GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~ 作:キョロ
ぶっちゃけた話、2で使うやつなのであまり関係なかったり。
前にハロウィンのお話で出てきましたね。
では、スタートです。
(う、嘘。嘘よ、こんなの……)
目の前一杯に広がる赤、赤、赤、赤、赤……。地面に飛び散った赤が、あたしに向かってもかかる。
あたしの持っている神機に付着している、赤。
何故こんな状況になったのか分からなくて、頭の中が混乱する。
ぐちゃぐちゃに掻き回された思考回路では冷静な答えを出すことなど不可能。
分かっていても、この状況を覆すような答えを探すために足掻く。
「嫌……、嫌……!」
朱に染まる銀、泣き叫ぶ黒、立ち尽くす茶。どうして、こうなった?
分からない分からない分からない分からない分からない。
「は、はは……。ははははははははは!!」
こんな状況で笑っているのは誰なのか。
もう、何も分からない。
(……なにしてたんだっけ)
何か嫌なことを見ていたような気がする。でも肝心のその何かが分からない。
まあ、いっか。どうせ大したことではない気がするし。
勝手にそう結論付けて私をそのままぼんやりとする。
(不思議な場所だなあ)
なんだか昇っていっているような、落ちていっているような、その場で静止しているような。不思議と言う言葉でしか表しようのない場所にあたしはいた。
淡い黄色のどこまでも続いているような果てしない空間にあたしは浮いていた。
得体のしれない空間であるはずなのに、あたしは心が落ち着いていた。
誰が造った場所なんだろう。ずっと、ずっとここで過ごしていたくなる。
『……おー……、……かー……』
ぼんやりとした意識の中聞こえてくる聞き覚えのある声。誰だっけ、覚えてない。
意識も段々と朦朧としてきている。視界は狭まってきて脳は殆ど休眠状態に移行してきているのに、耳は情報を拾おうとしている。
『……い……のか……? ……かっ……は……ぞー……』
放っておいて。言おうとして、あたしの意識は急に持ち上げられていった。
――――――――――
「……っ!」
嫌な気配に駆られてあたし……メリー・バーテンは目を覚ました。
「なんだ、起きてるじゃんか。いや、今起きた感じか?」
最初に見えた色は、白だった。そして割り込むようにして視界に入ってくる夏。非常にウザい。なんで目覚めてから一分経らずでこいつを見なきゃいけないのか。
少しイライラしながら、不意にここがどこなのか気になる。
あたしがいるのはベッドの上のようで、周りから隔てるように白いカーテンで囲まれている。
「朝行ったらエントランスにも部屋にもいないんだもんな。人に聞いてようやく見つけたよ」
「……」
あれ、そういえばここはどこだっけ。……そうだ、確か病室だ。
最近嫌な夢ばかり見てしまうせいかなかなか寝れなくて、睡眠薬でももらえればいいなと思って病室に来たはずだった。でも、なんでここで寝てる?
何度考えても思い出せなくて、終いに何故か夏が憎くなってきた。どうしよう、半殺しまでに殴りつけたい。
「なんで、あたしここで……」
「ようやく起きたようですね?」
「あ、せんせ……。あれ、誰?」
誰だろう、この緑。
深緑の所々癖毛のある肩に触れるくらい伸びた髪、同じく深緑の穏やかな瞳。そして緑色のシャツの上に白衣を羽織った誰か。性別が分かりづらい。あとセンス悪い。
一瞬夏が知っているような顔をしていたが、どうやら知らなかったらしい。不思議そうに首を傾げていた。知ったかすんな。そして首を傾げるな、気持ち悪い。
「こんな人、いたっけ……」どうやら病室の常連らしい夏も本当に知らないようだ。
「日出 夏くん、ですね。貴方はいつも遠巻きから見ていたので私は知らないと思いますよ」
「遠巻き!?」
「ああ、夏くん。こちら、ちょい前からいる医療班の方ね。なかなか腕がいいのよー」
あたしたちの喧騒に気付いたらしい医療班のおばさんが話に割って入ってきた。
