリアへと降り立ち、そのまま左側へと歩を進めて行く。

 どうせいないと思うんだよ。ずっとここらで散策してたわけだしさ、いないって絶対。ぼんやりしながら警戒もせずに歩く。

 今日も空は雲と太陽の光により綺麗な絵を作り出していた。

 

 

――――――――――

 

 

 ただいま、エントランスのいつものソファ。メリーが俺の正面に座っていて、ゼルダは「疲れた」と言って部屋に帰った。

 今回の依頼、結果から言わせてもらうと駄目だった。とにかく駄目だった。これでもかってくらい駄目だった。

 もう本当いないって、贖罪の街。メリーにそう進言したら「さすがにそうよね。明日は場所変えようかしら」と返ってきた。終わりじゃないのかー……。

 

「それにしても、ゼルダのあれはなんなんだろうな?」

 

「原理が分からないわよね。多重人格はいいとして、服で変わるって言うのが」

 

「分からない。ゼルダは服に執着してるわけでもないしな」

 

「じゃあ服はただ単にスイッチの役割をしているだけなのかもしれないわね」

 

「気分転換の言葉が洒落にならないわけだな、恐ろしい」

 

 それよりも俺が気になるのは裏ゼルダの言っていた「人格が分かれた」という言葉だ。

 多重人格はあくまでも自分の一部が派生して出来たものだ。よってある意味で裏ゼルダの言ったことは正しいのだろう。

 ただあの言い方、それに服で変わる、というところからゼルダは他にもたくさんの感情を有しているのが予想できる。事実、裏ゼルダも多重人格と言っている。

 古くの例として確かに十を越える多重人格者は存在したが、分かれる、という言い方は少し何かが違う気がするのだ、俺的に。

 

 普通に見えるゼルダもなんか重いもの持ってるんだな、となんとなく同情にも似た親しみを覚えて俺は自分を諫めた。

 それじゃあゼルダに失礼だ。そんなところで親しみをもってどうするんだ。

 自分の馬鹿加減が嫌になって俺はため息をついた。

 

 

「あ、メリーさんに夏さん、今任務が終わったんですか? お疲れ様です」

 

 声が聞こえてきて、俺とメリーがほとんど同時に声の主へと顔を向ける。

 そこに立っていたのはゼルダだった。少し言い方を変えよう、いつものブルゾンを着ている主人格のゼルダが立っていた。

 一瞬、さっきとのギャップに飲まれそうになったがすぐに調子を取り戻して俺はゼルダに声をかけた。

 

「ああ、今帰ってきたんだ。……って、ん?」

 

 なんだか自分のしている会話に違和感を覚えて、俺は自分の膝とゼルダの顔へ視線をいったりきたりさせる。

 あれ、何がおかしいんだろう。自分でも分からなくなってきちゃってるよ。

 混乱している俺の代わりに答えを出してくれたのはメリーだった。

 

「お疲れ様って……。あんたもさっきまで一緒に任務に出ていたじゃないの」

 

「え? 私はさっきまで部屋で寝ていたんですよ?」

 

「……ぬん?」

 

「今ヒバリさんから任務を貰おうとしたら、今日はもういいですと言われてしまいまして……。何故でしょう?」

 

「何故って……」

 

 く、食い違いが起こってる。うーん、こういうもどかしいことが起こるなんて……。

 どうしようかな、なんて説明すればゼルダに上手く伝わってくれるだろうか。

 「あ、任務にメリーさんと夏さんと出ている夢を見ました」あ、もう説明どうでもいいや。

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