GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~ 作:キョロ
文字数少なめです。
……どうしてか、疲れが取れない。起きたばかりなのにボーっとしてしまう。一応、顔洗ってきたんだけどなあ、なんでまだ眠いんだろう。
寝ぼけ眼を擦りながらエントランスに出るといつもの騒がしい雰囲気が俺を盛大に出迎えてくれた。あ、眠気取れた。でもこのまま寝たかったって思う自分もいるのは何故だ。
こうなれば依頼を早く終わらせて自室で寝よう。今日のノルマさえ達成すれば俺は存分に頭移民を取ることが出来るのだ。……まあ緊急性のある依頼がきたら駄目だけど。
「ヒバリちゃーん。今日の依頼は……って、たぶん雑魚三体衆だよね」
説明しよう、雑魚三体衆とは!
俺が考えた三体の小型アラガミの組み合わせのことを指す。ちなみにその三体とはザイゴート、オウガテイル、コクーンメイデンのことだ。こいつらが揃うと三方向から攻撃が来るから面倒なんだよね……。先にコクーンメイデンだけ倒そうとしたらザイゴート来ちゃって、オウガテイルも呼び寄せられたのは記憶に新しい。
大型アラガミが来なかっただけマシだと思うべきなんだろうけどな。それでもオウガテイルたちだって馬鹿にできない。初心を舐めるものは初心に死ぬのだ。
「今日は……。あっ、ゼルダさんと同行ですね。新人教育ですか」
「やっぱり三体衆か。……ん? 今、なんて?」
「ですから、ゼルダさんとの任務です」
「え? なんで俺が新人と? リンドウさんは? サクヤさんは?」
「お二人とも緊急のヴァジュラ討伐任務を受けて出払っています」
第一部隊のベテラン三人はそっちに回ってしまっているようだ。だが、だとしても、どうして俺なんだ。タツミさんとか……。あ、第二部隊はちょうど外部居住区の見回りの時間だからいないのか……。でも他にも俺よりすごい人たちはいる筈なんだけどなあ。
なんにせよ、俺は正式な依頼なら俺は断ることが出来ないし、行くしかないんだけどね。こうなったら思考放棄だ。それに考えてみたら悪いことばかりじゃない。最先端の新型神機を見ることが出来るんだから、それで良しとしよう。
「じゃあ、受けるよ。ゼルダは?」
「ゼルダさんは先にヘリポートへ向かいました」
「りょーかい。いってっきまーす」
依頼書に簡単にサインを済ませると、俺はヘリポートに行くために業務用エレベーターに乗り込んだ。ゼルダは遠くから見ただけだし、話したことも無い。ほとんど接点がないってところが果てしなく不安なんだけど、大丈夫だと信じよう。
――――――――――
やってきました、贖罪の街。最初はこの贖罪っていう字が読めなくて何回もヒバリちゃんに名前を聞きかえしたものだ。
「というわけで、今回同行することになった、日出 夏だ」
「私は白神 ゼルダと申します。日出先輩、よろしくお願いいたします!」
この間は見えなかった、凛とした強い想いを宿している黄色い瞳に俺の姿が反射している。綺麗な目してるなー……。名前と容姿からして、この子はハーフなのかな。
ゼルダの第一印象は“真面目ちゃん”だった。同時に、肝が据わっているとも思った。まだそれほど戦場に出ていないだろうけど、もうオウガテイル一体くらいは狩っているはずだ。アラガミと言えど、あいつらも血が流れている。その血を見て、恐らく浴びているだろうに、目の前の少女は不気味なくらい落ち着いていた。
俺は初陣の後、五日くらい寝込んだんだけど。いきなり斬ったところから血がドパァ、って結構トラウマだ。さすがに一年もこの仕事やってたら嫌でも慣れたけども。
「タメ語で構わないよ。俺もゼルダって呼ばせてもらうし、歳同じでしょ」
「いえ、それでは先輩の面目が立ちませんので」
「いやいや、俺としては普通に接してほしいし」
あと、この子すごい頑固だ。一度決めたらとことん、って感じ。
さっきから俺の呼び名が“日出先輩”止まりで困ってる。やめてええええ、俺はそんなにちゃんと先輩してないからああああ、なんかむず痒いからああああ。
「お願い、敬語抜かなくていいから、せめて呼び名だけもう少し緩くして?」
「…………では、夏さん、でどうでしょうか?」
「あ、それでいい。全然いい。さっきよりマシ」
日出先輩から夏さんにランクアップしました。
なんかこっちのほうが仲良くなった感じするよね。本当は夏、って呼んでほしかったんだけど……ゼルダの性格からしてそれは難しいのかもしれない。それはいずれ時間が解決してくれると信じるとして。
仕事のほうもずっと放っておくわけにはいかないから。
「今回の依頼は雑魚三体衆、三体ずつの討伐だ」
「あの、雑魚三体衆とは?」
「俺がつけた総称。オウガテイル、ザイゴート、コクーンメイデンのことだよ」
「なるほど。立ち回りを考えないと厄介そうですね……」
おお、ゼルダは頭良さそうだ。
俺なんかはいつも適当に動いてるからな。とりあえず動いて、相手の出方を窺って行動しようみたいな感じ。回避スキルには自信があるぞ。
「あー、で、今回の作戦だけどぶっちゃけ適当に動いていいよ?」
「は?」
「俺、今まで単騎だったから複数人での立ち位置が分からなくて……。というわけで自由に動いてね」
「え、あ、は、えと」
「うん、これは新人の思考能力を鍛えるための訓練なのだ。……なーんで俺なのかなあ……」
今更考えてみれば考えるほど、俺って適任じゃないね……! 今までほとんど単騎だったから他の人がいるときってどう動けばいいか分からないし、新型との連携の仕方なんて分からないし! そもそも俺が誰かに物を教えるって事に向いてない! 最悪だ!