「確かメリーちゃんと同じ支部に前はいたはずだけどねえ」病室に行ったことがないからあたしには分からない。そしてメリーちゃんってなんだ。
「こちらに来てからオオグルマさんからも医療を教えてもらいましたので」
「あらヤダ謙遜しちゃってえ! あなたはなかなか筋が良いわよお」
「ありがとうございます」
にっこりと笑っておばさんと話す男性。口調や態度からもなんだか穏やかそうな人に見える。
それにしても本当に見たことがないな。あたしと同時期に来たのだろうか。
いやでも、オオグルマとかいうやつはあたしが来る少し前か後くらいにいなくなったらしい。
ということはもっと前か……。ヤバイ、本当誰だ。
「自己紹介が遅れましたね。私の名前は
「あ、よろしくお願いします、一条さん」
「よろしく、一条」
「フレンドリー!?」
今日も夏は絶好調の様でぎゃあぎゃあと訳の分からないことを叫んでいる。あれは一体何なのか。
そうだ、名前もようやく知れたことだしあたしがここにいる理由をそろそろ聞いてもいいんじゃないだろうか。
正直、あたしは昨日の記憶がブツ切りになっていて曖昧だ。どこの馬鹿だ、あたしは。
昨日は寝れなくてこの場所を訪れたことは覚えている。でも扉を開いてからその後がさっぱり分からない。
「メリーさんはお疲れの様でしたので強行手段を取らせていただきました」
「きょ、強行手段ってなんですか?」
「お出しした飲み物に睡眠薬を盛りました」
「案外普通ー」
一体この馬鹿は何を期待しているのか。それで万が一あたしに何かあったらどうするつもりなんだ……。
ため息をついてから身体の怠さを感じ取る。睡眠薬はこういうものなのだろうか。なかなかに嫌な効果だ。
でもいつ飲み物なんて出されただろうか。……駄目だ、何度考えてもとてもじゃないが思い出せない。
こういった出来事、最近多すぎるような気がする。任務中の記憶はある。でも帰ってからの記憶が時々曖昧になっている。
頭が、痛い。
「大丈夫ですか? 今日は休んだほうが良いのではないでしょうか」
「そうそう、そうしろって。コアだって今日も見つからない気がするし」
「どうしよう、殴りたい」
「私何かしましたか!?」
「いや、一条さんは関係ないと思うよ」
サッと顔色を青く変える一条。あ、この人夏と同じでリアクションがいいタイプかも。
しばらく通って遊んでみようかと思案するが、夏の方がいいリアクションだと思い出してその案を却下した。
しかしこの状況、やはり任務にはいかせてくれないだろうか。なんだか今なら夏に負けそうな気がする。なんでだろう。
「任務は行くわよ。あたしが支部長から受けたんだから」
「ざんねーん。今回は俺が受けましたー!」
「……は?」
「俺が手伝ってること、既に支部長に知れてるみたいで俺が連絡したらオッケーだった」
「そんなに簡単な任務だったかしら、あれ」
「メリーのおかげで俺も認められたのかなあ。ありがとな!」
輝かしいほどの笑顔。うわ、殴りたい。ただの衝動だけど、殴りたい。
でもまさか支部長が承諾するとは思ってなかった。これはあたしにとって予想外の出来事だ。なんか感謝されてるけど。
支部長には何か魂胆があるのだろうか。なんとなくその線は読めてきているけどもまだ確証がない。八方塞がりだ。
ならここで夏を巻き込むわけにはいかない。いや、もう巻き込んじゃってるけども。あれはただ単に軽い興味心だ。
まさかその興味心からここまで巻き込むことになるとは想像もしていなかった。どうしよう。今更外すことはできない。
「……頑張って」
「おう! ……ってメリーがデレた!?」
「誰がいつデレたっていうのよ?」
「おうふっ!?」
折角応援してやったのにあんまりな態度だったからついつい鳩尾に一発叩き込んでしまった。いけない、これはもう癖だ。
夏は少しの間蹲ったら治ったようで、そのまま病室を出て行った。元気だ。
そういえば夏と言えば元気が取り柄だが、あたしには何か取り柄があるだろうか。……ドS?
