GOD EATER BURST~旧型神機使いの日常と苦労~   作:キョロ

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31、磨かれた真面目

「ヤバ……眠い……」

 

 思わず朝から目が半開きだよ。どうも、夏です。

 昨日はサクヤさんが止めに入るまでアリサとコウタから質問をされたよ。大体二時間くらい? 俺にとっちゃ悠久の時だったがな。

 あの勢いは凄まじかった。「結局チューはしたの?」「告白はしたの?」「思いは届いているの?」「というか既に経験済み?」などなど。

 俺から言わせてもらえばそんなことをしている暇があるなら訓練場にでも行ってろ、っていうね。死ぬかと思った。

 まあ現在地点で寝不足で死にそうなんだけど。

 

「あたしも眠いわ」

 

「お前、まだ言うか……」

 

 目の前で頭を机に乗せてぐだっとしているのはメリーだ。お前、睡眠時間教えてくれ。

 昨日も俺が質問責めを受けていたときはエントランスに来ていなかったから、すぐに自室で寝てたと思ったんだけど……。何時間寝てんだ。

 

「クマ、かなり酷いぞ」

 

「あたしは熊なんて飼ってないわ……」

 

「それはお前が前に否定したネタなんだが」

 

 いけない、寝不足でメリーがおかしくなってる。……寝不足って、言うのか?

 とりあえずこのままここにいてもぐだぐだとしているだけなので俺はメリーを引きずるようにしてエントランスを後にした。

 ……そういえば今日の特異点探し、ゼルダもいたような。嫌な予感がするのは俺だけだろうか。

 

 

――――――――――

 

 

 というわけで鎮魂の廃寺。

 今日は昨日調べられなかった、というか分からなかったところを専門家に見てもらおう的なノリでここを訪れている。

 無論、その専門家とはゼルダのことだ。この前同行した時もかなりいい役割をしてくれたからな。

 そう思って来たわけですが。

 

「それでは、手短に説明を頼む」

 

「お、おう」

 

「はぁ……、またなのね」

 

 メリーは「頭が痛い」と言うとそのまま座り込んで寝やがった。ちくしょう、丸投げする気か……!!

 俺も頭が痛いよ、とぼやきながら目の前にいるゼルダに視線を向ける。

 

 そう、また服が違うのだ。しかし、前のようなコートではない。

 今回ゼルダが着用している服はネクタルスーツ。ゼルダカラーである白のスーツである。

 そしておそらくその影響だと思うのだが、ゼルダがまた違う。

 

「どうした? 私は説明を求めているのだが……?」

 

「はいはいっ、分かりました!」

 

 すんごい真面目。うん、真面目になってる。

 どんな依頼でもしっかりきっちり遂行してくれそうな、真面目オーラを醸し出しているゼルダ。ご丁寧なことにメガネまで着用してくれている。なんで眼鏡ってかけただけで知的に見えるんだろう。メリーは全然知的に見えないけど。

 とにかくこんなことで何時間も待機していたら困るので、ゼルダの言った通り手短に話した。ゼルダは時折頷きながら説明を聞いてくれた。

 

「なるほど、特殊なコアか」

 

「一通りエリアを回ってみて、いるなら居場所を特定してほしいんだ」

 

「了解だ。さて、そうと決まればすぐに行くぞ。……準備はいいな、夏?」

 

「ラジャー!」

 

 はっ!? なんかノリでラジャーなんて言ってしまったよ。

 とにかく俺は先に行ってしまったコートゼルダの後を追っていった。

 

 

「……結論から言おう。ここにはいない」

 

「そうか……」

 

「しかし僅かに痕跡はある。以前はここで生活していた可能性は十分にある」

 

「へえ、そんなことまで分かるのか」

 

「あくまで推量の域だが」

 

 昨日、メリーが倒れていた場所に俺たちはいた。

 一通りここら一帯を一周し、話すならということで月がよく見えるここにやってきたというわけだ。

 まあアラガミが出てきたらやばいんだけどね。その時は全力で撤退させてもらいますよ。月の観察よりも命の方が俺は大事だからね。

 ちなみになんだかんだ言ってメリーは付いてきました。休んでればいいのにね。

 

「いないと分かった以上、ここには既に用が無いわけだがどうする?」

 

「そうだな……。特に用事はないし、俺は帰りたいかな」

 

「それもいいだろう。敵地に長居は無用だ」

 

 俺の意見に頷きながら同意をしてくれたゼルダ。

 いつもと違って口調こそ丁寧じゃないけど、こういう風に会話するのってなんか緊張する。いや、雰囲気が真面目なもんだから。

 軽くため息をついてから俺は後ろに視線を向ける。そこには今にも寝てしまいそうなほどぼんやりとしたメリーがいる。お前、もうアナグラにいろよ。

 というか見ていてハラハラするんだよ、今のメリー。なんか心臓に悪い。

 

「メリー、メリー。大丈夫か?」

 

「……ん、だいじょぶ……」

 

「お前は子供かよ」

 

 軽く手を上げながら俺に返事をくれたが半開きの目で言われても説得力がない。

 とにかくこいつを連れて帰るべきだよな、と考えているとふらりとメリーの身体が揺れた。バランス感覚も危ういのかと思っているとそのまま倒れるように傾いていく身体。……え?

