GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~   作:キョロ

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30、良からぬ噂

 えー、どうもおはようございます。夏です。

 今俺はエントランスにいる。もちろん今日の依頼を受けにきたわけだ。

 それでいつも通りなら既にメリーがエントランスに来ていて、依頼を受けているか珈琲(無論ブラックだろう)を飲んで待っているかのどちらかだ。

 ……うん、そのどちらかのはずなんだ。

 

「くー……」

 

「マジかー」

 

 寝てます。いつものソファで寝てます、メリーさん。

 え、ちょ、昨日散々寝てたよね。なんでまだ寝れるわけさ。俺には無理だね。

 人間ってのは不思議なもので寝すぎるとその日はなかなか寝付けないという枷がつくものなんだよ。枷、ついてなくないか?

 ソファの背凭れに寄りかかって熟睡かな? してる。なんか起こしづらいんだけど。

 

「……黙ってりゃ可愛いのにな」

 

 今俺の目の前で寝ているのはメリーじゃない。女の子だ。

 目は閉じられているから分からないけど、変に表情を作っているわけじゃないから普通の顔が見れる。

 うーん、勿体無いことしてるよなー。あの性格がとても惜しい。あれさえなければモテるのに。

 

「なんでこんな性格なんだろうな」

 

 反対側からじいっとメリーの顔を見続けて思う。

 昔はメリーだって良い子だったはずだ、多分。それがここまで歪むなんて何があったんだろうな。俺には分からないけど。

 ……いや、そもそもあいつにとっての『良い子』の定義が俺とは違う気がするな。そうか、そこからか。

 さてと、やっぱりそろそろ起こしたほうが良いかな。出撃の時間も気になるし、依頼を先に受けとくのもいいかもしれない。

 

「ねえ、あれ見てよ……」

 

「あ? ……一般の日出と生意気な新型のメリーがどうした?」

 

「そうじゃなくて! あの光景見てってば」

 

「は? ……あー。へー、喧嘩してるだけじゃないんだなあ」

 

 どうしようかなー、と考え事をしていると男と女、二人の話し声が俺の耳に入ってきた。え、俺たちの話題? なんで。

 というかそこ。いつも喧嘩しているわけじゃないし、今はメリーが寝てるから喧嘩なんてできるわけが無いだろ。察しろよ。

 ため息を吐いてからあいつらどうしようかな、と思っているとまた話し声が聞こえてきた。今度はなんだよ。

 

「へえー、日出ってああいうのタイプなんだあ」

 

「へえー、日出ってやっぱりドMなんだなあ」

 

「なんか可愛くない?」

 

「日出って女から見るとそうなるのか」

 

「なんか笑顔で後ろからついてきて欲しい感じー」

 

 おいおいおいおいおいおいおい!! お前たち本当に何の会話しているんだ!? 全く俺には分からないんだが。

 そして男、俺はドMじゃない! 決して違うからな。なんでそんな認識になるんだよ……。

 更に女よ、俺はペットかっ!? なんでみんなして俺の認識が酷いわけさ。俺泣くよ。泣いちゃうよ?

 

「ん……」

 

「あ、起きた。おはよう、メリー」

 

「え、あ、おはよう……?」

 

 ぼんやりとしながらメリーは応えてくれた。寝起きは嫌に素直だな。

 まだ眠いのか目は半開きになっている。そろそろシャキッとしてほしいのは俺だけだろうか。

 するとどうやらシャキッとしたらしくメリーは俺の顔面にグーパンチを叩き込んだ。

 

「なんでだ!?」

 

「あ、あんた、あたしが起きるまでそんな目で見てたわけ!?」

 

「そんな目……?」

 

「小動物を見るような目よっ!! 侮辱だわ!」

 

 どうしてそこで侮辱に繋がるのか。俺にはやはりメリーの思考を理解することが出来ない。

 顔を真っ赤に染めているメリーを見ると恥ずかしかったのがよく分かる。恥ずかしいことなのかな、あれ。

 「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!」でもだからってこんなに恨まれるとは思っていなかった。

 

「見た? 今の見た?」

 

「まさかの両想い……だと……?」

 

「ちょっと待てお前ら! 俺はメリーに対してそういう感情は一ミクロンも抱いていないぞ!?」

 

「何それ失礼」

 

 その後、メリーがその二人組をボコすことで解決しました。

 ちなみに俺もボコされた。なんで……。

 

 

――――――――――

 

 

 というわけで現在、鎮魂の廃寺です。

 久しぶりに雪を見た気がするな。雪っていいよね、なんか食べたくなる。

 一度身体を伸ばしてからメリーの方を見るとむすっとしている横顔が見えた。

 

「まだ不機嫌なのかよ。随分と根に持つな」

 

「……あんたのせいよ」

 

「はいはい、帰ったら珈琲奢ってやるから」

 

「睡眠時間が欲しいわ」

 

