GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~ 作:キョロ
朝、いつも通りガヤガヤとうるさいエントランス。
その一角に周囲の温度よりも五度くらい低い人たちがいました。
「あぁ……、眠い……」
「お前にしては珍しいこともあるもんだな……」
はい、その人たちは俺とメリーです。どうもおはようございます。
いつもよりテンションが低い俺らです。原因はどう見ても昨日の出来事です。疲れが溜まってんだよ。
くあ、と欠伸をするメリーは本当に疲れていそう。ちょっと隈できてるし。
「あんなテンションの人に会ったのは久しぶりだわ」
「あのテンションじゃなくてもゼルダが豹変したら俺は怖いがな」
昨日の出来事とは『ゼルダ豹変事件』である。
服装を変えたら別人格になる特性を持っているということが昨日発覚した。
説明してくれたのは白いコートを着ることで現れる裏ゼルダ。今度から裏ルダって呼んでもいいかもー。
まあとにかくあの性格は厄介だった。しかも服を変えることで人格が変わるって事だからその人格の種類は未知数。めんどくせー。
「……そういえば、今日も同行してくれるんだっけ?」
「そうよ。あー、なんか朝から嫌な気分だわ」
「今度上に別の依頼を頼んだらどうだ?」
「その上からあたしはこの任務を請け負ってるんだけど」
「申し訳ありませんでした」
疲れたようにメリーに言われて思わず謝ってしまった。なんか、ごめんな。
なんとも煩い叫び声とか話し声の中に混じって聞こえる階段を下りる音が耳に入り、俺は階段のほうへ視線を向けた。オイ待て、誰だ叫び声上げたの。どうした。
階段を下りて来たのはゼルダだった。辺りを見回して俺たちを見つけると嬉しそうに笑いながらこっちへ向かってきた。
えーと、服装は……。いつもと同じブルゾンだね、やった!
「おはようございます。夏さん、メリーさん」
「おはよう、ゼルダ。よく眠れたか?」
「ええ、とっても。夏さんたちはどうですか?」
「あたしはあんたのせいで寝れな、うぷ」
「ああ、とーってもよく寝れたよ!」
メリーの口を手で塞いで代わりに俺が喋る。愚痴らせて堪るか。
恨めしそうにメリーが俺を睨んできていたけど気にしない。後で特訓がきつくなりそうだぜ……。
ゼルダは不思議そうに首を傾げていたけど、急にスンスンと鼻を動かし始めた。犬か。
「うん……? 夏さん、なにか持っていますか?」
「あ……? うわ、本当だ臭い。何持ってんのよあんた」
「はい? え、何のこと?」
とりあえず言われるがままに服のポケットとかを確認して、ようやく二人が言う異臭を放つ何かを見つけた。
ズバリ、オウガテイルのコアだ。昨日の時に見つけたから回収しておいたんだよね。
そういえば最近ヴァジュラテイルっていうオウガテイルの進化系みたいなやつが出てきてるらしいんだけど、俺は会ったことないんだよね。
昨日オウガテイルよりもちょっといかつい奴なら、昨日三体遭遇したからコア取っておいた。それがこれなんだけどね。
……え、そいつがヴァジュラテイル? へー。
「何よ、それ」
「昨日回収したコア」
「何で昨日渡さないのよ、馬鹿」
「夏さんらしいですねー」
「どこら辺がだよ……」
ゼルダの発言が少しと言わずにかなりずれている気がする。
なんだ、その俺らしさって。渡し忘れのどこが俺らしさって言うんだよ。
なんだかゼルダがちょっとずつ酷くなっていっているような気がするんだが、俺の気のせいか?