 

「おっと、危ない」

 

 もう少しで頭を打つ。その寸前でゼルダがメリーを受け止めてくれた。

 こういう時は俺が動かないといけないのに。なんて思いながらもゼルダに感謝する。正直に言えば、今俺は体が動かせなかった。何故か。

 受け止められた方のメリーは動く気配を見せない。どうやら睡魔が完全にメリーの自由を奪い取ってしまったようだ。

 

「少し熱があるか? 睡眠を取れば治るだろうが……」

 

「ごめんな、ありがとう」

 

「気にすることは無い。お互いに仲間だからな」

 

 ゼルダの腕の中でスヤスヤと眠りについているメリーはとても心地よさそうだ。いい顔してるし。

 それにしてもここで眠る程寝不足ってわけでもないのに、なんでこいつは寝たんだろうな。ここ最近メリーは様子がおかしすぎる。

 

「……メリーは、普通の神機使いではないようだな」

 

「え? ツバキさんから聞いたのか?」

 

「今分かった。……こいつは、かなり……いや、なんでもない」

 

 何やら深刻そうに考えるゼルダ。俺には何のことだが全く分からないんだけど。

 いつも思うことなんだけどさ、俺を置いて話が進むことがとても多い気がするんだよね。これってもういじめだよ。

 しかしゼルダは急にはっとしたような表情になると固かった表情を少し緩めた。

 

「そういえば、私が考えても表への引き継ぎは困難だったな」

 

「引き継ぎ?」

 

「我々は表の記憶は共有できてもそれ以外の個々の記憶は共有できないのだよ」

 

「ああ……、だからゼルダはいつも服を戻したら覚えてないんだな」

 

「そういうことだ」

 

 全く面倒なことだ。というか俺が親しくなってる女の人ってゼルダとメリーが主だけど、まともな人がいないような気がするのは俺の気のせいか?

 ゼルダはびっくりするほど真面目だし、メリーはびっくりするほど鬼畜だし。まだゼルダのほうがいいや。

 俺って周りに恵まれてないのかなあ、と考えつつもゼルダからメリーを受け取り背負う。うん、ちょっと重い。

 

「時は金なり。早く帰るとしようか、夏」

 

「了解だ、上官殿」

 

 ちょっとノリで言ってみた。でもきっと階級的にはゼルダのほうが上官のはず。

 ……俺、先輩なのになあ。その事実が怪しくなってくるよ。

 

 

――――――――――

 

 

 病室に行ったときおば……おねえさんから「またお前か」と言わんばかりの笑顔を向けられました。メリーみたら普通の笑みに戻ったけど。差別反対。

 だけど出先で寝落ちしたことを伝えたら早々に追い出されました。酷過ぎにも程があるよ。

 で、今。

 

「うしっ、やっと着いた」

 

 結局メリーの部屋に戻ってきた。病室から追い出されたらここしかないよね。

 「お邪魔します」と誰が聞いているわけでもないのに言ってからメリーの部屋に入る。言わないと不法侵入な感じしない?

 メリーをベッドに横たえて布団を上からかぶせてやってから一息つく。疲れたー。

 それにしても相変わらず女とは思えない洒落っ気の無い部屋だ。

 散らかっていない、殺風景な部屋。唯一印象的なのはディスプレイに映るウロヴォロスだろう。なんでウロヴォロスにしたんだよ……。

 

「もうちょっと、こう、女の子らしくしてもいいのに」

 

 野郎が言ってもだからなんだ、って感じだけどさ。でも俺でも分かる。もうちょっと女の子らしい部屋にしてもいいんじゃないかと。

 ……あ、なんで俺がいちいちメリーの部屋のことに口を出さなきゃいけないんだ? 全然関係ないはずなのに。強いて言えばパートナーってだけで。

 恋愛とかそういう感情はないから、やっぱりパートナーというか仲間意識でってことかな。前まで一人だったから変な感じだな。

 

「全然変わったよなー、俺」

 

 少し前までは一人で依頼行って、一人で帰ってきて、一人で報告して、そのまま寝てたのに。良い意味で、変わったよな。

 一人でいるのは特に気にならなかったけど、こうやって他の人と行動しているってのもいいなってこいつのおかげで思えたんだよな。

 メリーに言ったら全力で否定してプラスで鳩尾に鉄拳を貰うだろうけど……。なにもかもこいつのおかげで俺はいい方向に行けた。それは事実だ。

 

「ありがとな、メリー」

 

 独り言のように呟いてからそっとメリーの黒髪を撫でた。本当、こうして見るといつもの凶暴性なんて分からない程女の子なのに。

 ……って、俺は何やってんだ!? 髪撫でるとか! 女の子の! 女の子の!! 何やってんだよ、俺~~~っ!

 あー、恥ずかしい。最近の俺はどうかしているよ。頭がきっとイカレてきてるんだな、馬鹿になってきてるんだな。

 

「あー、もう……。なんなんだよ……」

 

 昨日みたいに顔が熱くなって、それを隠すように両手で覆ってからその場に蹲る。うぅっ、なんだか馬鹿みたいじゃないかよお……。

 深い深呼吸を繰り返して何故か活動が増している心臓と熱を整えてから両手を外して、俺は立ち上がった。

 俺もメリーが眠たくなっているようになんかの病気にかかってるんじゃないかな。きっとそうに違いない。うん、それ以外は認めない。

 

「んじゃな、メリー。ゆっくり休めよー」

 

 出来るだけ自分を落ち着かせるために俺はいつもの調子を心がけて部屋を出た。

 とりあえず俺も一睡したら落ち着くだろ……。

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