「それは奢れないなあ。ってまだ寝る気なのかよ!?」

 

「どれだけ寝ても物足りないのよ、最近」

 

 そう愚痴を溢すメリーは本当に眠そうだ。本当のことなのかよ。

 昨日は睡眠薬まで貰ったっていうのにな。こいつ、その内活動時間が十二時間になるんじゃないかな。

 とりあえず俺とメリーは手分けして探索することになった。いや、気付いたらメリーがいないだけだったんだけどね。置いてかれた。

 仕方なく一人で辺りをぶらついて、俺は一番奥の仏像のところまで行ってみた。

 

「さーて、誰かいますかー?」

 

 なんとなく呼びかけてみる。もちろんだけど応答はない。ちょっと寂しくなった。

 周囲を見回してから仏像に向きなおる。ここまでバックリ喰われてると見ていて痛々しいよな。

 昔はこういう像に縋って生きていた人たちもいたっていうのにな。

 

「いないよなー、いるわけないよなー、帰るしかないよなー」

 

 そもそも呼びかけてみたけど、その特異点やらが返事してくれるのかどうかも分からない。特異点っていうアラガミが声帯を持っていたとしても俺の呼びかけを理解するための脳が足りなかったら駄目なんだから。

 とりあえずここにはいなさそうだ。早くメリーと合流して帰るとするか。そう思い散策してみるが……いない。あいつ、かくれんぼ得意なんだろうか。

 

「はあ、どこに行ったんだよ……。ってメリー!?」

 

 月とエイジス島の二つがよく見える崖っぽいところに、メリーが倒れていました。

 えっ、なんで倒れてるの? 過労? 過労死? いやまだ死んでると決めつけるのは早いな。でも最近寝不足だとか言ってたしやっぱり過労死したんじゃ……!?

 

「メリー! おい、メリー大丈夫か!?」

 

「んあ? ……あ、夏」

 

 慌てて揺さぶったらメリーは気だるげに眼を開けた。な、なんだ寝てたのか……。

 全くお騒がせにも程があるってもんだ。こんなところで暢気に寝ていられるメリーの精神を疑うよ。ここは外なんだから、守ってくれる壁だってないんだ。いつアラガミが来てばっくりいかれるかもわからない。回ってみた所アラガミはいなさそうだけど、もうちょっと危機感持ってもらいたいよな。

 ため息を吐いてから、メリーに特異点どころかアラガミも見なかったことを報告する。俺の報告を聞いてメリーは頷く。メリーのほうも何かを見つけたわけではないらしい。

 

「ちょっと気になるから明日、ゼルダともう一回来るわよ」

 

「は? 何もないのにまた来るのか?」

 

「気になるものは気になるの。まあ目立った進展はないかもしれないけど」

 

 俺は特に気にならなかったんだけどな。新型にしか分からないものがあるのだろうか。だとしたら特異点探しに俺が参加してもあまり意味はないんじゃないだろうか。俺よりゼルダの方が細かい何かを探せる気がするし。

 未だに雪の上に腰を下ろしているメリーを助け起こす。そういえばお尻濡れてないだろうか。メリーのズボンはまさかの防水性なんだろうか。

 

「眠い。帰るわよ」

 

「よく寝れるよな……。まあ帰ることには同意だけど」

 

 時々、メリーが妙に子供っぽく見えるような気がするな。朝の件とか、今とか。

 

 

――――――――――

 

 

 突然だが、どうでもいい話をさせてもらおう。

 俺たちがいつも座っているエントランスのソファってすっごいモフモフでフッカフカなんだよね。座り心地がよすぎるんだよ。

 ある意味朝メリーがここで寝ちゃったのは仕方ないということを言わせてもらおうか。

 依頼後、俺も疲れを癒そうとしていつもメリーといる隅のソファに向かったわけですが。

 

「あのー、コウタ? それにタツミさん?」

 

「おかえり、夏さん」

 

「お前を待っていたんだぞ、夏」

 

「ああ、どうも。で、この状況説明してもらいたいんだけど」

 

 現在の状況。コウタに右腕を、タツミさんに左腕をがっつり掴まれてます。まるで連行されてるみたいだなー。

 って本当に連行されてるんだけど!? 俺何かしたかな? というかなんでタツミさんまで……。

 アワアワと慌てふためく俺を他所にほとんど強制といった感じで俺はいつものソファに連れて行かれた。メリーは相当眠かったようでソファにはいなかった。

 俺は出口のない壁際まで詰められて隣にコウタ、タツミさんと座る。そして正面にはアリサとリッカさん。ってあなたたちまで。

 

「ストレートに行かせてもらいますけど、メリーさんと恋仲って本当ですか?」

 

 早速、と言ったような感じでアリサがにっこりと良い笑顔でそんな言葉を口にしました。

 ……ハイ? 今何と? ちょっと俺には理解できない言葉が含まれていたよ?