「前は根暗だった君があんなにポジティブな友達を……。私は感激していますよ」
「あたし、あんたに会ったことないんだけど」
「夏くん同様に遠巻きから見ていましたのでそれも当然かと」
「あんたストーカーね」
「はは、よく言われます」
「……言われていいの?」
「特に気にしない性質なので」
うわ、この人予想以上に面倒そう。通うのは無しにしよう。
思考していたところで一条が興味深そうにこちらを見ていることに気付く。ストーカーの視線って異常に怖い。
じっと睨み返してやると縮み上がった。面白い。
「おかしいわね、あんたみたいなのいたらすぐ目につくはずなんだけど」
「貴女は前の支部で感覚を殺していたではないですか」
「あら、知っているのね」
「勿論です。今なら気付かれますが、あの頃なら気付けないと思いますよ」
「相当なストーカーね」
「お褒めの言葉ありがとうございます」
こいつの性格は案外好きかもしれない。深入りする気はないけども。
さて今日は一日暇になってしまった。どうやって過ごそうか。
……とりあえず眠たかったのでそのまま眠ることにした。これで一日過ごせるとありがたいんだけど。
――――――――――
結局、いつも通りの依頼だった。
探索してアラガミ倒して探索していないから帰る。いつも通りすぎた。
今日はアラガミも雑魚だけだったし、俺一人で十分だった。なんで俺だけの時に限って小型……。嫌われてる?
ゼルダも今日はサカキ博士から頼みごとがあるようでソーマとコウタと一緒に出撃してしまった。なんで三人なんだろうね。ちなみに場所は愚者の空母らしい。
「メリー大丈夫かー……、っと」
カーテンを開けてみるとぐっすりと眠っているメリーを発見。危なっ、起こすところだった。
とりあえず内に入ってからまたカーテンを閉め、置いてあった椅子に腰を掛けた。
でもなんでこいつは夜中に病室に来たんだろうな。そんなに体調悪かったのかな。睡眠薬仕掛けたくらいだし。
「あ、誰かと思ったら夏くんでしたか」
「どうも、一条さん。メリー、どうですか?」
「明日は出撃できますよ。ただの疲労ですからね」
「そうですか……。良かった」
時々メリーに嫌われているのかなと思ったりはするけど、メリーは俺にとって大切な存在だ。……あ、恋愛的な意味じゃないよ?
男のくせに人に頼るなんて、と思われるかもしれないけど案外そういうのも気分が良い。必死に自分を隠してた自分が馬鹿みたいに見えてくる。
それでもまだメリーが自分のことを話してくれないのは悲しいけど、いつか話してくれると信じている。
「夏くんは優しいんですね」
「どうですかね? まあ散々弄られてますけど」
「いいリアクションをしてくれそうな顔ですからね」
「顔で分かるものなんだ……」
初めて知った。リアクションって顔なのか。
でも俺は意識してリアクションしているわけじゃないんだよな。ただ単にいちいちくる執拗ないじめに対処しているだけで。
いや、そもそも対処するからその続きが来るのか? うーん、分からない。
「……ん、それなんですか?」
一条さんが持っていた紙の袋が目に留まり、気になって聞いてみる。
きょろきょろと辺りを見回してから一条さんは俺の質問に答えてくれた。俺、一応ちゃんと袋指差しましたよ?
「ああ、これは睡眠薬です。メリーさんが眠れないと零していたので処方しました」
「へえ、あいつがそんなこと……。ありがとうございます」
「これも私の仕事の一つですから」
メリーが眠れないとか想像つかないな。想像しなくても目の前で起こってるんだけどね。
それにしてもこの人本当いい先生だな。ストーカー紛いのことをしなきゃもっといい先生に見えるんだけどな。
色々ともったいない人だ。
「今日は泊まらせるので、夏くんは部屋に帰ったほうが良いですよ」
「分かりました。なんか本当、ありがとうございました」
「医者ですから、当然のことをしたまでですよ」
久しぶりにこういう人に会えたような気がするな。
ちょっと『私』っていう人は初めて見たから最初は何だろうって思ったけど。失礼なこと考えてごめんなさい。
「それじゃ、失礼します」
「夏くんもあまりここには来ないように気を付けてくださいね」
「無理なことを言ってくれますね」
「そういえば言うだけ無駄でしたね」
なんだか前に同じような会話をしたような気がするのは気のせいだろうか。
とにかく俺は病室を出て自室へと戻って行った。あー、眠い。
◇一条
メリーと同じ支部から赴任してきた病室の先生。
以前からメリーのことを気にかけていたようであるが、メリー自身は一条に見覚えが無いようだ。
オオグルマがいなくなる前は彼に指南してもらうこともしばしばあった。
おばちゃんに腕を評価されているくらいにはできるらしい。
甘いものが好き。