でも上は貴重な新型を失いたいとは思っていないはずだ。今回の依頼が比較的難易度の低い雑魚三体衆っていうのもあるけど、一応俺はこの三体相手なら交戦経験が神機使い二年目としては極めて高い。本当に危機的な状況にならない限りは対処できる……、と踏んでいるのだろうか? ちょっと評価高過ぎないか、それ。もっと他にいい人いますって。
「それじゃ、出撃するぞ」
「あっ、はい!」
ゼルダは可哀想だけど、これは俺にとってはいい機会だ。新型の現段階での戦闘能力、そして集団戦においての立ち回り。一年一人でいた分、これからは集団戦のノウハウも知っていかないと。非常事態に陥った時、即席で集団戦が行われることになったら「え、俺はできないからパス」なんてことも言ってられない。うん、俺も学ばせてもらおう。
「目標を確認しました」
「知ってる、見えてるしさ」
「突入の許可を」
「俺は特にそういう権限ないよ」
今回の依頼においてはリーダーかもしれないけど、俺にリーダーが務まるとは到底思えない。それでも最低限のことは頑張ろうと思うけど。
ゼルダに合図を送り、同じタイミングで飛び出す。依頼の前に近くに大型アラガミがいないことは確認済みだ。それならザイゴートが周囲のアラガミを呼び寄せても、多少は問題ないはずだ。
それに幸運なことに、今回の討伐対象は全てこの場に揃っている。
「まず、一体っ!」
まあ揃っているからと言って、新手を呼び寄せられたら困るから先にザイゴートを落とすけど。地面を強く蹴りザイゴートの目玉に躊躇なく得物をぶっ刺す。重力と体重を利用してそのまま下に引き裂く。かなり強引だったけど、それで絶命してくれたらしい。
着地から少し遅れて落ちてきたザイゴートの捕喰も忘れずに行う。
「次……。ぶおっ、げふっうえっ」
視線をコクーンメイデンに向けたところで、俺に向かって放物線を描いて飛んでくる紫色の球体を視認。慌てて避けたものの、地面にぶつかり飛び散った気体を吸い込み咽込んでしまった。途端に、身体に怠惰感が襲いかかる。おおう、ヴェノムか……。
俺は金欠だから、大してアイテムは持ってきていない。回復系アイテムの他には、戦況が不利になった際の離脱用として持っているスタングレネードとホールドトラップくらいだ。故に俺はヴェノムを直すアイテム、デトックス錠を用意していない。
つまり俺が狙うのは時間経過による自然治癒だ。
「ザイゴートオオオオ!! いってええ!?」
後々面倒なザイゴートを倒そうと思った俺をコクーンメイデンのレーザーが掠めた。掠めただけなのにすっごく痛いしすっごく熱い。
いつの間に狙われていたんだろう、と内心舌打ちしつつコクーンメイデンを視界に入れたところで、ぞわりと悪寒が走り横っ飛びで回避すればオウガテイルの尻尾が虚空を薙いだ。ほっとしている俺の真上に、ザイゴートのヴェノム霧がもろに降り注がれた。……ええっと、何、この集中砲火。
「ふっざけんなー!」
「大丈夫ですか夏さん!」
「うん、大丈夫。実を言うといつもこうだから」
「そ、そうなんですか」
「ああ。そうなんだ」
面倒くさいな、と思いながらも目をいっぱいに開いて全部のアラガミを視界に入れるように努力する。ダメージは負ったけど、失敗は経験の元だ、と思うことで精神を保つ。そんなことを考えている一方でしっかり回復錠を飲むことも忘れない。すごい苦い。
と、情けない先輩が振り回されている間、ゼルダは無茶せずに確実に一体ずつ片していっていた。バスターブレードをまるでショートブレードの様に難なく振り回すゼルダは将来有望であると言えよう。……いや、待て待て待て。おかしいだろ、オイ。なんだその速さ。重さ無視ですか?
「これでっ、終わりです!!」
「……お疲れー」
ポカンと間抜けに口を開けていた間に、ゼルダが最後の一体を片付けた。強い、素早さ抜きにしても普通に強い。バスターブレードがショートブレードよりも攻撃力が高いってのもあるけどな。ゼルダは一太刀で仕留めきれなかったアラガミに対してはなるべく同じ個所に攻撃するように努めているように見える。
これを無自覚で行っているとしたら末恐ろしいぞ。
「お疲れ様でした」
「ゼルダ、強いな……。そのうちリンドウさん級になるんじゃないか?」
「え、えぇっ!? 私、そんなにすごくないです!」
「将来有望株か。なるほど、さすが新型、とも言うべきなのかな」
俺と同じ歳なのに、本当にすごい。こうも違いを見せつけられるとちょっと落ち込む。勿論、俺だって何もできない訳じゃないし、極東はいつだって人手不足だから頭数くらいにはなれると思うけど。
「じゃあ……帰ろうか」
「ええ、そうしましょう」
ゼルダとはいい友人になれるかもしれない。将来、すごい人になったら戦い方のノウハウでも教えてもらおうか、なーんて。同年齢だからこそ学べることってあるかもしれないよね。
ヒバリちゃんに手短に依頼の完遂、帰還を伝えると俺は待機地点でヘリを待ちながらゼルダと共に暫しの談笑を楽しむのだった。