「ま、まあ、今日の依頼が終わったら持っていくさ」
「今行かないんですか?」
「二度寝と二度手間は嫌いなんだ」
「その馬鹿さに敬意を表して拍手を送りたいわ」
「おかしいな、俺には指差されながら笑われているように見える」
「いい観察眼ね」
「見間違いじゃなかった!」
呆れ顔のメリーと特に気にしていなさそうなゼルダ。気にしてよ……。
とにかく今日は早く帰ってこないとな。じゃないと更に面倒なことになりそうだ。主にコアの臭いが。
――――――――――
やってきました鉄塔の森。さすがに贖罪の街にはなさそうだったから今日から場所を変えました。わーい。
ちなみにヒバリちゃんから聞いた話だと今回は鉄塔の森にサリエル堕天がいるから気を付けて、だそうだ。
その報告を聞いてメリーが喜んだのは言うまでもない。どんだけ鬱憤溜まってたんだよ、お前は。
まあサリエル堕天は俺の神機の強化に使う素材が出るから俺としてもありがたかったりする。どんどん強化していかないとね。
一番冠が出にくかったりするんだけど、頭をちゃんと破壊すればいけるだろ。信じる。
「結合崩壊、確認しました」
「こんなもんじゃすまさないわよ」
「いきなり出オチ状態!?」
ちょっ、まるで二人で謀ったように頭を破壊してくれましたよ。酷過ぎやしませんか、あなたたち。
そしてゼルダもそれに参加しているというのが酷いよね。もう俺はゼルダが分からないよ。
いつも思うけどメリーとかって行動速いよね。それとも俺が遅いだけなの?
まあ頭部を破壊されちゃったけど、まだスカートとか足とか残ってるわけだし。
「脆いわねえ」
「ええ、全くです」
「うわっ、痛そー……」
メリーがスカートを破壊、ゼルダが足を破壊しました。なんだこのいじめ。
でもいつも思うんだけど結合崩壊って見ているだけで痛々しいよね。かなりの激痛を伴うと思うんだよね。
だって想像してみてよ。攻撃されたら俺の頭がパリーン……、って死ぬわ!!
よく生きてるな、さすがオラクル細胞というべきか。
とりあえずサリエル堕天が落ちてきたので俺も仕事をしようと近づく。
「ここからですっ!」
「隙だらけね!」
「ガブっとな!」
三人そろって仲良く捕喰。お食事の時間はまだまだ続くよー。
隣で異常なバーストをしている人がいるけど気にしないことにして俺は神機を手元に戻した。
さて、こっから暴れ回ると行きましょうか? 神機が同族だからって気にしない!
「頼むぜ、相棒っ!」
ダウンから回復し浮き上がったサリエル堕天を叩くために近くにあった段差の上に跳び乗ってサリエル堕天に向かって跳ぶ。
数回サリエル堕天を斬り裂いて、重力に従って落下していく身体を空中ジャンプで体勢を立て直してまた斬り裂いた。
素早さ命のショートブレードだからね、こうやった速度勝負では負けないよ。……ゼルダの腕力のおかげで少し自信が折れそうになってるけどね。
「砕け散りなさい!」
メリーは地面に着地してはすぐに跳躍してサリエル堕天に確実にダメージを与えていっている。
バースト状態のおかげで跳躍力も普段のものより増しているし、神機の振りも格段に速くなっている。
どうやらことごとく新型たちは俺の自信を壊してくれるみたいだ。
「てやああああ!!」
ゼルダは跳ばすにその場でチャージクラッシュをサリエル堕天にぶつけていた。
ぐしゃりと嫌な音がして思わず耳をふさぎたくなった。あの音はヤバいって。確実に正常な神経を壊されるって。
さすがにそんなに重たい攻撃を当てられて耐えられるサリエル堕天ではなかったようで、そのまま落下して息絶えた。
落下する時に素早く避けたゼルダはさすがだと思う。俺は前に潰されたしな。
「楽勝楽勝っ!」
「被害は最小限。上出来ですね」
「……夏、なんかした?」
「んなっ!? ちゃんとやったよ! 見ててよ!」