 

「こ、恋仲……?」

 

 訳の分からない単語のせいで俺の頭がショートを起こす。こ、こいなか、コイナカ、恋仲……。

 駄目だ、全く分からない。というかどうしてそうなった。未だにこの状況が理解できないのはやっぱり俺だけなんだろうな。

 ポカンと口を間抜けに開けながら呆然としている俺を置いて話は進んでいく。

 

「あれ? 俺は夏さんの片想いって聞いたんだけどな」

 

「あ、私もそっちを聞いたよ」

 

「俺はアリサのほうだな」

 

「どっちでもいいでしょう。真相が分かれば問題ないんですから」

 

 四人が何かを期待しているように俺の顔を覗き込んでくる。え、何を期待しているんだろう。

 とりあえず恋仲のことは否定したほうが良いんじゃないかな。うん、とにかくまずそれから始めるとしようか。

 

「お、俺はメリーと恋仲じゃないですよ」

 

「じゃあやっぱり片想い? 頑張るねえ、夏くんは」

 

「だからそんな感情は持ってないですって!」

 

「その割にはお前の耳、赤くなってるぞ」

 

「んなっ……!?」

 

 にやにやと面白そうに笑うタツミさんの言葉を聞いて急いで耳を触ってみる。ほ、ほんとうだ。なんか耳熱い。

 ……耳が熱いってことは、顔も赤いってことにつながるのか? 慌てて頬も触って確認してみる。熱かった。

 み、みんなして面白そうに俺の方見て笑ってるんだけど! 見るなああああ!!

 

「夏くんも可愛いとこあるんだねー」

 

「可愛いとか言わないでください! 嬉しくないですっ」

 

「一般の人たちが言っていたこともなんだか分かる気がします」

 

 一般? 一般……。朝の二人組かああああああ!! 後で絶対叩きのめしてやる。これはもう決定事項だ!

 どうやってボッコボコにしてやろうかと現実逃避をしようとしても周りがそれを許さない。

 というか女子はなんでそういう恋バナ好きなんだろうね? いや、今回はコウタとかも参加しているから女子限定じゃないか。

 本当迷惑な話だな。それにいちいち反応する俺も俺なんだろうけどさあ……。

 とりあえず一人一人確実に黙らせていったほうが良いな。

 

「タツミさん、人の仮恋バナに首突っ込んでますけど、ヒバリちゃんはどうなんです?」

 

「うっ、痛いとこ突いてくるな……」

 

 とりあえずタツミさんを撃墜!

 タツミさんは下を向いて黙り込んだ後、顔を上げてそのままソファから離れて行った。ヒバリちゃん頑張ってくださーい。

 よし、あと三人……。というか揃いに揃って暇な人たちだな!

 

「リッカさん、整備の方はいいんですか? さっきゼルダが探してましたけど」

 

 もちろん嘘だ。ただ単にリッカさんにちょっとこの会話から外れてほしいだけだ。

 まあゼルダが探していたって言うのは本当なんだけどね。さっき神機預けに行ったときにいたから。

 

「え、本当? 残念だけど、それは行かないといけないね」

 

 リッカさん撃墜。よし、残るは二人だ。

 ……どうしよう、二人を撃墜する方法が分からないよ。バガラリーの時間ならとっくにコウタは外れてるだろうし、アリサとか全然分からない。

 あ、これは詰んだ。内心でだらだらと冷や汗を流す。これは質問攻めの洗礼を受けるしかないのか……?

 

「ちぇ、残念だなー。リッカさんもタツミさんも抜けちゃったよ」

 

「リッカさんは仕事だから仕方ないですよ。私たちが聞けばいい話です」

 

「それもそうだな」

 

 あっれー、おかしいなー。なんか二人が楽しそうに笑ってるなー。

 なんで笑っていられるんだろう。俺は今正直泣きたいくらいなんだけど。

 人の前で自分の恋バナを話すとか羞恥ものだよ。しかも俺、年齢=彼女いない歴だし。恋バナなんてあるか。

 

「それで、どこまでいったんです?」

 

「あっ、もしかしてもうチューとかしてたり?」

 

「ば、馬鹿言うなよ、コウタ! キスなんてしてないからな!」

 

 してない。確かに俺の記憶の中にそんなことをしたという記憶は存在しない。

 でも前にそれ以上のことになりかけたような気が……。いや、思い出すんじゃない!

 コウタの発言によって頬が熱を帯びていくのを感じる。だから反応するから駄目だって分かってるのに……。

 

「なんでそんなに反応してるんですか?」

 

「やっぱり、した?」

 

「違うっ、違うんだって!」

 

「赤い顔のままで言われても」

 

「説得力ないですって!」

 

「うぅっ……」

 

 それから俺は軽く二時間ほどアリサとコウタの二人に弄られる事となった。

 俺は玩具じゃないんだぞー!

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