「なんで好きであんたを見ていなきゃいけないのよ」
「毒舌が最近エスカレート!!」
なんだか最近メリーに毒舌を吐かれてもイライラしなくなってきている自分がいるんだ。
これはもしや慣れ? 慣れなのか? 俺はもうこれに慣れてきてしまっているのか? なんで俺慣れてきちゃってるんだよ。慣れちゃ駄目だろ。
うおおおおおお、と頭を抱えてうずくまっているとちょんちょんとゼルダが俺の方をつついてきた。
「あの、捕喰しないんですか? 素材が必要なのでは……」
「ああ……。うん、そうだった。ありがとう」
ゼルダに言われて神機を捕喰形態にしてサリエル堕天に食いつかせた。
……お、冠だ。ラッキー。今度の強化は意外と速く進みそうだな。
「そういえば……」ゼルダが何かを思い出したように俺たちに声をかけてきた。
「今回の任務はサリエル堕天の討伐ではないんですよね? 任務の内容は何ですか?」
「え、聞いてないの?」
「はい、全く」
「……メーリー?」
「あたしは夏がやるもんだと」
「お前がリーダーだろっ! 説明しとけよ!」
しばらくまたメリーとぎゃあぎゃあ喧嘩した後、一度気持ちを落ち着かせるために深く息を吐いた。
はあ、結局なんだかんだでメリーが絡むといつもあいつのペースに持ってかれちゃうよな。
こんなことじゃ駄目だって分かってるはずなのにな……。本当駄目だな、俺。
「特殊なコア探しだよ。俺はあると思えないけどな」
「特殊な、コア……ですか」
「その名も特異点。実に無さそうな名前だろ?」
「ちょっと、勝手に無い前提で話さないで頂戴。あんたとは違うんだから」
「なんだよ! こんなに探し回って無いんだから絶対無いって!」
「あるったらあるわよ!」
またはじまっちゃったよ、喧嘩……。こうなったら俺も止められないよ。
だから、忙しなく始まった喧嘩の対応をしていた俺は気付かなかった。
「……特異点……?」
そんな俺たちを見ながら表情を凍りつかせて何かを考えているゼルダを。
俺たちは気付けなかった。
――――――――――
「これは駄目だねえ」
「やっぱりですか……」
「腐敗が始まってしまっている。使い物にならないだろうね」
「……すみません」
どうも、所変わってサカキ博士の研究室だよ。
異臭を放つコアだったものをサカキ博士に渡したんだけど、実に嫌な顔をされて返されてしまったよ。
どうやらきちんとした保存をしなかったせいでいろいろヤバいことになってしまっているらしい。
うえぇぇ……、グロイものが更にグロくなっているわけか……。
「それにしても弱ったね。もう品切れか」
「品切れ? もうコアが無いんですか」
「最近の研究は消耗が早くてね」
本当、何してるんですかサカキ博士。コアをそんなに大量に使う実験なんてそんなに無いと思うんだけどなー。
……ま、まさかサカキ博士が食べているとか……。いや、さすがにそれはないよね。疑ってごめんなさい、サカキ博士。
兵器とか作ってないといいんだけどなー。
「……ああ、明日は持ってきてくれなくてもいいよ」
「え? いいんですか? 必要なんじゃないんですか?」
「頼んでいるのは君だけじゃない、ということだよ」
俺以外にも利用している人いるんですか、サカキ博士。この人、想像以上に人使いが荒いな。
それにしても誰だろう、その頼まれている人って。同類だし、会ってみたいな。
「そう、ですか。それならいいか……」
「また頼むと思うからいつでも出来るように準備しておいてくれたまえ」
「はいはい。それでは失礼しますね」
そのまま俺はサカキ博士の研究室から退出した。
でも、誰なんだろうな。その人……。
この前いたゼルダとか、コウタとか、アリサとか。あれ、第一部隊の名前しか出てこないのはなんで?
……なんだかんだ、苦労しているのかもなあの部隊。第一部隊の忙しさを思って、俺は合掌した。頑張れー。